テンニンギク

健康と出費とシアワセ


 俗に云う「光陰矢の如し」。2024年もあっという間に半分過ぎ去って、時の流れは残酷なもの。とくべつになにも、社会的貢献も一切していない、毎日絵に描いたような画一的マンネリ生活を過ごして月末、女房殿は体調不良から二日ほど寝込んでようやく通院、虫垂炎の初期症状であったことがわかりました。幸い開腹手術には至らず、点滴と服薬入院3日にて快復して放免されました。カード決済して入院費用を支払ってきたけれど、それがもったいない!幾度も女房殿は悔しがります。それだけあれば、あれもこれも買えたのに! と。でも、生命と健康はカネに替えられない。

 今どきのお見舞いは病室に入れないことを初めて知って(個室は大丈夫らしい)LINEにて指示された必要物を家庭内探索するのに四苦八苦、女房殿が使うものはふだん関わりないですから。俄独身生活数日、料理は毎日はいつものこと、体育館に鍛えて変わりない生活だけど、独りだとなにもしても自由、実際はほとんどなにもしなくなって、いっそう自堕落な時間を過ごすことになりました。病院まで荷物を運んだら、外食したり呑みにいっても自由なんやけど、そんな意欲も元気も湧きません。健康を前提として、絵に描いたような画一的マンネリ平凡な生活な日々こそがとても貴重なことであると自覚いたしました。遅い梅雨がやってきて、鬱陶しい日々も元気があれば乗り切れるもの。今回の入院費用も含め、健康のための出費は惜しみませんよ、怪しいサプリメントは御免やけど。元気いっぱいに不要不急な遊びに散財したいものです。それこそが人生の潤い。

 ぼちぼち巴里五輪本番が接近して、ECO選手村にはエアコンがない?ことが話題になっておりました。巴里も猛暑との噂、財政に余裕のある国は自前でエアコンを取り付けるのだそう。バレーボール・ネーションズ・リーグは男女とも日本チームの活躍躍進が光って、これからが愉しみです。東京五輪はコロナ真っ最中に無観客は残念、自分がふだん馴染みの種目のみならず、いろいろ追いかけてみたいもの。肌色の異なる青年が日本代表として出場する姿もすっかり馴染みとなって、もちろん全力で応援してあげたい。

 6月はトレーニングルーム鍛錬17回、体調はまずまず維持できて酒は4-5回ほど?体重は高め安定に現状維持、減量には失敗しております。左肩の違和感はそろそろ半年、いまのところ可動域は変わらず、前屈もしっかり柔軟性は維持できているけれど、ストレッチをしっかり継続しましょう。現在不快極まる湿っぽい梅雨真っ最中、このままなんとか夏を乗り切りたいものです。

 恒例の前月分拝聴音楽の振り返りしておきましょう。

DG 2530 049Debussy 牧神の午後への前奏曲(Benno Sachs室内アンサンブル編/ボストン・チェンバー・プレイヤーズ/1978年)/ヴァイオリン・ソナタ ト短調(ジョセフ・シルヴァーステイン(v))/チェロ・ソナタ ニ短調(ジュール・エスキン(vc)/以上マイケル・ティルソン・トーマス (p))/フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ(ドリオット・アンソニー・ドワイヤー(fl)/バートン・ファイン(va)/アン・ホブソン・パイロット(hp))/シランクス(ドリオット・アンソニー・ドワイヤー(fl)/以上1970年)・・・LP時代愛聴していたDebussyの室内楽を集めたものに+「牧神」室内アンサンブル版の録音を加えたもの。この演奏で若い頃Debussyの妖しい官能に充ちた室内楽の魅力に目覚めました。メンバーはボストン交響楽団往年の名手ばかり、Boston Chamber Players(BOSCHAPS)には数多くの録音があって、その代表的録音でしょう。デビューしたばかりのMichael Tilson Thomas(1944-亜米利加/当時は副指揮者かな?)も参加しておりました。簡素にさっぱりとした「牧神」は充分に官能的(10:50)長くコンマスを務めたJoseph Silverstein(在任1962-1982?)によるヴァイオリン・ソナタは気怠く遣る瀬なく気紛れな旋律がそっと囁きます。(5:11-4:18-4:12)Jules Eskin(1931-2016仏蘭西?)はなんと53年間亡くなる直前迄ボストン交響楽団に在任したとのこと。劇的なピアノからチェロが切なく歌うチェロ・ソナタは小味な風情にデリケートそのもの。(453-724)Doriot Anthony Dwyer(1922ー2020亜米利加)もボストン交響楽団の顔みたいな人、首席在任は1952ー1990年。ソナタは空中を浮遊するような幻想風、フルートは気品に充ちたセクシーな音色で魅了します。ほんの短いシランクスには能を連想させる東洋的に怜悧な空気が流れました。(6:42-5:37-4:48/2:44)

