わかっちゃいるけど。
CDは売れない。英国の老舗レコード屋倒産とか。時代はデータ、自分もそう、でも彼(か)の形状がなんとも懐かしい。ファイル700mbほどがCD一枚分、LPは1994年ころ諦めたけれど、黒い直径30cmを愛する気持ちは充分わかります。物理的に細い針が円盤の溝をなぞって出てくる音の温かいこと・・・それが微妙なエラーの誤解だとしても。Hard・Offを覗くと昔懐かしい(または憧れた)LPがごっそり、これは愛聴していた世代が亡くなったのでしょう。昔は贅沢品、しかもものを大切にする世代だったから美しいもんですよ。こどもの頃の刷り込みは一生モン、例えば「運命/未完成」って題名からして哲学的、日本人は黒い30cmLPに深い意味を見出したのでしょう。
CDの規格を決める時の参照は「カラヤンの第九」収録だったそう。演奏会だったら途中休憩別にして2時間ほど?こちら”引き隠りオーディオ派”、LPやらCD一枚分が音楽拝聴の基準、これが”データ拝聴”時代に変遷するとあきまへんなぁ。華麗なる加齢による気力体力の衰え+贅沢病、ちょろりと聴いて”こりゃアカン”と思ったら速攻で止めてしまって、集中力が落ちております。どんなヘロ演奏(+悪質音質)でも若い頃に聴いた音楽には好感を懐きますもの。新しい発見というか、新たな旋律もノーミソに刻み込みにくくなって、身につかなくなっております。お仕事継続雇用になって、金はなくても時間だけはたっぷりあるのにね。
若い頃は食欲たっぷりあっても金がないから安いものばかり喰って、やがて年齢を重ねて生活に余裕が出来た頃には、あまり食べられなくなったり、健康上の理由で食事制限されたり、人生って上手くいかぬもの。【♪ KechiKechi Classics ♪】を思いつきで始めたのは、たしか1998年夏、もう20年継続してまっせ。生来の三日坊主性癖なのに、週3ー4回のスポーツクラブは既に丸4年経過、もう半引退だから慌てなくても良いのに、ほぼ職場一番出勤も継続中、毎朝の洗濯+風呂掃除(残り湯を使うついで)女房殿のお仕事が忙しくなってからは毎朝の弁当やら夕食も自分で仕立てるようになりました。意外とマメな性格だったのかな?年齢を重ねると親父(もう94歳)に似てくるのものか。節約は趣味の領域に、ま、美味い喰いもんだけには執着ありますよ。
ことし2019年4月には女房殿はキツいお仕事を辞めて引退する決意、そうなれば”美味いもん執着”なんて贅沢できなくなるんやろなぁ。それなり蓄えがあったとしても”減っていく”のは精神的にキツいもの。1995年大阪より博多に最初の転勤をした時にマンションを処分して以来、あちこち転勤するから不動産を新たに入手する機会を失いました。やがて日本は少子高齢化社会、空き家たくさんの負動産の時代へ。そうだよなぁ、自営業やら地元定着して暮らせる若い人は、今時あまりいないでしょう。都会に暮らして、今更両親(や先祖代々)の田舎に戻れない、老朽化した家屋敷、土地を売ることもできない。なのに新築神話健在なんやな。我が街、ご近所にも次々建って数阡万円がんがん売れてまっせ。ま、お金のある人はおりますから。(自分はこども食堂やらフードバンクにむしろ興味がある)
野澤知恵「老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路」(講談社現代新書)・・・これは凄い一冊。安易に読み進められなくて読了に時間が掛かったのはあながち、知的興味の減退要因ではありません。日本の実態に嘆息していたから。人口が減るから安易に規制緩和して(議員の人気取り)虫食い的に農地に新築、中心部はスポンジ化、ゴミ収集とか上下水道のインフラに税金が掛かって、公共交通機関やら買い物だって成り立たなくなっていく予想。お役所も庶民もハコ物が好き、これだってやがて老朽化しますから。耐震構造甘いもんもたくさんあるでしょう。管理がちゃんとしてない(管理組合が形骸化している。または管理人が積立金持ち逃げしている)中古マンションも困りもの。外壁塗り替えは当たり前、水道管下水管も30年位経てば交換必要でっせ。こんな本読んだら、迂闊に転居先が決められなくなりました。<所有すること>に意味を感じませんよ。リスク多過ぎな時代じゃないっすか。
●先月(昨年)のヴェリ・ベスト。2019年もいつものワン・パターンです。
●Ducas 交響詩「魔法使いの弟子」(1957年)/Mendelssohn 交響曲第4番イ長調「イタリア」(1958年)〜ジョージ・ショルティ/イスラエル・フィル・・・後者はLP時代「イタリア」嫌いを決定付けた演奏、前者はその存在を初めて知りました。後年、整ったアンサンブルしか知らぬ世代である自分は”イスラエル・フィルは弦、管楽器はひどいもの”(という評価)時代の所以をYungさんのサイトで初めて知りました。Georg Solti(1912ー1997)は日本じゃとんと人気がなくて自分も同様のイメージ、ここ数年急速に拝聴機会が増えて、どんなヘボオーケストラでも真摯に、きっちりテンション高く仕上げていく技量に感心しておりました。60年前の少々肌理の粗い音質でも英DECCAは聴きやすい音質、メリハリたっぷり生真面目な「魔法使いの弟子」は作品の諧謔性を浮き立たせてる表現。
「アイネ・ク」と並んで辟易した前のめりに咳いて硬質な「イタリア」は正に記憶通り!ところが幾十年を経ての再聴は、そのテンションの高さ、推進力、オーケストラを引っ張っていく根性というか決意に打たれるばかり。快速テンポでも管の弱さを感じさせぬ統率に感銘をいただきました。ここ最近Mendelssohnもけっこう聴き込んだしね。
●Bruckner 交響曲第9番ニ短調〜ズービン・メータ/ウィーン・フィル(1965年)・・・メータ29歳の記録。当時若手次世代のホープ、その後の変容云々さておき、古豪ウィーン・フィルを率いてスパッとした切れ味、堂々たるスケールと勢い(若々しい!)が素晴らしい。英DECCAの音質も現役。第1楽章「Feierlich, misterioso(荘重に、神秘的に)」寄せては返す遠浅の波に鮮烈な朝日が!みたいなイメージの神秘的な開始、オーケストラの響きにコクがありますよ。とくにBrucknerはホルンでっせ。熱狂的な法華の太鼓=第2楽章「Scherzo. Bewegt, lebhaft - Trio. Schnell(スケルツォ。軽く、快活に - トリオ、急速に)」のテンションとバランス感覚。第3楽章「Adagio. Langsam, feierlich(アダージョ。遅く、荘重に)」金管によるコラールの叫びに胸を打たれ、第2主題以降の静謐なオーケストラ・サウンドの入念な味付け、弦のヴィヴラート、管楽器の深さに打たれます。未完成なのに”完結している”そういつも感じさせる名曲中の名曲。
●Beethoven ピアノ協奏曲第1番ハ長調/第3番ハ短調〜アルトゥール・ルービンシュタイン(p)/エーリヒ・ラインスドルフ/ボストン交響楽団(1965-7年)・・・Beeやんのピアノ協奏曲は長く苦手として、真摯に向き合うようになったのは意外と最近のこと。長命を保ったArthur Rubinsteinは(1887ー1982波蘭)お気に入りのピアニスト、豊満明るいな音色と表現、しっかりとした技巧がそれを支えております。これはステレオ録音で三度完成させた録音の二度目、人気イマイチであったラインスドルフ時代のボストン交響楽団は丹精でしっとりとしたアンサンブル最高っす。音質もまったく現役。躍動する若き日の作品であるハ長調協奏曲(交響曲第1番の前に完成)既に堂々とした風情とピアノの名技性が光る名曲中の名曲、全5作品のうちこれが一番好き。ハ短調協奏曲はいかにもBeeやん!深刻かつガッチリとした構成が日本人好み!Mozartの第24番ハ短調K.491第1楽章とクリソツな第1楽章「 Allegro con brio」神妙な出足、ルービンシュタインは明晰なタッチで余裕の演奏であります。
●Mozart ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216/第5番K.219〜アンネ・ゾフィー・ムター(v)/ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィル(1978年)・・・→こちらが正規盤デザイン、左が1990年頃懐かしい駅売海賊盤です(中古250円の値札有)。ディジタルデータの保存性は紙媒体(数千年保つ)に比べて怪しいけれど、自分の寿命くらいは大丈夫。ちゃんとした盤質、音質ですよ。鋭い耳+超高級オーディオだと違いがわかるんやろな、きっと。正規CDでもなかなか売れんのに、駅売海賊盤はどーしょーもない、手持ち分ちゃんと聴きましょう。Anne-Sophie Mutter(1963ー独逸)14歳たしかデビュー録音、現在でも現役の働き盛りでっせ。ほんのちょっぴりヴィヴラートが神経質っぽいけど、我らがヴォルグガングの若い天衣無縫作品をのびのび気持ちよく演奏して”栴檀は双葉より芳し”。いつもはレガートたっぷりに色気を主張する御大カラヤンも、いつになく抑制してソロを活かしておりました。
●Shostakovich チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 作品107/第2番ト長調 作品126〜マリア・クリーゲル(vc)/アントニー・ヴィト/ポーランド放送交響楽団(1995年)・・・年末も押し迫ってなぜか苦手系Shostakovich連続聴き、第1番はシニカルかつユーモラスな旋律に苦節ン拾年、ようやくその魅力に目覚めましたよ。Maria Kliegel (1952-独逸)は主たる録音がNAXOSだから軽視されているけれど、ロストロポーヴィチの弟子筋、鮮やかスムースな技巧、色気ある音色は師匠譲り、この録音は驚くほどクリアな音質にはっとするほど鮮烈なもの。第2番ト長調は晦渋な出足(第1楽章「Largo」)に苦戦しつつ、第2楽章「Allegretto」(4:29)のソロとオーケストラの無機的な呼応が妙にユーモラス、打楽器や管楽器の対比が新鮮でした。この辺りオーケストラが上手いなと感じます。終楽章、延々と続くホルンのファンファーレ(小太鼓伴奏付)も、続くチェロの長い嘆きの導入として効果的。
苦手系音楽もやがて目覚めるものですね。
●Shotakovich 交響曲第5番ニ短調〜キリル・コンドラシン/モスクワ・フィル(1968年)・・・久々十数年(数十年?)ぶり拝聴。これでっせ、こどもの頃に聴いたのは。社会人になってLP全集を入手、ある日取扱ミスに盤面傷を付けてしまって、それを機会にLPを全面的に諦めた苦い思い出も・・・これが強烈・鮮烈。この時代旧ソヴィエット時代の音質だから期待していなかったけれど、肌理の粗さ、ヒスっぽささておき充分聴ける水準、なにより快速熱狂的なアッチェレランド推進力に圧倒されました。(1)13:38(2)5:18(3)12:10(4)10:50。
Kirill Kondrashin(1914ー1981露西亜)は西側に出て、バイエルン放送交響楽団のシェフになるはずだった人、残念そこで寿命が尽きました。露西亜の人って心臓のせいかなぁ、そんなパターン多いような・・・モスクワ・フィルって笑っちゃうくらい期待通りの脂っこいロシアン・サウンド、強烈な金管最高、でもコンドラシンの表現そのものはメリハリはっきり、西側にも通用する”洗練”表現だったんじゃないか、と思います。他では類を見ないスパッとした爽快さかと。なんせこれが刷り込みですし。
●Shostakovich 交響曲第11番ト短調〜アンドレ・クリュイタンス/フランス国立放送管弦楽団(1958年)・・・Shostakovich辺りの音源在庫点検整理して”音質確認”したもの。世評人気あって録音もたくさん登場するメジャー作曲家中、この人は苦手系極北。 この作品は第2楽章「1月9日」の機関銃炸裂!第4楽章「警鐘」に著名な「ワルシャワ労働歌」が引用されるのも比較的わかりやすい作品でした。近現代、とくに編成規模の大きな作品には音質は必須項目、作曲者監修とかこのステレオ録音は・・・ま、たいしたことはない、時代相応でしょう。
第1楽章「Adagio ”宮殿前広場”」ここがいつもぐずぐずと静謐つかみどころがない、いつになく不安かつ不気味な風情がわかりやすいのはクリュイタンスの技量か、なんとも云えぬ怪しい雰囲気が魅力として感じたのも初めて、もしかして文句垂れつつ幾拾年時に聴いてきてついに目覚めたものか。第2楽章「1月9日」の爆発が抑制気味なのは指揮者の個性らしいもの、ここにも迫力不足を感じませんでした。第3楽章「Adagio”永遠の記憶”」も正直”ワケわからん”ところ、これもいつになく静寂な響きが胸に染みて第4楽章「警鐘」になだれ込みました。
音質確認に冒頭の弱音を少々・・・確認のつもりがラスト迄しっかり拝聴・・・したのもこの作品初かも。Classic音楽には馴染みと訓練と根性が必要なのです。
(2019年1月1日)
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