3月は別れと出会いの季節
この月は(めでたくもない)誕生日、ワタシは22歳で大学を(辛くも)卒業し、即就職したんです。当時はお仕事さえ選ばなければ、何とかなった時代。未だ、重厚長大企業が幅を利かせて、銀行やら証券会社がもてはやされていた時代でした。ぼんやり30年以上経過してしまって、一人息子はとっくに就職しちゃうし、ワタシは趣味でお仕事しているといった自覚の毎日。”趣味的に”じゃないっすよ、”趣味”、だからこそ熱心に、楽しく一生懸命やるんです。時代はエエ感じに”お仕事合理化”が大切になって、ド残業パフォーマンスNGな時代となりました。ワタシは仕事手順の見直しやら、仕分け、ほんまに大切なことの見極め、優先順位を付けるのが得意なんです。ここ半年、本業の合間にそんな作業(ばかり)やっております。
モットーは、”お仕事ラクするためなら、徹夜も辞さず!”〜そんなこんなで気付くと、職場フロア最年長になっちまいました。現在の担当を丸二年続けて、胃袋に穴開きそうな苦労もしたけど、すっかり取引先とは馴染んで、逆に「これではいかん!」と非公式酒席にて現状お仕事から勝手に引退宣言をしたのは2ヶ月前、ところが最若年幹部である上司(昔馴染み)が赴任して、さっさと続投を宣言・・・ま、ヴェテランにお仕事の場を与えて下さることには心より感謝いたしましょう。問題野郎は(オジさんも)異動し(というか放出され)ました。基本、明るい職場なんですよ。でも、最近ちょっぴり若手育成問題でぎくしゃくしている(説教が過ぎる)・・・のはお隣のチーム。我がほうにはヴェテランしか配属されない。一人メンバーチェンジしました。女性です。若い頃からの顔馴染み。(後述;人事発表ギリギリで変更となりました/45歳中年男性独身連盟より派遣有)
で、いつの間にやら”最年長”でしょ。過去の経過を一番知っているし、職場内合理化ごりごりしてきた立場、そのせいか最近若手が相談しに来るようになりました。ワタシ、説教はしないんです。哲学やら昔の経験を語らない、教えられるのは実務作業手順のみ、それを学んで身につけるのは本人の意欲だ、と考えております。取引先も大幅人事異動しちゃって、あちらの幹部から「なんとかしてね」とお願いされました。ありがたいサラリーマンなんでしょ、これは。職場内の”立ち位置”は変化し続けます。
問題は・・・左膝が痛いんですよね、かなり。もう治らんのか。相変わらず月一回くらい風邪ひいちゃうし。嗚呼、情けない。出張がツラくなってくる今日この頃であります。年々弱っているが、なんとかちゃんと通勤はしております。物欲はどんどん枯れていって、欲しいものはほとんどなにもない。音楽さえあれば・・・ってカッコ付け過ぎ。CDも滅多に買わなくなって、先月小澤征爾のMahler 全集オークション落札が一番の贅沢でした。そういえば読書も遅々として進まない。
職場には若い者二人赴任します。もうほとんど息子世代ばかり。ヴェテランはほんの一部の人はエラく(=偉くに非ず)なるか、どこかに出されてしまう。メンバーチェンジし、派遣さんも人数減で配置替え、職場の雰囲気もどんどん変わっていく・・・今年はいよいよボーナスもごっそり減るんだろうな。でも、お仕事不如意なサラリーマンご同輩に比べてなんて幸せなんだ!と自覚いたしましょう。
要らぬ、お仕事愚痴でした。許されよ。
● 恒例、先月のヴェリ・ベスト。
●Debussy 前奏曲集第1巻/第2巻〜殷 承宗(イン・シェンゾン)(p)・・・知名度高くない実力者を捜すのも趣味のひとつ。それとも現役に疎いだけか。CDを探すのは困難だけれど、NMLだったら容易に聴くこと可能。ほんわか雰囲気で聴かせるのではなく、盤石な安定感と明快な技術、重心低く落ち着いた味わい。曖昧さを否定するがニュアンスにも欠けない、立派な演奏であります。この作品はどうしてもミケランジェリによる漆黒の艶、官能が念頭にあるんだけれど、このわかりやすさは出色であります。ここ数日、数回繰り返して聴いておりました。音質極上。
●Mahler 交響曲第6番イ短調〜クリストフ・エッシェンバッハ/フィラデルフィア管弦楽団(2005年ライヴ)・・・現役をもっと、ちゃんと聴きましょう、といった自らの宿題の一環であります。指揮者・エッシェンバッハとしては実際上ほとんどまともに聴いたことはない?ヒューストン交響楽団とのBrahms とか、あとは20年ほど前のプラハ交響楽団との「ミサ・ソレムニス」とかBruckner(FM放送にて)とか・・・その程度。正直、期待していなかったし、好感も持てなかったけれど・・・まず、音質がよろしい。オーケストラが明るく、深く、そして上手い。ライヴとは俄に信じられぬアンサンブルは緻密そのもの。テンポ設定や、全体構築が安定してオーソドックス、全体にこの作品にしては明るさ(作品の趣旨からは違和感?)が印象付けられるが、スケール+細部描き込みが盤石であって、どこを聴いても充実して立派な演奏です。ちょっと見直しました。
もう一作品、ピアノ四重奏曲イ短調 〜デイヴィッド・キム(v)/チューン・ジン・チャン(va)/エフェ・バルタチギル(vc)/クリストフ・エッシェンバッハ(p)(2006年)・・・こちらが主眼でして、CD買い損ね、聴き損ね10年以上、とうとう美しい旋律を確認いたしました。わずか13分程、思いっきり甘美な世界が繰り広げられ、一目で惚れた!作品であります。
●Mozart ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488〜マリア・ユーディナ(p)/アレクサンドル・ガウク/モスクワ放送交響楽団(1943年)・・・ヴォルコフ「ショスタコーヴィチの証言」に登場するスターリンの逸話(彼女のファンであった!)を思い出させる音源であります。音質やや怪しいが時代相応、両端楽章は快速、緊張感漂う研ぎ澄まされたタッチで突き進みます。第2楽章「アダージョ」はもの凄い濃厚(深刻)なる浪漫(遅いテンポ)の対比であって、個性的なこと限りなし。Mozart の愉悦、ギャラントなスタイル〜とは無縁の世界だけれど、こんな風情も一興かと思います。
●Bruckner 交響曲第9番ニ短調〜ギュンター・ヴァント/ベルリン・ドイツ交響楽団(ベルリン・コンツェルト・ハウス1993年ライヴ)・・・なんという神々しさ。こんな演奏を聴いてしまって、カラヤン/ベルリン・フィルの駅売海賊盤(旧録音)を即処分したんだっけ。峻厳で深遠、重厚と洗練、アンサンブルの集中と透明な爆発・・・繰り返すが、盤石の偉容を誇る構築物となって聴き手の魂を揺さぶります。これこそ独逸か!後半戦やや音の濁りがあったのは、貧しいオーディオ環境のせいでしょう。これ以上の賛辞はみつからない・・・ ●Bach ブランデンブルク協奏曲全曲〜リナルド・アレッサンドリーニ/コンチェルト・イタリアーノ(2005年)・・・先日、古楽器演奏の先駆としてホーレンシュタインの立派な演奏を拝聴したが、時代は変わりました。新しいものがすべて正しい、より良くなるとの思想は持ち合わせていないが、数々聴いてきた名曲中、これぞヴェリ・ベスト。軽快軽妙なリズム、研ぎ澄まされたアンサンブル、古楽器の熟達した技量〜こう書いてしまうと、んなものいくらでもありまっせ!との反論が来そうだけれど、まるで鼻歌でも歌うようにスムース、春風のように爽やかでデリケート、そよそよ涼やかに音楽は進むんです。ヴァイオリンであれ、トランペットであれ、フルートであれ、そしてチェンバロ然り、奇を衒うこと皆無、融通無碍、音楽は自然な呼吸に至っていて、にこやかに、楽しげに美しい旋律を紡いで幸せ。エキセントリックなリキみ皆無。
ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調の第2楽章はたった二つの弦の和音なんだけど、第1楽章のチェンバロ通奏低音が継続して、そのまま当たり前のようにつながる衝撃!第2番ヘ長調のトランペットは音量小さく、コントロール自在でアンサンブルに溶け込んで違和感がない。各曲、緩叙楽章の愁いを含んだ寂しげな表情だって絶品!ちょっと、他の演奏は(しばらく)聴けまへん・・・
(2010年3月1日)
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