
水温み花蕾む弥生へ
2月は驚天動地の結果に至った総選挙があり、寒いけれどほとんど雨は降らず、月末には順調に気温は緩んで梅の花も開きました。年末年始は風邪をひいてしまって、それは幸いインフルエンザやコロナに非ず、2月は日本中インフルエンザB型とやらが大流行、自分はなんとか流行り病には罹患せずに乗り切りました。好不調の波はちょっぴりあったけれど、隔日に市立体育館トレーニングルームに全身ゆる筋トレ+エアロバイク有酸素運動15分合計14回、毎日規則正しい生活に体調を整えました。な〜んもせん、平穏かつ退屈な生活は続きます。
あと一週間ほどで69歳を迎えます。いまのところ毎日ストレッチして、あちこち関節の可動域に問題もありません。70歳の壁は接近して、昔の親しい友人が怪我とか種々軽重病の知らせもぼちぼち・・・なかには亡くなったりする人もありました。今月はたしか定期健診でしたっけ。誕生日迄に運転免許を自主返納いたします。お仕事完全引退してまる4年、いちども運転の機会はありません。クルマなしの暮らしが成り立つ住環境、生活行動に至っております。
趣味は節約、と云うのも虚しいもの。かつては毎朝新聞を熟読、ノン・フィックションの読書も熱心だったけれど、引退と同時に電子書籍化する予定がそのままその習慣は消えました。二時間ドラマも新作はほとんど登場しないし、名優は鬼籍に入って見飽きました。料理は毎日している・・・けれど、平日女房殿が婆さん介護に出掛けているので手抜き連続、工夫や意欲を失っております。かつてはいっぱしの食通を気取っていたけれど、今や激安居酒屋の安酒に充分満足して、見栄を張ること、エエ恰好すること、オシャレとは無縁の枯れた生活に至りました。日本経済の活性化に寄与できそうにありません。
これはちょっとまずいかな?なにか新しいことに挑戦しないとノーミソ前頭連合野が退化しかねない・・・もう、なり掛かっているかも
● 以下、恒例前月振り返り。ぼちぼち音楽に集中できる季節が接近しております。
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Dvora'k 交響曲第9番ホ短調「新世界より」/スケルツォ・カプリッチョ〜ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ/ロンドン・フィル(1979年)・・・チェロの巨人Mstislav Rostropovich(1927-2007阿塞拜疆)による52歳の記録。音質はこの時期のEMIらしいちょいと薄めの響きだけれど、まずまずの音質。これは露西亜風というのか?なんせ激遅テンポ、たっぷりとした間、躊躇いがちのテンポダウン、新世界への憧憬に非ず、たっぷり郷愁とウェットな哀惜に纏綿と歌って濃厚劇的パワフルな表現。いくら名曲でもいささか聴き過ぎて食傷気味に至った名曲中の名曲は、久々新鮮に響きました。徹底した個性の色付けが潔く、こんなオロモい「新世界」はめったに聴けるもんじゃない。ハイティンク〜ショルティ時代のロンドン・フィルも好調でした。これはヴェリ・ベストかも。音質はまずまずかな。
第1楽章「Adagio-allegro Molto」はじっくり腰を据えた始まり、ホルンの一撃も明快、劇的に圧巻パワフルな押し出し、頻繁ななテンポの揺れ、たっぷりとしたタメ、粘着質なほどスケール大きな始まりは表情豊かでした。ふだん気付かない内声部の旋律も浮き上がりました。提示部繰り返しも嬉しいもの。(13:52)
第2楽章「Largo」は誰でも知っている懐かしい「家路」のメロディ。これもとことん纏綿に歌うイングリッシュ・ホルンは激遅にじっくり、寄せては返すいや増す郷愁の念。弱音の詠嘆に緊張感は継続します。哀愁の中間部も粛々と急がぬ寂寥が続いきました。(15:07)
