2010年10月阿蘇・白水の水源

新しいことにトライヤルすること/貧者のパソコン


 隣国との関係はほんまに難しくなっております。21世紀の大国・中国とは(おそらくは)抜き差しならぬ深い関係になっているのに、微妙にイヤらしい状況が続いております。1960年代〜70年頃の我が国の「反米気運」みたいなものか?似ているような、全然違うような・・・いずれ、”反日”の形を取った中国社会矛盾の発露らしくて、報道されるのが主流の状況(本質)ではないそうだけれど・・・むしろ、冷静な日本国民中にじわじわ”嫌中”の空気ばかり醸成されてくることを懸念いたします。若い人が、ますます精神的鎖国の風潮を強めないことを祈りましょう。やや迷走気味・菅政権への批判は当然あって然るべし、世論の風当たりも強いが、有無を言わさぬ実力派ファッショ的指導者登場を求めるのは筋違い。これは高齢化社会を迎え、誰もが初めて経験する人口が減りつつある日本社会の状況反映が基本です。成長戦略ではなく、成長しなくてもなんとかやっていける、そんな日本になることが大切なのでしょう。

 閑話休題(それはさておき)

 先月は富山に2回、金沢に3回出張、合間の休みに熊本・阿蘇旅行といった強行軍でした。相変わらず贅沢に旨いモンばかり喰っておったな。終盤の休日に体調崩したが、なんとか生き残っております。(ここしばらく服用している副鼻腔炎のヤクの副作用ではないか?とも類推)お仕事合間に音楽はけっこう楽しく聴いていて、そしてネットブック(ちょいと旧式/ASUS EeePC 4G)入手して、Linuxに挑戦した(現在も挑戦中)というのが新機軸であります。なんせ中年街道も後半に向かいつつあって、ノーミソ保守化(新しいことに興味を抱かなくなる)しているからね。基本目標は”ノーカツ”です。先代からお世話になっているメーカーさんの若社長(といっても既に中年)は元システム会社をやっていて、家業を継いだんだけれど、(富山でご当地の旨いモンを喰いつつ)呑みながらその話題となりました。

 曰く、”Linuxってなんの意味があるんですか”と。こりゃ、コトの神髄を突いた質問だな。う〜む、よくわからない。ワタシの場合、とにかくふだんと”違うこと”をやろう、ということのみ。

 職場の親しい友人は、自宅ではMac使いであって、曰く、あらゆる意味でMacが直感的に使えて素晴らしい、と、しつこくワタシをかき口説きます。ワタシ、Macってさわったことありませんもの。というか、流行のスマート・フォンも触ったことはない、どころかフツウのケータイも苦手、自宅にビデオはないから当然予約もできん役立たずオヤジ状態。ま、Windowsパソコンは”直感的に使える(目をつぶっても!)”ほど馴染みました。職場では否応なく使いこなさないといけないし、常時接続無線LANは持参させられていないが(接続速度的に社内LANを出先で自由自在に使えるほどの速度や使い勝手ではない)ケータイ・メールやら、ホテル(+自宅)でのネット接続環境を活かして、けっこう日常乗り切っております。ここ最近、ハードの価格もずいぶんと安くなって、故障してもそう経済的負担なく買い替えることができる時代に至っております。

 でもね、ここ数年、転居がひとつの大きなキッカケだけれど、10年ほどお世話になった旧式なマシン、周辺機器、パーツをほとんど”捨てた”という胸の痛みがあるんです。故障したり、時代遅れとなったものばかりだけれど、基本的にモノに執着しない性格なので、大胆に捨てるときは捨てちゃう。もっと早くLinuxをいじっていれば、旧式マシンは何台か生き残っていたかも。自宅では、デスクトップ・マシンは(今時、場所占有を考えると)贅沢品となりました。2台は置けませんよ。ガラクタを溜め込むのはもっと贅沢かも。ネットブック(ASUS EeePC 4G)は中古14,000円ほどの出費で、”オトナのおもちゃ”(妙な意味に非ず)を購入した、ということです。以下、一ヶ月、あちこちLinux(のほんの表面を)散々、たっぷりいじってみての感想です。

(1) 自分は”文系”だな、といった自覚再々度。”理系”の方々には畏敬の念があるんです。親父も兄も生粋の理系ですもん。20数年前、親父にCASIOのワープロ(6行しか液晶表示できないプリンタ付)をプレゼントしたが、穴の開くほど解説書を熟読精読して後、初めて電源を入れたという逸話を聞きました。今回も数人、理系的ご指導やら話題にしていただいたけれど、こちら”文系”というかエエ加減(アホ)な性格に辟易されたことでしょう。ワタシはマニュアルなど滅多に読まない強者、基本”カラダで覚える/まずやってみる”ことを身上としております。だから、理系的几帳面なる感性でワタシをご指導いただいても、ほとんど徒労であります。ごめんなさい。

 十数年よりWindowsへ馴染んだ経験もそうだった記憶があります。原理的にこれができる、ではなく、これをするにはどうする?的実用的な使い方一本道。マニュアルは読まないが、パソコンを使ったお仕事作業マニュアルは何本作ったかわからない。かなりヘロヘロの洗練されない仕組みだけれど、極めて実用的で息の長いものを作ってきたかな、という自負はあります。きちんとした名人が作ったものは、見た目洗練されているがガチガチに固めてあって、状況前提が変わったり、故障したりするとにっちもさっちもいかない。職場の専門システム部局(別会社になっている)は、セキュリティ強化をし過ぎてお仕事を(無意味に/もの凄く)不便にしたり、ウィルス対策を強化した挙げ句、日常業務に不具合を起こすくらいの大混乱を起こしたりしております。ことし、5月リリース予定だった新メール・システム(私見ではあきらかに改悪!)は一日でシステムダウンして、元に戻りました。

 目的があってパソコン(OS/システム/ネット環境)がある、その逆ではない、ということです。ワタシは仕組み、システム、ハードそのものを愉しむべき”理系”の人間に非ず。

(2) Linuxの機能は洗練され、一般市民ユーザー実用化の段階に至った、という手応えがありました。Linuxトライヤル用に入手したマシン(ASUS EeePC 4G)のデータ容量が少ないという制限で苦戦したが、ubuntuの洗練されたインストール(またはCD起動)、使い勝手、デザイン、機能に驚きました。Linuxはオープン・ソースだ云々、というのは無料で気軽に入手できること(使う側には)に意味があるんだろうが、開発者の熱意がさまざまな流派を生み出し、そしてパッケージを形作っておりました。他、試したものはLubuntuDreamLinux(Macのデスクトップによく似てますね)、VineLinux(これもデザイン機能が洗練されている)そして超軽量PuppyLinux。ほか、いやぁ星の数ほどいろいろあるんですねぇ。無料お試し放題で困っちゃうほど。

 こんなこと門外漢が言っちゃマズいんだけれど、なんでもできる、いろいろできる、たくさん選べる、全部無料、というのがユーザーにとって幸せかというと、そうとも言い切れない。ワタシの場合、興味はあちこちあったんだけれど、マシンの容量という制限がありました。今回はマシン機能制限が多くて苦戦したが、制限そのものは楽しいんものですよ。誰でも湯水の如く金やら時間を消費できるわけではない。俳句短歌は字数制限や規則があるからこそ、逆に無限の広がりが出るもの。Linuxでもなんでも同じでしょうが。安いマシン(画面が狭いから、設定画面の下が切れて見えない場合さえある/VineLinuxのインストールでは大苦戦!)、容量の少なさ、その制限の中で”使える”ものを探すのが楽しいんです。機能や使い勝手を追求した挙げ句、重くなる、容量を多く使う(=新しいマシンの水準を要求される)、というのだったらWindowsと似たような道だと思うんです。

 一回りして、いくつかのLinuxを使ってみて、結論的に(この小さなマシンには)PuppyLinuxなんだろうな、と考えております(現状では)。容量の制限がありますから。幸い、Windowsと違ってLiveCDという概念でお試し使いできますし、環境が変われば、そしてもっと習熟すれば、べつなものに移行する可能性もあります。Windowsマシンは使い慣れているけれど、やがて数年後には身の回りすべてLinuxという可能性有〜しかも、それが”Linuxである”といった自覚なしに。たったいま、ワタシの稚拙な初心者技量でも、ネットを(つなぐ+)見る、通販で注文する、メールを使う、ブログ(のような定型サイトを)更新することだったら簡単ですもの。これでしばらくお勉強習熟を狙います。

 もとより目標は”貧者のパソコン”ですから。旧式パソコンも捨てずに置いておけばよかった、いまとなって後悔しても遅い。じつはマシンの選択も(初心者には)マズくって、ASUS EeePC 4Gは画面が狭すぎたし、データ容量も少なすぎ。AspireOneは内臓の無線LANの認識設定が特殊みたいで、けっこう苦戦。結論的にAspireRevo+でかいディスプレイだと、さすが「7」が動いているマシン、散々ネットブックにてあちこち一ヶ月苦労経験後、CD起動させたら全然ラク勝で使えました。無線LANも即、そのままOKです。

 これが”文系流”怪しい習熟也。専門筋の方は見てられんでしょうな。もう怖くない。どんなLinuxでも、なんでも持って来い!まだ全然使いこなせていないが、入り口にはスムースに立てました。

先月のヴェリ・ベスト。

●Bartok ルーマニア民族舞曲/戸外で/アレグロ・バルバロ/14のバガテル/シク地方3つの民謡/10のやさしいピアノ小品/3つのブルレスク/ハンガリー農民の歌による即興曲〜ジェルジ・シャンドール(p)・・・5枚組全集より。Chopin の甘美な旋律も素敵だけれど、粗野で泥臭い、激しいリズムも大好き。ルーマニア民族舞曲は弦楽版もあるけれど、こちらのほうが明らかにリズムのキレがよろしい。大改造!!劇的ビフォー・アフターの音楽でもあります。「アレグロ・バルバロ」はほんの2分強の作品だけれど、題名通り旋律、色彩ではない、リズムだけで構成される”野蛮な”いかにも彼らしい作品。どれも(おそらくは)民謡から採譜され、硬派な味付けを施されたBartokワールドであります。妙に懐かしい。シャンドールはおそらくはもう存命ではないでしょう。(1912〜?)シフとかコチシュ世代に比べると、やや色気に欠けるが盤石のテクニックで聴かせて下さいます。CDは現役ではないらしく、NMLにて拝聴可能。

DG 435162-2 オークションにて13枚組5,500円ほど(総経費込)で入手/2008年12月Mahler 交響曲第2番ハ短調「復活」〜レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィル/ウエストミンスター合唱団/ヘンドリックス(s)/ルートヴィヒ(con)(1987年)・・・昨夜来、断続的にボリューム小さく聴いているんだけれど、絶好調時のニューヨーク・フィルの底力を見る思い。音質優秀、おそらくは壮絶なる演奏であろうテンシュテットの1981年(コシのない)録音に悩まされた記憶があります。こちらゆったりとしたテンポ、細部描き込み+思い入れの入念なこと、テンポの自在の揺らせ方(基本、遅い)、タメ、疾走、粘着質な貫禄がまったく決まっていて、イヤらしいくらい説得力がある・・・ウエストミンスター合唱団は・・・息詰まるような静寂と集中力、声楽ソロとの絡み合いも完璧。〜とは最初に聴いたときの感想であります。

いやほんま、その通り。久々、最高の”復活”に再会した感じ。

●Mahler 交響曲第6番イ短調〜ジョン・バルビローリ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1967年)・・・今朝著名なる第9番にちょっぴり文句付けたが、こちらはバルビローリの個性が前面に全面展開しているという意味で、ほとんど最高!ゆったりとした遅いテンポ、細部迄彼の体臭、節回しがしつこく徹底され、とことん粘着質に歌って下さって痺れます。これがベルリン・フィルだったらどうなるのか?(1966年ライヴは未聴)もっとオーケストラの色が出ちゃうんじゃないのか。「アンダンテ・モデラート」を第2楽章に持ってきたのは、異様な緊張感を孕んだ第1楽章「アレグロ」との甘美な対比(おそらくは全曲中白眉の陶酔)を見せつけるためでしょう。第3楽章に配置された「スケルツォ」はイヤらしいほど遅いテンポでダメ押し、終楽章の絶望的な迫力にぐうの音も出ない・・・音質も極上だけれど、オーケストラの個性はあくまで清涼で明るいもの。

おそらくはこの作品のヴェリ・ベスト。

●Bruckner 交響曲第5番 変ロ長調〜ギュンター・ヴァント/ケルン放送交響楽団(1974年)・・・LP時代、そしてCD時代を迎えても価格問題にて入手できなったが、これを聴いていれば、Brucknerに対する基本的考えを変えていたかも。峻厳に引き締まってスリムな響き、思わせぶりな身振り、意味のない間など存在しないストレート系であって、テンポは速め。件(くだん)のシンプルな旋律を受け持つ各パートは入魂のリキが入っていて、微妙な、ほんのちょっとした節回し、ニュアンスを基本として全体をがっちり組み立てて説得力が深い。決然としてカッコよい!これは出来る限りボリュームを上げて聴いたほうがよろしいだろうが、早朝、ボリューム低くして確認しても、そう音楽のテンションが下がったり、細部が曖昧とは感じません・・・

(2010年11月1日)


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written by wabisuke hayashi