Mozart 交響曲第36/37/38番
(エーリヒ・ラインスドルフ/フィルハーモニック・シンフォニー・オブ・ロンドン)


MCA 	MCAD2-9818A(Westminster原盤)  Mozart

交響曲第36番ハ長調 K425「リンツ」
交響曲第37番ト長調 K444
交響曲第38番ニ長調 K504「プラハ」

エーリヒ・ラインスドルフ/フィルハーモニック・シンフォニー・オブ・ロンドン

MCA MCAD2-9818A(Westminster原盤)  1955年頃録音(モノラル) 8枚 8,000円で購入したウチの一枚

 史上初のモーツァルト交響曲全集録音(のはず)より。旧Mozart 全集によっていて、めったにお目にかかれない第37番もしっかり入っています。オーケストラの実体はロイヤル・フィルだそう(契約の関係で名前が出せない)で、繰り返しはしておりません。ややカタめで乾いてはいるが、音質良好。

 ワタシが1998年にこのサイトを立ち上げるに際して、最初に準備したCDがこの全集でした。最近、Mozart はまじめに聴いていないでの、反省して棚の奥から探し出したもの。

 1990年代の前半にLPを全部売り払って、ベームの全集のかわりが欲しかったんですよ。で、みつけたのがこれ。今となっては再発される様子もないし、珍しい音源となってしまいました。当初の印象は「ガサツ」といったところでしたが、これがけっこう胸を打つんです。

 結論から言ってしまうと「それでもMozart は素晴らしい」ということでしょうか。「リンツ」〜「プラハ」に至るまでCDを止められない。子供の頃の感激が蘇ってくるようで、ウキウキとして楽しく夢見るような音楽。

 「ラインスドルフってそんなに素晴らしいの?」〜晩年の成熟は、いっそう評価が高かったそうだけれど、この人、少なくとも日本じゃまったく人気がありません。ここでの演奏も、ま、素っ気なくて、そつないと思って間違いなし。イン・テンポと呼べばカッコウ良いが、早めのテンポ、ほとんどなんの思い入れも、歌心もない演奏なんです。もう少し愛想があっても良さそうなものだけれど、ゴリゴリと進めていって、それはそれで勢いもある。

 明るく素朴な喜びに溢れた、どちらかというとHaydnに近い「リンツ」。序奏のみがMozart で、あとはミヒャエル・ハイドンの作品である第37番は、資料的価値を超えて牧歌的な楽しさも(少々)ありました。但し、あきらかにMozart 後期の成熟ではないのは一目瞭然。やはり天才のワザは誰でも理解できる。

 ワタシがMozart の交響曲中もっとも愛している「プラハ」。(41番は別格)この曲の演奏ぶりもなんら変わり映えしません。でも、曲の真価がそのまま地で出ているようで、ダルな序奏からドキドキするような期待があります。そして幸せが吹き上がるような軽快な疾走が始まりました。このリズム感は悪くない。

 アンダンテは、まるで軍隊行進曲のようにリキみすぎ。フィナーレはわずか3:49ですよ。あっと言う間に終わります。木管の旋律が絡み合って美しい。ノリノリになってきたな、と思ったらあっけなく音楽が途切れました。

 オーケストラは、ビーチャム時代の優雅な響きとは印象が異なります。ところが、こうやって改めて聴いてみると集中力あるアンサンブルはそれなりに優秀でした。でも、色気が足りなくなっているのはラインスドルフの個性?録音のせいか、奥行きが薄くも感じます。低音も足りない。

 これは、間違っても名演の類ではないでしょう。でも名曲は実感できる。素っ気ないのはたしかで、誰も見向きもしない録音かも知れないが、ワタシとこのCDのおつき合いも10年を越え、愛着は湧くもんです。これなら、全集を聴き通す自信も湧きます。(2001年11月9日)

●1998年HP開設当初の「全集」コメント(恥ずかしい)


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written by wabisuke hayashi