東福寺

68歳体重増と物欲


 ぼちぼち花粉も飛んで春は近いけれど、日本海側や北国では大雪に被害が出て2月は寒く、乾いた日々が続きました。おコメと野菜の高騰が続き、前者に関しては一攫千金を狙った買い占めがあったらしくて、それはちょうどコロナ時期のマスクみたいな感じ。但し、天産物なのでそう簡単に状況は落ち着かないことでしょう。下上水道の老朽化からの事故が相次いで、農業食料自給率もそうだけれど問題先送り、見て見ぬふりに放置するとこんなことになるもの、既にお仕事引退隠棲している自分にも感慨や不安は感じるものです。

 トランプさんの有言実行は世界中あちこち混乱と不安を呼んで、自分の身近では95歳になった婆さんが徐々に弱って独り暮らしは難しくなってきました。女房殿の訪問や泊まっての介護頻度が増えたけれど、自分は特別なにもしていなくて、せいぜい持ち帰った洗濯物を処理するくらい。女房が不在だとそれなりの料理を仕立てる機会も減って粗食に至っております。

 日々日常身体鍛錬のリズムは変わらず、幸い風邪をひいて寝込んだり、体調崩したり、そんなこともなく2月を乗り切りました。1月からの累計で29回トレーニングルームにゆる筋トレ継続中、居酒屋には4回通って爺友とか女房殿、息子と呑んだりして気分転換や散財したもの。あとは音楽を聴いて、無為無策他な〜んもしておりません。体重は2024-2025年と増加継続中。少なくともぎりぎり標準体重を維持したいものです。

 嗚呼、これが欲しい、なにがやりたい!みたいなことは全然ないまま、あと数日で68歳を迎えます。もうほとんど70歳じゃないの、そんな事実に愕然として、微妙に身体中怠く、左膝や左腰が鈍く痛んだり、眼が乾いたり、鼻が詰まったり〜これが華麗なる加齢なのか、なんとか日々鍛えて乗り切りたいものです。自分が衰えていく代わりに二人の孫が元気に成長して、人生順番交代。欲しいのは健康と健全な精神と意欲、それだけ。日々眺めるブログには病を得て入院中だったり、手術をされた方もいらっしゃって、自分は安閑と日常生活を過ごせるのはシアワセなことなのでしょう。体重増の件だって、病を得て思うように体重が増えない人にとっては、贅沢な悩みにみえるかも。

 芸能界の不祥事にはほとんど興味もなく、テレビもあまり見ない。音楽拝聴がほとんど唯一の趣味だけど、既に昨年2024年演奏会場生演奏に出掛ける意欲と元気を失いました。膨大に貯めた音源ファイルも一昨年辺りから整理に入って、残された人生の時間に相応しいバランスに厳選させなくっちゃ〜実家に溢れかえる生活に累積したムダを片付ける、そんな世間様の動画を眺めつつ、それは自分だって同じじゃないか、そんな自戒をしておりました。

 いつもの前月分拝聴音楽の振り返り。

zig-zag ZZT2030501Mozart 交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」/ファゴット協奏曲 変ロ長調K.191(K. 186e)〜ジョス・ファン・インマゼール/アニマ・エテルナ/ジェーン・ガワー(fg)(2001年)・・・写真は作品組み合わせの違うもの。Jos van Immerseel(1945-白耳義)は古楽器演奏に大きな成果を残して、昨年2024年アニマ・エテルナより馘首されたとのこと。37年という時間と高齢に至ってノーミソが硬くなったのか。先日の某大御所ヴェテラン・フリーアナウンサーみたいなものか。これは未だ意欲的な演奏が話題になっていた頃の代表的な録音でした。
仰ぎ見るような威容を誇る「ジュピター」は親密、第1楽章「Allegro vivace」からノンヴィヴラートの弦、素朴な木管、マイルドな金管にいかつい風情はありません。提示部繰り返し有。粗野なティンパニの存在際立って、艶消しの風情に好感を抱きました。(10:39) 第2楽章「Andante cantabile」速めのテンポ、浮き立つようなリズムを感じさせる緩徐楽章。 (8:29) 第3楽章「Menuetto (allegro-trio)」ここも快速テンポ、素っ気ないほどヴィヴィッドなリズム感。(4:01) 第4楽章「Molto allegro」デリケートな「ジュピター音型」は力みのないフィナーレが始まりました。粗野なティンパニのアクセントに、各パートの存在感が浮き立って馴染の旋律は新鮮、繰り返し有。ラストのフーガのホルンもずいぶんとジミな音色、自分の嗜好は古楽器ですよ。(11:29)
ユーモラスに闊達なファゴット協奏曲Jane Gowerは著名な古楽器演奏家とのこと。第1楽章「Allegro」からソロは思いっきりジミな音色、きっと取り扱いの難しい楽器、ちょっぴり自信なさげに素朴な風情もなかなか味わいあるもの。伴奏は軽快軽妙そのもの。(6:50)第2楽章「Andante ma adagio」緩徐楽章の牧歌的なリズム感最高。(6:27)第3楽章「Rondo (tempo di menuetto)」ノンビリとした控えめな風情が趣味わい深い演奏でした。(4:18)

Muza PNCD BOX 0009 A/HLutoslawski ラクリモーサ(ヴィトルド・ルトスワフスキ/ステファニア・ヴォイトヴィチ(s)/シレジア・フィルハーモニー合唱団/ポーランド放送交響楽団)/交響曲第1番(ヴィトルド・ルトスワフスキ/ワルシャワ・フィル/1976-7年)/管弦楽のための協奏曲/弦楽のための葬送音楽(ヴィトルド・ロヴィツキ/ワルシャワ・フィル/1964年)・・・Witold Lutoslawski Centenary Edition(8CD)は2012年発売。おそらく生誕100年を記念してWitold Lutoslawski(1913ー1994波蘭)の主要作品を自演や波蘭の代表的な演奏家によってまとめたものの一枚目。音質極めて良好。録音年を探すのに四苦八苦しつつ、先日ストコフスキーの交響曲第1番が思わぬカッコ良さだったので、こちらも聴いてみました。
Lacrimosa(涙を流す)」はソプラノと合唱がデリケートに嘆く神聖な静謐。(3:29)
交響曲第1番は1948年初演。ピッコロ2/フルート1本というのは三管編成。弦、金管の他、ティンパニ/ドラム/シンバル/シロフォン+ピアノ/ハープが入ります。この作品はすっかりお気に入りになりました。
第1楽章「Allegro giusto」いきなりの管楽器の絶叫から、ヒステリックな切れ味鋭い細かい音型が疾走してド迫力リズム。金管主導の旋律は意外と平易、圧巻のカッコ良さ。オーケストラのアンサンブルは優秀。(5:00)
第2楽章「Poco adagio」ホルンが暗鬱に絶望的な弦がうねうね蠢(うごめ)く緩徐楽章。これはその風情のまま狂気を帯びてパワフルに育ちます。金管の細かい音型が圧巻にカッコよい。(9:21)
第3楽章「Allegretto misterioso」怪しい暗いピチカートのリズムから始まって、これはスケルツォですか?ドデカフォニーらしいけど、聴手(=ワシ)は不安げな雰囲気と突然の絶叫を堪能しただけ。(4:52)
第4楽章「Allegro vivace」これもモウレツにヒステリックな疾走と爆発、金管先頭にキレ味最高。不協和音なんだけど、なんかとってもクリアにカッコよく響きは濁らない。(5:44/拍手有)
後半のWitold Rowicki(1914-1989波蘭)による演奏はPHILPSから出ていたもの。
「管弦楽のための協奏曲」は1954年初演、過去記録を探ると数回いろいろ拝聴して、その硬質にキレのある響きをけっこう堪能しておりました。三管編成に+ティンパニ先頭に9種の打楽器、チェレスタ、ピアノ、ハープ2台。どこがどう協奏曲なのかいまいち理解できていないけれど、新バロック様式なんだそう。音質やオーケストラの響きは前曲よりちょっぴりマイルド。
第1楽章「Intrada: Allegro maestoso」ティンパニの連打に乗って弦が憂鬱に歌って、やがて激しいリズムを刻み続けます。素材は民謡らしく、あちこち懐かしい木管の歌なども出現します。(7:51)
第2楽章「Capriccio notturno e arioso: Vivace」細かくデリケートな弦と木管の静かな疾走するスケルツォ。この辺り、かなりオーケストラの技量が問われそうなところ(後半のピチカートも含めて)ワルシャワ・フィルはみごとなアンサンブルですよ。途中金管がファンファーレみたいな風情に叫んで(ariosoなんだそう)暴力的に響きが濁らぬのがLutosawskiでしょう。(5:51)
第3楽章「Passacaglia, toccata e corale: Andante con moto - Allegro giusto」表題からしていかにもバロック風情、Passacagliaは暗く静かなコントラバスが主題を提示して、やがて静かに目覚めるように変奏され、高揚絶叫して怪しさマシマシ。でも、カッコよいですよ。一転、元気なTaccataが疾走して無調だから明るいんだか、暗いんだか?でも不安な風情にリズムを激しく刻んで徐々に盛り上がります。それは暴力的に響かぬ快走。そしてクライマックスから平和なコラールへ、不協和音だけど妙な高揚感がカッコよいもの。(16:41)
「Musique funebre」は1958年、Bartokの死を悼んで作曲された作品だそう。R.Straussの「メタモルフォーゼン」を思いっきり不協和音に仕上げたような悲痛な音楽でした。(14:02)

