2011年正月札幌のホテルにて

ツマラぬ日常の繰り返しこそ、宝石の価値


 なにをしても”3/11以前とそれ以降”ということになるんでしょう。日本は狭い国だし、毎日報道されていても、被災地の状況変化が見えません。ボランティアは盛んなようだけれど、安易に物見遊山気分にて現地に出掛ける訳にもいかず、自分にはどうも”カラダで”様子が見えていない。すべての地域、人々がすべて同じ被害でもなし、また、同じように復興するわけでもない、もしかして忘れ去られ、放置されているところだってあるかも。その点、16年前大阪に居たワタシはお仕事(倉庫在庫点検とか)で何度も神戸に入ったし、”カラダで”被害状況も回復過程も(ある程度)理解できたものです。

 ましてや”原発事故”でしょ。不都合は隠す東電でしょ。言霊思想は日本に延々と生き続けているから、”事故は起こるかも”なんて縁起でもない!絶対に口に出せぬ。第2次世界大戦中、零式戦闘機(零戦)の防御を強めるべし、との意見は、そんなものは精神力で乗り切れ、と、軽量機動性と引き替えに打たれ弱い、人命軽視状況を放置した体質と変わりませんよ。本日、菅内閣の不信任がどうなるかは知らぬが、いずれ前政権が曖昧な(いや、自信を持って!)原発政策を進めて来たんじゃないの。説得力ないなぁ。「エコでクリーンなエネルギー〜私は必要だと思います」って、つい数ヶ月前までテレビ宣伝していたじゃないの。本気なら、試しにまたそんなCM復活してみて下さいよ。

 大切なのは現場。福島原発現地で修復作業している人々は、過去の経緯関係なく、エラい!立派。なんとか励ましたい。完全に治まるまで10年スパンで考えるべき大厄災。その10年、日本は衰退しちゃうのか、それとも新たな価値観(経済力だけではない)が生まれるのか。ちょっぴり不安です。

 不況の色、いっそう濃いけれど、日常生活は粛々と過ぎていって、ある意味なにも変わらない。こちら西国方面は「夏のエアコン少々ガマンして節電しなくっちゃ」程度ですよ。パソコンは電気喰うんだろうか?そういえば、上司は職場デスクトップ・マシンを全部ノートに切り替えようかな、と言っておりました。(もの凄く熱くなる)真空管アンプは数年前に処分、何時間電源入れても冷たいままの極小ディジタル・アンプはきっと省電力なんでしょう。ほんま、「近況」ネタはなにもない。ツマラぬ日常の繰り返し〜こそ、じつは宝石の価値がある・・・そんなことを先日の震災は教えて下さいました。

 運動不足、呑み過ぎ喰い過ぎ太り過ぎ、寝不足、耳鳴り、体調不良の日々ながら。今年は梅雨らしい梅雨です。電力不足にあっても、水不足はないでしょう。

 先月のヴェリ・ベスト。人間の記憶は曖昧だから、ちゃんと振り返って書き留めて置かなくっちゃ。

EMI 9099152●Delius ダンス・ラプソディ第1番(1952年)/ヴァイオリン協奏曲(ジャン・プーニェ(v)1946年)/高い丘の歌(フリーダ・ハート(s)/レスリー・ジョーンズ(t)/リュートン合唱協会1946年)/山脈(Paa vidderne1946年)〜トマス・ビーチャム/ロイヤル・フィル・・・6枚組2,000円で釣りがくる・・・充分安いが人気ないだろうな、ユーザーレビューもなし。当然モノラル録音だけれど、奥行きと適度な残響が好ましい音質。ほとんど戦後間もない、英国疲労の頃だけれど、オケはかなり快調、瑞々しいアンサンブルを実現しております。どれも粛々淡々、呟くような穏健旋律がとめどなく続く〜といった風情の作品ばかり、決然とした爆発、絶叫、激しいリズム!みたいなものは一切存在しない・・・安寧、静謐、ゆったりと深呼吸のような風情が続きます。ヴァイオリン協奏曲は途切れない28分ほどの幻想的な作品、これを説得力を以て面白おかしく聴かせるのは至難の業でしょう。

ジャン・プーニェというヴァイオリニストは初耳だけれど、英国往年の名手なのでしょう。ヒストリカルのLPなどに名前を見ます。抑制と、味わい深い瞑想有。「高い丘の歌」は時々遠くから響いてくる(これまた)控えめな合唱+ソロ(ヴォカリーズ)が懐かしい。それはそれで爽快なる盛り上がりがやってきて、やがてそれも静かに収束していって儚い・・・

映画「阪急電車」。毎日お世話になっている(路線はちょっと違うが)ご近所ネタ、ああいう狭い範囲でのココロの機微みたいなものを表現させたら日本映画の独壇場でしょう。起承転結のはっきりしない、様々なエピソードが少しずつ動いて暖かい方向へ〜といったシミジミとした作品。最高っす。中谷美紀はあまり好きな女優さんじゃなかったが、「Jin-仁-」に於ける花魁・野風役での日本語の美しさにすっかり心奪われました。彼女は少々美人過ぎるのだな。結婚式の帰り、非常識な白いドレスと阪急電車との違和感がよく出ておりました。スーパーで服を買い替えるんだけれど、なんでもよう似合います。

戸田恵梨香(フツウの女子大生役が似合っている)の暴力彼氏(カツヤ・小柳友)はいかにも、そこいらに居そうなどーしょーもない感じ。南果歩は気弱そうで地味な主婦、息子とダンナが優しくてエエ味出してます。漢字もロクに読めない、温かい人柄だけが取り柄のサラリーマン玉山鉄二、不器用な田舎者学生カップル勝家涼・谷村美月は生真面目で大好き。ちょいと最近出過ぎの芦田愛菜ちゃん、相変わらず上手いですよ。そして、南果歩の胃を痛める厚顔無恥主婦軍団の圧倒的パワー(あれが京阪神のおばはんパワーだ!誇張しているが)。

そして、宮本信子が全体を引き締めていて、犬好きなのに犬を飼わない理由、そして犬を飼うに至った理由が泣かせます。負けるな!イジメにあっている小学生。

相国寺承天閣美術館の伊藤若冲展。伊藤若冲といえば極色彩、緻密描写的な鶏の絵を連想しますね。

今回の展示会は修理成った壁画をメインに、墨絵中心の展示であって、これまた凄い。ほとんど一筆書きと思われる全体造型で鶏、鶴、鯉がざっくりと描かれ、デフォルメの効果も驚異的。お土産物のタオルを買ってきたが、そこに描かれる鶴には例の長い首はないんです。後ろ向きで隠れているといった趣向。衣の尻をからげて川を渡る布袋さんの図は、後ろ姿で尻は見えても頭が隠れている。得意の鶏、そして鯉の表情アップ真正面のくりっとした丸い目がユーモラス。ほか夢窓疎石の姿を描いた絵(痩せ形なで肩がリアル)+墨跡がみごと。足利義満の書状もあったが、彼の筆跡は頭でっかちであまり上手くないのがオモロい。

SONY 82876-78747-2Mussorgsky 歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」(ROMSKY-KORSAKOV版/抜粋)〜ジョージ・ロンドン(b)/トマス・シッパーズ/コロムビア交響楽団/合唱団(1961年)・・・1920年生まれ、亜米利加出身不世出のバス、ロンドンの立派な押し出しと存在感、輝かしいオケの響き(オケの実態は不明だけれど、素晴らしい迫力)、例のアクの強い印象的な旋律が映えます。音質も抜群。ワタシ、あまり歌劇は日常聴く機会は少ないんだけれど、「ボリス」「ホヴァンシチーナ」辺りは大好きなんです。

フィルアップはMussorgsky/Ravel 編組曲「展覧会の絵」〜ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1966年)・・・あたりまえだけれど前曲と続けて違和感なし。RCAはSONYに吸収されたから1973年音源との関係はどうなるんでしょうか。こちら旧ステレオ録音のほうがいっそう好感を以て拝聴可能。キラキラ、のびのびとして鳴りのよろしいオケは爽快な爆発ぶり。

●Stravinsky 「兵士の物語」(1972年)/八重奏曲/5つの楽器のためのパストラール/ラグタイム/六重奏曲/コンチェルティーノ(1974年)〜ボストン交響楽団室内アンサンブル/シルヴァースタイン(v)/ギターラ(tp)/ライト(cl)/ウォルト(fg)/ギブソン(tb)/ファース(pac)/サー・ジョン・ギールガッド/トム・コートネイ/ロン・ムーディ(語り)・・・この辺りが自分の嗜好のツボ。Beeやんどうの、というのも我が儘なる好き好きだけれど、こんな粋で自在なる小編成を聴いていると、厳格四角四面なる音楽は聴けなくなる・・・(Bach は別格)こうしてみるとボストン交響楽団には名人揃いであって、刈り込まれた編成だからそれはいっそう理解可能。だらだらとエピソードが続いていくような音楽は大好き。ナレーターの語り口(英語)が渋く、味わい深くて、ワタシは”サウンド”として聴いているだけ(意味理解不能)ながら、はなんとなく(リアルに)想像可能。

CBSShostakovich ピアノ協奏曲第1番ハ短調(アンドレ・プレヴィン(p)/ウィリアム・バッキアーノ(tp)1962年)/第2番ヘ長調(レナード・バーンスタイン(p)/ニューヨーク・フィルハーモニック(1958年)・・・LP時代より馴染みの演奏也。これが凄い。なんといっても若きプレヴィンの強烈なテンションとテクニックのキレ味、溌剌とした熱気!大爆発。なんと明るい、息もつかせぬ目くるめく多彩な世界。音質極上。バーンスタインの弾き振りである第2番は、第1番より都会的でリリカルなテイストだし、演奏もちょっとクールな味わいで好対照。

(2011年6月1日)


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written by wabisuke hayashi