2020年。憧れは断捨離・ミニマリスト
新しい一年の始まり、いろいろあり過ぎた2019年を振り返って、なんやかんや結局 ”Que sera sera(なるようになる)”(映画「知りすぎていた男」1957年は自分の生年)、ことしも佳き一年になることでしょう。
”取れないぶどうは酸っぱい”とは先人の言い伝え、3年ほど前継続雇用となって収入激減、2019年4月にて女房殿もお仕事辞めて老母の待つ大阪往復生活、以来”欲しいもの”はじょじょになくなりました。昨年は北海道の両親が相次いで亡くなり、初孫が生まれ、歯とか膝とかちょっぴり不調はあっても、日々鍛えて健康であることの大切を噛み締めたものです。元気だけでっせ、大切なのは。
”人が亡くなること”は知っているつもりだったけれど、両親を失ってみて身体でその意味を理解しましたよ。つい数日前元気で電話で会話した母は急逝、あわてて札幌に駆け付けたらちょうど納棺に間に合って、兄とともに生命の重さを感じつつ納めました。”人の死”とは即物的なもの、親父のときもそうだったけれど、いつもは要らん口出してくる楽しくおしゃべりだった両親、それが妙に静かに眠っておりました。”化けて出る!”なんてテレビの納涼番組にあるけれど、願わくば復活して思い出話に加わってほしかったところ。
初孫は未だお嫁さんの実家・天草にいるから写真と動画のみ。むこうの爺さんにとっても初孫、佳きおもちゃになっているみたい。ぼちぼち日程調整して宮参りの準備しなくっちゃ。息子のお宮参り晴れ着が出てきました。七五三のもちゃんとありまっせ。きっと高かったと思うけれど、孫に引き継がれて有意義な買い物になりました。引っ越しのたびにいろいろ捨てて、身の回りはかなりスッキリしていても、未だ道半ば。敵は女房殿でっせ。
音楽CDも巨大CDラックとともに3/4ほど処分、拝聴主流は既にデータになっておりました。厳選在庫を日々確認して、やがてそれも全部処分する頃合いを探っております。問われているのは”聴き手の精神(こころ)”のみ、先月年末はマタイ受難曲もクリスマス・オラトリオ、メサイヤもちゃんと聴いておりません。罰当たりに摘み聴き、ちょろ聴きばかり、心入れ替えて2020年は毎日たいせつに、ていねいに集中しましょう。
スポーツクラブに熱心に通うようになったのが5年ほど前、それに筋トレを加えたのが昨年5月より、体重は2-3kg減り、体型はみるみる変わっております。体調も改善著しいもの。華麗なる加齢に負けぬよう、2020年はもっといっそう鍛えることにしましょう。
● 前月(昨年だけど)のヴェリ・ベスト。
●Beethoven 交響曲第9番ニ短調「合唱付き」〜フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管弦楽団/コレギウム・ヴォカーレ/シャペル・ロワイヤル/メラニー・ダイナー(s)/ペトラ・ラング(a)/エンドリック・ヴォトリヒ(t)/ディートリヒ・ヘンシェル(br)(1998年)・・・旧録音。こちらもちろん古楽器演奏。第1楽章「Allegro ma non troppo, un poco maestoso」は宇宙から神々しい未知の物体が飛来する・・・風情、ここの旋律末尾がすとんとさっぱりして、往年の重厚長大演奏に耳慣れれば耐えきれぬ個性でしょう。よく19世紀浪漫の雄弁なる残滓なんて云うけれど、スチール弦が開発されたのは20世紀中盤のはず、管楽器が際立つバランス、鳴らぬ楽器に当然テンポは速め。そしてスッキリとした表現+粗野な音色+各パートのバランスはいつになく新鮮〜古楽器サウンドへの嗜好をしっかり自覚いたしました。13:31-13:19-12:26-23:02、優秀録音、もう20年以上経ったのか。
●Beethoven 交響曲第1番ハ長調/第2番ニ長調〜エマニュエル・クリヴィヌ/ラ・シャンブル・フィル(2009-10年ライヴ)・・・この間、物故した往年の巨匠ばかり聴いていたので現役Emmanuel Krivine(1947ー仏蘭西)による新しい録音を聴きましょう。彼もいつの間にやら72歳になっておりました。現在フランス国立管弦楽団の音楽監督、このオーケストラは自ら設立した古楽器団体だそう。これを聴いてしまうと”耳で聴くな、心で聴け!”と説教されても、鮮度高いライヴ音質に鮮烈な印象間違いなし。21世紀の古楽器演奏技術は精緻を極めて、ヴィヴィッドな躍動はBeeやん青春の作品に相応しい熱気を孕(はら)んでおりました。古楽器特有のザラリと粗野なこくのある響きは魅惑、ライヴとはにわかに信じられぬアンサンブルの完成度と躍動。(第1番8:31-7:04-3:22- 5:40、第2番11:36-9:34-3:42-6:24)
●Mahler 交響曲第1番ニ長調〜エリアフ・インバル/東京都交響楽団(2012年)・・・Eliahu Inbal(1936-以色列)と云えばフランクフルト交響楽団との全集録音が印象的、東京都響と云えば若杉弘さんの全集、あれは音質が情けなかったなぁ(これはほんま)ヴェテラン・インバルさんも日本にて意欲的な再録音を重ねているのですね。一般に年齢を重ね、しかも馴染みの作品には手慣れた安易さとか恣意的な個性がつきまといがち。これは真反対の誠実、どこにもムリのない自然な流れ、静謐清廉な風情漂う素晴らしい演奏でした。
オーケストラの素直な響きは洗練され、日本のオーケストラもここまで!といった感慨深いもの。生真面目な線の細さ、淡い色彩、みたいなものはあるけれど、それはむしろ美点かと。
●Vaughan Williams 交響曲第2番「ロンドン交響曲」(ハレ管弦楽団1967年)/Ireland ロンドン序曲(ロンドン交響楽団1965年)〜ジョン・バルビローリ・・・拝聴中。CD断捨離後の棚中には英国音楽かなり残、John Barbirolli (1899-1970英国)によるVaughan Williams 交響曲全曲録音はなかったはず、1957年に続く再録音でした。日本じゃさっぱりな人気だけど、これは名曲中の名曲第1楽章「Lento-」第4楽章「Andante con moto-」にビッグベンの鐘の音が静かに鳴り響いて(極東名古屋近郊ド・シロウトがマンションの一室、安易に想像するところの)薄曇りどんよりした英国風情・情景を彷彿とさせる落ち着いたテイスト作品。二時間ドラマのテーマにもかつて使われておりました。カッコ良い決然とした旋律も登場して多彩、バルビローリは過去それなりに聴いたなかでも、突出してテンション高く、燃えるような勢いに溢れて絶品でした。
シカゴに於けるマルティノン(クーベリックもそうだけど)、ニューヨーク・フィルに於けるバルビローリ(在任1936ー1943)は不評であったそう。当時の録音を聴いても信じられぬこと、やがて帰国してハレ管弦楽団の音楽監督になってからの活躍は周知の通り。まったりとしてグラマラスなサウンド、旋律をたっぷり歌わせる個性は唯一無二のもの。ハレ管の技量云々の話題をときどき伺うけれど、バルビローリの録音に不満を感じたことはありません。
●Wagner 楽劇「ワルキューレ」〜マレク・ヤノフスキ/シュターツカペレ・ドレスデン/ジークリンデ:ジェシー・ノーマン/ジークムント:ジークフリート・イェルザレム/フンディング:クルト・モル/ヴォータン:テオ・アダム/ブリュンヒルデ:ジャニーヌ・アルトマイヤー/フリッカ:イヴォンヌ・ミントン/ヴァルトラウテ:オルトルン・ヴェンケル/ヘルムヴィーゲ:ルース・ファルコン/オルトリンデ:シェリル・ステューダー/ゲルヒルデ:エーファ=マリア・ブントシュー/シュヴェルトライテ:アンネ・イェヴァン/ジークルーネ:クリステル・ボルヒャース/ロスヴァイゼ:ウタ・プリエフ/グリムゲルデ:キャスリーン・クールマン(1981年)・・・CD4枚分、「リング」全曲中比較的親しみやすい第1幕辺り拝聴中です。ジークムンド(t)とジークリンデ(s)はヴェルズング族の双子、夫のフンディング(b)はジークリンデの夫であり宿敵、二人の対決を避けるためにジークフリートを逃がす・・・という筋が第1幕。独立して演奏会演目とされることもあります。ぼちぼち40年前の初ディジタル録音、ジェシー・ノーマンは先日亡くなったけれど、男声二人はご存命のようです。
こちら今更のオペラ・ド・シロウト、演奏云々は出来ないけれど、豪華配役陣であることはわかりまっせ。管弦楽はジョージ・セルにて主要旋律に馴染んで、刷り込みはジョージ・ショルティか。彼(か)の華やかな管弦楽、臨場感たっぷりのサウンドに耳慣れていると、この演奏は質実ジミに感じたのも20世紀中だったっけ。(とくに管弦楽)現在の耳で再確認すると強靭な歌い手に管弦楽はやや奥まって控えめだけど、痺れるような木目の質感を感じさせる音色、違和感や不足はありませんでした。Marek Janowski(1939-波蘭→独逸)当時42歳、この人は華やかに煽る表現を旨としない人、オペラ畑で育って、やがてコンサート・オーケストラの育成に定評もありました。
(2020年1月1日)
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