第3楽章「Scherzo (Molto Vivace)」ここは賑やかに大柄なスケルツォ。テンポは通常、アクセントは明快に、悠々とした推進力、ロンドン・フィルの金管が炸裂してスケールと緊張感は充分。ここも馴染み薄い内声部の旋律があちこち出現。ユーモラスな部分の途中対比も効果的でした。(12:36)
第4楽章「Allegro Con Fuoco」大柄な決然とした第1主題は噛み締めるように雄弁な始まり、ここもテンポはさほどに遅くはない。ホルン先頭に明るい金管のアクセントはヴィヴィッドにパワフル、圧巻の推進力に熱量は高まります。哀愁の「新大陸に血のように赤い夕日が沈む」場面はしっとり、やがて元気いっぱいのフィナーレは明朗に、たっぷりテンポを動かして、タメにタメて詠嘆の絶叫に全曲を閉じました。(12:36)
「Scherzo a capriccio」は剽軽なホルンが自在に活躍して、民族的な変拍子が躍動して、懐かしくもヴィヴィッドな名曲。(13:38)■
Mussorgsky/Henry Wood編 組曲「展覧会の絵 」〜フランソワ・グザヴィエ=ロト/BBCウェールズナショナル管弦楽団(2010年ライヴ)・・・著名なRavel編曲は1922年、それに先んずること1915年Henry Wood(1869-1944英国)編曲が登場しております。これはモウレツにオモロいライヴ。馴染みの泥臭い旋律横溢、華やかな作品に興奮いたしました。
冒頭の「Promenade」は複数の金管楽器のユニゾン、2回目以降は省略されているのは残念。(1:29)
「Gnomus」はティンパニも入って怒涛の怪奇な風情。(2:52)「Old Castle」は舞台裏の切ないユーフォニウムが旋律を奏でて寂しさ増し増し。(3:11)「Tuileries」はヴァイオリン・ソロが軽快。(1:05)
「Bydlo」は堂々たる打楽器のリズムが重厚、いかにも重労働に重苦しい牛車が表現されております。(3:52)「Ballet of the Chickens in their Shells」ここの木管の可憐さ軽快さはRavelの魅力に負けぬところ。(1:15)
「Samuel Goldenberg and Schmuyle」は大仰な対比と打楽器の衝撃、木管のハデな装飾、Samuel Goldenbergの威圧はなかなかの迫力。(1:56)「The Market-Place at Limoges」の喧騒はRavelを上回って、ホルンのオモロさに疾走しました。(1:06)
「Catacombae」は不気味なサスペンス風大仰なスケール。(「Cum mortuis in lingua mortua」と続けて4:10)
「Baba-Yaga」の激しさ、ヒステリックなサウンドの効果、打楽器のしつこい乱入、金管の絶叫はRavelを凌駕する泥臭さ。(3:21)9つの大小の銅鑼が立体的にガムラン風に響き合って「The Great Gate at Kiev」へ(移調?)。大仰な弦、管が精一杯鳴り響いて、ラストは鐘が打ち鳴らされ、讃美歌風オルガンまで加わって壮大なクライマックスに幕を閉じました。(4:00/熱狂的な拍手有)■
Sibelius アンダンテ・フェスティーヴォ/交響曲第2番ニ長調〜村川千秋/山形交響楽団(2024年ライヴ)・・・村川千秋さん(1933-2025日本)は山形県の出身、1972年東北初のプロオーケストラの創設し、幾多の経営困難を乗り越えられた方。これがラスト演奏会、そして録音でしょう。ストコフスキーの弟子筋だったのですね。興味半分、軽い気持ちで聴き始めたけれど・・・もう泣けました。素晴らしくリアルな音質、まったりとした落ち着きは91歳だから当たり前、山形交響楽団のみごとなアンサンブル、鄙びて瑞々しい寂寥の味わいに痺れましたよ。
Andante Festivoは1922年弦楽四重奏として書かれ、1930年ティンパニも加えた弦楽5部合奏に仕上げたそう。作曲者の録音も残された、ムダを省いて一種宗教的に達観した短い作品。ただならぬ神々しさが溢れました。村川さんのラスト晴れ舞台に相応しい作品の輝き。(5:19)
演奏会の演目としては大人気な交響曲第2番ニ長調。1902年初演。日本のSibelius受容は渡邉暁雄さんのご尽力と思うけれど、寒さと雪、厳しくも豊かな自然環境に活動する山形交響楽団にもよく似合う、清涼な名曲を堪能いたしました。末枯(すが)れて、もりもりとした筋肉質なパワーとは無縁な不器用、過不足のないまったりとした流れ。走らず慌てず、諄々と胸に染みるように解脱し切った演奏でした。ちょっと贔屓目かも知れんけど、これはこれでヴェリ・ベストを争う滋味深い完成度。
第1楽章「Allegretto」山奥の大自然より冷たい清水が湧き出るような、田園風情に牧歌的、粛々とした始まり。弦は楚々としてクール、木管も金管抑制が効いて厚みもあります。若々しいエネルギーや熱とは無縁、息を潜めるようにムリのない歩みに旋律は歌って、北欧の清涼な旋律がしみじみ美しい。(9:32)
第2楽章「Tempo andante, ma rubato」じっくりとした足取りに重苦しいウェットな風情は、東北地方の厳しい冬と訥弁の訛りをを連想させました。(13:24)
第3楽章「Vivacissimo」渾身の入魂に疾走するスケルツォ、懐かしい暖かいトリオとの対比。流麗器用なオーケストラではないけれど、ライヴでここまでの集中力と詠嘆の節回しに感極まりました。(5:56)
第4楽章「Finale: Allegro moderato」すべてを達観して、パワーで押し切らぬ味わい深い説得力。弦も金管もジミだけれど精一杯の奮闘、それは作品風情に似合って指揮者と、作品へのアツい共感に溢れて幽玄かつ誠実、精神が浄化されるように感極まりました。(9:32/大歓声と拍手およそ1分)■
Mahler 交響曲第4番ト長調〜ベルナルト・ハイティンク/バイエルン放送交響楽団/ユリアーネ・バンゼ(s)(2005年ライヴ)・・・最近ちょっとご無沙汰だけれど、Bernard Haitink(1929-2021阿蘭陀)のMahler音源はそれなりに聴いてきたつもり。ところがバイエルン放送交響楽団との一連のライヴ録音は眼中から抜け落ちておりました。76歳の記録はこの作品4種目?若い頃からオモロくないほどムリのないオーソドックスなスタイルのまま、味わい深い円熟をじょじょに進んで、どれも外れがない。南独逸の温かみと厚み、痺れるような渋い重心の低いサウンドを活かして、夢見るような穏健な旋律を堪能できました。残響豊かにしっとりとした音質も極上。ここ最近大仰なMahlerは敬遠気味、全曲中もっとも小ぶりに優しい作品だったら、耳にも心臓にも優しい。
第1楽章「Bedachtig, nicht eilen(中庸の速さで、速すぎずに)」夢の中でサンタさんが接近するような鈴とフルートから始まって、穏健平和なシアワセの旋律が歌います。朗々とした節回しにも過不足のない抑制が効いてしみじみ、滋味深いバイエルン放送交響楽団のサウンドはあわてず、落ち着いて静謐。上手いオーケストラですね。(17:22)
第2楽章「In gemachlicher Bewegung, ohne Hast(落ち着いたテンポで、慌ただしくなく)」冒頭ホルン、特殊調弦のヴァイオリン・ソロは怪しくも美しく(「友ハイン(死神)は演奏する」)デリケートに始まって、ちょっぴり不安げに懐かしいスケルツォ。落ち着いて明晰な3/8拍子のリズムはスムーズ、しみじみ優雅に安寧でした。(9:05)
第3楽章「Ruhevoll, poco adagio(静かに、少しゆるやかに)」もっとも長く、粛々延々とメルヘンな旋律が変奏される全曲の白眉。テンポや表情、強弱の変化は落ち着いてムリなく流れて静謐、痺れるような弦や深みのあるホルンは最高でした。ラスト満を持してのクライマックスの大爆発!〜そして浄化され天に登るような収束から・・・そのまま途切れず
第4楽章「Sehr behaglich(非常に心地よく)」Juliane Banse(1969-独逸)の声はちょっぴり古風に、しっとり抑制された品を感じさせるもの。これはいままで聴いた中でも自分の理想に近いソプラノでした。夢見るように優しい旋律と、ヒステリックな部分が繰り返され、その対比、切り替えにも余裕を感じさせる落ち着きがありました。(9:29)■
Ravel クープランの墓/バレエ「マ・メール・ロワ」/逝ける女王のためのパヴァーヌ〜ルドヴィク・モルロー/OBC バルセロナ交響楽団(2023年)・・・Barcelona Symphony and Catalonia National Orchestraと Ludovic Morlot(1973-仏蘭西)の顔合わせによる趣向を凝らしたRavel作品録音。音質極上、オーケストラも思わぬデリケートなアンサンブルでした。現役の指揮者、新興のオーケストラを確認するのも音楽ファンとして必須の心掛け・・・のつもり。
「クープランの墓」はピアノ作品(1919年)より管絃楽化された時に2曲抜いて、順番も入れ替えておりました。ここではKenneth Hesketh(1968-英国)の編曲2曲を加えて、順番もオリジナル通り演奏しております。例のくるくるとオーボエが歌う「Prelude」が夢見るように始まって、次は「Forlane」の妖しくも軽妙、気怠い付点のリズムと思ったら、息を潜めるような「Fugue」が管楽器の絡み合いに続いて、馴染とは風景が違うのも新鮮。あとは愉快に優雅なな舞曲が続いて、いつもは闊達な「Rigaudon」で締めくくるけれど、ラスト「Toccata」、ちょっぴり不安にゴージャスな勢いがやってまいりました。
Prelude(3:41)Fugue (arr. K. Hesketh)(3:29)Forlane(5:51)Rigaudon(3:20)Menuet(4:47)Toccata (arr. K. Hesketh(4:20)
「マ・メール・ロワ」のピアノ連弾版は1910年初演、一般にそれをそのまま管絃楽化した組曲版の演奏機会が多いけれど、ここではバレエ版(1912年初演)「前奏曲」「紡車(ぼうしゃ)の踊り」複数の「間奏曲」が新たに加えられているそう。美しく静謐、メルヘンな旋律はできるだけたくさん聴きたいものです。淡いサウンドはなかなか雰囲気豊か、ラスト「妖精の園(Le jardin feerique)」の大団円に全曲締め括って満足。
「前奏曲(Prelude)」(3:02)
第1場「紡車の踊りと情景(Danse du rouet et scene)」(2:24)「間奏曲」(1:16)
第2場「眠れる森の美女のパヴァーヌ(Pavane de la belle au bois dormant)」(2:24)「間奏曲」(0:56)
第3場「美女と野獣の対話(Les entretiens de la belle et de la bete)」(4:03)「間奏曲」(0:44)
第4場「親指小僧(Petit Poucet)」(3:05)「間奏曲」(1:35)
第5場「パゴダの女王レドロネット(Laideronette, imperatrice des pagodes)」(3:23)「間奏曲」(1:17)
終曲「妖精の園(Le jardin feerique)」(3:19)
静謐無垢清潔な「Pavane」。このオーケストラはさほどに色気のあるサウンドに非ず、誠実な響きに祈るような風情を堪能いたしました。(6:12)(2026年3月1日)
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