Vivaldi 協奏曲集 作品8/1-12 「和声とインヴェンションへの試み」
(トレヴァー・ピノック/イングリッシュ・コンサート/サイモン・スタンデイジ(v))


BRILLIANT Classics 99416/2  1978年録音  8枚組 2,680円で購入したうちの1枚
Vivaldi

協奏曲集 作品8/1-12 「和声とインヴェンションへの試み」
トラヴェルソ協奏曲ニ長調RV429
チェロ協奏曲ロ短調RV429

トレヴァー・ピノック/イングリッシュ・コンサート/サイモン・スタンデイジ(v)/プレストン(トラヴェルソ)/プリース(vc)

BRILLIANT Classics 99416/7  1978年録音  8枚組 2,680円で購入したうちの2枚

 市井のド・シロウトがサイト上に戯れ言書き連ねて11年、世の中はすっかり様変わりしてしまいました。ネットのビジネス界への定着、一般家庭への普及、ブログなどに代表される「定型化」、ガラパゴス化する日本のケータイとパソコン以上の活用、音楽だったら巨匠不在の時代、CDの値崩れ、データで音楽を聴く時代・・・21世紀、ネットの普及とともに「隠れ切支丹」(クラシック音楽ファン)は同志と出会う感動に恵まれ、そして、それは日常の姿となりました。”究極の名盤探し”は姿を失った(嗜好が多様になり、経済的にもいくつもの比較聴取が可能となった)が、ネットの匿名性から発した暴走書き込みは続いているし、”日本人的事なかれ主義”は、それを窘めることを躊躇う・・・

 思えば1970年代初頭、大ベストセラー「イ・ムジチの四季」(1959年)に素直に感動できた時代(世代)は幸せでした。マリナー/アカデミー/ラヴディ(v)(1969年)辺りが嚆矢か?多彩な装飾やらテンポの極端なる揺れ、通奏低音の多様化で衝撃を競うように・・・一方で、20世紀ラスト辺りは古楽器隆盛となって演奏スタイルはどんどん変遷し、現在の耳では一昔前の巨匠たちの演奏も充分オモロいけれど、やはり時代を感じさせます。作品そのものには(正直)少々食傷気味、先日(ドレスデン版)〜フレデリコ・グリエルモ(v)/ラルテ・デ・ラルコを拝聴して仰け反ったが、子供の頃の感動は蘇らない。

 むしろ、「四季」以外の作品8/5〜12のほうが、圧倒的に聴く機会が少ないせいか新鮮に感じられる、というか、かなり以前からこちらのほうが好きだな、と感じておりました。”馴染んでいなければ、即ち駄作”というネット上に散見される事象について言及したことがあるが、耳慣れぬ新しい作品への興味を失えば、音楽に対する精神的鮮度は保てません。閑話休題(それはさておき)

 これは現在でも現役を続けている英国穏健派古楽団体(じつは最近の録音は未聴だけれど)の旧録音であります。いま聴くと信じられないほど穏健派演奏で、ものすごくフツウの演奏ぶりに驚くばかり。完成度は高いが、時代の流れに感無量です。いまや、かつてオールド・スタイルと揶揄された演奏こそ、むしろ新鮮であることの驚き。(カラヤン、ストコフスキー、オーマンディ・・・など)とのコメントを残したは2001年のことだけれど、結論的に絶妙なる”フツウ”でありまして、音質もアナログ末期の自然さを誇ってCD2枚分あっという間、たっぷり、安閑として堪能いたしました。

 刺激的奇異な表現は一切登場しないのだな、テンポの揺れも最小限、サイモン・スタンデイジの技量のキレは最高だ(ほんま凄い!おそらくは古楽器嫌いにも受容されるあろう)が、柔らかいアンサンブルに馴染んで突出いたしません。通奏低音はポジティヴ・オルガンを主体として、これが暖かいサウンドを包み込むんです。リズムのエッヂを強調することもなく、装飾音もごくごく控えめ。でもね、往年の巨匠風違和感からは真逆のしっとり小編成だし、”タマに聴くなら悪くないが・・・”的過激派(ビオンディ辺りが代表か、元を辿ればアーノンクールになるのか)とは別世界、穏健派の極北。最近、いや増す華麗なる加齢のせいか、このような安楽表現にほっといたしました。緊張感が薄いようなものじゃなくて、メリハリもけっこうあるけれど。

 「四季」のメロディを名曲と認めるに吝(やぶさ)かではないが、やはり白眉は(後半の)作品8/5-12だと思うんです。前出ブダペスト・ストリングス盤にて「作品8/9 ニ短調協奏曲が含まれない」ことを嘆いていたが、これはオーボエ協奏曲であって、おそらくは録音時ソリストを準備出来なかったのでしょう。ところが!このピノック盤ではヴァイオリン協奏曲になっているんです。Vivaldiの楽譜って、どうなってるんでしょうか。この作品は、ヘルベルト・ケーゲルのひりひりすような異様な演奏(1970年)で妙に有名になったが、こちらぐっとマイルドでもの悲しい旋律がしっとり。Vivaldiって、類型的な作品が多いからすぐ馴染むんだけれど、なんといっても回数聴いていないから新鮮に感じる。

 フィル・アップの2曲計19分も収録の配慮、これもきっとどこかで聴いたことがあるような・・・そんな親しげなる作品です。

(2009年10月10日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi