退屈で贅沢な日々
既にお仕事引退して2年半、世間では働いている方も多い世代なのに、贅沢にも毎日遊んで暮らして、絵に描いたようなヒマな爺さん(=ワシ)は日々退屈しております。先日呑んだ爺友は転職組。以前の職場の同期と数十年ぶりに呑んだら、退職して別な職場を求めて、それは経済的なことが主眼に非ず、予定がない生活に耐えられないそう。自分は夏の猛暑、そして残暑に連続敗北し、先月は急激に秋の風情に至った季節の変わり目、隔日にトレーニングルームに鍛えても体調維持が難しい。毎日「音楽日誌」朝一番更新は、そんな変わり映えしない生活のケジメを付けるため。もう2024年もあっという間に残り2ヶ月、先月10月分を読み返して、さっさと過ぎたようでも、けっこういろいろあったことに驚きます。
能登の大雨に悲惨な再被害、自民党総裁選はおおいに盛り上がって、兵庫県知事は失職(選挙はこれから)。衆議院が解散し下馬評はあちこち好き放題勝手にマスコミ、SNS論議噴出して選挙最終盤の「2,000万問題」がトドメ、自民公明は予想以上に減らして、裏金議員数人はしぶとく生き残りました。マスコミ騒動のワリに投票率が53%そこそことは情けない。話題は政局一本だけど政策実現が重要なのは当たり前、でも、当選して浮かれている新人議員の行状や、落ちて落胆している人のこれからに注目しております。この流れがずっと続くワケでもなし、いつどう変わるかもわからない。
高齢者ドライバーの事故や逆走は幾度も続き、首都圏中心に物騒な闇バイト強盗が続いて日本の治安神話にも不安な陰。人気芸人の不祥事があり(きっとすぐ忘れられる)ラーメン屋や米菓メーカーの倒産が多いとの情報、挙げ句ご近所の船井電機が倒産し2,000人の従業員が路頭に迷いました。日本の製造業の衰退を象徴しているみたい。そして11月より電気ガスがまたまた値上げとか。困ったものです。
こちらぐっとスケール小さい話題だけど激安スマートウォッチがあっという間におかしくなり、Amazonに連絡したらその業者は夜逃げ?連絡付かず、贅沢にも新しいのと、ついでにスマホ連動のヘルスメーター入手、これは毎日有効に使っております。ほか、大切な高級グラスが割れてしまって100円ショップに別途入手、手帳型スマホケース300円也は仕方なく買いました。息子は一戸建てを購入してローンは74歳迄、無事月末転居いたしました。近々ようすを眺めに参りましょう。
先月爺友との酒は2回(やつらは投票してない)髪カットも2回。先月も隔日15回トレーニングルームに通い、体重は一ヶ月で1-1.5kgほど減ったけれど、まだまだ内臓脂肪過多ですよ。体重コントロール=健康管理はほんまに悩ましい。
● 恒例前月分拝聴音楽の振り返り。これをやっておかないと記憶が保たんのです。
■Rachmaninov 交響曲第2番ホ短調(1973年)/ヴォカリーズ(1975年)/歌劇「アレコ」より「間奏曲」「女性の踊り」(1976年)〜 アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団・・・詳細はよくわからぬけれど、初めての完全全曲版(カットがない?)録音とか。じつは世評高いこの演奏を聴いたのは初めて?1966年旧録音、1985年ロイヤル・フィルとの録音もこれから聴く予定です、Andre Previn(1929ー2019亜米利加)の十八番と云われる交響曲第2番ホ短調を楽しみにしておりました。音質良好。三管編成に5種の打楽器が加わる大編成、1908年初演。ロンドン交響楽団はプレヴィン時代(1968-1979)一躍実力をアップいたしました。愛聴していたオーマンディ(1959年)の熟達した表現よりパワフル、サウンドは泥臭さとは無縁に清潔なサウンド、細部ていねいに描き込んで適正中庸なテンポ、自信に溢れた渾身の演奏と聴きました。
