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贅沢三昧

Mahler 辛苦編(第9集)

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 前々回バーンスタイン/ニューヨーク・フィルへ、と書いたけれど、またまた予定変更してバルビローリ行きます。いろいろ在庫を思い出すし、性格がエエ加減なので。

 まず、バルビローリ。ワタシの記憶では彼の生前、日本ではまったく評価低かったと思います。ところがCD時代に至って一変!だから商業評論なんて当てにならんのです。自分が好きだったらエエんです。例外的に、初出以来、高い評価を得てきたのがEMI EMI CDM 7631152  1,400円で購入●交響曲第9番ニ長調〜ベルリン・フィル(1964年 EMI CDM 7631152)であって、「団員の熱心な要望によって実現した」とは有名な逸話でしょう。でもね、ワタシはおそらくはCD購入10年以上経て、この録音をまともに最後まで聴き通したことがない・・・のは、自分の集中力の欠如だろうが、ココロが震えるほどの感動をいただいたことが(残念ながら)ありません。おそらくはワタシの耳の感性の低さ、勉強不足なのでしょう。オーケストラとの相性がよろしくない(美し過ぎ、艶やか過ぎ、上手過ぎ、走り過ぎ、音が安易に出過ぎ?)ような気がする・・・

 ・・・と、ここまで(かつての記憶で)書いて、件のCDを確認したら、「美し過ぎ、艶やか過ぎ、上手過ぎ、走り過ぎ、音が安易に・・・」がすべて、ポジティヴな方向に理解できます。聴き手の耳のエエ加減さ、というか、刻々と変化するのか。ずいぶん時間が掛かったものです。

 同じ第9番ニ長調なら、イタリア放送トリノ放送交響楽団(1960年ライヴ LIVINGSTAGE LS1084)のほうが(音質及びオーケストラの技量乗り越えて)、バルビローリの纏綿たる粘着質甘美な旋律がストレートに表出して、ずっと楽しめる・・・のはワタシの天の邪鬼性質によるものでしょう。EMIの正規録音なら●第5番 嬰ハ短調〜ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1969年)●第6番イ短調〜ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1967年)・・・清潔で柔軟性のあるオーケストラの特質が似合っていて、ちょっと緩め、押しつけがましさのない”泣き”が堪能できて、お気に入りです。(これもLP時代には評判よろしくなかった記憶有)

「ずいぶんと醒めた印象の演奏で、いつもながらの「横流れ」重視(つまり、時に縦線が合わない)のまったり、ゆったり風情だけれど、「泣き」がない。例の如しのMahler 的甘い旋律を、ていねいに、慈しむように表現したらこうなった、風演奏で、これはこれで個性的です。NPOはまったく明快。清潔。清廉。潔白。期待の「アダージエット」〜極限に抑えた表情はひとつの理想です。耳元で控えめな愛を、息も絶え絶え囁くような世界」

 ハレ管弦楽団との●第1番ニ長調(1957年)もエエですね。

「ここでのハレ管の技量は恐るべきもので、バルビローリの「思い」を細部まで表現して不足はない。「思い」とは、青春の甘い苦しみ、胸の痛み、懊悩、青年ならではの恋への憧れ、に存分にこだわって、細部まで描きつくした演奏なんです。

 甘い旋律はとことん甘く、あちこち「泣き」の節回しが頻出する。これほど臆面もなく、この路線が徹底されると快感に変わります。負けます。細部を徹底するあまり、全体のバランスとか見通しとかは別問題、そういうのとは少々次元が異なる。正直「自然体派」のワタシも少々動揺しがち。

 全体としてまったりしているようではあるが、フレージング自体はそうとうにカッチリ明快。いつもは、ちょっとご遠慮申し上げたい最終楽章も、ここまで熱狂的に、徹底的にやられると負けます。胸が熱くなりました。入れ込めば、どこもかしこも「バルビ節」を堪能できて痺れるはず。演奏芸術は個性ですよ」

 ●ニューヨーク・フィルとの1959年ライヴは、最終楽章のみ聴いております。古巣との相性はエエですね。筋肉質の響きに、いつもの”泣き”が加わって魅力的です。全曲聴きたいが、少々お高いので縁が薄い。

   IMG Artists  7243 5 75100 2 8   1970年録音ライヴ  2枚組@1,490で購入交響曲第 2番ハ短調「復活」〜バルビローリ/シュトゥットガルト放送交響楽団(1970年録音ライヴ)・・・ワタシのかつてのコメントは妙に素っ気ないが、終楽章声楽の盛り上がりがまったく見事で、胸がアツくなるような素晴らしい演奏です。オーケストラの素直で明るい響きとも、相性良かったと思います。(ベルリン・フィルとの1965年ライヴは未聴)●交響曲第3番ニ短調〜バルビローリ/ハレ管弦楽団/女声合唱団(1969年ライヴ)・・・昨年2005年に入手したが、期待ほどには・・・といった評価は未だ尚早でしょう。ベルリン・フィルとの1969年ライヴは未聴です。

 今回、ベルリン・フィルとの交響曲第9番ニ長調(1964年)に感銘を受けたが、バルビローリにはもっと素直で柔軟性のある、軽快かつ明るい響きのオーケストラが似合うのではないか・・・ベルリン・フィルとの録音が次々と登場するが、バルビローリと(Mahler 演奏に於いて)ベルリン・フィルってこんな重要な関係を結んでいたんですね。

(2006年6月10日)


 読者からメールで感想いただきました。
バルビローリのマーラーは、ハレ管との1番・3番は、バルビ ローリのイメージにぴったりの知より情の名演。5番(NPO)と 9番(BPO)は、オーケストラの機能性が加わった普遍的な演奏に なっていると思います。私見では、バルビローリのマーラーは、マーラ の持っている通俗的な部分を 作曲された時代の匂いとともに上品にわ かりやすくしかも情熱的に教えてくれるような演奏だと思います。2番 (シュトゥットガルト)と6番(NPO)は、あまり聴いていな いのでパスさせて下さい。4番・7番や大地の歌の録音もあ りましたが未聴です。
(2006年6月11日)

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written by wabisuke hayashi