評価の高い名演奏

萩の東光寺。有名な鬼瓦。2002年1月

 前回の「近況」を書いたとたん、流行病(はやりやまい)にやられました。(独言「例年のインフルエンザ」参照)お恥ずかしい。そのまま肺炎にでもなれば大事だけれど発熱は数日でたいしたことありません。かなりグズグズは持続はしているが、「インフルエンザに罹ると他の病気をしない」なんていう本を読んだりして安心しております。これから暖かくなって、春が来るのでしょう。

 残念ながら、と言ったらよいのか今年も異動はなくて在岡山も4年目に入ります。2002年度は仕事の内容も変わりません。飽き性のワタシには少々ツマラない。自分自身の中で「変化」を作り出したいもの。それはやはり「他人との交流」から作り出すものなのでしょう。ワタシのサイトもそろそろ4年目を迎えるが、毎週毎週休まず更新してきたら少々知名度も上がってきたみたいで、なんとなく嬉しい。

 ま、内容(なかみ)を読んでいただければ一目瞭然だけれど、じつにシンプル(粗雑とも言う)で一切専門的用語皆無(知らんので)、勝手な言い草ばかりでお茶を濁していて、自分であとで読んでみると恥ずかしい。でも、厚かましくそのままにしています。(じつはあまりにひどいのは密かに消している)ワタシは世評とか知名度、ましてやCDの価格で音楽の評価をしたことはないが、それでも「これは決定盤!」みたいのを敬遠してきたかな?といった反省はあります。


 だって、高いでしょ?CDが。それに昔みたいにFMを聴かなくなったし。中学生時代から、「これは話題の録音でっせ」みたいな放送は欠かさず聴いていて、カセットにも録音して繰り返し聴いたもんです。ところが、1990年代辺りからそんなのほとんど聴く機会がないんですよ。例えばアバド/ベルリン・フィル(以降)とか、バレンボイム/CSO、マゼール/バイエルン放響、晩年のノイマンなんかも聴いていない。小澤には食指がのびない。最近は、主たるオーケストラの主席指揮者も興味がない。

 主だった「名演決定盤」はそれなりに聴いたはずだけれど、抜け漏れはあります。代表例がクレンペラー/(N)POの「大地の歌」、ジャクリーヌ・デュ・プレのElgarチェロ協奏曲。(少々前に聴いたけれど)朝比奈の聖フローリアン・ライヴとか。で、このたび図書館で借りてきまして、しっかり聴いてみました。いつまでも廉価盤にならんので買えないんです。

 だめですよ、CDRにコピーしちゃ。本でもCDでも自腹で買わないと真剣に聴かないもんです。「安いCDを探す」のと「不正コピーをする」というのは別もんです。岡山市立図書館さんには散々お世話になったので、そのうちCDでも寄付しようと思っております。


Mahler 交響曲「大地の歌」


クレンペラー/(ニュー)フィルハーモニア管弦楽団/ヴンダーリヒ/ルートヴィヒ

EMI TOCE-7022 定価2,200円(!)  1964/66年録音

 ワルターは新旧盤を昔から聴いていたのに、世評高いこの録音を聴いたのは初めて。1951年録音のVOX盤はまったくみごとで、しかも「復活」との2枚組という大お徳用廉価盤。(お勧め)まずEMIでは避けて通れない音質問題では、驚くほど明快で、芯もあるし艶もあるので安心しました。(テンシュテット盤より良いのじゃないか)

 一般に「歌もの」は苦手だけれど、この曲にはまったく抵抗がありません。歌い手の質も自分なりに理解できる。もちろん管弦楽には注文を付けたいところがたくさんあります。まず、クレンペラーの表現が、細部までおそるべきほど明晰であること。オーケストラの響きが明るいこと、重くないこと、クセとかへんに色気付いていなくて、クレンペラーの要求に完璧に従った緻密なアンサンブルに驚かされます。

 テンポはVSOとの録音よりトータルで10分以上長くなっているが、表現が間延びしたり、緊張感が失われることはありません。あくまで細部を彫琢した結果、こういうテンポになったという説得力充分。ワタシはどの楽章も大好きな旋律ばかりながら、第3楽章「青春について」がいかにも東洋風な旋律でお気に入りなんです。ここのテンポがゆるりとしていて、一つひとつの音を確かめるように、悠々と楽しげだと思いませんか?

 第5楽章「春に酔える者」は、バックのオーボエ(ドイツ語がようワカランが、ヤ、ヤ、と歌うところ)が明瞭に聞こえるかを注目します。(ジュリーニが好例)これほど明快に各パートを主張させている演奏は類を見ません。それにしてもヴンダーリヒの心のこもった声が気持ちの良いこと!ちょいとホロリとさせる青春の胸の痛みを感じさせる声。

 ルートヴィヒの知的で広がりのある声質も文句ないでしょう。知情意バランスの取れた、完璧な歌唱。めまいを呼ぶような高揚。(とくに「告別」)また、フルートとの絡みもみごと。30分の長丁場をを一瞬と感じさせる入魂の熱唱。「大地の歌」には歴史的録音(しかも名演)が多いが、歌い手は個性が強すぎたり、やや時代を感じさせる場合もあって難しいんです。だからといって、さっぱりと整っただけの歌で満足できるわけもない。

 これ、管弦楽と歌い手が完璧のバランスで「ベスト・ワン」の評価は、あながち否定できません。なんどでも聴けますよ。2〜3時間くらいすぐ経ってしまう。これから先がワタシの感想だけれど、オーケストラの響きがいかにも若くて熟成が足りません・・・が、この場合、その方が良かったんでしょうか。クレンペラーの主張を真面目に具現化していて、オーケストラのそのものの自主的な、深みと「伝統」(これはクセもの)ある響きではないが、爽やかなんです。そして、なんども言うが明快そのもの。マンドリン(?)がここまではっきり聞こえるのも初体験。

 「大地の歌」は、ウィーン・フィルが良い!ニューヨーク・フィルも良い。終楽章のフルートの深み、ホルンの奥行き、弦の輝くような厚み、全体としての中低音の重心の低さ。それはフィルハーモニア管には不足しております。でも、この演奏を聴いて、それを致命的な弱点に数える人がいるでしょうか。なんと清潔で、気持ちよい演奏でしょう。そして、この曲特有の厭世観もまちがいなく漂う。これはクレンペラーとの相性でしょう。

 嗚呼、こういうCDはレギュラー・プライスで買っても良いのかも知れないなぁ。ま、でもこんな立派で有名な録音はワタシのサイトの守備範囲じゃないし、他の多くの音楽ファンの方々に任せることにしましょう。久々この曲を、そして音楽を堪能した気持ち。(2002年3月3日)

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written by wabisuke hayashi