ご近所の春2014年

春に


 ご当地の暑さが厳しいのは噂に聞いていて、転居した夏には夫婦揃って体調を崩し、寝込んだものです。ところが冬もキツいんですよねぇ、この寒さ、冷え、尋常に非ず。北側パソコン・オーディオ部屋はホットカーペット+ハロゲンヒーター程度ではにっちもさっちもいかず、大家さんに頼んで二重サッシにしてもらったり、とうとうエアコン(夏冬兼用)大出費して取り付けたものです。華麗なる加齢に”冷え”はいっそうツラいもの。動きも鈍くなって、引き隠り状態になりがち。テレビドラマをぼんやり眺めたり、重いもの含め買い物はたいていネットで用は足りるのも便利過ぎて怠惰な日々。接近する引退への道のり、お仕事オモロない!(贅沢云っている自覚有)鬱々とした冬に心身ともに冷えきっておりましたよ。

 そんなこんなぐずぐず愚痴っても、ぽかぽか暖かな春はちゃんとやってくるのですね。思い起こせばお仕事引退まであと4年、思いがけず新天地に異動転居、住環境、職場環境、取引先との関係も一新、なにより自らも一兵卒として諸実務一から叩き直し!そんな日々に2年間、けっこうもがき苦しんでまいりました。それは試練でありチャンスだったのかも。潮目というか流れというものはあって、ちょうど残り2年の折り返し地点、お仕事にはそれなり馴染んで安定し、春の訪れに気持ちも新たになったような・・・女房殿は新しいお仕事準備に着手して、いろいろ悩みつつも精力的に動き出しております。4月末には先行き白黒はっきり決着付くことでしょう。

 それが上手くいったら、あと2年でご当地より撤退、といった選択もなくなります。老後は博多がエエなぁ、そんな夢見ていたけれど、なかなか想いは叶いまへんな。人生そんなもんや。

 40年に及ぶ付き合いの諸先輩との酒席は年に4-5回ほど、親が亡くなったり、介護真っ最中、本人も鬱病とか緑内障、大腸がんとか病(やまい)自慢な年齢に差し掛かっております。自分は全身倦怠感、睡眠不如意続いていて、ここ最近+花粉症ありつつ睡眠のほうは大丈夫みたい。早朝ミニ・ジョギングを再開しております。

 音楽に対する姿勢はどんどん変わって、出不精極まって引き隠もりだから演奏会に全然行っておりません。CD拝聴とデータ拝聴だったら後者の比率が一気に高まって、自主CDもほとんど作成しなくなりました。NTT回線廃止に伴う周辺機器(無線LANルーターとか)オークションに出したついでに久々CDも数枚処分。もう売れないだろうから図書館に寄付しましょうかね、折を見て。輸入盤はあかんかも知れんけど。溜まり過ぎた自主CDも100枚単位で別途隔離しております(処分思案中)。

 先月のヴェリ・ベスト。声楽ものが意外とマイ・ブーム、長いオペラは集中力続かず全部聴けなかったものも多い。「英雄」はなぜかたくさん聴きました。ウィリアム・スタインバーグ/ピッツバーグ交響楽団のBeethoven 交響曲はyoutubeで全曲聴けることに驚き。時代でっせ。

これはRCAのオリジナル・デザインMahler 交響曲第6番イ短調〜ジェームズ・レヴァイン/ロンドン交響楽団(1977年)・・・RCAが消滅して第2番第8番録音ならず、全集は完成しなったのは残念なボックス、入手したのが5年ほど前2010年10月のこと。若きレヴァイン(34歳)最高!まず極めて鮮明な音質、一般にMahler には優秀録音も多いけれど、これほど快い、爽やかな空間奥行きを感じさせる音も珍しい。それは演奏そのものの印象もあって、この作品少々どろどろと重苦しいところも基底にあるはずなのに、極めて細部明快クリア、響きが濁らない。

ずしん!と低音もたっぷり迫力、なのに鈍重さ皆無、スケール大きく明るく、自然なニュアンスに富んで微妙なテンポの揺れ、テンポは慌てず歌心いっぱい!プレヴィン時代のロンドン交響楽団も柔軟な対応+高度に充実したアンサンブルに相性の良さを感じさせました。フィナーレ「Allegro moderato」は10年以上前、テンシュテット入魂の絶叫に入れ込んだ記憶もあるけれど、もうそんな熱狂大爆発にはついていけない華麗なる加齢、レヴァインは音量を上げ、テンション高くとも涼やかな爽やかさを失わぬ・・・これが求めていたものだ!

CHAN 8956/7Mahler 交響曲第6番イ短調〜レイフ・セーゲルスタム/デンマーク放送交響楽団(1990年)・・・ややゆったり目なテンポ、慌てず全1:27:58。なんとNMLにも出てこない不遇な音源(探し方が悪いのか)たしか全集になってましたよね。たしかこの第6番は最初の録音、極めて見通しのよろしいクリアな音質でした。ここ最近、新しいMahler を聴いて思うことは”オーケストラはどこも上手くなった”、Sibelius が似合いそうなクールな個性を維持しつつ、オーケストラの爽快な鳴りっぷり、各パートの誠実な歌、弦の透明な響き・・・油断すると重苦しく深刻になり過ぎるかも知れぬ作品は細部明晰、清々しく拝聴しました。第2楽章「Scherzo」はかなり自在にテンポを動かしてそこが不自然だとか、各楽章ラスト辺りのアッチェレランド云々な声もあるけれど、アンサンブルの精緻には驚くばかり。熱狂怒涛の最終楽章(ハンマー三度登場)スケール大きく迫力充分でも、威圧感を伴わぬバランス有。エエもん聴きました。

COCQ-84477/8今朝、昨日の流れMahler 交響曲第9番ニ長調〜カレル・アンチェル/チェコ・フィル(1966年)・・・これがここしばらくの「音楽不調」を吹き飛ばすほどの快演!音質かなり良好、現役水準でしょう。CD一枚に収まる78:58テンポはほぼ中庸、粘着質情念系に非ず、基本さっぱりとして淡々、ストレート系表現は瑞々しい情感に溢れます。チェコ・フィルの非洗練系素朴なサウンド、例のヴィヴラートたっぷりなホルンには痺れました(露西亜系ほど暑苦しくエッチでもない)。2001年のディジタル録音とは比べられぬ音質のハズ、こちらのほうが味わい深いサウンドに感じるのは「1968年」(プラハへのソヴィエット軍侵攻)前だからですか?それともアンチェルの表現成果なのか。終楽章「Adagio」の(これも淡々デリケートな)歌に万感胸に迫って浄化されました。世評高い歴代名盤の数々を凌駕してヴェリ・ベストと確信いたしました。

GREAT CONDUCTORS OF THE 20TH CENTURY 7243 5 75962 2 0 2枚組購入価格失念Tchaikovsky 交響曲第5番ホ短調〜ジョージ・セル/ケルン放送交響楽団(1966年)・・・甘美な旋律、憂愁な風情、素敵なホルン・ソロ(第2楽章)Tchaikovskyはけっこうお気に入りとなりました。どちらかと言うとアクの強い、露西亜臭ぷんぷんな演奏が好きだけれど、こちら独墺系かっちりとした交響曲として盤石の構成を狙った立派な演奏です。クリーヴランド管弦楽団は立派なオーケストラに間違いないけれど、オーケストラが替わってもジョージ・セルの峻厳なる集中力に寸分の変化なし。アンサンブルの縦線の合い方、テンション高いリズムのキレ、洗練、圧巻の爆発に聴き手は居住まいを糺し、背筋を伸ばして拝聴するしかない!疲れまっせ、途中中断などありえぬ”正しい”演奏にひたすら打たれました。

Berlin Classics BC 3011-2Bruckner 交響曲第5番変ロ長調〜ハインツ・レーグナー/ベルリン放送交響楽団(旧東)(1983年)・・・ほんまに久々、10年は聴いていなかったかも。LP時代クナッパーツブッシュ(1956年)を聴いていたし、若いころFMで聴いたハイティンク/ウィーン・フィル(1988年)には心底感動して、作品にもハイティンクにも目覚めた記憶有。CD時代に至って20世紀中当時、このレーグナーが一番安かったんです。2001年に亡くなって、既に忘れられた感のある独逸の名匠の快速・アツい情熱演奏を堪能いたしました。

とにかく速い!巨大なる作品が68:11。前のめりの推進力、リズムはノリノリ、オーケストラはテンション高く、金管は鋭く鳴り響いてアンサンブルも優秀。冷たいメカニックじゃなくて、独墺系の深々とした厚みサウンドが基本となります。第2楽章「Adagio, Sehr langsam」(14:41)にスウィングするリズムをしっかり聴き取れるのも驚異的。Brucknerのキモである「スケルツォ」第3楽章「Scherzo: Molto vivace」の爆発にも文句なし。速いが軽量に非ず、個性的アクセントも頻出!重厚長大に縁遠い異形演奏かも知れぬけれど、賞賛すべきカッコ良い個性を再確認いたしました。

UCCD-1260/1Bach マタイ受難曲 BWV244〜リッカルド・シャイー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団/テルツ少年合唱団(ゲルハルト・シュミット=ガーデン)/ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団(ゲオルク・クリストフ・ビラー)/ヨハネス・クム((t)福音史家)/ハンノ・ミュラー=ブラッハマン((b)イエス)/クリスティーナ・ラントシャマー(s)/マリー=クロード・シャピュイ(a)/マクシミリアン・シュミット(t)/トーマス・クヴァストホフ(b)/クラウス・ヘーガー((b)ピラト、ペテロ、ユダ)(2009年ライヴ)・・・すっかり”肉声”の虜となって、歌声の入らない管弦楽に物足りない気がしております。歌声にはしっかり情感を受け取れる〜噂ばかり、おそらくは伊太利亜のカトリックであるリッカルド・シャイーが独逸プロテスタントの総本山で「マタイ」を演る!これもまた一興。メンゲルベルクはしっかり棚中にCD保存して、真摯な経緯を払っているけれど、音質問題、それ以上にあまりの情感過多は聴き手は精神的に重苦しいものです。イメージとしてはあまりに決まりすぎた演歌のこぶしか。快速テンポ、さっぱりとした旋律の歌、冒頭「来たれ、娘たちよ、われとともに嘆け (Kommt, ihr Tochter, helft mir klagen)」(なんとフクザツな重唱!)から長年ノーミソ中に温めていた理想的クリア、わかりやすい世界が繰り広げられCD2枚分に収まるのもありがたい。声楽の洗練極まって合唱の透明な響きに痺れ(ゲルハルト・シュミット=ガーデンって未だ現役なんですね)ソロも前時代的大仰な表情に非ず、節度を以って個性不足ではない。ゲヴァントハウスはほとんど古楽奏法であって、「憐れみ給え、わが神よ」(Erbarme dich/泣ける旋律)にオブリガートするヴァイオリン・ソロにヴィヴラートは少なく、そして充分瑞々しい。

(2015年4月1日/April Fools' Dayに非ず)


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written by wabisuke hayashi