第1楽章「Largo - Allegro moderato」物憂く鬱陶しく、そして甘い旋律が纏綿と歌われる始まり。切ない情感はゴージャスかつ洗練された響きに延々と寄せては返しました。(19:10/短縮版オーマンディ1959年は16:28)
第2楽章「Allegro molto」は多彩なスケルツォ。決然とした歩みから優雅に切ない詠嘆が続いて、やがてガラリと雰囲気は変わってシンバル一撃から中間部へ、打楽器が細かい音型に疾走して、やがて冒頭の決然とした歩みと優雅な詠嘆に戻ります。(10:07/オーマンディ1959年は8:00)
第3楽章「Adagio」最高の緩徐楽章。ヴィオラによる激甘憧憬に充ちた旋律からクラリネットによる感極まるソロが続きます。それは他の木管、そしてさわさわとした弦に引き継がれ、この辺りたっぷり露西亜風の魅力全開、に感無量。寄せては返す静かな波のように情感が揺れ動いて、泣けるところ。激甘憧憬旋律が官能のクライマックスを迎えて、やがて潮が引くようにホルン、ヴァイオリン・ソロを呼び水に寂しげ、デリケートに消えて、弦もフルートも震えるほど美しい。これはエリック・カルメン(恋にノータッチ(Never Gonna Fall in Love Again)1976年)に旋律が引用されたのも懐かしい。(15:45/オーマンディ1959年11:57)
第4楽章「Allegro vivace」は打楽器のリズムもノリノリに力強い、金管戦闘にパワフルなフィナーレ。あわてずしっかりとしたリズムを刻んで華やかな爆発が続きました。途中不安な暗転もあって賑やかに全曲を締め括りました。(14:02/オーマンディ1959年11:15)
「ヴォカリーズ」は珠玉の切ない旋律。自分の好みは女声版、ここは管弦楽のみ抑制して淡々と切ない情景が広がりました。(6:27)「アレコ」は寂しげだけどハープやホルンも華やかな「間奏曲」(3:31)「女性の踊り」もそっと哀しみを感じさせて、切ないデリケートなワルツ。(4:37)■Shostakovich チェロ協奏曲第1番 変ホ長調/チェロ協奏曲第2番ト短調〜アレクサンドル・イヴァシュキン(vc)/ヴァレリー・ポリャンスキー/モスクワ交響楽団(1997年)・・・Alexander Ivashkin(1948-2014露西亜)とはあまり知らぬ名前だけどヴィヴィッドに驚異的なキレ味、新興のオーケストラもなかなかの充実したアンサンブル。両作品ともロストコポーヴィチのための作品なんだそう。(初演も彼)それにしてもなんとズズ暗い音楽なんでしょう。協奏曲第1番 変ホ長調はホルン一本という変則的な編成、そのホルンがチェロと並んで大活躍します。第1楽章「Allegro」からリズミカルな躍動がシニカル素っ頓狂リズムに嫌味なユーモラス。(6:15)第2楽章「Moderato」(11:33)第3楽章「Cadenza」(5:52)第4楽章「Allegro con moto」(4:50)こちらは未だ、なんか作品そのものはわかりやすい。第2番イ短調に至ってその暗さは底知れぬもの。ユーモラスの欠片もない暗鬱連続。こちらトランペット、トロンボーン、チューバを含まず、金管楽器はホルン2本のみ。8種の打楽器にハープも加わりました。この作品には未だ入り込めず、歯が立ちませんでした。第1楽章「Largo」(15:44)第2楽章「Allegretto (attacca)」(4:21)第3楽章「Allegretto」(16:18)
■Martinu チェンバロ協奏曲/プロムナード/2つの小品/チェンバロ・ソナタ/2つの即興曲/de Falla チェンバロ協奏曲〜ヤナ・ヴィチョディロヴァー/モニカ・クノブロコヴァー(cem)/ミハウ・マコウレク/レンツカ・コジェルコヴァー=シムコヴァー(fl)/ヴァーツラフ・フュルバッハ(fg)/アデーラ・シュタイノチロヴァー(v)/ダニエラ・オエルテロヴァー(v)/エレオノラ・マチョヴァー(v)/ヴォイチェフ・セメラード(va)/トマーシュ・ストラシル(vc)/ヤン・ブブレ(cb)/カレル・ドフナル(cl)/ヴラディスラフ・ボロヴカ(ob)・・・偶然聴いたMartinu チェンバロ協奏曲にはびっくり!おそらくは30年ほど前に聴いてカセット・エアチェックしたMarinuの作品、そのリリカル・ヴィヴィッドなバロック風情が忘れられない・・・けれど、作品名失念して、ずっと探してとうとう再会できました。バロック音楽合奏協奏曲風、ほんの小さな編成をバックにちょっぴり素っ頓狂にユーモラス、明るく小味な躍動が感じられる1935年の作品。時代的にBach復興、音量豊かなモダーン・チェンバロ用の作品でしょう。バックは室内楽規模に小さいもの。Poco allegro(6:27)Adagio(4:31)ここのフルートが雄弁。Allegretto(6:37)Monika Knoblochovaは捷克の人だと思うけれど、その他の演奏家含めてなかなか情報が探せません。
「プロムナード」はふくよかなフルートとチェンバロのための軽快軽妙に愉しく可憐な作品。Poco allegro(1:58)Adagioはしっとり(2:25)Scherzando(1:51)Poco allegro(2:23)2つの小品はちょっと暗く寂しく、ちょっぴり劇的。途中剽軽な躍動も入ります。Lento(3:20)Allegro con brio(2:54)。リリカルなチェンバロ・ソナタ(7:30)懐かしい風情漂って、Scarlattiを連想させる2つの即興曲(2:26-2:22)以上チェンバロ・ソロが続きました。
de Fallaのチェンバロ協奏曲もMartinu同様実質上の室内楽風作品。こちらのほうが有名でしょう。20世紀チェンバロ復興の祖・ワンダ・ランドフスカが委嘱して1926年初演して評判はいまいち、彼女は二度と演奏しなかったそう。これは快活に緻密雄弁な作品、クラリネットとオーボエが加わった分、伴奏にぐっと厚みが加わって聴き応え充分。これも躍動するバロック風情たっぷり。Allegro(3:24)Lento (giubiloso ed energico)(6:42)Vivace (flessibile, scherzando)(4:19)これはBach以来のチェンバロ表現の可能性を20世紀以降に広げる作品集でした。■Mozart オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370/Crucell ディヴェルティメント ハ長調/J.C.Bach オーボエ四重奏曲第1番 変ロ長調/Mozart オーボエ五重奏曲ハ短調K.406(K.388)〜マックス・アートヴェズ(ob)/エリセ・ボートネス(v)/ドミートリー・ゴロワノフ(va)/トゥー・ラウトルプ(va)/ラーシュ・ホルム・ヨハンセン(vc)(2002年)・・・これはCDが発売されてすぐに購入した記憶有。Max Artved(1965-丁抹)他、演奏陣はあまり知らないけれど、腕はたしかに愉悦に充ちてヴィヴィッドに躍動する作品、そして演奏。音質も極上です。MozartのK.370は誰でも知っているオーボエ最高の名曲、Allegro(6:33)Adagio(3:18)Rondeau: Allegro(4:27)晴れやかに天翔る天才のワザをスムース軽妙に堪能させてくださいました。
Bernhard Henrik Crusell(1775-1838芬蘭土)は初耳作品、というか記憶がないだけか。ディヴェルティメントは Allegro(3:35)Andante poco Adagio(4:30)Allegro(1:50)このネーミングの意味はなんなのか?これも晴れやかに明るいオーボエ五重奏曲にウキウキが続きました。大Bachの末息子J.C.Bachの作風は初期Mozartにクリソツ、こちらのほうが師匠なんでしょう。 陰影豊かに快活な旋律作品ですよ。Allegro(5:40)Rondeau: Grazioso(4:40)
ラストは弦楽五重奏曲ハ短調K.406乃至管楽五重奏ハ短調K.388からオーボエ+弦楽4人に編曲して、劇的に疾走する深みのある作品。もちろんこれはオリジナルから名曲、この編曲にも全く違和感はない優雅な風情が続きました。Allegro(8:12)Andante(3:53)Menuetto in canone(4:03)Allegro(6:08)ほの暗い変奏曲は大好き。Beethovenのピアノ協奏曲第3番ハ短調第3楽章「Molto allegro」によく似ております。久々にMozart中心にオーボエ、室内楽を堪能いたしました。■Mahler 交響曲第10番 嬰ヘ短調(E. Krenek版)「Adagio (1st movement)」(1961年)/Shchedrin ピアノ協奏曲第2番(1966年)〜ロディオン・シュチェドリン(p)/ゲンナジ・ロジェスト・ヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団・・・Gennady Rozhdestvensky(1931ー2018露西亜)30歳の記録。LPの記憶はあるのに(これ1曲収録!のみ)CD化されていない?Mahler未完の作品録音。音質は良好でした。やや遅めのテンポ、じっくり噛み締めるようにていねいな細部描きこみ、怪しさと狂気漲(みなぎ)って明晰、このまままっすぐ新ウィーン楽派に向かうことが予感できる充実演奏でした。オーケストラもデリケートなアンサンブルに、例の如く骨太に優秀。(27:52)このLP復刻音源のフィル・アップはRodion Shchedrin(1932-露西亜)自らのソロによるピアノ協奏曲。これが滅茶苦茶オモロい!この人は相当なテクニシャンですね。自在に破壊的なソロに始まる第1楽章「Dialogues」伴奏は鋭い金管の呼応(おそらく伴奏は金管+打楽器のみ)無調の静かなアルペジオが徐々に走り出して伴奏は緊張感鋭く呼応しました。やがて静かに不安げに終了。第2楽章「Improvisations」だけどほんま即興なのか、それとも楽譜表記のある即興風なのか?ジャズ・コンボ風ノリノリの熱狂。第3楽章「Contrasts」これは静かなところと小粋なJazzが交互に登場して変拍子炸裂、カッコよいフィナーレを迎えました。(24:03)これも音質良好。
■Beethoven ヴァイオリン協奏曲ニ長調/ロマンス*ト長調/ヘ長調〜ヨゼフ・スーク(v)/エイドリアン・ボウルト/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団/ネヴィル・マリナー/ジ・アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ*(1970年)・・・Josef Suk(1929ー2011捷克)もAdrian Boult(1889ー1983英国)も鬼籍に入って久しく、昔懐かしい録音だけど、これは絶品!気品に充ちて優しい美音を誇るデリケートなヴァイオリン。ボウルトの伴奏は抑制が効いて控えめにソロを支えて、落ち着いて静謐な風情に充ちた最高の協奏曲。諄々と力みのない説得力を感じさせる第1楽章「Allegro ma non troppo」カデンツァは先輩に当たるヴァーシャ・プルシーホダ(Vasa Prihoda, 1900-1960捷克)のものだそう。(25:12)のびのびと清楚な歌が清々しくも懐かしい第2楽章「Larghetto」(10:13)第3楽章「Rondo: Allegro」のフィナーレにもバランスのよろしい、肩に力の入らぬ上機嫌なソロとオーケストラは賑やかに非ずとっても親密。(9:31)協奏曲以上にお気に入りNo.1、安寧の旋律が流れるロマンスも同時期の録音。これ以上優しく切ないBeeやんはほとんど見たことはない。マリナーの伴奏も親密なもの。(7:13/8:26)
(2024月11月1日)
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