2006年7月末北海道白老の空です。空気は澄み切って

貧しき者こそ幸いなれ


 たった今現在、様々な理由で経済的に困窮されている方々には申し訳ないが、温々とサラリーマン生活の余暇に音楽を楽しんでおります。「衣食足りて、音楽を識る」というのは真理であって、ある程度の心身共の余裕がないと音楽は楽しめないのでしょう。健康であるのは前提です。「年功序列」が崩れ去り、年々お仕事は”合理化”(いったいなんの合理化なんだ!)されて、きつくなるばかりだが、少なくともワタシは安いCDを自由に購入できる経済状況であります。その幸せを噛み締めましょう。

 年に一度ほど、発作的にCDを処分(BOOKOFFへ持ち込めば二束三文だが、ほぼ、必ず引き取って下さるし、心ある音楽ファンに引き取っていただける可能性も有)していたが、ここ最近「オークション」に凝っていることは先月書きました。処分すべきCDに価値がない、ということではなく、捨てるCDあれば、拾うCD有、ということです。人生の時間は限られていて、音楽を聴くべき時間には宣言がある、という自明の理であります。もとより、”金儲け”であるはずもない。オークションを通じて、全国の音楽ファンと交流しているような・・・そんな気分でしょうか。(オークション出品/購入は7月を以ていったん休止いたしました)

 で、季節は蒸し暑い初夏であり、ワタシの真空管アンプの熱気も少々鬱陶しい〜恒例に従って、トランジスタ・アンプに交代いたしました。接続の関係で、MDが聴けるようになるんです。半年ぶりか。MDは結局、新しいフォーマットとして主流になれなかったようだが、ワタシは便利で手軽で安い!とお気に入りでした。それでも、ほんまに聴く機会が少ない・・・カセット時代に膨大なるエア・チェックをしていて、それは貧しかったからです。

 音楽ファンなら聴いておくべき、定番の名曲名演奏、知的冒険である珍しい作品、演奏者/団体・・・それはほとんど「FMエア・チェック」で身につけたものです。やがてカセット時代が過ぎ去り(最盛期1000本、最終処分時500本)、どうしても愛着のあるものはMDに落としました。じつは、LPを最終処分したとき(1994年)に愛着ある音源をカセット(またはDAT)に、そしてMDに移行させて(時々)楽しんでおりました。

 ・・・なぜ、こんなことを思い出したかというと、久々、MDの在庫確認をしたら、その後CDで入手出来たものを多く発見したからであります。

VENEZIA CDVE 04241 12枚組4,871円▲ここから更にクーポン値引き使用●Shostakovich 交響曲第5番ニ短調〜コンドラシン/モスクワ・フィル(1968年)・・・これは数日前に、待望の全集が到着しておりました。これこそ、ワタシがLPを処分する決意に至った曰く付きの音源であります。これは、どの作品も想像以上の鮮明な録音と、明快なるメリハリ演奏を、毎日感動を以て聴き進めております。

●Mahler 交響曲「大地の歌」〜ワルター/ウィーン・フィル/パツァーク(t)/フェリア(con)(1952年)・・・言わずと知れた往年の英DECCAの名録音(音質/演奏内容とも)であって、ワタシはその後、NAXOS(8.110871)の素晴らしき復刻を堪能したものです。ワタシの原点のひとつか。

●Mahler 交響曲第10番(クック版第3稿第1版)〜ウィン・モリス/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1972年が正しい録音情報らしいSCRIBENDUM SC010 3枚組1,990円)・・・これも待望の入手でしたね。若い頃から、ずいぶんとマニアックな音源を聴いていたもんだ。豊かで、穏健派のMahler であります。

●ピエール・デルヴォー/コンセール・コロンヌのフランス音楽集・・・これもようやくCD化(EMI 7243 5 85216 2 7 2枚組 1,390円)なって、LP時代に収録されなかった音源まで楽しめるようになりました。少々エエ加減なるアンサンブルに、粋とか艶を感じさせる演奏。

VANGUARD 08 8029 71 1959/66年 @333●ミシャ・エルマンのお気に入りアンコール集(VANGUARD 08 8029 71 1959/66年)・・・中学生時代の放送室にあった25cmLPでした。晩年の彼のテクニックは、泣けるほどヨレヨレでして、ワタシにはそれが泣けるほど懐かしい・・・。(FMエア・チェック/さすがにバロックの協奏曲はCD入手できていません)

●Bruckner 交響曲第5番 変ロ長調(改訂版)〜クナッパーツブッシュ/ウィーン・フィル(1956年LONDON 23E51081)・・・ワルター/コロムビア響の第4番と並んで、ワタシのBruckner原点でしょう。若い頃は「版」のことなんか知らなかった(今でも?)し、とにかく録音がよろしくなかった記憶しかありません。ああ、これは手許のCDでも様子は変わりませんね。演奏も妙にもっさりと巨魁な印象で、これは最近新旧あれこれヨッフム盤を聴いている関係か、と思います。でも、懐かしい。そして悠揚迫らぬ立派な演奏に(ちゃんと)感じるように。(この作品は、後フルトヴェングラーで目覚めた・・・が、現在では異なった印象有)

●Bach ゴールドベルク変奏曲〜グレン・グールド(p)(1981年)・・・大ベストセラーには必ず大量処分がある、という大原則がありまして、ワタシはこの名盤を@250BOOK・OFF入手いたしました。(その後、あちこちで数回目撃)グールドのBach には偉大なる影響力がありまして、なんとなく「Bach だったらピアノで」みたいな前提を作ってしまいました。これはFMエア・チェックしていたもの。

SCRIBENDUM SC 011 Disc1 ●Bruckner 交響曲第7番ホ長調〜カール・シューリヒト/ハーグ・フィルハーモニー(レジデンティ管弦楽団 1964年)・・・某大物評論家の飽くなき称揚によって、日本では妙に人気のある旧コンサート・ホール・レーベル録音。CDリマスター復刻しても、もともとの異様に悪い音質から脱却できるわけでもない・・・が、これもひたすら懐かしい。小遣いやりくりして、必死になって中古LPを探していた記憶が蘇りました。世評どうあれ、ほかの音質共々美しく磨き上げられた演奏とは別種の感慨有・・・単なるノスタルジーだろうが。

 なにを言いたいかというと、経済的に不如意で(現在ほど)自由自在に音源入手がままならぬ時期でも、ちゃんと音楽を楽しんでいたこと。カセットもMDも100円でしたもん(ワタシが買うものは)。いえいえ、むしろ貴重なる機会を捉えて、真剣な集中力があったかもしれません。ああ、きょうは夜にFM放送があるから、急いで帰らなくっちゃ。ムリそうだからタイマー掛けておかなくっちゃ・・・とか、想い出が蘇ります。上手く収録できたときの喜び、失敗して交響曲第1楽章冒頭が欠けてしまったときの失望、電波状況が悪くてまともな音質に収録できなかったときの怒り、テープが足りなくて全曲収録できなかった時の悔しさ・・・

 そんなことを思い出しました。1980年代、現在21歳の息子が生まれた前後ですか?女房もワタシも若くて貧しくて、元気で、夢中で、生意気で、そして幸せだった。MDを眺めていたら、そんなことを懐かしく思い出しました。ワタシが湯水の如く安いCDを購(あがな)うのは、そんな”幸せ”の追体験なのかも知れません。覆水盆に返らず。光陰矢の如し。今は昔。貧しき者こそ、幸いなれ。(嗚呼、人生に涙有)

 【♪ KechiKechi Classics ♪】は、いつの間にやら8周年を迎えました。読者の皆様に感謝。

(2006年8月1日)

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written by wabisuke hayashi