台風と地震と熱気と体調不良
大型台風は日本縦断中、あちこち甚大なる被害が伝えられております。毎年地震があり、ゲリラ豪雨があり、土砂崩れがあり、そして好天でも人命に関わる猛暑に苦しむタイヘンな夏。水遊びに生命を落とし、風光明媚な滝遊びしたらノロ・ウィルス繁殖していたとか、あまり佳き話題は伺えません。せっかく日本旅行を愉しんでいた外国の方も交通機関が止まったり、激しい揺れに驚いたことでしょう。
自分は夏風邪にちょっぴり罹患、それは一週間くらいで治まって洟水痰の絡みは継続中、青息吐息に隔日ゆる鍛錬筋トレを休まずなんとか続けました。この猛暑はいつまで続くのでしょうか。結局体調は絶好調じゃないけど、体重はちょっぴり増加傾向、なにが原因なのか。おそらくは知らず喰い過ぎて、それは自業自得。ことし自宅ではまったくビール呑んでないなぁ、アイスコーヒーと麦茶と水ばかり。先月外に呑みに出たのは2-3度ほど?あまりの猛暑に街中に出撃する意欲も元気も湧きません。猛暑中洗濯物が速攻で乾いたり、布団が気持ちよく干せるくらいかな?唯一佳きことは。
先々月音源ファイル保存したHDD一個お釈迦にして、十数年貯めた貴重な音源をかなり失いました。それはそれでショックなんやなけど、ネットより再入手可能な音源を一ヶ月集めて、例えばBruckner/Shostakovich辺り、過去最高に集中して訊いたと思います。失ったからこそ、かえって集中してたくさん音楽を堪能した手応え有。かつて一生懸命に聴いて、すっかり忘れていた感動を思い出したもの、皮肉なもんですね。ヲタク蒐集趣味は一般に”集めること”のみになりがち、でも音楽の本旨は「聴いて愉しむこと」ですから。それには集中力が必要です。
これが所謂”断捨離”とか”ミニマリスト”の世界に近いものか、いろいろ余計な煩悩を捨て去って、ムダを省いてこそ、その本質が見えてくる、よく味わえる・・・セーフだった収集音源ファイル含めて、いくら有名で世評高くても ”これはアカンなぁ”と感じたら思い切って廃棄するようになりました。シャワートイレが故障したのがちょうどお盆最中、ネットに注文しても数日放置されてようやく到着、翌々日業者さんが到着して取り付けていただきました。これは日常最低限必要な快適設備、少々の出費も仕方がないと痛感します。もう、それ以前の生活に戻れない。毎日使用していたリュックは安物、あちこちの解(ほつ)れは修復不可能状態へ、諦めてもうちょっと堅牢な生地と縫いのものを入手いたしました。欲しいものはほとんどないけれど、必要な出費は続きます。
● 恒例の前月分拝聴音楽の振り返り。猛暑中、音源ファイル消失の失地回復を試みておりました。
■ Mussorgsky/Ravel 組曲「展覧会の絵」/Stravinsky バレエ音楽「春の祭典」〜リッカルド・ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団(1978年)・・・展覧会の絵は2015年、春の祭典は2019年来の再聴 オリジナルは各々作品の組み合わせは違っておりました。Riccardo Muti(1941-伊太利亜)は長期政権だったオーマンディの後を受けて1980年より正式にフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督、既にこの時期後継として首席指揮者を務めていたと記憶します。「展覧会の絵」は輝かしいオーケストラの響きのまま、テンションの高い、速めのイン・テンポを基調として弾けるばかりの熱気ある演奏は37歳の若さの記録。いかにもオーケストラの技量が物を云う作品揃えて、これはヴェテランの老熟した表現とはガラリ変わって、この勢いは新鮮に受け止められたことでしょう。アナログ最末期の音質も鮮度抜群、CBSやRCAとは違って硬質にやや軽い、そして明るく軽い響きに仕上がっておりました。「展覧会の絵」は逡巡も要らぬ飾りもないストレート系表現にオーケストラの技量は抜群に高く、清々しい金管、厚みのある弦、デリケートな弱音、「バーバ・ヤーガ」から「キーウの大門」へ圧巻のクライマックスの華やかさ輝かしさ、キレのある気持ちの良い演奏でした。(4:57-4:44-1:06-3:16-1:12-2:18-1:18-1:58-2:11-3:14-5:02)
たしかオーマンディにはモノラル録音しかなかった「春の祭典」はフィラデルフィア管弦楽団にとっては待望の本格的録音だったはず。前曲と続けて聴くにはちょっと疲れそうな激しい作品の組み合わせ。これも同じく圧巻のオーケストラの技量と若々しい推進力勢いとリズムの切れ味、馴染みの作品のはずが細部フクザツなリズムの絡み合いとか、リアルに浮き立つ最高の演奏音質でした。(3:36-3:12-1:19-3:34-1:41-0:37-1:35/4:07-3:08-1:29-0:42-3:35-4:32)■Shostakovich 交響曲第8番ハ短調〜エリアフ・インバル/ウィーン交響楽団(1991年)・・・この顔合わせの全集録音はズズ暗い風情、オーケストラのヤワい響きがいまいち評判よろしくない。音質極上。自分は是々非々に時々聴いて、意外とお気に入りでした。ところが・・・これはなかなか細部明晰にクール、線が細く、絶望的にジミな風情は作品個性に似合っていると思います。音質も良好。第1楽章「Adagio - Allegro non troppo - Allegro - Adagio」苦渋漂うはじまりは「スパイ大作戦」クリソツ。重苦しい暗鬱うねうねした旋律が蠢(うごめ)いて、やがて金管打楽器の怒り大爆発!して、その対比は強烈、変拍子行進曲とやらクールだけどなかなかの狂気っぽい。そして静謐な暗鬱に戻る・・・ここは長い楽章です。(28:05)第2楽章「Allegretto」はシニカルに明るい、力強く無遠慮なわかりやすいスケルツォ。(6:38)第3楽章「Allegro Non Troppo」は無機的な弦の繰り返し、そこに管楽器と打楽器が悲痛な合いの手を入れて、いや増す無表情な絶望感と青白い狂気がせり上がって、ここが一番好きなところ。インバルの表現は一歩引いた冷静な統率でした。トランペット・ソロ(+小太鼓の安易な応答)は感情(真意)が読み取れぬユーモラス。(6:52)第4楽章「 Largo」大仰な詠嘆から始まるPassacagliaは絶望的な葬送行進曲。(10:00)第5楽章「Allegretto」ハ長調だから明るいフィナーレ?ファゴットの主題提示、弦やフルートは牧歌的だけど、妙に落ち着かない。神妙な表現に決然とした歩みは盛り上がらず元気なく、神経質に危機は再び迫っている感じ。ムラヴィンスキーの陰影メリハリはっきりした劇的テンション、ロジェストヴェンスキーのわかりやすい表現を思い出せば、鬱々ぐずぐずのまま軽量に静かに終わった印象もありました。(16:00)
■Shostakovich 交響曲第1番ヘ短調/第2番ロ長調「10月革命に捧ぐ」/第3番 変ホ長調「メーデー」〜アレクサンドル・スラドコフスキー/タタールスタン国立交響楽団/全ロシア国営テレビ・ラジオ放送グランド・コアー・マスターズ・オブ・コーラル・シンギング(2016年)・・・幾度か聴いているAlexander Sladkovsky(1965-露西亜)による交響曲全集録音は思わぬ完成度でした。耳慣れぬオーケストラの技量、パワーたっぷり、アンサンブルも上々、音質も良好。交響曲第1番ヘ短調は1926年初演。二管編成、6種の打楽器にピアノも入って「ペトルーシュカ」の影響を感じさせるとのこと。才気煥発な風情は大好きな若き日の作品ですよ。第1楽章「Allegretto - Allegro non troppo」なんとなく剽軽に軽快自在にメリハリ元気ハツラツな風情。途中金管と打楽器のテンションも圧巻のラッシュ。(8:11)第2楽章「Allegro - Meno mosso」これってスケルツォですか?ユーモラスな追い掛けっこみたい。まるでピアノ協奏曲、ここも爆発的なテンションに文句なし。(4:19)第3楽章「Lento」はオーボエ、チェロの無感情無表情なソロから始まって、徐々に盛り上がって金管の合いの手も無感情な感じ。やがて静謐に怪しいトランペットソロを伴う葬送行進曲に至って、そのまま(9:29)第4楽章「Lento - Allegro molto」へ。もったいつけたフィナーレもいかにも華々しく爆発、思いっきり賑やかにド迫力。音質極上にヒステリック、トランペットは強烈、ティンパニ先頭に打楽器の爆発は超リアルですよ。(10:45)
交響曲第2番ロ長調は”無調・27声部におよぶウルトラ対位法などの技法”作品とのこと(Wikiによる)管弦楽+混声合唱+多種多様な打楽器+サイレンまで入る政治的単一楽章作品。こんな時代に至って、政治的意図に関係なく作品を堪能できる様になりました。要はするに当時の権力に阿(おもね)った題材を使って、思いっきり硬派前衛的な作品に仕上げたのでしょう。Largo(序奏)-Fugato(27声によるフガート)ーMeno mosso(それまでより遅く)ー合唱 - Coda「これこそ旗、これこそ生き生きとした世代の名称、10月、コミューン、そしてレーニン」のシュプレヒコールにて締めくくります。(17:31)
