Bruckner 交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」
(ベルナルト・ハイティンク/ウィーン・フィル)
Bruckner
交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」
ベルナルト・ハイティンク/ウィーン・フィルハーモニー
PHILIPS 470 537-2 1985年録音 2枚組1,790円
PHILIPS MP-10 250円(中古)〜つまりダブリ買い
この曲、ワタシが中学生の時に初めて聴いたBrucknerでした。ワルター/コロムビア交響楽団〜その清冽なる感動は忘れられないもの。逆に言うと、それは2度と味わえない感触でもありました。やがて社会人になり、第7番を聴き(シューリヒト/ハーグ・フィル)、第5番と出会い(クナッパーツブッシュ/ウィーン・フィル)、第9番に脳天を直撃され(ヴェス/ヴュルテンベルク国立管1984年ライヴ)、第8番に心酔し(チェリビダッケ/ミュンヘン・フィル1990年ライヴ)〜そして・・・・
第4番の魅力を忘れました。ノイホルト/クーベリック/ティントナーにしても芯から楽しんでいないし、ラインスドルフ盤だって妙に一歩引いた感想文になっていて、情けない。まだ、マズア/ベルリン・フィルのほうが「オーケストラの圧倒的な技量」だけに目が行って素直に楽しめます。つまり、ワタシはこの曲が苦手になったのでした。
で、ハイティンク盤は中古出物250円で、ある日購入。ちゃんと聴いていなかったんですよ。コンセルトヘボウの録音とばかり思っておりました。で、数ヶ月後第4/5番の2枚組を購入〜FMで聴いた第5番の演奏が素晴らしかったんですよ。その記憶をたよりに自宅に持ち帰ったら、ダブリだったんですね。嗚呼、なんてため息まじりに聴き出した音楽は如何に?
いや、もうダメ。彼のMahler の第1番、第5番と同じ世界が待っておりました。日本人なら理解できるお米の味、豆腐の味、水の味、なんてあるでしょ。あれですよ。辛いとか甘いとか、そんなもんじゃないんです。人様に説明しようとか、同意を求めようとは思いません。名曲が名曲として過不足なく、存分に、豊かに、自然体で鳴り響く歓び。絶叫せず、強制せず、ひたすらゆったり音楽が流れて申し分ない幸せ。
聴きどころはなんぼでもありまっせ。遠くで鳴るホルンの距離を感じてください。金属的でない金管が静かに絡んで、木管が彩りを添えると、草原に朝露が光るんです。弦の深々とした色合いは言うまでもないでしょう。静かな部分がけっして薄く響かない。奥行きが抜けるんです。厚みある全奏が威圧的に響きかない。あくまで節度を保って気品有。
例の如しで、特異なテンポ設定や揺れ、節回し、意味ありげな全休止などございません。あざとい爆演系がもてはやされる昨今「なんじゃコレ。フツウの演奏じゃん」と言われてもしかたがないかも。呼吸が存分に深くて、自然体、一流オーケストラとしての各パートは誇りあるワザ(ごく細部に渡る)を駆使して、そのトータルとしての「サウンド」としての芸術を作り上げます。ここでのハイティンクは「無為の為」の極地か。
極上のアンサンブルだけれど、アンサンブル云々を気付かせない演奏。神経質とは無縁であり、ある意味、最上の牧歌的な演奏である、と言っては誤解を生むでしょうか。ワタシが求めていたのはコレだったんです。
ハイティンクが常にこの路線で成功するとは限らないし、2000年以降の彼が「実演では雑」との評価を聞くこともあります。しかし、若くしてコンセルトヘボウという歴史ある団体のシェフに就任し、じっくり、ゆっくり熟成を重ねた彼の完成された姿がここにありました。ワタシは30年掛けて「第4番」に回帰したのです。ダブリ買い、なんのその。 (2002年8月29日)
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