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贅沢三昧

「シェヘラザード」編(余話)


 先日、Beethoven のCD棚卸ししたら、読者よりBBSに「相当なコレクションにて、敬服いたします」との(ま、ご挨拶だろうが)書き込み有。「いえいえ、書いている通りでして、コレクション自慢じゃないんです。反省です。ただのアホです。自分なりの棚卸し、虫干しです。敬服されると困ります」と返答しておきました。人生、反省の連続であります。で、今回はRimsky-Korsakov交響組曲「シェヘラザード」〜毎度同じ言い訳だけれど、ワタシは「万難を排して蒐集せん!」的性癖はなくて、ま、安かったから買うておきましょうやい、みたいなノリです。けっこう好きな作品でして、著名な作品ということもあり、中古出物もけっこう多い。

 自覚はないが、ふと棚をひっくり返すとたくさんあるんです「シェヘラザード」・・・って、自分でも呆れました、ということはBeethoven でも同じ経験済み。これがMozart 、Bach 、Stravinskyだと狙って購入しているから、大量在庫の自覚はあります。でもねぇ、「シェヘラザード」がこんなにあるとは・・・ちゃんと聴いてますよ。でも、ほとんど記憶が消えつつあります。ノーミソ大脳皮質前頭連合野は鍛えないと、どんどん退化しちゃう。せめて、サイトに載せて再確認、こうして自分の備忘録とする決意です。(こんな文書、サイトに掲載して読まされる読者の身になってみろ!ってか)

 ちゃんと聴きましょう、という決意でもあります。


IMG Artists  7243 5 75941 2 7またもや棚中より在庫発見!(2006年12月)■エドゥアル・ド・ファン・ベイヌム/コンセルトヘボウ管弦楽団(1956年)・・・これがホルンやら木管群の音色が極上であって、全体として剛直な厚みを感じさせて、カラヤン/ベルリン・フィルに匹敵する豪華な響きを堪能させます。但し、こちらはもっとストレートで飾りがなく、甘さ控えめ。男性的と言っちゃマズいか。録音はモノラルとしては極上でして、ヴァイオリン・ソロ(Jan Damen)は少々線が細く、神経質な印象有。やっぱり、シュヴァルベ(ベルリン・フィル)の色気は良かった。


 一ヶ月後、棚奥よりCD一枚発見・・・追加(2006年12月)

ジョイサウンド KC-1055 RCA音源■ピエール・モントゥー/サンフランシスコ交響楽団(1942年 ジョイサウンド KC-1055 RCA音源 900円だったか?)
音質は録音年水準か、そう悪いものでもありません。颯爽とダンディな演奏であって、やや速めのテンポ、前倒しのリズム、当時のサンフランシスコ交響楽団の勢いと熱気を感じさせる、カッコ良い演奏。「幻想交響曲」(1950年)でも同じような感慨を得たから、これが最晩年ではない矍鑠とした気力体力の反映なのでしょう。当時、豊かで希望に溢れていたアメリカの時代反映のようなものも聴き取れます。とても楽しめました。


 名曲です。管弦楽の効果が最高潮に発揮された華やかな作品。音質はよろしいほうが、聴き映えすると思います。それに、優秀なるオーケストラこそ必須条件でしょう。と、いうことで、まず・・・

■カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー/シュヴァルベ(v)(1967年 FIC ANC-47 DG音源の駅売海賊盤ですんまへん/250円)
 一聴、印象深いしっとり官能性溢れる演奏であることが理解できます。シュヴァルベの濡れたようなヴァイオリン・ソロ、管弦楽の圧倒的艶々な質感も文句なし・・・という記憶鮮明。この作品は、往年の巨匠とは縁の薄い作品のような気もするが(だって、フルトヴェングラー、ワルターなんかの録音はないでしょ?)カラヤンは”音楽の大衆化”に全力で寄与したと思います。

 歴史的録音(というか、音質の良くないもの)は、この作品には似合わないと思います。

■アンタル・ドラティ/ロンドン・フィルハーモニック(History 204569-308 1937年)
 この録音が手持ちでは一番旧い。SP復刻だろうが、思いの外聴きやすい音でした。1906年ブダペスト生まれ(〜1988年)だから、当時31歳の俊英ですよ。やや色気不足で素っ気ない表現ながら、勢いがあって意外と聴かせる演奏でした・・・とは、「音楽日誌」からの引用です。速めのテンポでキリリと引き締まった響きであって、けっして資料的価値に止まらない。

1967年 ARKADIA  GI 771.1/300円・・・だけれど、売却済■イノ・サヴィーニ(INO SAVINI)/ヤナーチェク・フィルハーモニー(1967年 ARKADIA  GI 771.1/300円)
 そんなに旧い録音じゃないが、かなり音質が厳しくて、ちょっと聴くのがツラかったですよ。(既に処分済/仕方がない)でも、珍しい録音でした。INO SAVINIって、いったい誰なんでしょうか。オーケストラも渋いですよね。

CENTURION CLASSICS IECC10006-5/1949年モノラル録音/10枚組1,999円■アンセルメ/パリ音楽院管弦楽団(CENTURION CLASSICS IECC10006-5/1949年モノラル録音/10枚組1,999円)
明快なる分離と奥行き深い音質は驚異的でして、再録音にまけない色彩的、かつ軽快な響きが魅力的でしょう。金管のヴィヴラートがたまんないなぁ。(「音楽日誌」より)歴史的録音の範疇だろうが、これだけの音質と美しい響きは現役であります。

■アンセルメ/パリ音楽院管弦楽団(IMG Artists英DECCA原盤 7243 5 75094 2 8  1954年録音 2枚組1,080円)
こちらステレオです。いえいえ1954年録音だって「歴史的録音」の範疇だけれど、このステレオ録音も驚異的水準でしょう。演奏的には1949年盤とそう変わりません。アンセルメのさっぱり、クールなスタイルはお気に入りです。

以下、目に付いた順で、無定見にいきましょう。

■ヨネル・ペルレア/バンベルグ交響楽団(TUXCEDO TUXCD 1053 1959年ステレオVOX音源/300円)
この人は往年のオペラ畑の人(ルーマニア1900-1970)かな?例のQUADROMANIAにも含まれる音源。いちどサイトに言及しようとしっかり聴いたはずだけれど、そのコメントはハードディスク・クラッシュとともに消えてしまいました・・・それ以来(ショックで)久々再聴。粗野で剛直、華やか方向ではなかったような、そんな記憶もありました。辺りを睥睨するような、堂々たる恰幅と貫禄演奏であります。驚くほどご立派!やや、オフ・マイク気味だけれど音質もそう悪くない。

■ロヴロ・フォン・マタチッチ/フィルハーモニア管弦楽団(EMI/新星堂 SAN-16 1958年/1,000円にて購入)
1990年に購入したCDだけれど、既に10年以上聴いておりませんでした。骨太で洗練されない演奏だった・・・という記憶空しく、けっこう雄弁流麗で、陰影対比濃く、寄せては返す呼吸の深さ出色。フィルハーモニア管弦楽団の清涼なる響きは絶好調ですね。「洗練されない」とはとんでもない!録音もずいぶんと良好。終楽章怒濤圧巻の推進力に、テレビで拝見した晩年のお姿を懐かしく、感動的に思い出しました。

■ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団/ブルシロウ(v)(CBS/SONY FDCA 338 1962年/250円)
2006年待望の入手でした。「LP時代はやたらと高音が強調された刺激的な音質だった(マスタリングに慣れていなかったSONYの問題か)記憶があるが、このCDではそんなことはない。明るいサウンド、オーソドックスなクセのないストレート系表現だけれど、各パートが非常に優秀で惚れ惚れするような節回しで魅了します」(「音楽日誌」より)

Disky Communications BX 707482 10枚組4,980円■コンスタンティン・シルヴェストリ/ボーンマス交響楽団/ジャーヴィス(v)(1966年録音 Disky Communications BX 707482 10枚組4,980円)
いかにもアクが強い、ざらついたオーケストラの響きの演奏だったと記憶します。このボックスは10枚組4,980円で購入したが、人気薄くて売れ残ったんでしょうねぇ、後に1,980円で処分されているのを目撃した記憶有。

■小澤征爾/シカゴ交響楽団/アイタイ(v)(Disky Communications DB 905101 CD2 7枚組4,990円/1969年録音)
細部まで神経質に配慮を行き渡らせた演奏で、かつては”こじんまりして・・・”的印象だったが、ここ最近、その集中力、生真面目さに感服しております。日本人らしい余裕のなさ、勤勉さ・・・エエではないか。

1967年録音 TESTAMENT SBT12 1281 CD12 12枚組7,000円にて購入■ルドルフ・ケンペ/ロイヤル・フィルハーモニック/アラン・ラヴデイ(v)(1967年録音 TEATAMENT SBT12 1281 CD12 12枚組7,000円にて購入)
巨匠・ケンペに似合わない作品のような気もするが、堂々として浪漫的な説得力深い演奏であります。ビーチャム以降のロイヤル・フィルの全盛期はこの時点か、オーケストラは絶好調の緻密さと華やかさ、迫力を以て燃えております。録音もよろしい。ラヴデイのヴァイオリンは(特別)魅力的です。

■キリル・コンドラシン/コンセルトヘボウ管弦楽団/クレッバース(v)(PHILIPS MP-126 1979年録音/300円)
ロシア出身の方は食生活改善して、もっと長生きしていただかないと(1914-1981)・・・バイエルン放送交響楽団のシェフへの就任が決まっていたんでしょ?このサイト開設初期からエエ加減なるコメントを付けているが、もうずいぶんと聴いておりません。この人のセンスは暑苦しいわけでも、骨太的露西亜風でもないと思います。

■オスカー・ダノン/チェコ・フィルハーモニー/ベルチク(v)(DENON GES-9226 録音年不明/250円)
クロアチアの大ヴェテランはご存命ならば90歳を越えていらっしゃるはず・・・2002年ではお元気な様子だったとの情報有。オペラ畑の方、との印象が強いが管弦楽作品だって立派です。良い意味での粗野なオーケストラの響きも好ましく、ややゆったりめのテンポでよく歌う演奏でありました。器用でもないし、語り上手なスタイルでもないが、骨太で、”間”を充分に取った、足取りもしっかりとしたヴェテランの味か。金管の柔らかさがエエ感じです。キラキラちゃらちゃらしない。1960年代の録音ですか?

■レオポルド・ストコフスキー/ロイヤル・フィルハーモニー/グルーエンバーグ(v)(RCA BVCC-8901/02 1975年録音/2枚組750円で購入)
ロンドン交響楽団(英DECCA)の録音が有名で、なぜか陰に隠れている音源〜最晩年(1882-1977)の演奏だけれど、若々しくて彼特有の山っ気、というか、色彩豊かでクセのある節回しは健在でしょう。ギラギラした感じもこの作品に似合っているみたい。

■ロリン・マゼール/クリーヴランド管弦楽団/マジェスケ(v)(LONDON DCI 82560 1977年録音/420円)
クリーヴランド時代のマゼールは、前任者のジョージ・セルと比較されるせいか、あまり好意的に評価されていないような気もします。録音は極上だし、オーケストラの機能性も申し分なしの(これもクール系素っ気ない)個性横溢!これも、いかにもスタイリッシュなオーケストラ・コントロールが、意外にもこの作品に似合っている・・・結構好きです。

NIMBUS NI 1749 CD2 1988年 7枚組2,940円にて購入■ウィリアム・ボートン/フィルハーモニア管弦楽団/クレスウィック(v)(NIMBUS NI 1749 CD2 1988年 7枚組2,940円にて購入)
 この人の英国ものは大の贔屓であって期待したが、いかにもジミで色彩が少なく、おとなしい感じ。まだ、聴き込みが足りないかな?もしかしたらジミ→滋味に印象変更するのかも。

■シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団/ロバーツ(v)(LONDON GCP-1039 1983年 498円)
 ここ最近、彼の穏健派極洗練された響きを好んでおります・・・が、この演奏だけは、少々(静かなる曲調の時に)弱いかな、といった感想です。上品で、アンサンブル極上、良くまとまっているが、もっと羽目を外した(少々濁っても)大爆発があってもよろしいでしょう。音が安易に出過ぎる印象有。でも、聴き手がもう少し枯れてくる、と好みの方向に行くかも知れない。録音極上。

■セルジウ・チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送交響楽団(LIVECLASSICS LCB-087 1975年ライヴ 500円?)
纏綿と、しついくらいの味付けが決まっております。第2楽章「カレンダー王子の物語」が激遅状態で、晩年の微速前進の片鱗を既に見せております。怪しげライヴ録音だけれど、音質は立派。例の掛け声(「喝!」)も聴けます。そうだなぁ、カラヤンのスタイルに一番似ているか。

■ロリス・チェクヴァリアン/アルメニア・フィルハーモニック(BRILLIANT 99934/1 1991年録音 4枚組1,490円)
 お国ものです。これでエエんです。カラヤン/ベルリン・フィルと比べちゃいけません。アルメニアのエレヴァンにある「ハチャトゥリアン・ホール」での録音。いかにオーケストラの技量が落ちようとも、本家本元を愛聴しましょう・・・って、Rimsky-Korsakov って西欧的な管弦楽技法を身につけた人ではありますが。いかにも泥臭く、アクセントがはっきりしていて、旋律が前のめりで、オーケストラの鳴りがよろしくない。それでも、嫌いじゃありません。

■チョン・ミュンフン/パリ・バスティーユ・オペラ座管弦楽団(DG HT-129/250円)
 所有中、もっとも新しい録音であり、若い世代の録音として期待したもの・・・だけれど、まったく面白みがない。フツウの演奏(よろしくない意味で)でした。正直、ガッカリ・・・もっと次世代新世代の録音を聴いてあげないといけないな、という自覚はあるんですが。終楽章に至って、ようやく爆発がありました・・・

以上20種、棚中より発掘いたしました。この後、新たな存在発見可能性もあります・・・って、いつの間にこんなことになったのか。過半を数週間掛かって”摘み聴き”したが、正直なところBeethoven よりずっと楽しく過ごせましたね。こんなに一杯持っていたって仕方がない・・・でも、コレ集めたんじゃないです。自然と貯まっていった・・・そんな感じ。演奏に優劣は付けられまへんなぁ。一番最近聴いた、ルドルフ・ケンペ/ロイヤル・フィル(1967年)に好意を持った・・・ということに(いちおう)しておきましょう。端正な姿勢が大切か。

(2006年11月17日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi