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贅沢三昧

Mahler 黎明編

 2000年(大昔)に「贅沢三昧Beethoven 編」とか「Sibelius 編」とか、今更リンクさせるのもおぞましいくらいの駄文更新しておりました。ワタシはMahler の息の長い、複雑で官能的かつ甘美な旋律、非常識なくらい大規模なる楽器編成/声楽も大好きです。交響曲第1番ニ長調(所謂「巨人」・・・Giantsに非ず、Titan)は子供時代から、ワルター/コロムビア交響楽団で愛聴してきたが、LP時代に聴き馴染んだ作品は、けっきょく第4番(ハイティンク/コンセルトヘボウ管/アメリンク 1967年)を付け加えたのみ・・・というのは、当時高価贅沢品であったLP時代故でしょう。

 いえいえ、じつは1980年代中盤に巨大なる「Mahler 交響曲全集ボックス」(MurryHillレーベル 壱万円だったはず。当然LP)を入手しました。記憶を辿れば・・・(まちがいあると思う)

●第1番〜ボウルト/ロンドン・フィル
●第2番〜演奏者表記なし(ほんまです)
●第3番〜演奏者表記なし(ほんまです)
●第4番〜演奏者表記なし(ほんまです)
●第5番〜ルドルフ・シュウォーツ/ロンドン交響楽団
●第6番〜演奏者表記なし(ほんまです)
●第7番〜演奏者表記なし(ほんまです)
●第8番〜ミトロプーロス/ウィーン・フィル(1960年)
●第9番〜レオポルド・ルートヴィヒ/ロンドン交響楽団(録音年不明)

 こうしてみるとEVREST系の音源か?とも思うが、とにかくひどい音質でして、聴くに耐えん!音質(盤質)だったのと、若かったワタシはMALERを聴きこなす根性も力量も、あまりに不足しておりました。第5番はCD時代に正規盤入手して、まったくの優秀録音に間違いないから、劣悪海賊LPだったのでしょう。ルートヴィヒの第9番など、貴重なる音源(ミトロプーロスも同様)だけれど、当時このありがたみが理解出来なかった・・・(1990年代前半LPはすべて処分しました)

 ああ、そういえば交響曲第2番「復活」はウィン・モリス/シンフォニカ・オブ・ロンドン、第10番(クック版)も同じくモリス/ニュー・フィルハーモニア管(これはCD復刻済)で聴き馴染んでおりました。なぜか「大地の歌」は、ワルター/ウィーン・フィル/フェリアの名盤を別格として常に座右にあった・・・ということです。(これもCDを購入したのはほんの数年前でしたが)

 編成、所要時間、聴き手の根性含めて、Mahler をちゃんと聴けるようになったのは”CD時代”(個人的イメージとして世間から遅れて1990年代以降)となります。第5番/第7番は一枚で収まるようになり、いえいえ第2番、第6番、第8番、第9番さえテンポ設定によっては一枚になったし、つまりは「どうしてもCD一枚に収まらん!」というのは交響曲第3番のみ・・・そんな良き時代となりました。

 ワタシは硬派”音楽に余計な蘊蓄不要!”論者だけれど、柴田南雄先生の「グスタフ・マーラー」(岩波新書)には別格の感銘があります。1984年10月22日発売となっているから、この元となっているFM放送(大部分エア・チェックした〜現存せず)も含め、ワタシはLP時代に「Mahler 愛好」の準備を着々と進めていた、ということになります。いえいえ、すっかり忘れていたけれど、バブル真っ最中の1980年中後半でも、ワタシは貧しくて「FMエア・チェック」ばかりしていたのでした。(あの時代は、やたらとMahler 来日演奏多かったですよ)

 クーベリック/バイエルン放響(DG 429 042-2 西ドイツ製)10枚組で、最終的に「LPは贅沢品になってしまった。これからはCD時代だ」とあきらめた(LP全部処分/プレーヤーも)のが1994年。「Mahler 全集をちゃんと購入して聴こう」と意識して、ある日購入したのは、●クーベリック/バイエルン放響(DG 429 042-2 西ドイツ製)10枚組・・・1989年頃の発売らしいが、いまとなっては購入金額も不明・・・当時店頭に存在した中ではもっとも安かったはずだけれど、壱万円でお釣りは来なかったと思います。

 当時、続々と発売されていた新録音には手が出なかった(CDが高くて)、定評あるバーンスタイン(旧盤)は、FMで聴いた第8番の混沌雑然とした乱暴なる響き、駅売海賊盤で確認したはずの第5番はアンサンブルがひどすぎて、そのアンチ・テーゼだったかも知れません。(もちろん価格問題も有。2005年現在でもそう安いとは言えない)壱万円某の価格が安いかどうかは「ちゃんと聴いたか、楽しんだか」によって決まるものでしょう。

 爾来十数年、ワタシはこの穏健派表現を愛しております。バイエルン放響の、中低音を重視した暖かい響きを聴いていると、ココロに安寧が広がるんです。クーベリックの燃えるようなライヴ録音を否定するものではないが、得意な異形性を前面に出さない方向、過不足なく、オーケストラの実力をしっかり底辺に据えた立派な全集だと思います。

 千度言い訳がましい”駅売海賊盤”だけれど、1990年頃、「1,000円でCDが買える、Mahler が買える」というのはありがたいものだったんです。堂々と恥ずかしげもなく、こんなCDのことをサイトに(持続的に)掲載しているのは(全世界的に広いネット界に於いて)ワタシくらい(で、バカにされちゃう)だけれど、密かに「じつは同じものを当時購入しました」とカミング・アウト・メールいただくこともあります。いやぁ、お世話になりましたなぁ、というか、いまでも。

 この件、既におおよそ状況をまとめております。駅売名曲海賊盤情報(?)■第5集■(Mahler 作品集)世評高いショルティの録音中心にかなり収集可能・・・って、じつはここ数年正規全集が、かなり安価(当時の駅売海賊盤より安く)で入手可能になっております。クリアであって、圧倒的オーケストラの輝かしい技量前面で、爽快物量派体育会系演奏も勉強になりますよ。(好みではないが、表現の多様性とか視野を広げるという意味で)

 シカゴ響との全集も全部は聴いていないが、1960年代の旧録音もなかなか興味深いものです。先にバーンスタインの交響曲第8番(ロンドン交響楽団 1966年)との出会いに触れたが、ショルティ(1971年)の威圧感にも耐えられず、「千人の交響曲」は長く、ワタシの苦手作品として意識されるようになりました。残念なる出会い。正直、今更売り払うこともできず、正規全集購入する勇気も余裕も存在せず、いつのまにかワタシにとっての大切な在庫となっております。

(続く 2005年5月29日)


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written by wabisuke hayashi