京都南禅寺にて

夏を乗り切って


 人間は基本、都合のよろしくないことは忘れ、美しい想い出のみノーミソに残るんだそうです。

 子供の頃、学生時代、若い頃、夏休みは愉しかったなぁ、ほんま。体力もあったし、いまほど暑くなかったんじゃないか、元気でしたよ。ここ数年、50歳過ぎてから?夏バテに苦しんで、ま、年中疲れているんだけれど、夏にはとくにガックリ落ち込んでおりました。2年半前、名古屋に転居したら噂の猛暑に打ちのめされた・・・この件、千度「音楽日誌」に書きました。

 7月7回、8月も7回、スポーツクラブに通ってエアロ・バイク+エアロビクス継続いたしました。自分で自分を追い込んで走れる人は良いですよ、なんせこちら根性なし飽き性なんで、自らを鍛える環境に追い込むこと、気分を変えること、他人と共に逃げられない状況に身を置くこと、これがスポーツクラブに通う理由です。そのせいか7-8月とも体調は大崩れせず、なんとか乗り切りました。ぼちぼち秋の空気を感じております。ここ二日、ぐったりしているけれど。

 松本〜上高地、そして京都行き、しっかり、ぜいたくに遊びました。美しい空気、自然、古寺名刹、痺れるような歴史の情景、40年の旧交を暖めた友人との交流。亡くなったことを誰にも知らせなかった潔い、大先輩との別れ(複数の大学の役員を歴任された方なのに、そこにさえ知らせていない)、昔を彷彿させる、抱腹絶倒バカ酒席。若返りましたよ、気分だけは。見た目皆、爺さん婆さんになったけれど(もちろん含ワシ)。

 名古屋方面転居3年目に至って、お仕事も人間関係もスムースになりました。んなことは当たり前のことであって、自分の課題は既に「その先」。お上の方針で65歳雇用が義務付けられて、その内実は各々の企業によっていろいろでっせ。お給料が下がるのは別に気にしていないというか、幸い当座暮らしに困らぬけれど、小さい営業所のお手伝いというのはカンベンしてよ。マネージャーを降りて、諸実務作業は2年で熟練(したつもり)若い者に負けぬお仕事水準(のつもり)でもね。迷惑でっせ、こんな元気の良い、口うるさい(事情通)ロートル「お手伝い」が職場にウロウロしているなんて。

 潔く、狭い範囲から抜け出して、新しい視野を広げなくっちゃ。さて、なにをしましょうかね、このチャンスに。一発、小豆相場でも貼るか(ジョーダン)。なんでもそうだけど、若い人たちの新しい切り口をしっかり勉強しておかなくっちゃ。

 最近、興味を以ってお勉強させていただいているのは「ブロガー」。例えば

 「まだ東京で消耗してるの?」 イケハヤさんって「ブロガーの神様」みたいな人らしい。ワタシも高知大好きですし

 「ヒキコモリズム」 井上さんは草津に転居されたんですね。ナント24歳。

 内容は至極マトモ、あちこちツッコミどころ満載でも、そこがマルくなっちまうとオモロないですよね。旧態とした社会に馴染めない若者に希望の火を灯しているみたいだけど、この人達はアタマ相当良いですよ、スキル高いですよ。バランス感覚もある。こちら【♪ KechiKechi Classics ♪】 は旧態としたウェブサイト、読者解析どころかカウントもほとんど見ていない、もちろん商売とはいっさい無縁なもの。ブログ(webLog=簡易ホームページ)やらツィッター、SNSの類い、スマホには縁のない生活を送っているけれど、若い人達の新しい問題提起は素直に受け止めるべきじゃないのか・・・

 残り1年半で「その先」をしっかり考えましょう。

 先月のヴェリ・ベスト。相変わらず集中録減退、何ヶ月か継続中。

4596392Bartok ヴァイオリン協奏曲第2番/ラプソディ第1/2番〜ギル・シャハム(v)/ピエール・ブーレーズ/シカゴ交響楽団(1998年)・・・ちょっと旧いけど刷り込みはメニューイン/フルトヴェングラー(1953年)かなぁ、なんとかとてつもなく恐ろしく怪しい作品!といったイメージ有。これを完全に覆してイメージ一掃、素晴らしいモダーンな洗練に溢れ、作品の素の魅力を余すところなく、細部までクリアに聴かせます。ソロもオーケストラもスムースな技巧の切れ味、清流のような澄んだサウンドがクール!そのもの。なんとなくBartokって民族的泥臭い旋律、リズム、サウンドみたいに思っていたけれど、それは思い込みだったのですね。

Schubert ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960〜ワルター・クリーン(p)(1971-73年)・・・浪漫派のピアノ曲とか室内楽は一般にお気に入り、この長大深淵静謐な作品は、美しい歌に溢れ、人生の諦念に至って、中年以降の情けないオトコの背中を彷彿とさせました。深い眠りからじょじょに目覚める第1楽章「Molto moderato」、足取り重い苦渋の歩みを連想させる第2楽章「Andante sostenuto」、第3楽章「Scherzo, Allegro vivace con delicatezza」は楽しかった昔の思い出に心躍り、ちょっと心象風景は理解できない第4楽章「Allegro ma non troppo - Presto」の妙な明るさ、解決感・・・ワルター・クリーンはメジャーレーベルに録音は少なかった往年の名手(1928-1991)、このVOX録音は時代相応と言えぬ水準、それでも抑制の効いたていねいな仕上げに満足いたしました。

BRL93667Vivaldi 弦楽のための協奏曲集(1)/ハ長調RV109/ハ短調RV120/ニ長調RV126/ニ短調RV129/シンフォニア ホ長調RV131/ホ短調RV134/ヘ長調RV143/ト長調RV151「アラ・ルスティカ」/ト長調RV151/ト短調RV155〜ベーラ・バンファルヴィ(v)/ブダペスト・ストリング(1991年)・・・知名度さておきこの団体は贔屓にしておりました。数ヶ月前に聴いて、あまり佳き印象を得なかったのがウソのように、モダーン楽器のアンサンブルは端正に響きました。バンファルヴィ(v)のクレジットはあるけれど、ほとんどソロのない弦楽合奏(ラストRV155に登場。相変わらず絶妙なしっとり感有)、”洗練されぬアンサンブル”とはどのような聴き方をしていたのか。その数日前に聴いたサルヴァトーレ・アッカルド(イ・ムジチ)の艶と歌が念頭にあったのかも、こちら質実に生真面目な演奏ぶり、どれも珠玉の短い作品を堪能させて下さいました。

EMI 3846992 17枚組2,356円Bach 半音階的幻想曲とフーガBWV.903(1946年)/トッカータBWV.913/イタリア協奏曲BWV.971(1946年)/インヴェンションとシンフォニアBWV.772〜BWV.801(1948年)〜マルセル・メイエ(p)・・・おお、スタジオ録音集成(17CD)は新装なって値下がりしたのですね。(2010年6月Amazon亜米利加より取り寄せた時は2,356円(税込))Marcelle Meyer(1897-1958)は往年の仏蘭西名女流、2枚組を入手してその柔らかい音色、しっかりとした技巧と粋に感心して(さらに自主CD4枚ほど追加を経)ボックス再入手した記憶も鮮明。おそらくプレイエル、打鍵に曖昧さのない力感に溢れ、しかも夢見るようにふっくらニュアンスに溢れます。馴染みのBach は強面に非ず、やや浪漫な風情、こんなマイルド瑞々しい世界には滅多に出会えない・・・音質は予想を超えて上等なもの。

これはLP時代のデザインBruckner 交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク版)〜ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団(1969年)・・・先月「スラヴ舞曲」のあまりの音質に閉口、状態のよろしい音源データを収集し直し必要か、そんなこともぼちぼち考えておりました。この手持ち音源は幸い極めて良好なもの、最晩年の引き締まったサウンドを存分に堪能させて下さいました。曖昧皆無細部明晰、盤石の構成感、各パートのバランスも筋肉質な完璧アンサンブル、納得の適正中庸なテンポ、詠嘆に揺れぬ辛口表現に緊張感テンション一貫して胸、打たれるばかり。シカゴ交響楽団の硬派な切れ味、金管炸裂!に比べ、オーケストラの上手さがわかりにくいクリーヴランド管弦楽団、ニュアンスに富んだ美しいサウンドをしっかり認識できました。

怪しい目覚めを感じさせる第1楽章「Allegro moderato」の緊張感、第2楽章「Scherzo. Allegro moderato」に於ける落ち着いた躍動、天国的な陶酔はあくまで清潔な第3楽章「Adagio. Feierlich langsam, doch nicht schleppend」(これはハイティンク/ドレスデン以来の感銘有/2002年ライヴも良かった)、あくまで激昂せず、粛々と力感溢れる終楽章「Finale. Feierlich, nicht schnell」。長大な音楽はラスト迄凛々しく、鮮度たっぷり維持されて満足いたしました。

(2015年9月1日)


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written by wabisuke hayashi