Bruckner 交響曲第9番(ヴェス)


Bruckner

交響曲第9番ニ短調

クルト・ヴェス/ヴュルテンベルク国立管弦楽団(1984年9月16日リンツ・Brucknerハウス・ライヴ)

 安くなったCDをたくさん買うこと、これは喜びです。でも、なんでもいっしょで、いくらお金持ちでもひと一人が食べられるごちそうの量は知れているし、音楽だって聴くことのできる時間は限られている。小学生の時は、17cmLPをすり切れるくらい聴いたものです。真空管の古いラジオ(当然モノラル、というかステレオなんて知らなかった)にプレーヤーをつないで、数枚しかないレコードに集中していました。その、真摯な気持ちだけは忘れちゃいけない。

 CD、DAT、MD、と音源がたくさんたまってくると、どうしてもありがたみが薄れてきます。ましてや、1990年代前半で止めてしまったカセットへのエア・チェック音源は(ダンボールにしまってある)出すのさえ、おっくうになりがち。嗚呼、もったいない。これではいけません。日々、劣化していく(と想像される)カセットをMDで永久保存しよう、一時はあんなにお世話になったんだから、と思い出したのがこの録音でした。

 やれ朝比奈だヴァントだ、と昨今話題豊富なBrucknerですが、ワタシ第9番はこれで目覚めました。1914年リンツに生まれ、1987年に亡くなったクルト・ヴェスは、1951年から1954年までNHK交響楽団の常任指揮者もつとめたので、オールド・ファンには懐かしい存在のはず。1961年〜1976年はリンツ・Bruckner交響楽団の主席指揮者に就任し、Bruckner研究者としても著名な存在だったそうです。(初稿の初演など、いくつか手がけているらしい)

 これは、おそらくリンツのBruckner・フェスティヴァルのライヴ録音放送からエア・チェックしたもの。手元にはもうないのですが、朝比奈/リンツ・Bruckner交響楽団の第6番もあったような記憶があります。(違ったかな?トーン・キュンストラーでしょ、との情報有)ヴュルテンベルク国(州)立管弦楽団というのは、シュトゥットガルト州立歌劇場のオケがコンサートをするときの名前(のはず)。

 第1楽章。冒頭、寄せては返す波に洗われる砂浜、鮮烈な朝日が立ち上ってくる。その波は、静かで小さなものだけれど、沖の大きなうねりに連なっています。ここの表現が、こざかしくなったり、ザワついてはダメなんです。(カラヤンの旧盤はここで失格)ホルン(=朝日)は鋭い響きも悪くないが、このオケは全体に響きがマイルドで、中音域の暖かく、奥行きのある響きが出色。

 ヴェスの指揮は、特別エキセントリックなところはなくて、じゅうぶんなスケール感で力みがどこにも見られない。テンポの揺れは最小限で、あわてすぎず、意味もなく遅くなることもなし。適切な「間」のみごとさ。自然な呼吸。そしてジンワリと熱くなってくる。知らず知らずに高揚します。

 第2楽章スケルツォのリズムも、抑制が利いていて、むしろ大人しい印象。でもバランス感というか、余裕というか、奥行きというか、なんともいえず気持ちがよい。

 終楽章の、金管の雄叫びも威圧感なし。(ワタシはここで最終的にBrucknerに目覚めました)でも、このオケの金管の地味ながら奥深い音色、フルートをはじめとする木管の音色が染みるように美しくて、しかも突出しない。練り上げられた弦。なんという素晴らしいオケ。アンサンブル極上で、神経質な線の細さは感じさせません。

 数年ぶりに聴いたけど、これは最高だなぁ。10年ほど前でしょうか、大阪での通勤時、ウォークマンで聴いた感動がそのまま蘇りました。(地下鉄の駅で、感動のあまり立ちすくんでしまった)

 もしかしたら、カセットで劣化した音質(とくに高音)の印象が強いのかも知れません。それが「艶消しの響き」と誤解しているのかも?音質は悪くありません。適度な残響、低音はやや甘め。もしこれが海賊盤CDで売られていれば、良心的な音質にまちがいはない。MD化も大成功でした。


 じつは、この曲の前にワーグナー「ラインの岸に薪の山を積み上げよ」が収録されていて、なんとこれがビルギット・ニルソン。おそらく現役ラストのころでしょうか。もう、これが信じられないくらい立派な歌、演奏で、涙モン。ここでのオケの音色は、まさに本場(!なんていう表現使っちゃマズイか?)

(2000年7月14日更新)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi