Mahler 交響曲第2番「復活」ハ短調
(ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニック)
Mahler
交響曲第2番「復活」ハ短調
ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニック/ウェストミンスター合唱団/エミリア・クンダリ(s)モーリン・フォレスター(a)
SONY SMM5054072 1957/8年録音(カーネギー・ホール) 5枚組3,760円にて購入したウチの一枚半
2003年12月に購入した、ブルーノ・ワルターのMahler 交響曲集(CBS録音、ニューヨーク・フィルとの第1番、「大地の歌」含まず)には個人的に感慨ありましたね。ワタシのMahler 好きは、ワルター/コロンビア響の第1番(1961年)との出会い(おそらく中学一年生)が源泉にあるし、ま、LP時代はとにかくMahler のレコードって高かったですから。(当然、ビンボー家庭少年では買えなかった。廉価盤も当時少なかった)
だからMahler の交響曲を馴染みの存在にしていったのは、ごくごく最近のCD時代からだったはず。定評あるワルターのCBS録音は高くて手が出ませんでした。やがて幾星霜、日本ではバブル時代を最盛期としてMahler はすっかり日常の音楽となりましたね。それとは反比例するように「ワルターのCBS録音」って、あまり話題にならなくなりました。試しに「ワルター 復活」でサイト検索掛けても、演奏内容にコメントしたサイトはなかなかみつからない。(たいていは”CD持ってます”と”録音情報”くらい。あと、素晴らしい!など程度か)
まずこの世代(1876〜1962)の指揮者にしては、出色の鮮明なるステレオ録音を残してくださったことに(ひたすら)感謝。結論的にワタシはとても楽しみました。穏健派「復活」。この録音時期って、ワルターが心臓患ったり、もう実質上演奏会からは引退だよ、的体調だったんでしょ?いくらでも煽れる作品だと思うけど、抑制が効いている、というか、もっとイっちゃってよ、とも少々思うくらい。ちょっとものたりないか。元気足りないか。(特に前半)
この「復活」CD収録の前後に1961年録音の第1番、「さすらう若人」(コロンビア響/ミラー)が流れるんだけど、さすが最晩年というか、割り切って録音(非常に優秀)に徹している、というか、録音がもの凄く良い、というか、耽美的でまったりして細部の仕上げ最高なんです。それに比べるとオーケストラの個性もあるだろうし、ストレート系演奏まっしぐら的完成度!と迄は到達していないか・・・とも思う。(録音も相対的に落る・・・というより、残響少なくてずいぶんと印象が異なります。ま、ワルター初のステレオ録音ですから、少々サウンド的にデリカシーが欠けるのは仕方がない)
でもね、この演奏、繰り返し聴取に耐える水準だと思います。出足、ちょっと引き気味だけれど、即テンションを上げてニューヨーク・フィル特有の暖かくて、芯のある(しかし色気には欠けるかな?)響き(とくに金管が素晴らしい)が導き出されました。決然として、楷書の表現に悲壮感はない。朗々たる叫び有。打楽器もびしっと決まっちゃう。でも弱音での緊張感が不足するように思えるのは、指揮者の体力問題か。(以上第1楽章)
第2楽章は弦がよく歌って、シミジミやさしい。金管に厚みがあって、ぽってりと暖かい。第3楽章「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」の自信と精気に充ちたリズム、表情と爆発!ここから以降、おそらく心臓の病が癒えてからの録音でしょうか。低弦、ティンパニのしっかりとした主張が説得力深い。フォレスター(この人、Mahler のスペシャリスト)の「原光」の深遠さに納得しつつ、音楽は幽玄壮大なる最終楽章へ。こここそ白眉。
ニューヨーク・フィルって、金管らしい金管です。刺激的にならず、思いっきり開放的に、豊かに、圧倒的に鳴り響きました。(トランペットのコクのある音色が素敵)それに打楽器群が負けじ、と盛大なるラッシュ!(録音レベルもたいしたもの)クンダリ(s)もフォレスター(a)同様説得力有。ウェストミンスター合唱団のほうは、はっとするほどの感激水準ではないかな?全曲約80分、細部ややラフな感じはあるが、この時期のニューヨーク・フィルを考えれば、むしろ出色のアンサンブルと評すべきでしょう。(バーンスタインとの録音を思い起こせ)
ワルターの価値とはなんら関係ないが、SONYのCD編集には不満があります。まず一般に価格が高い。他のレーベルのこの時代の録音復刻から見ても高くて、今回購入したものが底値くらいでした。(@800以下で文句言うな!ってか)上記に書いたように、CD収録も気に食わない。〜なぜ「大地の歌」が含まれないのか。なぜ「復活」を二枚にわけ、交響曲第1番のあとに第1楽章を持ってくる必要性があったのか?(音質的、オーケストラのサウンド的、精神的に違和感有)「さすらう若人の歌」(ミラー)を、第1番のあとに収録すれば収まりが良かったはずなのに。(時間的にも収録可能)
SONYの再発もののコンピレーションにはいつも違和感があって、これは会社の体質です。困ったもんだ。(あくまで個人用に)CD一枚分に収録・焼き直しました。これはワルターの音楽に対する敬意のつもりです。(2004年5月7日)