物欲
自分は似非グルメです。商売柄(少々の知識)もあって、いろいろエラソーなこと、酔った勢いで知ったかぶり浅薄なる薀蓄云々しているけど、ほとんど法螺(ホラ)咄の世界。ただの喰いしん坊、だから不健康に太るばかり。ほんまの料理人は、奥さんの料理に絶対文句付けんそうですよ。たまたま現在のお仕事主戦場が金沢方面、週一回ほどイヤでも出張するし、泊まりだとご当地の旨いモン喰うのは愉しみです。地元大阪、尼崎でも迂闊な店にはいけんですよ。すっかり贅沢になりました。うんと高い店には行かないけどね。身分相応のつもり。
何喰っても同じ、喰いもんに一切頓着なし、というのもツマラぬ人生とは思うけれど、基本健康で、ハラ減らせばなんでも旨いもんでしょう。若くて貧しかった学生時代、そんな記憶ノーミソの奥深く、残っております。そうか、そういえば学生時代某ボランティアみたいなことをして(そのまま一生のお仕事になっちまった)、大先輩がグルメで地方出張のお土産(海産物など)が旨かったなぁ、あれが現在の”喰いしん坊”状態に至る原点だったのかも。自分は北海道出身、父親は素敵な海辺のド田舎の出であって、こどもの頃に新鮮な食材経験の刷り込みがあったのかも知れません。ウニとかアワビとか自分で採って、その場で喰うとか。これ以上の鮮度はあり得ぬでしょ。
職場フロア最年長に至って数年、おそらくは周りからケムたがられていることでしょう。お仕事実務処理では若い者に(速度精度深み)負けぬつもりだけれど、体力が・・・日曜出勤肉体系労働続けると、数日後に抵抗力減退〜風邪に倒れるパターン。朝早く出勤するのは、夕方には疲れ果て早々に帰宅せざるを得ないため。もとより長尻(ながっちり)だらだら酒呑む、といった性癖に非ず(喰いモンを愉しむのが主体)、夜のお付き合いも金だけ置いて先に帰るパターン、最後迄お付き合いなんかできまへんで。
毎朝(なんちゃって)ウォーキング+ストレッチ継続していて、それはそれで成果はあるのでしょう。ストイックなダイエットは精神的な影響が心配で、とくに狙っておりません・・・というは言い訳、体重はできれば減らしたいもの。まず健康がすべての基本、それあっての物欲でしょ。新しいパソコンとかOS(8)はさほど欲しいとは思わず、タブレットPCだって生活パターンを冷静に考えれば必要ない、というか、使う機会はないんじゃないか。なんせ通勤時、電車に乗っているのは実質20分くらいですもの。出張時には(望んでいないが)業務用パソコン(がちがちに制限掛かって私用には使えぬもの)持参必須ですし。
CDも手許にたっぷりあるし、ネット経由いろいろ、けっこう自在に音楽は聴けるようになりました。もう滅多に購入することもなくて、時々思い立ったように処分するほうが主体となりました。できれば全部在庫CD処分して、NML一本に・・・という話題は「音楽日誌」にて幾度繰り返した通り。ほか、少々の書籍があればOK、服飾にはほとんど興味なし、女房殿に任せっきり。物欲はどんどん枯れていって、そんな自分もオモロい・・・最近は週末のご近所(やや)大型銭湯が愉しみです。
Bach フーガの技法ニ短調 BWV1080(ピアノ版/クリス・ブリーマー(p))をぼんやり聴きつつ、そんなことを考えておりました。リンク先は数曲だけれど、なぜか自主CDには全曲収録してあって、以前は全部ダウンロードできたのかも。
● 先月のヴェリ・ベスト。
●ピアノソナタ第16番ロ長調K.570/幻想曲ハ短調K.475/ピアノソナタ第14番ハ短調K.457/アダージョK.540/ピアノ・ソナタ 第17番ニ短調K.576〜バルト・ファン・オールト(fp)(2000年)・・・最高。古雅、素朴な音色、溌溂としたリズムと細部仕上げの入念なこと。幻想曲ハ短調K.475〜ピアノソナタ第14番ハ短調K.457は劇的な継続が絶品!Mozart はこれとグレン・グールドが自分なり標準、なんていうとヘンタイ・マニアと呼ばれそう。
●R.Strauss ブルレスケ(ロジェストヴェンスキー/ソヴィエット国立交響楽団1961年ライヴ)/Franck 交響詩「ジン」(コンドラシン/モスクワ青年交響楽団1952年)/Haydn ピアノ協奏曲ニ長調(ツィリューク/ミンスク室内管弦楽団1983年ライヴ)〜スヴャトスラフ・リヒテル(p)拝聴・・・まとまった一枚じゃなくて、あちこち取り出したもの。「ジン」はさすがに音質的に少々厳しいけれど、この人の硬質硬派なタッチはいつ聴いても感銘を受けます。ヤワで繊細、みたいな方向とは違ってとにかく強靱!但しデリカシーに欠けるという訳でもない濃厚、強烈な表現であります。Haydnってどうなのかな?と思っていたけれど、最晩年でも推進力勢いは衰えず、明晰なタッチが快い。
●Beethoven ヴァイオリン協奏曲ニ長調〜ミシャ・エルマン(v)/ジョージ・ショルティ/ロンドン・フィル(1955年)・・・LP時代最晩年のステレオ録音ばかり聴いていて、誤った(へろへろ)印象を得ておりました。こちら英DECCAモノラル録音、かなり鮮明な音質、なにより豊かな歌心、濃密な音色、濃厚な節回しに溢れて、馴染みのBeeやん名曲も思いっきり新鮮です。ショルティの伴奏も意外なほどオーソドックス、ソロを引き立てて前面に出ておりません。かつてギドン・クレーメルのモダーンなリズム感に衝撃を受けた(これが現在の主流に)が、こちら昔風情、久々に満足できる演奏に出会った手応え充分。既にパブリック・ドメインに至って、その時期の音源はまとめてネット拝聴可能です。
●Mussorgsky 歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」(抜粋)〜トーマス・シッパーズ/コロムビア交響楽団/合唱団/ジョージ・ロンドン(b)(テナー・ソプラノ情報なし)(1961年ニューヨーク)・・・鮮明な音質、臨場感、オーケストラも合唱も明るい響き、素晴らしく上手い。当時、亜米利加では契約とかユニオン問題が喧(かまびす)しかったから、例えばメトロポリタンのメンバーとかフリーランスのメンバー寄せ集めかも知れません。ジョージ・ロンドン(1920-1985)は亜米利加が生んだ不世出のバス、本場欧州でも露西亜でも活躍した由。もの凄く高貴かつ立派な貫禄存在感に溢れて、昂揚した雰囲気たっぷり、表情の陰影豊か。もともとこの作品は大好き、馴染みの壮麗濃厚なる(少々クサい)エキゾチック旋律〜とは5年ほど前の自らの感想であります。
●Smetana 連作交響詩集「我が祖国」〜カレル・アンチェル/ボストン交響楽団・・・1960年代のライヴ放送録音(後述1969年ライヴでした)。これが臨場感溢れて瑞々しい極上の会場残響+時々雷鳴が響くという驚くべき記録でした。演奏は文句なし、ボストン交響楽団の深々と練り上げられたサウンドを基本に、よく歌って、祖国への情熱をしっかり歌い上げて感動もの、聴衆のブラヴォーにも納得であります。「高い城」「モルダウ」ばかり名曲と称揚されるけれど、のこり4曲も間違いなく、文句なく名曲!と体験させて下さいました。
(2012年11月1日)
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