祈る


北朝鮮に拉致され、青春の数十年を奪われた数人の方々が帰国されました。行方さえわからない方、もう亡くなったとされる方々、離ればなれになった家族、彼らになんの落ち度があったのでしょうか。ワタシは人の運命の理不尽さを呪いたくなります。昨年のワタシと、ワタシの家族は、きっと幸せだったのでしょう。元気で働ける、学校に通える、おいしいものが食べられる、美しい音楽に感動もありました。

ワタシたち夫婦は40台も中盤となり、両親は嬉しいことに双方とも健在だけれど、時は無情に過ぎ去るものです。ひとり息子はいよいよ大学受験。「どうせ就職口もないだろうし、18歳で社会に飛び込まなくても・・・あと4年くらい考える時間があっても良いんじゃないか」ということです。大学など、どこでもかまわない。せめて4年間の学費と、生活費は(両親がワタシにしてくれたように)親として責任を持とう、そう考えております。

「人生で大切なのはお友達だよ」と息子に言い聞かせてきました。どんなに時代は変わっても、人間の基本的感性に変わりはないものでしょう。万葉集の恋歌を、このインターネット時代に読んでも、その瑞々しい情感になんら違和感はない。但し、BB(ブロードバンド)の普及で「出会い」の可能性は増えたのかも知れません。ワタシも、昨年は多くの新しい友人と出会いました。それでも、その関係を維持し、暖めるために、いちばん大切なのは「人のココロ」であることは言うまでもないでしょう。

ワタシのサイトは「ド・シロウトの音楽好き」であるという「則」(のり)を越えることはありません。浅薄な知識を披瀝したり、音楽の歓びにつながらない無責任なるコメントとは無縁でありたい、と願います。自分なりの思いを、自分なりの表現で、言葉で、しかも自分にとってムリのない経済範囲で、音楽を楽しみ、更新を続けたい。

【♪ KechiKechi Classics ♪】というふざけたサイト名にしたことを、いまとなっては後悔しております。なんやら、ちょっと社会的な存在風になってしまったので、今更やめられないのも冗談みたい。ことしも、せいぜいよろしくお願いします。ふだんワタシにBBSでも林 侘助。メールでも接点のない、多くの(そう!信じられないくらい多数の)読者に対する感謝の気持ちを込めて。

きっと、2003年には辛く、厳しいことも多く発生するでしょう。音楽を素直に楽しめない状況が生まれるかも。今年も、昨年がそうであったように、家族が、友人が楽しい一年を過ごせるよう、そしてバカらしくも理不尽な苦しみを受けている多くの(ワタシが知らない、きっとこれから出会うであろう)人々にも一筋の光が差すように、せめて敬虔なる「祈り」を捧げます。(2003年1月1日)


新年はMozart 。作品はピアノ協奏曲第27番 変ロ長調K.595で。第3楽章は、誰でも知っている歌曲「春への憧れ」(K.596)の旋律です。Mozart が亡くなる年の一月に作曲。

親しき五月よ

早く来い

木々を緑にしておくれ

小川のふちには

たくさんのすみれを咲かせておくれ

親しき五月よ

私は散歩がしてみたい

Mozart の演奏に優劣は付けられません。ワタシが所有しているのは 白井光子さん/ヘル(p)による録音(Capriccio SMU-16 10 806/1)です。わずか2分少々の清冽なる小宇宙。

ピアノ協奏曲のほうは、安い値段でCDを見掛けるとすべて買ってしまうので、何種手許に存在するかさえわかりません。ああ、たまたま棚を覗いたらこんなCDが出てきました。

ワルター・クリーン(p)/スクロヴァチェフスキ/ミネソタ交響楽団(CARTON 30371 00592)

〜LP時代からの長いお付き合い。スクロヴァチェフスキのバックは、想像を絶するほど細かいニュアンスに富んで繊細。クリーンのソロはそれを凌駕する、深淵で無垢な響きが広がります。もはや楽器を弾いている、という行為ではなく、そこに音楽が存在する、という希有な経験でしょう。ピアノにそっと手を置いただけで、音楽が流れ出すという自然現象。静謐なのに、胸の底がざわめきました。清潔なる官能の響き。



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独言 


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written by wabisuke hayashi