交響曲第3番 変ホ長調も単一楽章。演奏頻度は第2番以上に少ない、不人気作品とのことだけど、思いっきりデーハーに効果的な作品。これも第2番同様、権力に迎合しつつ、じつは好きなことをやっているのかも。Allegretto(序奏/不気味な低音は静寂不穏な蠢き。ここはオーディオ映えします)-piu mosso-Allegro(主部。行進が始まる感じ)-Andante-Allegro-Largo(ホルンは強烈であり勇壮。ヴァイオリン・ソロと木管の掛け合いはばるでバロック風、そして破壊的な大爆発から勇壮な旋律へ)-Moderato(サイレンとともに合唱 「最初のメーデーの日に」*翻訳を載せようとと思ったけれど、型通りの「労働者の祭典」への参加呼びかけ、なんの趣もありません/虚しい言葉も立派にゴージャスな旋律に管弦楽と声楽に乗せると感銘深く響き渡る好例かと)(31:18)■Ravel 逝ける女王のためのパヴァーヌ/ラ・ヴァルス/ボレロ(1958年/ステレオ)/Stravinsky バレエ音楽「春の祭典」(1954年モノラル)〜ウィリアム・スタインバーグ/ピッツバーグ交響楽団・・・Ravelのほうは以前CDにて拝聴記録が残って亜米利加の工業都市みたいなイメージに非ず、けっこうデリケートな響きがニュアンス豊かに表現されるもの。先日「オモロない四角四面な」ボレロを聴いたけれど(ごめんなさい)こちら例の如くストレート系あまりテンポを動かさぬ剛直なオーケストラは、ちょっと素っ気ないけど意外なほどデリケート。(6:34-11:35-15:53)近現代のオーケストレーションがデーハーに爆発する「春の祭典」は残念、モノラル録音。これはかなり以前から聴いていたお気に入り、かなり細部解像度よろしく各パートの活躍がちゃんと聴き取れるし、低音管楽器の存在かも際立って重量級のリズムの勢い、ノリが素晴らしい出来でした。血湧き肉踊る!スタインバーグのリズムの鋭さと緊張感、パワーがみごとな結実となっておりました。(3:32-3:20-1:25-3:35-1:57-0:43-0:23-1:13/4:23-3:07-1:25-0:40-3:16-4:33)
■Bartok 管弦楽のための協奏曲(1988年)/Lutoslawski 管弦楽のための協奏曲(1989年)〜クリストフ・フォン・ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団・・・世評ともかく、この方の演奏はCDで聴く限り、どうも楽しめません・・・この名作に対するドキドキ感が伝わらない〜とは2006年の感想→それはまったくの頓珍漢。英DECCAのマルチマイク録音は細部わかりやすく(ド・シロウトの安物オーディオにも映える音質)各楽章の語り口に知的な余裕を感じさせて、スパッとカッコよい演奏。なんせ音楽監督在任1984-2002年時代のクリーヴランド管弦楽団の濃密な響きは絶好調を維持して、このオーケストラは指揮者の選定に誤りなし。第1楽章「導入部」(10:09)第2楽章「対の遊び」(6:36)第3楽章 エレジー(悲歌)(7:01)第4楽章「中断された間奏曲」(4:26)第5楽章「終曲」(ここの打楽器がクリア!/9:51)ラストはジョージ・セルと違って通常版、カットなし。両者とも洪牙利の人でしたっけ。上手いオーケストラですね。
Lutoslawskiは知名度は落ちるけれど、華やかにめちゃくちゃカッコよい作品。スターリン影響下の波蘭、がちがちのハードに非ず民謡の素材も使って比較的親しみやすい作品に仕上げたんだそう。パワフルにやや暴力的、そしてデリケートにわかりやすい、 初演1954年の三管編成。第1楽章「Intrada」(6:43)第2楽章「Capriccio notturno ed Arioso」(5:15)第3楽章「Passacaglia, Toccata e Corale」(15:27)こちらも臨場感あるリアルな音質でした。(2024月9月1日)
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