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贅沢三昧

Mahler 道草編

(エミール・タバコフ/ソフィア・フィル全集)

CAPRICCIO 79043 15枚組 2,817円(税込送料込)  ワタシゃKechiだけれど、たくさんCDも買っていて、結局聴ききれないからバカみたいなもんですよ。Mahler のCD在庫棚卸し、気分も新たに〜その作業最中に、また新たな全集を購入しちゃいました。タバコフ/ソフィア・フィルのMahler 全集を2005年7月再購入した経過は、既にサイトに掲載済み。ネット上でのクソミソな評価やコメントを拝見した関係で、意地でも一通りきちんと聴いてやろう!と決意して(執筆時点)10日間ほど。ちょっとまとめをしておきましょうね。(「音楽日誌」に加筆修正)以下、すべてエミール・タバコフ/ソフィア・フィルにて(CAPRICCIO 79043 15枚組 2,817円)

●交響曲第1番ニ長調「巨人」(1989年3月)

古今東西著名録音多数犇(ひし)めく名作故、その中で光り輝く個性を発揮するのは難しいでしょう。全体として素直・素朴・誠実な味わいはいつも通りだけれど、”いかにも弱い”・・・印象ありますね。メリハリ、オケの集中力、鳴りっぷり、セクシーさ、懐かしい味わい、いざという時の大爆発・・・つまり、様子がわかりにくいかも。器用なオケではない。それでも最終楽章に向けて全力で!という努力は感じられます。
●交響曲第2番ハ短調「復活」(1987年1月)

ティーハ・ジェノーヴァ(s)/ヴェッセーラ・ゾローヴァ(a)/ブルガリア国立“スヴェトスラフ・オブレテノフ”合唱団

全体にオケが鳴らない(迫力に不足する。ティンパニ、金管に)、アンサンブルのテンションが落ちることもある・・・が、素朴だし、素直だし、ホールの奥行きを感じさせる音質(オフ・マイク気味だけれど)は悪くないもの〜で、けっこう楽しめましたよ。これはどういうこと?散々、なんども「復活」聴いてきて、馴染みの旋律であり、その表現方法を様々な視点で楽しめるようになった、ということですか?

ラスト「おおいなる呼び声」(クロップシュトック詩)にたどり着いて、すべてが解決したような満足感が得られました。誠実に、しっかり前方を向いて全力で演奏する姿が眼前に彷彿と・・・名曲ですなぁ。

●交響曲第3番ニ短調(1990年4月)

ブリギッテ・プレチュナー(a)/ブルガリア国立“スヴェトスラフ・オブレテノフ”合唱団/“ボドラ・スミアーナ”児童合唱団

これは相当に水準高いと思います。

アンサンブルはそれなりに優秀、素朴な安らぎが溢れます。第1楽章小太鼓〜冒頭ホルン回帰前のアッチェランドもアツく、打楽器大活躍!残響豊か、定位のはっきりとした優秀録音。清楚な声楽〜最終楽章のシミジミとした詠嘆まで、素晴らしき歌が続きます。難を言えば、力演の金管が時に響き濁り、ポストホルンに深遠な音色が聴かれない・・・ことくらいか。

●交響曲第4番ト長調(1990年1月)

リュドミラ・ハジエヴァ(s)

この曲に限らず、全体に収録音量レヴェルが低くて、オフ・マイクっぽい残響に全体像が埋まります。この楽章に限っては、静謐な安らぎがあってソプラノも清楚そのもの。

静謐な作品はこのコンビに似合っていて、録音も自然な奥行きと、各楽器定位がしっかり理解できて優秀です。誠実素朴清潔路線は他作品と同じであり、但し、潤いとか余裕、タップリとした美音は期待できません。響きがやや薄いのは否めず。それでも、この作品は全10曲中、もっとも安心して楽しめるものになっておりました。

●交響曲第5番嬰ハ短調(1988年10月)

冒頭から出ずっぱりのトランペットからなかなか優秀で、緊張感もあります。細部、アンサンブルのズレ、というより、リズムのキレとノリに弱さが散見されますね。個々の楽器のソロにも少々魅力に足りない。(時にピッチも・・・少々)しかし、なかなか熱演!誠実。

有名な「アダージエット」・・・これも同様の音質、奥床しい清潔さに充ちて爽やかでした。そのまま最終楽章に進んだけれど、アンサンブルは時に乱れ、テンションが続かないところは散見されるものの、素朴で前向きな表現に胸打たれれます。(一般には”ヘロ演奏”と評価されるだろうが)

●交響曲第6番イ短調「悲劇的」(1993年10月)

この作品は全集中、もっともオケの技量が問われるようなド迫力、異形なスケールを誇る作品故少々出来が心配・・・聴取順番ラスト方面に持ってきました。途中まで聴き進んだ感想としては、ぎらぎらするようなオケの集中力に欠け、大人しく迫力不足・・・でも、素直で飾らずこれはこれで美しい、威圧感の薄い演奏に思えます。第3楽章「アンダンテ・モデラート」に於ける牧歌的な味わいは出色でしょう・・・。

最終楽章迄聴きました。う〜む、渾身大力必要なところだから、ちょっと息切れ気味かな?

●交響曲第7番ホ短調「夜の歌」(1989年10月)

これは難しい作品です。第1楽章の妖しくも濃密な雰囲気は表現されず、やや集中力散漫な響きで、音楽の行方あちこち不明状態に。この作品白眉の第2/3/4楽章は、清潔な素朴さがあって悪くないなと思いました。オケは非力(低音が弱い)であって、音楽の推進力が途切れる場面があり、各パートがソロで出現するときに、音色やら節回し表現に不満(セクシーではない)を感じることもあります。

この「中3楽章」には室内楽的緻密な集中力が必要でして、第5楽章「夜の音楽U」はエエ雰囲気で、それなりの美しさはあるけれどエッチさが全然足りない。第1/5両端楽章では吹っ切れたようなバカ騒ぎをパワフルに演じて欲しいが、あくまで品行方正で中途半端か。おとなしいか。でも、それはそれで持ち味だっせ。

●交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」(1991年6月)

リュドミラ・ハジエヴァ(s)/タマーラ・タカーチ(a)/ボリアーナ・タバコヴァ(a)/ヤーノシュ・バンディ(t)/パル・コヴァーチュ(br)/タマーシュ・シューレ(b)/ブルガリア国立“スヴェトスラフ・オブレテノフ”合唱団/ブルガリア国立放送合唱団/ブルガリア国立放送児童合唱団

第1楽章・・・これは24分でCD一枚という贅沢収録だけれど、集中力が続かず時に音楽の様子が混沌としてわからなくなる。つまりやや構成に難有か?でもさ、クソミソ言うような演奏じゃないですよ。オケの響きが少々薄くて、サウンドにしっかりとした芯を感じさせないとはいえ。

ラストまで確認。オケも声楽も少々線が細く、テンションが続かなかったりするが、基本誠実でそう悪い演奏ではないと思います。威圧感がない。うるさくない。録音良好で奥行きと清涼感があります。例えば金管の響きが魅力不足だったりするが、コスト・パーフォーマンス充分!もしかして一連のアブラヴァネル全集を聴き慣れたせいだろうか?(ショルティ支持派には縁がない演奏でしょう)ラスト「すべて移ろい過ぎゆく無常のものは」は存分にチカラも入って感動的。

●交響曲第9番ニ長調(1991年3月)

やや、さっくりとして散漫っぽい演奏だけれど、作品の価値を貶めるようなことはなくて、充分楽しめます。
遅いテンポ、ていねいなる仕上げ、やや大人しく、個性不足だけれど、清涼なる素直な味わい、ヘロ演奏ではありませんね。情念とか熱情とか、詠嘆とか、そういう方向じゃないけれど。オケの響きそのものが薄かったり、残響過多の録音(音質そのものは優秀です)で、様子がよくわからない、というのはあるかも知れません。

最終楽章〜清明な心境でゆったり、静かに歌われます。洗練されない響きであり、艶とか、包み込むような奥行きは感じられないが、作品の魅力は充分に堪能できました。(全88分)

●交響曲第10番「アダージョ」(1987年4月)

激昂せず、飾らず、地味な世界は控えめに、延々と継続されました。
ワタシが子供時代1960/70年代「Mahler 全集」は”高嶺の花””超・贅沢品”だったんですよ。それが「2,817円(税込送料込)」ねぇ・・・諸行無常というか、なんというか・・・きっと、若い人にはこれが当たり前なんでしょう。でも、LP初期には「LP一枚が初任給の半分だった」みたいなエピソードもあるから、諸先輩からみれば当然の歴史の流れなのかも。ていねいに、ありがたく聴かせていただきました。
(2005年7月29日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi