酷暑に負けました
6月末より厳しい暑さが日本中を襲って、他人ごとではない熱中症に亡くなるお年寄りのニュースもありました。前月は”毎日の猛暑続きに青息吐息”と書いたけれど更に状況は悪化、8月後半にはすっかり体調を崩してまともに眠れぬ日々を過ごしたものです。五山の送り火はコロナ蔓延も考慮してホテル予約をキャンセル。心身ともにぐったり、どこにも出掛けるのはもちろん日々の調理意欲も減退気味、辛くも市立体育館への鍛錬は強度を落としても継続しました。体重は増傾向、自宅ビールの頻度が上がりましたよ、親戚より1ケース送ってきたんです(悪魔の誘い)。
音楽への集中度は落ちて日々苦戦しておりました。なにもかもが値上がりして、節約生活にも限度がある・・・と云いつつ、新たに鹿児島産紅甘夏5kgを箱買い、ときどき梅田に出掛けて美味いもん喰うたり、庶民水準それなりの贅沢も愉しんでおります。あまりの暑さにノーミソ判断抑制が鈍って、ちゃんと動くメイン・コンピューターを(うっかり)買い換えました。VAIO Tap20参萬圓也(Windows11/メモリ8gb/SSD480gb)は快調です。5年半愛用した前マシンは5,300円ヤフオク落札され、広島に送付済。2TBの外付けHDDも別途入手して、趣味のClassic Music音源点検整理を細々と続けております。
蝉の声も止んでここ数日、一気に秋の風情、就寝時のエアコンも必要なくなりました。来月の電気料金請求を冷や冷やしつつ待っているところ。女房殿によると昨年8月は壱萬圓を超えていたそう、それは水漏れしていた20年選手の冷蔵庫、転居時に取り外しに来た業者さんより”動いているのが不思議”と指摘された旧型エアコン(ここ数年赤ランプ常時つきっ放し)のせいだったのでしょう。いずれも廃棄済。前月分請求は値上げを経て参千圓台に収まりました。ガスも水道代とも似たようなもんでっせ。水道代は現在コロナ対策とやら、基本料金サービスなんだそう。なにもかも値上がりして、気候問題から野菜も高い。ガソリン高騰は自家用車のない我が家には関係なくても、各種運送賃に影響は出ることでしょう。ことし1月に生まれた下の孫(熊本在住)は力強く、もうつかまり立ち、伝い歩きし放題とのこと。短時間なら自立しているそう。
● いつもの前月ヴェリ・ベスト振り返りは、この猛暑に著しく集中力を欠いた結果を反映しております。結果として日本勢が多い。
■Vaughan Williams 交響曲第5番ニ長調(1987年)/第6番ホ短調(1988年)〜ブライデン・トムソン/ロンドン交響楽団・・・ブライアン・カズンズによる伝説的な名録音、素晴らしい残響と臨場感に酔い痴れました。第1楽章「Prekudio, Moderato」は冒頭とした景色を遠い目で眺めるような陶酔に溢れます。第2楽章「Scherzo, Presto misterioso」は剽軽なリズムなのに、妙にしっとり哀しい。そして金管はパワフル。第3楽章「Romanza, Lento」は弦の囁きが陶酔するほどに深淵。そして夜空に舞い上がるような浮遊する快感。遠いホルンは夢見るように美しい。第4楽章「Passacaglia,Moderato」に於ける控えめな力強さから安寧のラストも絶品。2管編成の作品なのに大きく、立派な風情に響くのはブライデン・トムソンの表現でしょうか。11:58-4:43-11:42-101:6。1944‐47年に作曲された第6番「戦争交響曲」は三管編成。全曲切れ目なく激しく、哀しくAllegro-Moderato-Scherzo-Moderatoと続きました。Bryden Thomson(1928ー1991蘇格蘭)は名手でした。8:23-9:10-6:47-9:46。
■ Paganini ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調/カンタービレ ニ長調 作品17〜レオニード・コーガン(v)/シャルル・ブリュック/パリ音楽院管弦楽団/アンドレイ・ムイトニク(p)(1955年)・・・変幻自在な音色の変化、完璧な技巧を誇って、胸がすくような素晴らしい演奏。ひたすらヴァイオリンのテクニックを披瀝するための安直にわかりやすい旋律も大好き、21:29-4:55-9:03。短く親密なカンタービレは4:11。Charles Bruck(1911ー1995洪牙利→仏蘭西)は初耳でした。
■Mozart 交響曲第30番ニ長調K.202(186b)(2014年)/交響曲ニ長調K.196+121(207a)「恋の花作り」/交響曲ハ長調K.208+102(213c)「羊飼いの王様」/交響曲第31番ニ長調K.297(300a)「パリ」/第32番ト長調K.318(2016年)〜飯森範親/山形交響楽団・・・山形市の人口は25万人程度とか、周辺を含めても大都会とは言い難いローカルなエリアに立派なオーケストラが元気に活動していることに驚きます。ニ管編成を逆手に取ってMozartの交響曲全集を演奏、ライヴ録音するなんて!ここのところ日本のオーケストラの録音には感心してばかり、モダーン楽器が基本だけどバロックトランペットやナチュラルホルンを使用しているとのこと、今風に闊達、爽やかなリズム感と引き締まったサウンド、Mozartに必須な愉悦感、演奏技量の高さに魅了されました。入念な演目選定にも脱帽。(ニ長調K.202(186b))8:44-6:02-4:26-4:58。(ニ長調K.196+121(207a))2:18-2:37-2:22。(ハ長調K.208+102(213c))2:54-2:18-2:59。当時のパリの嗜好に合わせたらしい強弱が際立つニ長調K.297(300a)「パリ」は7:43「Allegro vivace」-5:44「Andante」-3:40「Allegro」+3:42「追加Andante」(初稿?)も収録。元気のよろしいシンフォニアト長調K.318は3:11-3:16-1:54。音質も最高。
■Shostakovich 交響曲第11番ト短調「1905年」〜井上道義/大阪フィル(2017年ライヴ)・・・”カリオン(鐘)をカットして大太鼓の連打に変更された・・・「血の日曜日事件」の「レクイエム」が消滅している”とのコメントをネットより拝見。ド・シロウトにはその辺りなかなか理解不如意だけど、朝比奈時代の豪快に粗っぽいアンサンブルを思い出せば圧巻の集中力、明晰なサウンドに驚かされます。大阪フィルは上手くなりました。これは大植英次の薫陶の成果でしょうか(2003ー2012音楽監督在任)。金管の輝かしさは比類のないもの。なんせ音質がクリアそのもの。第1楽章「Adagio 宮殿前広場」は怪しく不気味な事件の前哨。第2楽章「Allegro 1月9日」の主題はわかりやすく、カッコ良い!機銃掃射のド迫力も聴きもの。第3楽章「Adagio 永遠の記憶」の静謐な哀しみ(ここがレクイエムですか?)。第4楽章「Allegro non troppo 警鐘」のテンションの高さ、ワルシャワ労働歌の決然とした風情、ドラ一撃の衝撃、やがて第1楽章が回帰してイングリッシュ・ホルンの悲しげな歌が延々と静かに流れて、ラストの大爆発へ。16:47-18:47-13:43-14:56(拍手込) たいへんな感動をいただきました。
■Bartok 舞踏組曲/Beethoven 交響曲第3番 変ホ長調「英雄」〜ローター・ツァグロセク/シュトゥットガルト州立管弦楽団(2004年ライヴ)・・・Lothar Zagrosek(1942ー独逸)はオペラ畑のヴェテラン、日本でもお馴染みの存在です。シュトゥットガルト州立歌劇場の総監督在任は1997-2006年、その最中の録音でしょう。Bartokはパワフルなリズムであり、そんな演奏に耳馴染んでいたせいか(ジョージ・ショルティ辺り?)抑制が効いて分析的な表現に感じました。3:52-2:20-3:04-2:39-1:04-4:16。(最近こればっか!な)「英雄」は快速、所謂古楽器風なスタイル(モダーン楽器使用)クールに緻密、詠嘆とか絶叫とは無縁のていねいな知的演奏でした。オーケストラの技量に優れ、サウンドは極めて地味(このサウンドが貴重)弦は少ないように聴こえます(ノン・ヴィヴラートが基本)第1楽章提示部繰り返し、第2楽章の葬送行進曲は深刻に重くならず、淡々としたもの。管楽器はクールな風情のままけっこう雄弁、ティンパニのアクセントはなかなかのメリハリでした。第3楽章「Scherzo: Allegro vivace」蒸気機関車の疾走は粛々と最高スピードに達してキレはあります。第4楽章「Finale: Allegro molto」も速いテンポに囁くように、流麗に流れて、熱と力が加わってデリケート。ラスト渾身のティンパニとホルンの掛け合いはお見事、これは稀有な価値ある美しい「英雄」です。16:43-14:26-5:49-11:11。
■Mahler 交響曲第1番ニ長調〜上岡敏之/新日本フィル(2016年ライヴ)・・・上岡 敏之さん(1960ー日本)は独逸オペラ畑に経験を積んで、新日本フィル音楽監督在任は2016-2021年。初耳でした。速めのテンポをほとんど動かさずテンション高く、勢いとメリハリある硬派演奏、第1楽章提示部繰り返し有。音質極上。日本のオーケストラもほんまに上手くなって、やや、ちょっぴりサウンドの芯が甘いような気もするけれど厚みも迫力も充分、ライヴでここまでの完成度なら文句ないでしょう。青春の胸の痛みや、憧憬を連想させる美しい旋律は生真面目、終楽章の力強いタメ、間の取り方も決まっております。15:31-6:38-11:17-19:21。
■Bruckner 交響曲第8番ハ短調〜朝比奈隆/大阪フィル(1976年4月15日,16日神戸文化ホール・ライヴ)・・・いまや希少なる存在であるDisques Jean-Jeanの音源。おそらくは4年ぶりの拝聴。残響やや少なめ、解像度高く、作為を感じさせぬ素朴にリアルな音質に驚きました。Bruckner交響曲中屈指の力強く粗野な響きとスケールを堪能できる作品、これほど荒々しい愚直な演奏は稀有な存在でしょう。どの楽章も適正を感じさせて慌てぬイン・テンポ、曖昧さのないフレージングは美しはないけれど大きく、深い。各パートの技量、アンサンブルはゴツゴツと粗く器用流麗に非ず、響きは濁ります。しかしその不器用に誠実な只管打坐的姿勢は胸を打つもの。最終楽章「Finale. Feierlich, nicht schnell」に到る迄、けっしてあわてず走らず急がず悠揚たるテンポを維持して堂々たる怒涛のフィナーレを迎えました。16:13-16:49-27:10-24:36。
(2022年9月1日)
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