FOCD-9744Chopin 24の前奏曲 作品28/Schumann クライスレリアーナ〜伊藤 恵(p)(2014年/北上市文化交流センターさくらホール)・・・ちょっぴり儚いクールに色彩的な響き、室内楽に向いていると感じるFazioli使用。音質はデリケートに明晰なピアノのタッチを捉えて極上、こんなリアルなピアノの録音はめったに経験できません。Bachに敬意を込めてすべて調性の違う24の前奏曲はどれも珠玉、甘く、切なく、そして曖昧さなく明晰に響いて説得力たっぷり。あまり量を聴いていないけれど、次々と登場する旋律に過去最高の感銘をいただきました。(0:43-2:14-1:06-2:02-0:38-2:20-0:45-2:14-1:34-0:32-0:36-1:17-3:22-0:47-5:35-1:16-3:21-0:58-1:25-1:56-1:54-0:44-1:00-2:38)
魂が揺さぶられるような劇的に浪漫が揺れる「クラスレリアーナ」。これはホロヴィッツの妖しくもセクシーな演奏が忘れられません。伊藤さんはやや味わい深い硬質なタッチに生真面目な細部ていねいな描き込み、流麗に非ず名残惜しく表現してやや慎重な重さ、立ち止まるような暗い激情を感じさせる演奏でした。この録音、ピアノの低音がよく響いております。第1曲「Auserst bewegt ニ短調/激しく躍動して」(2:37)第2曲「Sehr innig und nicht zu rasch 変ロ長調/たいへん心をこめて速すぎずに」(8:59)第3曲「Sehr aufgeregt ト短調/激しく駆り立てるように〜いくぶんゆっくりと」(4:58)第4曲「Sehr langsam 変ロ長調/きわめて遅く〜いくぶん動きをもって」(4:22)第5曲「Sehr lebhaft ト短調/非常に生き生きと」(3:20)第6曲「Sehr langsam 変ロ長調/きわめて遅くいくぶん動きをもって」(4:46)第7曲「Sehr rasch ハ短調→変ホ長調/非常に速く〜さらに速く」(2:24)第8曲「Schnell und spielend ト短調/速くそして遊び心をもって」(4:17)

BIS1151Bach ブランデンブルク協奏曲全曲〜鈴木雅明(cem)/バッハ・コレギウム・ジャパン/鈴木秀美(vc)/寺神戸亮(v)/菅きよみ(fl)/島田俊雄(tp)/ダン・ラウリン(リコーダー)(2000年)・・・旧録音。2009年来の再聴。ピッチはa''=392そうとう低い。適性を感じさせるやや速め?中庸に穏健なテンポ、響きは地味に典雅なしっとりサウンド+かっちりと正確なアンサンブル。なんせ名曲中の名曲、小学生以来あまりのお気に入りにずっと人生聴き続けて、新旧モダーン楽器古楽器問わずたいてい感銘間違いないけれど、最近ちょっぴり食傷気味でした。これは最高の古楽器技術、柔らかくも滋味深いサウンドに、松蔭女子大チャペル収録の音質も瑞々しく極上。島田俊雄さんのトランペット*は自作?指穴さえ使わぬ唇のみで音程を出しているとか?そうとうに苦しそう、だけどこれがオリジナルに近いのでしょう。素直にすっきりとして飾りのないフルート、時に装飾音が控えめに入る美しいヴァイオリン、闊達なチェンバロ・ソロ。2008年再録音の確認が必要だけど、この記録は数々の名演奏を凌駕してヴェリベストな手応えでした。
ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調 BWV1046(4:03-3:59-4:17-7:18)/ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調 BWV1047*(5:09-3:32-2:49)/ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調 BWV1048(5:53-1:36-1:08)第2楽章チェンバロとヴァイオリンのカンデツァ?がステキ/ブランデンブルク協奏曲第4番ト長調 BWV1049(6:27-3:48-4:28)/ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調 BWV1050(9:32-5:21-5:06)/(初稿版)第1楽章「Allegro」(7:50)/ブランデンブルク協奏曲第6番 変ロ長調 BWV1051(6:39-5:05-5:12)

PHILIPS 454 073-2 Brahms 弦楽五重奏曲第2番ト長調(1970年) /クラリネット五重奏曲ロ短調(1972年)〜ベルリン・フィル八重奏団のメンバー/ヘルベルト・シュタール(cl)・・・入手したきり、ほとんど聴かぬまま10年ほど経過した音源より。もう二世代前くらいのベルリン・フィルのメンバーによる、しっとりと落ち着いた音質音源でした。。弦楽五重奏のメンバーはKunio Tsuchiya(va)/ Dietrich Gerhard(va)/Alfred Maecek(v)/Ferdinand Mezger(v)/Peter Steiner(vc)。第1楽章「Allegro non troppo, ma con brio」はDvora'kの「アメリカ」を連想させる、思わぬ晴れやかな表情の始まり。気分は高揚して、切ない情感も加わりました。(9:58)第2楽章「Adagio」は物思いに耽るような、ちょっと切なく、後ろ向きの緩徐楽章。(6:12)第3楽章「Un poco allegretto」ここもスケルツォ?とは思えぬ寂しげな情感を湛えております。(5:31)第4楽章「Vivace ma non troppo presto」暗く蠢くような始まりから、やがて快活なフィナーレを迎えました。(4:44)馴染み少ないけど、これは名曲。Brahmsは大きな規模の作品より、室内楽とかピアノ・ソロなどのほうに親しみを覚えます。
クラリネット五重奏はHerbert Stahr(cl)/ Kunio Tsuchiya/Alfred Maecek/Ferdinand Mezger/Peter Steiner。これは鬱蒼と暗く、諦観に充ちてクラリネット作品中屈指の名作。第1楽章「Allegro」鬱蒼と曇った空を見上げるような始まりに、ちょっぴりクールに色彩豊かな音色のクラリネットは寂しげに響いて、やがて情熱は高まります。この人は戦前からのヴェテラン、1970年代に引退するまでベルリン・フィルの次席だったらしい。(11:18)第2楽章「Adagio」ここは屈指の名旋律。夢見るようなときに苦みばしった旋律は「愛の歌」と評されるとはWikiの記述。それを受ける曇ったヴィオリンがまた絶品。そして情熱を高めて叫ぶクラリネットの切ないこと。それもやがて遠い目のように沈静化して、こんな内省的な世界はBrahmsの真骨頂でしょう。(11:10)第3楽章「Andantino〜」晴れやかな落ちいた、シンプルに懐かしい旋律。それを微妙に、次々と変化させていく技はBrahms特有のものでしょう。中間部のPrestoがスケルツォの風情を感じさせます。(4:44)第4楽章「Con mot」は悠々とした変奏曲。この大きさ、情感の高まりはいかにもBrahmsのフィナーレに相応しいもの。(8:46)

Archive POCA-3053Gabrielli 「サクラ・シンフォニア集」(1597)第13番:第7旋法と第8旋法による12声部のカンツォーナ/第3番:第7旋法による8声部のカンツォーナ/第15番:第8旋法による12声部のソナタ/第2番:第7旋法による8声部のカンツォーナ/第6番:8声部のソナタ「ピアノ・エ・フォルテ」/「カンツォーナとソナタ」(1615)第1番:8声部のカンツォーナ/第19番:15声部のカンツォーナ/第4番:6声部のカンツォーナ/第21番:4声部のソナタ/第13番:8声部のソナタ/第7番:7声部のカンツォーナ/第8番:8声部のカンツォーナ〜アンドルー・パロット/ロンドン・サックバット&コルネット・アンサンブル(1978年)・・・ほかのレーベルからAndrew Parrott(1947ー英国)による類似の音源が出ているようだけど、このArchive音源は一番最初の録音、待望の入手。LP時代よりGiovanni Gabrieli(1554or1557ー1612伊太利亜)の金管アンサンブルはお気に入り、例えばシカゴ交響楽団とクリーヴランド管弦楽団による壮麗なモダーン楽器による演奏など楽しんでおりました。若い頃ある日、FMから流れてきたこの演奏に驚愕!なんと素朴粗野な風情にのんびり充たされて、古楽器好きは若い頃からの嗜好でした。サックバットはトロンボーンの昔風、コルネットはルネサンス期に用いられた音孔を持つ金管楽器とのこと、トランペットの源流のひとつでしょうか。いくつも馴染んだ旋律があって、ミュンヒンガーよる弦楽合奏による録音もありましたっけ。荘厳に古風、シンプルにゆっくりとしたリズムが続いて・・・眠くなるほどステキ。(3:03-3:36-4:11-4:04/2:39-4:49-2:44-3:54-2:47-3:28-4:41)

(2024月7月1日)

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written by wabisuke hayashi