DECCARespighi 交響詩「ローマの祭り」/交響詩「ローマの松」(1976年)/Rimsky-Korsakov 組曲「金鶏」(1973年)〜ロリン・マゼール/クリーヴランド管弦楽団・・・こちらクリーヴランド時代(1972-1982音楽監督在任)英DECCA録音。臨場感や分厚い低音に仰け反りました。申し訳ないけど、20年後ピッツバーグ交響楽団との再録音とはオーケストラの技量が桁違い。
「ローマの祭り」は初演1929年(トスカニーニ)三管編成+ティンパニ+11種の打楽器/ハープ/ピアノ/オルガン/マンドリンと大掛かりなもの。「チルチェンセス」ヒステリックな弦から金管のファンファーレがあまりに鮮やか。オルガン先頭に低音や打楽器の威力最高。(4:37)「五十年祭」弦の荘厳な巡礼者たち歩み、木管が神妙に呼応して、「永遠の都・ローマ」への讃歌へ。鐘も鳴ります。色彩の変化が素晴らしいところ。(8:06)「十月祭」は華やかなホルンとトランペットの躍動から始まって(これが狩りの合図ですか?)賑やかなリズムに俗っぽい愛の歌も決まっております。またホルンによる狩りの合図、マンドリン登場はいかにもセレナーデの風情から夕暮れへ(7:39)「主顕祭」狂喜乱舞する金管と打楽器は騒乱状態。手回しオルガンのジンタは祭りや遊園地に必須、物売りの声、酔っぱらいの喧騒は大混乱の熱気のうちに全曲を閉じました。すごい名曲!(5:18)
「ローマの松」の初演は1924年。三管編成+ティンパニ先頭に9種の打楽器/ピアノ/ハープ/チェレスタ/オルガン、更に舞台裏トランペット/ブッキナ/ナイチンゲールの声(テープ)という大編成。輝かしい「ボルゲーゼ荘の松」は切迫感に充たされて充実(2:56)「カタコンバ付近の松」に於けるトランペットの存在感もリアル、情感が迫り上がっていく金管の圧も余裕でした(6:58)「ジャニコロの松」の幻想的な陶酔も文句なし。ここでナイチンゲールが啼きます(6:38)「アッピア街道の松」は古代ローマ軍の進軍。心持ち速めのテンポに、重低音が鳴り響いいて圧巻のクライマックスを迎えます。(4:41)
組曲「金鶏」はオペラからの管弦楽組曲、初演は1908年。二管編成(と、思う/Wikiの書き方が曖昧)10種の打楽器+チェレスタ+ハープというけっこう大掛かりに多彩なもの。Respighiに比べると流石に作品風情はぐっと穏健でした。
幻想的な「序奏とドドン王の眠り」作品の出足から安らぎの旋律が静謐なメルヘン(10:51)
「戦場のドドン王」露西亜民謡風親しみやすい旋律がそっと疾走します(3:37)
「ドドン王とシェマハの女王の踊り」甘くしっとり始まって、ちょっぴりユーモラスに「シェエラザード」を連想させる旋律は徐々にテンポと熱を加えて、オリエンタルな風情に至ります。(6:53)
「婚礼の祝宴とドドン王の哀れな末路と死−終曲」なぜか不穏な始まり、テンポ・アップして華やかに賑やかな風情へ。序奏のテーマもちょっぴり再現され、あっけなく終わりました。(5:50)

