人生半分降りて丸一年
桜も花粉症も真っ盛りの春。気分も晴れて、暖かく、明るい季節は大好きですよ。2月にインフルエンザに倒れ、ウィルスは消えても体調戻らず一ヶ月ほどグズグズしておりました。継続雇用一年目は結果的にテンションもお仕事内容も現役並み、堂々と定時で帰ること、お仕事都合つけば有給を消化するのが違うかな?若い相棒を叱咤激励(パワハラすれすれなカワイガリ)結果それなりに育成成ってお隣のメジャーチームへ抜擢されました。明日より、また若い新人がやってきます。(上司からは最初からご指導飛ばさないでね、と心配メール有)息子より若い世代、きっと内心煙たく思っているやろなぁ、和気藹々とした職場だけど。基本名誉や手柄はすべて若いものに譲って、下がった給料云々するつもりもないけれど、内心お仕事スキルで負けない、日々工夫して改善、お手本になる!そんな決意ですよ。
体力衰えるのは華麗なる加齢、2月は半分ほどスポーツクラブに行けず、3月は14回ほど?しっかり鍛えましたよ。ようやくインフルエンザに落ちた筋肉分、体重も戻しました。ダイエット再開しましょう。今週早速、学生時代の先輩後輩との酒(だけ)のために金沢に一泊、伊達や酔狂でっせ。来年早々、女房殿がキツイお仕事辞めたら生活はどーなるのでしょう。ま、節約が趣味だからなんとかしましょう。
オーディオやパソコンにはできるだけお金を掛けないよう工夫しているけれど、先月、ミニノートAcerAspire 1410(デュアルコアCeleron SU2300/1.20GHz/メモリ4gb/Windows10/64bit)をLinuxに載せ替えようとして失敗、ヤフオクにて処分いたしました。ちゃんと売れたけれど、送料設定でも大失敗。メインであるHP Omni 220-1140jp(モニター一体型/メモリ8gb/2TB)の光学ドライブ(専用形状交換不可)がついに逝きました。もともと中古で買ったし激しくDVD-R焼いていたからなぁ、仕方がないのでDELL Inspiron N5110(Zorin-Linux-light-9)で焼いていたら、ナント!昨夜、光学ドライブが逝ってしまいました・・・これも7年ものだしなぁ、寿命だと思いますよ。女房殿の不在時にLenovoG575で焼くという手も残っているけれど、彼女お仕事専用マシンを都度借りるのもメンドーなもの。安い外付け機器を探しましょう。せっかくの種々ヤフオク入金が吹っ飛びました。(今朝、再確認したら読み取りはなんとかできるみたい)
● いつもは先月ヴェリ・ベストなんだけど、先月偶然にBruckner月間になりました。作品順に並べて整理しておきましょう。
●Bruckner 交響曲ヘ短調(第00番)/交響曲第4番より終楽章異稿「民衆の祭り」(1878年稿)〜ゲオルグ・ティントナー/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団(1989年)・・・所謂第00番はロジェストヴェンスキーが出会い。ティントナーのは4年ぶり拝聴でした。神秘的な原始霧、”ブルックナー・リズム”(3連符+2連符、またはその逆)はあまり出現せず、素直でわかりやすい叙情的な旋律は意外と親しみやすいもの・・・とは当時の印象、金管を強調してデーハーなロジェストヴェンスキーの印象が強すぎて、かつてティントナーには佳き印象を持っておりませんでした。中期浪漫派の穏健な雰囲気を感じさせる作品、さっぱりとした風情は悪くないと今ならそう思います。
「民衆の祭り "Volksfest"」は例の第4番の風情の断片をあちこち残しつつ、粗野なエネルギーに溢れました。1874年第1稿の終楽章とは別物なんですね。第00番の繰り返しを実行していないので、余白に貴重な音源を収録していただいて、NAXOSに感謝。
●Bruckner 交響曲第0番ニ短調〜デニス・ラッセル・デイヴィス/リンツ・ブルックナー管弦楽団(2008年)・・・これは第3番にテイストが似て、牧歌的な風情に溢れております。第1番の後の作品?といった説もあって、後年の厳しい切迫感から遠いシンプルな風情作品也。Dennis Russell Davies(1944ー)ってマニアックな現代作品ばかり、みたいなイメージのまま、Haydnの交響曲全集を録音して、クール冷静なひんやり演奏する人。Brucknerも全集になっていたのですね(激安)。ここでも”クール冷静ひんやり”、オーケストラの響きはやや薄く、あまり上手いオーケストラではないと思うけれど、作品の美しさをたっぷり実感させて下さいました。先日の第2番、第3番よりずっとエエ感じ・・・なのは聴き手の責任もあるのでしょう。
●Bruckner 交響曲1番ハ短調〜エルネスト・ブール/南西ドイツ放送交響楽団(1976年バーデンバーデン・ハンス・ロスバウト・スタジオに於けるセッション録音)・・・4年前のコメントに曰く、
音質極めて良好。これが明晰な、引き締まった筋肉質表現、キレのあるオーケストラの響き、作品構造がわかりやすく、意外なほど作品を愉しく聴かせてくださいました。やや速めなテンポ設定、詠嘆とか煽りとか重厚、そんな表現とは無縁、ほぼ初めて作品そのものに目覚めた感じ。ラストに山があって更にテンポアップ、軽快クリアなサウンドに満足感高いもの。先の大阪フィル云々するわけじゃないが、金管上手いなぁ、最終楽章までオーケストラのテンション緊張感が維持され、クール、整ったアンサンブルを堪能可能。このオーケストラのシェフ前任、ハンス・ロスバウトのBrucknerは第1番を欠いているので、その補遺の意味合いがあるのかも。上記自らのコメントになんらの修正点なし。驚いたのは作品細部旋律よう覚えていたこと、どこかで集中拝聴していたのかな?第3楽章「Scherzo. Schnell(急速に)」ト短調の迫力は後年の傑作に比肩できるものでしょう。●Bruckner 交響曲第2番ハ短調 (1877年稿・ハース版)〜フォルクマール・アンドレーエ/ウィーン交響楽団(1953年)・・・第5番の再聴に思わぬ感銘を受けて、別な作品も聴いてみたもの。「00」「0」「1」「2」「3」「4」「6」番は比較的拝聴機会の少ない作品、この第2番は1990年頃私的CD初期時代、怪しげ駅売廉価盤の匿名演奏家による演奏にて初めて作品に接したと記憶します。これはスケール小さく第5番ほどの感銘を受けず、音質も気になる・・・って、世評を探ってみると意外と評判よろしくないのですね。(←リンク先情報によると全集音源が発掘されたのはここ10年以内であることがわかる)ほかネット情報によると1953年時点、もっとも信頼の置ける版を採用して、但し演奏は心もとない、といった評価もありました。
●Bruckner 交響曲第3番ニ短調(1983年初稿/ノヴァーク版第3稿)〜シモーネ・ヤング/ハンブルク州立フィル(2006年)・・・Simone Young(1961ー)は濠太剌利出身の女流、ちゃんとオペラハウスでの経験を積んでいるのですね。あちこち第2稿やエーザー版と違ってド・シロウトにもわかりやすいけど、特に第2楽章「Adagio」に「タンホイザー」の引用があるところ。エリアフ・インバルの1982年録音登場時には衝撃でしたよ。やがてゲオルグ・ティントナーとかノリントン、ジョナサン・ノット等、次々と録音が続いております。例の如し評価が割れるものほど興味有、曰く”縦の線が揃わない”、”休止に対して 配慮が欠けている”、”オルガンの響きを連想させない”〜なるほどねぇ。昨日の印象は、Brucknerらしい「間」の取り方、大昔カイルベルト時代の記憶からはスケールと質実なサウンドのまま、アンサンブルが整って、よう鳴るオーケストラと感心したもの。音質も極上な自然さ。
でもね。じつはノートパソコン設定の失敗にキモチが落ち込んで、作品そのものに入り込めんのです。
●Bruckner 交響曲第4番ニ長調「ロマンティック」(ハース版)〜ゲオルグ・ティントナー/National Music Camp Orchestra(1960年)・・・濠太剌利メルボルン近郊、学生オーケストラとの演奏とのこと。ティントナー43歳の記録、テンポは中庸からやや速め。参加者向け簡易包装LPが音源らしい。モノラル音質(盤質?)かなり厳しいっす。惜しいなぁ、晩年の枯れて力みない癒し系表現とは大違い、燃えるような快活な情熱に若者を叱咤激励しております。冒頭ホルンもあまり上手くないけど、それが?みたいな真摯な集中力に打たれます。これで音質もうちょっとマシやったらなぁ、もともとの音質はそう悪くないと類推されるけど、LPノイズやら、途中音量レベルががらりと変わっ(落ち)たりするのも興ざめ。保存用音源に選定できず。
●Bruckner 交響曲第5番 変ホ長調〜フォルクマール・アンドレーエ/ウィーン交響楽団(1935年ハース版)(1953年)・・・朝から巨大な作品拝聴中。史上初の全集録音とか、8年ほど前のコメントも残っておりました。68:16(カットなしハース版)はかなり速いテンポ、しかしそうは感じられぬ立派なスケール演奏です。Volkmar Andreae(1879瑞西ー1962)は所謂巨匠世代だけど、表現はまったくモダーン、巨魁な物々しさ皆無。戦後あまり時を経ていないウィーン交響楽団は(同時期の歴史的音源と比較しても)引き締まったアンサンブル、音質も記憶以上によろしい。
●Bruckner 交響曲第6番イ長調(1881年縞・B.-G. コールス版)〜レミ・バロー/ウッパー・オーストリア・ユース交響楽団(リンツ聖フローリアン修道院教会2016年ライヴ)・・・これは思わぬ収穫だったので、【♪ KechiKechi Classics ♪】定例(手抜き)更新に流用しました。
●Bruckner 交響曲第7番ホ長調(ノヴァーク版)〜ロベルト・パーテルノストロ/ヴュルテンベルク・フィル(ロイトリンゲン)(Basilika Weingarten,2000年ライヴ)・・・この驚くべき全集に出会ったのはもう7年前だったのか・・・今月はBrucknerを多く聴いて、偶然美しい第7番の出番なし。数度、パーテルノストロ全集に言及しても聴いたのは久々、既に廃盤になっているようだけど、数多くの称賛の声が残っております。NMLにて拝聴可能。ヴァインガルテンのバジリカ聖堂というのは奇跡の残響でっせ。よ〜く聴けばオーケストラが上手くない(不器用)とか、サウンドに芯が足らん(ミスがある!?)といったご指摘も可能でしょう。しかし、これはゆったり大河の流れに身を委ねるような、悠々とムリのない世界であります。刺激的サウンドとは無縁、ほんまにライヴの雰囲気そのまま、教会オルガンにルーツがあると思い出させて下さる演奏。
Bruckner作品中、屈指の伸びやかさ、幸福な安寧を誇る第1楽章「Allegro moderato」、脚の長い残響に支配されて慌てず、ムリなくゆったり、しっとり歌って最高っす。第2楽章「Adagio. Sehr feierlich und sehr langsam(非常に荘厳に、そして非常にゆっくりと)」不安げな金管に誘われて、ここも感動的な静けさ美しさ、クライマックスはできれば打楽器の入らぬハース版で聴きたいのが自分の好み。パーテルノストロは盛大に打楽器導入、ゆる〜い坂を息長くゆるゆる登ってついに絶景が広がるといった風情に溢れました。木管の音色なんて素っ気ないもんでっせ、それでも残響に埋もれ全体サウンドに溶け込んで、たっぷり心に染みます。
第3楽章「Scherzo: Sehr schnell(非常に速く)」。Brucknerのキモ、躍動するスケルツォに凄みとか威圧感はありません。快いリズムが続いて第4楽章「Finale: Bewegt, doch nicht schnell(運動的に、あまり速くなく)」ここは一歩間違うと、前3楽章の感動をすっ飛ばしてしまう平明さ有。特異な表情の変化を見せず、教会残響に身を委ねて、じんわり余韻が続きました。
●Bruckner 交響曲第7番ホ長調(ハース版)〜朝比奈隆/大阪フィル(1976年4月14日神戸文化ホール)・・・これは打楽器の入らぬ美しい第2楽章「Adagio」が聴きたかった!印象は第9番と寸分違わず、粗っぽいアンサンブルから深い感銘をいただきましたよ。結局しっかり全曲通しました。
●Bruckner 交響曲第8番ハ短調(1887年版)〜ゲオルグ・ティントナー/カナダ・ナショナル・ユース管弦楽団(1982年)・・・Georg Tintner(1917ー1999)65歳の記録、この版の北米初演って書いてあるけどトロントでっせ。印象は1996年録音(←アイルランド・ナショナル交響楽団。ヒドいコメントだこと)と変わらない。1887年初稿はド・シロウトにも違いが理解できるほど、第1楽章「Allegro moderato」は馴染みの旋律担当の楽器が違ったり、集結は消えゆくように静かに非ず、第1主題に基づく賑やかなコーダとなります。全体として粗野なイメージもあって、とても新鮮。シモーネ・ヤングもこの版を採用しました。エリアフ・インバルもそうだっけ。一般に普及している版(詳細いろいろありますか?)どちらも好きでっせ。
ティントナーのライヴは例の如し、誠実素朴なもの。LPライヴ音源は音質良好、若者のオーケストラは大健闘してアイルランド・ナショナル交響楽団に負けないでしょう。力みなく(例えば第2楽章「Scherzo. Allegro moderato」のリズムにも壮絶さは期待できない)悠揚として巨魁なスケールを誇る作品を諄々と聴かせて下さいました。第3楽章「Adagio. Feierlich langsam, doch nicht schleppend」にも静かな説得力有、最終楽章渾身の演奏に聴衆の拍手も熱狂的。
●Bruckner 交響曲第8番ハ短調(1887年稿および1890年稿・ハース版)〜ダニエル・バレンボイム/シカゴ交響楽団(1980年)・・・Daniel Barenboim(1942ー)最初の全集録音38歳の記録。相変わらず版による細かい違いは理解しておりません。(第8番初稿みたいにぜんぜん違うとド・シロウトにはわかりやすい)天下のシカゴ交響楽団+ドイツ・グラモフォンが30歳代の若手に全集を任せた時代も豪気、世評の毀誉褒貶も種々いろいろ、ワタシもいくつか若い頃から聴いて印象揺れ動いておりました。ちょっぴり第1楽章だけでも・・・なんて、一気に最終楽章迄聴いてしまいました。音質もよろしい感じ。
この時期フルトヴェングラーを研究していたとか?そんな物々しさ、ムリムリ壮絶劇的を感じさせないもの。ショルティにはかなり印象的であった鳴り渡る金管(それも好きだけど)は、鋭角に旋律エッジを立てないから爽快(英DECCAとDGの音質の差かも)やや若さゆえの走り過ぎないでもないけど、ヨッフムの煽り疾走に比べれば常識的な感じ。貫禄が足りぬと云えば足りぬのかも(終楽章ラストなど)、それとこの人は(後年の録音を聴いても)陰影と云うか、鮮やかな反転とか変遷、その辺りが弱くて(いろいろニュアンスが細かくても)ベターとした印象がないでもない。脂っこいとか、鈍重という評価もありました。
宇宙の神秘を感じさせる第1楽章「Allegro moderato」には爽やかさがあり、独逸の野人(ミヒェル)第2楽章「Scherzo. Allegro moderato」のリズム感もよろしい。第3楽章「Adagio. Feierlich langsam, doch nicht schleppend」は深遠さより素直な風情を感じます。全力終楽章「Finale. Feierlich, nicht schnell」はやや軽い・・・けど、快い若い勢いを感じさせて気に入りましたよ。
●Bruckner 交響曲第8番ハ短調〜ハインツ・ワルベルク/ウィーン・ナショナル管弦楽団(実態はトーンキュンストラー管弦楽団とのこと/1960年台の録音)・・・往年の独逸の指揮者Heinz Wallberg (1923-2004)は日本でもお馴染み、懐かしいConcert HallのLPにこんなのあったんですね。.mp3/256kbpsだけど音質はかなり良心的、これは中庸な適性テンポ(14:48ー15:09ー23:02-24:00)物々しさよりオーケストラの素朴かつ暖かい響き、堂々たるスケール、厚み、テンション、時にアンサンブルが乱れてミスタッチも味わい深い演奏でした。そういえば佐渡裕が第4番第9番録音してましたね(未聴)このオーケストラの日常的なレパートリーなのでしょうか。今月はこの感動的な名曲2連敗やったからなぁ、ようやく手応えを感じたところ。第3楽章「Adagio」は静謐落ち着いた味わいに途中かなり盛り上げて、終楽章「Finale. Feierlich, nicht schnell」もアツく、リキ入ってますよ。例えば木管が時に頼りなく、金管がひっくり返って響きが濁っても、表層を整えた”上手いだけ”の演奏に非ず、たっぷり感動いただきました。
●Bruckner 交響曲第8番ハ短調〜ヘスス・ロペス・コボス/シンシナティ交響楽団(1993年)・・・5年ほど前のコメントでは
CD一枚に収まる速めのテンポ、オーソドックス、要らぬ飾りのない表現+整ったアンサンブル+颯爽とした推進力散々な言い草。世評は意外と高い?らしいけど、以前と印象はあまり変わりませんでした。鳴り渡る金管、オーケストラの技量、仕上げていねいなことは以前と印象が変わって(オーケストラは技術的にけっこう上手い)但し、あまりに健全、明るいフレージングに飾りがなくて素っ気ない。この作品に期待したい神々しさ陰影が感られぬ超・健全演奏也(特に第3楽章「Adagio. Feierlich langsam, doch nicht schleppend」が残念)。第2楽章のスケルツォ、終楽章のリズムもあまりに軽快明朗スポーティな感じ。昨日の繰り返しだけれど、技術的には少々問題ありそうなロベルト・パーテルノストロ/ヴュルテンベルク・フィルのライヴ全集にはそれがちゃんと感じられるもの。
高らかに鳴る明るい金管も悪くないけれど、ずばりオーケストラが上手くない?
こちら微妙に”安っぽいサウンド”に感じてしまう。
飾りの少ないストレート系表現、鳴り渡る爽快なる金管〜(ショルティ/シカゴに似て)オーケストラの技量、各パートのニュアンス配慮、響きの厚み、全然水準が違いますよ。●Bruckner 交響曲第8番ハ短調(1890年稿 /ノヴァーク版)〜マレク・ヤノフスキ/スイス・ロマンド管弦楽団(2010年)・・・以前から気になっていた仏蘭西系瑞西の歴史あるオーケストラのBruchkner、しかも職人Marek Janowski(1939ー)が全集録音したくらいだから、きっと世評高かったんやろなぁ、そう類推しておりました。+定評あるPentatoneの音質。結論的に全曲耳当たりよろしく、美しく聴き通したけれど、この作品は難物でっせ。”アンセルメのスイス・ロマンド”は半世紀を経、ヤノフスキの統率に疑念はない、しっかりとしたアンサンブル。技術的には改善され、軽快な明るい管楽器、薄い弦楽器の個性は継承されておりました。
