Vivaldi ヴァイオリン協奏曲集 作品8の1〜4「四季」(追加)/
作品8の5〜8、10〜12
「和声と創意への試み」(ブダペスト・ストリングス)


http://ml.naxos.jp/album/c49088 Vivaldi

ヴァイオリン協奏曲集 作品8「和声と創意への試み」より

第1番ホ長調「春」RV269
第2番ト短調「夏」RV315
第3番ヘ長調「秋」RV293
第4番ヘ短調「冬」RV297

シンフォニア ロ短調RV169「聖なる墓にて」
シンフォニア ホ長調RV132
シンフォニア ハ長調RV112

ブダペスト・ストリングス/ベーラ・バンファルヴィ(v)/ボトヴァイ(vc)

CAPRICCIO 49 089 NMLにて拝聴

 いまやすっかり”古楽派”となったワタシだけれど、以下の「和声と創意への試み」作品8の5〜8、10〜12(ブダペスト・ストリングス)はお気に入りの現代楽器演奏であります。NMLにて、彼らの「四季」を偶然に発見いたしました。CDは入手困難らしいが、こうして音として聴けるのは僥倖であります。残念ながら録音クレジットなし。古楽器によるアクロバティックなリズムのキレを誇る録音が全盛の中、演奏者は知名度も低いし、特別個性的な演奏ではありません。瑞々しいアンサンブルはオーソドックスに美しいもの。録音水準は先のNAXOS盤に負けず劣らず、立派なものです。

 しっかりとした、そしてややノンビリ(のびのび?)としたリズム、優雅な雰囲気漂う「四季」であります。ハンガリーの名手達は慌てず、ムリムリなテンポ設定変化もなく、のびのびと演奏しております。旧態と言えば旧態そのものだけれど、21世紀も10年を過ぎて一巡、逆にこんな演奏が新鮮に感じられる今日この頃、もちろん”イ・ムジチ世代”であるワタシには、安心して聴ける豊満さもある。ベーラ・バンファルヴィのソロは”存分なる技量前提に、雄弁かつクール、端正でほの暗く、甘くセクシーなヴァイオリン”といった、かつての好印象そのままであります。あまりにお見事、そして常識的、久々、昔馴染みに出会った感じか。

 イ・ムジチの”イタリアの陽光が照らすような・・・”明るさ+カリっとした歯切れの良さではないけれど、しっとりと呼吸の深い演奏であります。良く歌い、激しい場面での抑制もたっぷり利いて、響きは濁らない。痩せない。ソロの技巧は余裕であり、端正なる容姿は崩れない。通奏低音があまり目立って活躍しないのも旧来のスタイルですね。NAXOS盤印象と寸分違わぬが、作品旋律があまりに有名だから不遜なる聴き手(=ワシ)はちょっと飽きてしまう感じはあります。でも、これってそうとうモダーンなる古楽器演奏や管楽器入りバージョンで聴いても一緒ですから。

 「四季」を全曲聴いたのは何年ぶりでしょう?隅から隅まで、最初から最後まで、耳に障るような違和感などありません。逆に言うと新しい発見もないかも。まったりと過不足のない安心感と、妙な感動が続きます。さほどに力む必要もない作品だけれど、現代楽器によるヴェリ・ベストと推奨したい演奏です。但し、入手難。

(2010年1月29日)

NAXOS	8.550189 Vivaldi

ヴァイオリン協奏曲集 作品8「和声と創意への試み」より

第5番 変ホ長調「海の嵐」
第6番ハ長調「喜び」
第7番ニ短調
第8番ト短調
第10番 変ロ長調「狩り」
第11番ニ長調
第12番ハ長調

ブダペスト・ストリングス/ベーラ・バンファルヴィ(v)/ボトヴァイ(vc)/アキム(cem)

NAXOS 8.550189 1988年ブダペスト・タウンホールにて録音 (おそらく1,000円で購入)

 数年ぶりの再聴でした。じつは以下(↓)にも言及されている、トレヴァー・ピノック/イングリッシュ・コンサート(1976年)を聴いて、その穏健派古楽器アンサンブルに癒され、思い出した音源です。2002年9月「近況」にて憤慨している(知名度で音楽聴いているアホが、まだまだ生息している!)ように、著名なる「四季」の魅力に比して遜色ある作品であるはずもない、文句なしの陰影豊かなる旋律の宝庫であります。また、演奏も録音も素晴らしい。まだ聴く機会を得ないが、バンファルヴィ(v)には「四季」の録音もあるとのこと。

 カラヤンとは言わぬが、やや編成の厚い現代楽器による演奏。ハンガリーの名手達のアンサンブルは充実して、しっとり瑞々しい響きを堪能させて下さいました。つまり、最近では希になった現代楽器による低音充分に効いた、かつリズム感がしっかりした仕上がりの演奏であります。バンファルヴィ(v)のソロは、なんと形容したらよいのか・・・存分なる技量前提に、雄弁かつクール、端正でほの暗く、甘くセクシーなヴァイオリン。Vivaldiの作品をこんなに楽しんだのも久々でした。

 先日、イル・ジャルディーノ・アルモニコによるVivaldiの演奏を聴きました。現代風ノリノリの極左的リズム感はスポーティに疾走するが、どーも落ち着かない。ノーミソ保守化したか?と一瞬怯(ひる)んだけれど、Bach だったら(この方向でも)大丈夫なんです。こんな屈託ない、明るい旋律には優雅な余裕が欲しい〜21世紀も10年ほど進みつつあって、バンファルヴィのスタイルは少々旧態なリズム感ですか?ワタシはノーブルな表情を湛えて、しっとりシックであって、”往年の昔風美人”ではない、現役そのものと感じました。リキみや激しさはどこにもなくて、余裕の歌があちこち木霊しました。

 「四季」はさすがに子供の頃から聴き過ぎました。(イ・ムジチ/アーヨ(v)による1959年盤)第9番ニ短調が抜けている(何故だ!)の少々残念だけれど、馴染みが薄い分だけ旋律印象は新鮮そのもの。第7番ニ短調協奏曲の、切ない転調とリズムの揺れがとくにお気に入りかな?「”四季”ブーム」は去ったかも知れないが、先入観に囚われず、音楽は幅広く聴きたいものです。

 このCDとも、もう15年以上の付き合いとなりました。購入した大阪に(西日本一巡りして)戻って、感慨深くこのCDを聴いておりました。3〜4回ほど一緒に転居した計算になります。いずれ音楽の価値は、価格で決まらない。

(2007年4月13日)


 ヴィヴァルディの作品8といえば「四季」。屈託のない、明るい旋律は素敵ですが、さすがに少々食傷気味?意外と知られていないのが、作品8の1〜4が「春」「夏」「秋」「冬」で、5〜12もちゃんと存在すること。あと8曲、残っているんですよ。楽しみは残さず食べてしまわないと、罰があたりまっせ。

 LP時代は、イ・ムジチで3枚分楽しみました。CDは意外と少なくて、じつはワタシも、ようやく最近ピノックの旧録音で全曲手に入れたところ。このNAXOS盤は、残念ながら「9」が抜けています。CDなら絶対に収録可能なはずなのに、いったいどうしたわけでしょう。しかもこのCD、NAXOSでは初期のもので最近見かけません。

 現代楽器による演奏ですが、まず録音が素晴らしい。適度なバランスと奥行き、過度にならない瑞々しい残響。それにこれ、ほんとうに名曲なんです。「四季」ほどふだん聴いていないでしょ?楽しみは同質で、しかも新鮮。「7」のニ短調協奏曲終楽章なんて鳥肌もの。

 バンファルヴィはバルトークSQのメンバーらしい。暖かくて、ふっくらとして、ヴィヴラートの少ない音色は、かつて聴いたことのない輝き。神経質になりすぎないのもgood。ちょっと蠱惑的な音色。最近の古楽器による演奏に比べれば、少々ロマンティックに過ぎるかも知れないけれど、その語り口の上手さは筆舌に尽くしがたい。

 チェロとチェンバロの通奏低音は、取り分けて個性的な即興が入るわけじゃないけど、必要にして充分なサポートぶり。ソロとバックの緊密な連携ぶりも、明るいヴィヴァルディにふさわしい。おそらくフランツ・リスト音楽院の同門と想像されますが、歯切れ良く、生き生きとしたアンサンブルは、重くなりすぎず、しかもしっとり。豪勢な厚みのある響き。

 ヴァルハル/スロヴァキア室内管による「ヴィヴァルディ・コレクション」には、そうとう苦労させられたので、ものすごく堪能してしまいました。探してみる価値のある一枚と思います。(1999年)

 


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written by wabisuke hayashi