DG LPBeethoven 交響曲第7番イ長調/交響曲第8番ヘ長調〜ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィル(1962年)・・・なにを今更な鉄板中の鉄板演奏。あまりに評判になり過ぎて、かつて「アンチ・カラヤン」という言葉も存在、それさえ死語となって「棺を覆いて事定まる」先人の言葉通り、冷静にHerbert von Karajan(1908ー1989墺太利)の遺産を堪能できる時代となりました。幾度聴いているようで、古楽器やデイヴィッド・ジンマンのBeethovenが気に入って以来、ここ数十年聴いていないかも。
「舞踏の聖化」である交響曲第7番イ長調は古典的二管編成+ティンパニ。第1楽章「Poco sostenuto - Vivace」から速めのテンポに重量級のサウンドにテンション高く、ベルリン・フィルのサウンドは艷やかに弦も管も磨き上げられて颯爽とスタイリッシュ、自分が若い頃はこれがどうにもハナに付いて仕方がなかった、そんな記憶も雲散霧消。(提示部繰り返しなし/11:27)第2楽章「Allegretto」初めて聴いたときからこの変奏曲は好きやったなぁ。ここも急ぎ足に速めのテンポ、颯爽としてカッコよろしく弦も管もさわさわと極上の洗練。(8:02)第3楽章「Presto, assai meno presto」スケール巨大なる重量級スウィングのメヌエットはティンパニが圧巻の存在感。このリズム感は先進的な作品と感じます。(7:48)第4楽章「Allegro con brio」ここも重いのに速めのテンポに、リズムの勢いがモウレツな追い込み。ホルンの潰れた音色最高、大見得を切るようなタメも決まって、テンションは最高潮。ベルリン・フィルの圧倒的パワー威力に最初っから最期迄ぐうの音も出ない。ちょっと感覚が麻痺しそう。(6:35)
革新的な趣向が多く取り入れられている交響曲第8番ヘ長調も同じく古典的二管編成+ティンパニ。第1楽章「Allegro vivace e con brio」からオーケストラのパワー全開!まるで重量級の蒸気機関車が疾走するような濃い存在感と勢いたっぷり。(9:22)第2楽章「Allegretto scherzando」意表を付いたシンプルなリズムの刻み。緩徐楽章に非ず、これはスケルツォ?ヴィヴィッドな色気を感じさせます。(3:58)第3楽章「Tempo di menuetto」優雅にまったり落ち着いた表現のメヌエット、Haydn辺りとは随分遠い雄大なる浪漫の世界に至りました。トリオのホルンの深い響きは絶品。(5:59)第4楽章「Allegro vivace」ここも速いテンポに重量級の蒸気機関車疾走して、余裕の馬力に微笑みを感じさせる余力とユーモア。(7:18)

(2025月3月1日)

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written by wabisuke hayashi