外伝へ
Mahler 怒濤編
贅沢三昧 多くの人々がそうであるように、LP時代のMahler といえば、出会いは交響曲第1番ニ長調〜ワルター/コロムビア交響楽団(1961年)だったんじゃないでしょうか。その優しい風情、包み込むような暖かさ。しかし、大学進学時にLPをすべて処分(第1次処分)して以来、30年ほど聴いていなくて、あくまでそれは記憶の中のイメージだったのか。ところがCBS/SONYは、なかなか思い切った価格での廉価盤発売には消極的だったようで、価格がこなれませんでしたね。人気音源なのか、中古でも意外と出物が少ない。
2003年12月でしたか、5枚組3,760円(SMM5054072)で(思い切って)購入〜これとてニューヨーク・フィルとの「大地の歌」(1960年)が含まれません。*1954年のニューヨーク・フィルとの第1番はもちろん含まない。これは駅売海賊盤KLD-08で入手済み。結論的に、第1番は往年のイメージからの退色は一切なかったし、演奏スタイルやら譜面問題(ワタシには与り知らぬ問題ではあるが)を超え、第2番「復活」、第9番(1961年)〜これは柴田南雄先生のFM放送を思い出しました〜、モノラル録音である第4番(1945年)/第5番(1947年。これもLP時代からお気に入りでした。すべてワタシが”Mahler 好き”に至った原点であったと気付きました。
ワルターにはCBS録音以外にも著名なる録音が存在します。1938年のウィーン・フィルとの第9番は、JOY SOUND KC-1037という駅売海賊盤(ま、著作隣接権クリアではあるけれど)で早期に入手しておりました。1999年辺りから、NAXOSは歴史的録音を良質な復刻で再発して下さって、「大地の歌」三種〜1948年ニューヨーク・フィル・ライヴ(音質がそうとう厳しい)、有名なる1936年ウィーン・フィル・ライヴ、そして英DECCA1952年ウィーン・フィルとの名録音も、(適切な価格で)楽しむことができました。
ワタシは声楽方面は苦手としているが、「大地の歌」には別格の感銘がありますね。若い頃にはフェリアの個性的な太い声質に違和感があったものだけれど、いまとなっては比類なき深き味わいに感涙累々状態。LP時代に明るく歯切れの良いオーケストラの響き、ヘフリガーの端正な歌唱に痺れていた1960年ニューヨーク・フィル録音(28DC 5055)は、中古500円にて昨年2004年に(ようやく)購入できました。
● 話しは少々時期を戻すが、2000年にハイティンク/コンセルトヘボウ管弦楽団による「クリスマス・マチネ・ライヴ」9枚組6,990円(税抜)を購入しております。これはテンシュテット全集とほぼ同時期に購入していて、結果的にこちらのほうがずっと気に入って、すっかり”ハイティンク・ファン”としての自覚深まった、といった演奏でした。残念ながら第3/8番と「大地の歌」が含まれません。
これは1977年〜1987年、この黄金のコンビが成熟していった記録であって、地味ではあるが練り上げられた自然体がシミジミ胸を打つ演奏でした。(ちなみに第6番は1968年ライヴが存在します。Q DISC 9714 14枚組)交響曲第5番 嬰ハ短調(1986年)/交響曲第1番ニ長調(1987年)のコメントが残っております。数多いMahler のなかでも、もっとも聴く機会の多い、お気に入り録音です。
ハイティンクの旧録音全集が欲しいものだ・・・と考えていたら、2003年9月に東京・渋谷の中古屋にてPHILIPS 442 050-2(10枚組3,050円。「大地の歌」は含まれない)と出会いました。これはいっそう地味な、一見ほとんど恬淡として無為無策のように聞こえるかも知れません。昨今のグロテスク前面強調したり、オーケストラの圧倒的爆発力を喜ぶ風潮(所謂”爆演系”か)からは一線を画す、抑制の利いた知的なものでした。オーケストラが極上に上質で美しい。(第7番1969年録音へのコメント有)
全曲録音ではないが、コンセルトヘボウ管との新録音は入手しにくい状況となっており、未聴。ベルリン・フィルとの新しい録音は全集に至らないようだけれど、第1番(1987年)、第4番(1992年)、第5番(1988年)を入手済み〜しかし、オーケストラとの相性問題か、ワタシはほとんど楽しく聴くことが出来ませんし、結果(価格問題含めて)残りの録音を購入する意欲も失っております。最近、フランス国立管弦楽団との第6/5番とのライヴが登場し、評価が高いと伺いました。彼の「大地の歌」(1975年)は見掛けたことも、(もちろん)聴いたこともありません。
● ●贅沢三昧 Mahler 黎明編/●贅沢三昧 Mahler 疾風編と(だらだら)書き進んできて、その間に交響曲第9番ニ長調〜ザンデルリンク/BBCフィル(1982年ライヴ)を聴きました。「音楽日誌」で曰く、BBCフィルのジンワリ・サウンドはここでも実力発揮して、録音のマジックだけはなさそうですね。第3楽章「ロンド-ブルレスケ」はかなりテンポが揺れ、走る(もちろん上滑りはしていない)アツい演奏だけれど、良い意味でジミな抑制が常に感じられます。そして終楽章「アダージョ」のシミジミ黄昏た味わい(とくに弦の渋い響き)は英国オーケストラならではの魅力。ベルリン交響楽団盤(1979年)が全80分に至ってCD2枚になったのに対して、78分で一枚で・・・というのもありがたい。・・・と。
お気に入りバルビローリ、ブーレーズ(一連の新録音はほとんど気に入らず、全部は聴いていない)に言及しようと思ったが、またの機会に。