厳つく、怪しく、巨魁なハ短調交響曲。Brucknerはオーケストラの響きがキモ、耳当たりよろしく洗練された美しい仕上げは、どーもサウンドに芯が足らんと感じます。第1楽章「Allegro moderato」に迫りくる危機、凄みを感じせない。第2楽章「Scherzo. Allegro moderato」はBrucknerのキモ、スケルツォ楽章のゴツゴツしたリズム感も弱い、第3楽章「Adagio. Feierlich langsam, doch nicht schleppend」深淵に瞑想する緩徐楽章もさらさら流れるだけ。これは軽快明るい管楽器+スッキリ素直に流れの良い表現に迫力不足、”イマイチ”感が抜けないもの。
ロベルト・パーテルノストロ/ヴュルテンベルク・フィルのライヴ全集があるでしょ?脚の長い残響に充たされたライヴ、オーケストラの技量も特筆するものでもないけれど、一種独特の神々しい風情がありましたよ。それと対局を連想いたしました。ヤノフスキは終楽章「Finale. Feierlich, nicht schnell」に焦点を当てて、この楽章は全力で爆発しております。しっかり全曲拝聴したけれど、なんか違うなぁ、全集全曲聴くのはちょいと厳しいかも。
●Bruckner 交響曲第9番ニ短調〜ギュンター・ヴァント/ベルリン放送交響楽団(1993年ライヴ)・・・市販されたCDには”ベルリン・ドイツ交響楽団”となっているけれど、この時点ベルリン放送交響楽団(旧西)でっせ。20年以上前、ワタシはFMで流れたこのライヴに痺れましたよ。ちゃんとエア・チェックして「未完成」ともども幾度聴いたことでしょう。昔の記憶は美化され、久々の再会にガッカリする・・・かと思ったら、壮絶深遠な響き、洗練された音圧、ゆったりとした切迫は寸分違わない。瑞々しいホール残響を伴った音質も理想的、オーケストラとの相性も上々でしょう。若き日のバレンボイムにも好感を抱いたけれど、こちら人生の年輪と云うか格が違う感じ。目眩がするほどのデリケートな感銘押し寄せました。
第1楽章「Feierlich, Misterioso」はまさに荘重、神秘的そのもの、夢見るように美しいオーボエはこの時期たしかギュンター・パッシン(Gunther Passin、1937ー2014)が現役だったはず。第2楽章「Scherzo. Bewegt, lebhaft - Trio. Schnell(スケルツォ。軽く、快活に - トリオ、急速に)」の重厚闊達なリズム感最高、第3楽章「Adagio. Langsam, feierlich(アダージョ。遅く、荘重に)」は天国に誘う崇高清廉な気配漂う・・・今朝、同作品を北ドイツ放送交響楽団(2000年東京オペラシティ・ライヴ)で聴いて、こちら世評鉄板な立派な完成度、それでも7年前の演奏にいっそうの親密を感じたものです。
●Bruckner 交響曲第9番ニ短調〜朝比奈隆/大阪フィル(1976年4月22日神戸文化ホール)・・・Disques Jean-Jean幻の全集より。例えばBrilliant辺りで激安再発されぬものか、それじゃ価値を貶めることになるのかな?朝比奈翁が現役時代、いくらでも生演奏に出掛ける機会はあったのに、当時世評のあまりの熱気入れ込みに自分は敬遠しておりました。もう40年以上前、正直なところ大阪フィルの技量はかなり厳しくて、現在はもっとアンサンブルは向上していることでしょう。この時期Brucknerも未だ一般的じゃなかったかも。しかし、神々しくも深淵な作品、遅めのイン・テンポ厳守、激情にテンポを煽ったりすること皆無、精一杯の咆哮、深い呼吸、間、どっしりとしたリズムに感銘深く受け止めました。
ここ数年、世界の演奏技量向上したオーケストラを聴く機会(録音だけど)も多くて、昔の大阪フィルなんて・・・(失礼)そんな傲慢な姿勢を反省。ギュンター・ヴァントに負けぬ誠実な感銘をいただきました。
(2018年4月1日)
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