Bruckner 交響曲第4番は、なにを?(ノイホルト/クーベリック/ティントナー)Bruckner 交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」
ノイホルト/ロイヤル・フランドル・フィルハーモニー(ノヴァーク版)
クーベリック/バイエルン放送交響楽団
ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団(1878/80年 ハース版) * いつものことながら版のことはようワカラン。 この曲は、中学生の頃から馴染みの曲。(ワルター/コロンビア響にて)やがて幾星霜、人生の苦みが胸に染みる今日この頃、Brucknerは大好きだけれど、第4番だけはどうも苦手で避けて通りがちなんです。で、ここ最近、一部廉価盤フリークに話題(史上最強激安「リング」)のノイホルト指揮する「ロマンティック」が手に入ったので、真面目に聴くことにしましょう。 まず、そのノイホルト盤から。「云々と較べ・・・・」なんてこと言わずに、虚心にこの演奏に耳を傾けましょう。フランドル・フィル(フランダース・フィル?)は、意外としっとりとした豊かな音。冒頭のホルンから、奥行きを感じさせるし、のびのびとしてスッキリとした表現に好感が持てます。所謂「巨匠風」の演奏ではないから、貫禄に少々欠けるような気もするが、流れがとても良くて聴きやすい。 第2楽章「アンダンテ」は油断するとダレるところだけれど、終盤のティンパニの連打の迫力はたいしたもの。快速スケルツォのスムーズな勢いも素直。このオーケストラの金管はカルいんですよ。終楽章はまとめにくい楽章のはずだけれど、気持ちよく最後まで聴けます。立派。どこに文句あるの? で、震えるほど感動するかというと、そうでもないか?少々クセがなさ過ぎて、もう少しいろいろやっても良いじゃないか、とも思いました。なにもしない(と、いうのはいいすぎだけれど)のだったら、それだけで説得させるだけの「なにか」というか、プラス・アルファを揃えなくちゃ。ワタシの好みの問題かもしれんが、細部まで明快じゃない印象がある。 例の付点リズムが、やや流してスムーズ過ぎて柔らかいでしょうか。(「リング」でもそんな印象があった)それでも、音の状態は悪くないし、オーケストラも鳴っているしで、好演と評価したい。 じつはこのCD、NAXOS初期のもので「ドイツPILZ社で作成した」なんて書いてありますね。カタログ上では生きているが、ティントナーの新しい録音が出ているから手に入りにくいかも知れません。 さて、期待充分のクーベリック盤。デジタル初期だし、CBS/SONY系の録音技術には少々不安も感じるが、指揮者もオーケストラも「いかにも」という先入観を期待させます。第1楽章始まって2〜3分したら、さきの「細部まで明快じゃない印象」の意味合いがわかりました。弦の静かなトレモロ〜ホルンの遠い叫び、やがてすべてのパートが合流し、奔流となって音楽が流れ出します。 聴き流しているとわかりにくいが、一人ひとりのパートに心憎いばかりのニュアンスがこもっていて、結果、それが全部合わさると並の厚みじゃなくなる。これが一流と評価されるオーケストラの神髄なのでしょうか。Brucknerというのは「響きの音楽」と思うので、このツボが押さえられないと感動できないんです。クーベリックというひとは、あまり恣意的な表現を強調する人ではないが、流れてくる音楽は豊かで驚くばかり。 スケルツォを聴いていただきたい。サラリと流しているように聞こえるのは、オーケストラが上手いからです。もの凄く繊細に抑制され、サワサワと草原を渡る爽やかな涼風のよう、やがて余裕の爆発がやってくるが、これがまったくうるさくない。木管は痺れるほど美しい。そして暖かい。音量が落ちるところでも、響きが薄くならない。 自然体で、呼吸の深い旋律の歌、各パートの心を込めたワザに聴き惚れました。細かい部分部分のニュアンスがちゃんと全体の感情表現になっていて、なにもしていないように見えて、じつは極上の仕上げ。終楽章の牧歌的な表情にも満足。「クーベリックはライヴでこそ」なんていう意見もあるが、Mahler の全集も含めてスタジオ録音だって、いつも高い完成度なんです。
聴く順番が悪かったか、ティントナーはオーケストラの色合いが(残念ながら)Brucknerではない。でも、この真摯な姿勢は胸を打つものがあって、スケルツォがこんなに新鮮に聞こえることも珍しいと思います。目一杯の金管の絶叫、木管と弦のやさしさ。続く終楽章も悲壮な叫びに胸を打たれるばかり。80歳に手が届こうとしてる老人の衰えはありません。 洗練されない、流麗でもない金管だけれど、すべての音に入魂で、ノイホルトにはここら辺を学んで欲しいもの。弦もどうということもない音だけれど、時にドキリとするようなエグりを利かせて驚かされます。ここ最近、ティントナーの一連の録音には、オーケストラの弱さが少々気になって離れていたけれど、素朴で実直な味わいは、やはり貴重な遺産に間違いはない。 平々凡々な曲とは思わないが、他のBruckner作品に較べると、何故か魅力が弱く感じられます。聴き続けて、そう飽きるとも思えないが、積極的にCDを取り出そうとは思わない。こころの内側を微妙にくすぐる不安感とか、神々しいばかりの祈り、が欠けている曲なのかも知れません。 どこも長調で明るい旋律が日本人好みではないのかな?もしかして、通の人は好む曲なのかも。おそらく、まだ手元に数枚の「宿題」が残っていて、ワタシはケンペ、ベーム、ヨッフムと向き合わなければいけません。クナッパーツブッシュも手元にあったかも。(2002年2月22日)
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