ミッシャ・エルマン


Vivaldi
ヴァイオリン協奏曲ト短調 作品12-1

NARDINI
ヴァイオリン協奏曲ホ短調

(以上、FM放送のエア・チェック)

Sarasate 「ツィゴイネル・ワイゼン」
Saint-Sae"ns 「序奏とロンド・カプリチオーソ」 ほか小曲集多数

エルマン(v)/ゴルシュマン/ウィーン国立歌劇場管弦楽団/セイガー(p)

(1962年録音? 図書館で借りてきたCDで楽しみました)

 珍しい音源ではなくて、1960年前後に最晩年のエルマンがステレオ録音してくれたもの。ヴァンガード・レーベルでいまでも手に入るかも知れません。LP時代には@1,200の国内盤が出ていて、メンデルスゾーンとかラロ、ハチャトゥリアンの協奏曲もよく聴いたものです。懐かしい。

 ロシアからアメリカに移住した、往年の名ヴァイオリニスト(1891年〜1967年)。第2次世界大戦前には凄い人気で、コンサートはもちろん、レコード(当然当時はSPか)200万枚を売った、というから現在の不況ぶりからは想像も付かない感じ。「エルマン・トーン」という美音が売り物だったらしいが、残念ながらその当時の録音は聴く機会はまだありません。

 超絶技巧が楽しみな「ツィゴイネル・ワイゼン」。なんか「初心者向け通俗名曲」みたいに思われているが、このクサくも、切ない旋律がたまらない魅力なんです。ここではセイガーのピアノ伴奏のみで演奏されます。おそらく録音当時70歳。そうとうに技術的にはヤバくて、難しいところはどんどんテンポが遅くなります。無茶苦茶テンポが揺れます。悠々と構えて、せせこましい技術誇示などもとより考えていないようで、ある意味納得します。

 とことんの歌心は失っていなくて、けっこう朗々と(ヨレヨレともいう)聴かせてくれてシミジミ楽しめます。これは、この曲が持つ旋律の美しさを存分に掘り起こしてくれた演奏なんです。

 「ユモレスク」「アヴェ・マリア」「タイス」「ト調のメヌエット」「ロンディーノ」「美しいロスマリン」「愛の歓び」「ウィーン奇想曲」「スラヴ舞曲第10番」「キュイのオリエンタル」「アレンスキーのセレナード」「ゴセックのガヴォット」「トロイメライ」「Tchaikovskyのメロディ」と続きますが、このうちの半数以上は中学生時代放送室にあった25cmLPで聴いたもの。(社会人になってからLPで買いました)

 全体として「どんな曲を弾いても同じように甘い節回し」といった印象で、色香を失っておりません。若い頃、売れっ子芸者でたいへんな人気だったが、引退したいまでも上品さと、性格のよさは隠しきれない、といった風情でしょうか。「愛の悲しみ」が録音されなかったのは残念至極だけれど、「タイス」は少年時代に聴いた、泣けるような感動がそのままでした。録音状態はたいへんよろしい。


 Saint-Sae"ns 及びエア・チェックしたVivaldiは(懐かしい)ゴルシュマン/ウィーン国立歌劇場管弦楽団のバックが付きます。やや音の状態が落ちます。濃厚な甘さはここでも同様。「序奏と・・・・」は、Sarasateに比べればずっと正統派の名曲だけれど、ま「ツィゴイネル〜」に比べれば技術的にはややマシ、状態。でも、トロリと歌ってくれることは間違いなくて、いや、この人はホンマ、何を演奏してもスタイル一緒ですね。

 Vivaldiのほうは、バロック・スタイルとは甚だしい違いです。これはゴルシュマンの責任ではなくて(だって、彼には「ラ・チェトラ」のちゃんとした録音が残っている)、エルマンの責任に間違いない。いつになくオケの響きが濁るのは、ソロが無定見に揺れるからでしょう。ま、NARDINIも含めて纏綿と旋律にエルマン節をきかせて、美しいと言えば美しい。

 ま、爺さんの若い頃の恋物語を聴かせてもらってるようでもあり、けっこう楽しめます。技術的破綻を指摘するのはカンタンだけれど、バロックもなにもかも同じ味付けにしてしまって、これはこれで揺るぎない説得力に負けてあげてもよろしいでしょう。なにごとも個性が大切。(2002年4月26日)


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written by wabisuke hayashi