Mahler 交響曲第5番 嬰ハ短調
(ハイティンク/コンセルヘボウ管弦楽団 1986年)


PHILIPS 464 321-2 1986年ライヴ 9枚組6,990円 Mahler

交響曲第5番 嬰ハ短調

ハイティンク/ロイヤル・コンセルヘボウ管弦楽団

PHILIPS 464 321-2 1986年ライヴ 9枚組6,990円で購入

 2000年初頭に、ノイマン/ゲヴァントハウスのMahler を聴いたら、案の定いっきにハマってしまって、このCDも見かけたとたん買ってしまいました。(大出費)ハイティンクはメジャーながら地味な印象で、LP時代から数枚しか聴いてこなかったし、CD時代になって購入したのも始めて。

 1980年代くらいから芸風が一気に変わったようで、FMで聴いたBrucknerの第5番(ウィーン・フィルとのライヴ)には心底感服しました。オケの持つ個性とか、曲の本質的な魅力を無理なく、あますところなく引き出す本当の名人。 この人の録音はたくさんありますし、とくにLPO時代の録音がほとんどCD化されていないので、激安で復活して欲しいもの。

 このセットは、1977年から1987年の「ユーロヴィジョン・クリスマス・マチネー・コンサート」からのライヴ収録。コンセルトヘボウではクリスマスにMahler を演奏する習慣でもあったんでしょうか。6・8・10番と「大地の歌」が欠けています。CD一枚一枚が紙パックに納められたエコ・パックも好ましい。音質は極上。なぜか放送用音源からの復刻が続くハイティンク。

 え〜、なんと申しましょうか、この演奏はじつに自然体。エキセントリックとか、目新しいとか、そんなところはどこにもありません。基本路線としては、おおらかに、のびのびと、深い呼吸で歌う演奏。小細工はないけれど、細部まで配慮が行き渡っている演奏に間違いなし。フレージングはオーソドックスで清潔。テンポも適正。なにも足さない、なにも引かない。

 痺れます。オケの音色そのものに。カラヤンのベルリン・フィルもセクシーだけど、化粧が濃くて鼻につきます。きつすぎるオーデコロンに食欲も起こらない。この演奏、ぼ〜っと聴いていると、気持ちがいい。オケの響きそのものに魅了されます。曲が進むに連れて、もう悦楽の世界。

 弦が、管が、打楽器が、とか、どの楽章が、部分が、旋律が、なんていう水準じゃなくて、どれもれも極上。利尻昆布のような、上品で透明なダシ。恣意的なテンポの揺れもほとんどないし、このマジックはいったいなんなんでしょう。どのパートもバランスがよくて、突出しない。オケは練り上げられた名人芸がひしひしと感じられて、言葉も出ないほど。音楽がつぎつぎと連なって、有機的で。とけあって。静謐であり、厚みも有。

 ライヴ特有の高揚感もあって、奥行きのある会場の残響もあります。自然で、ワタシがもっとも気に入った感じの音質。聴衆の熱狂的な拍手にも納得の演奏水準。聴き手であるワタシの調子にもよるけれど、1・2・3・4番と聴いてきて、この第5番に打ちのめされてしまいました。こうなると大枚7,000円、そう高くは感じない。

 おそらくハイティンクの棒の冴え、オケの恐るべき芸風の高潔さ、が前提としてあるのでしょうが、そんなことは考えませんでした。ひさびさに無心に感じ入った演奏、といっておきましょう。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi