Brahms 交響曲第3番ヘ長調/第4番ホ短調
(エイドリアン・ボウルト/ロンドン交響楽団/ロンドン・フィル)


EMI 6356572 Brahms

交響曲第3番ヘ長調 作品90

ロンドン交響楽団(1970年)

交響曲第4番ホ短調 作品98

ロンドン・フィル(1972年)

エイドリアン・ボウルト(Adrian Boult, 1889ー1983英国)

EMI 6356572

 駅売海賊盤へのコメントから10年経過。CDをほとんど購入しなくなってから既に5年ほど経過、2019年は厳選在庫3−400枚程残して中古屋さんにダンボール5箱分、送り込んでしまいました。同じネタばかり恐縮だけど、多く所有することがシアワセに非ず、若く貧しかった頃は有り金はたいて入手した音源に集中して、彼(か)の感動などこにいってしまったのでしょう。「多く所有すれば真髄を見失う」(林 侘助。1957-日本。ゲーテも似たようなことを言っていたかも)これは棚中生き残り。おそらく数年中に全部処分してデータ拝聴一本になることでしょう。

 英国往年の巨匠は、その演奏を聴いて期待を裏切られたことは一度もなし。このBrahmsも例外に非ず、あまりに馴染み過ぎて不遜かつ安易なイメージばかりの名曲中の名曲、久々の拝聴はヘ長調交響曲第1楽章「Allegro con brio」、最初一音から打ちのめされました。湧き上がるような力強い和音は、師匠Schumannの影響も感じられる(Wikiより)希望に溢れたもの。ボウルトが作るサウンドは質実な力感に充ちて作為を感じさせぬ、これぞBrahms!サウンド。ロンドン交響楽団はアンドレ・プレヴィン時代(1968ー1979)でしょうか、本格的な”上手い”オケに脱皮した頃。(13:08)

 第2楽章 「Andante」。安寧の緩徐楽章はまるでセレナーデ風。クラリネットとファゴットに導かれるシンプルな田園風旋律、鄙びたサウンドはやがて優雅な管弦楽全体に成長します。この辺り、Brahmsはほんまに上手い!テンポは中庸、淡々として表情は豊かであります。管楽器の技量が問われる美しい楽章は、さわさわと静謐が続いて、やがて登場するコラール旋律も諄々と胸に染みるもの。(8:32)甘美極まりない第3楽章「Poco allegretto」は予想通り期待通り、甘さ控えめに抑制が効いたもの。この楽章も粛々と静謐が続いて金管はホルン2本のみとのこと、弦と木管の静かな対話にホルンが効果的に浮かび上がるところ。もちろん神経質が過ぎたり、品を作ったり、そんな表現とは無縁の必要にして充分なデリケート。(6:03)

 終楽章「Allegro - Un poco sostenuto」。風雲急を告げる切迫感が作品に締めくくりに相応しいもの。テンポ・アップして推進力と緊張を増しながら、ボウルトはバランス抑制が上手い。Brahmsを聴く度に驚くけれど、これで二管編成なんだよな、立派に大柄に響くマジックを堪能いたしました。やがてテンポを落として柔和に、静謐に終了するのもこの作品の魅力でしょう。鳴り渡るオケの爽快な迫力も充分、オーディオは門外漢だけど(おそらくは聴き慣れているせい)時代相応の水準かと。

 交響曲第4番ホ短調との出会いはエドゥアルド・ヴァン・ベイヌム(1958年)これが刷り込みやなぁ、なんせ10代前半ですから。しばらく聴いていないけど、900円の(当時)激安LPでした。嗚呼、これぞ浪漫風情たっぷりお気に入り作品だったことを思い出しました。第1楽章「Allegro non troppo」ため息のようにヴァイオリンが歌う第1主題最高。大オーケストラが(これも2管編成だけど)力強く呼応する!バランス感覚がボウルトのワザでしょう。いくらでも纏綿と甘く、激高して表現できそうな楽章は抑制とニュアンスに充ちて、太い線が通ってテンポはあまり動かさず、充分アツく劇的、テンポは中庸。(12:29)ロンドン・フィルも上手いなぁ、ハイティンク時代か(1967-79年)。

 第2楽章「Andante moderato」。ここは不思議に無機的なホルンの旋律から始まって、途方に暮れたような歩みから、やがて全体に輝かしく力感が増していくところ。ボウルトの表現は淡々として、歩みに迷いがない、呼吸深くスケールも大きい緩徐楽章でした。(6:24)第3楽章「Allegro giocoso」はスケルツォ。Brahmsのは大きい音楽ですよ。「大学祝典序曲」を連想させる賑々しい楽章です。賑々しくてもうるさくならぬ剛直さが、いかにも指揮者の個性でしょう。

 終楽章「Allegro energico e passionato」はシャコンヌ(パッサカリア。変奏曲)。Brahmsの古典回帰面目躍如な傑作でしょう。この荘厳さはBachの大きさ。下降音形の主題も神秘的、これがフクザツに着色変形され、古典時代の変奏曲とは一線を画す浪漫のスケールであります。ここもいくらでも”煽る”表現可能なところ、木管のソロやら金管の爆発やら、オケの個性を大切しながら仕上げはていねい、美しい作品・演奏であります。第3番(ロンドン交響楽団)第4番(ロンドン・フィル)甲乙つけがたい完成度を堪能いたしました。いろいろ多彩に私的事件が続いた一年が終わっていきます。

(2019年12月28日)

FIC ANC-29 600円で購入 Brahms

交響曲第3番ヘ長調 作品90

ロンドン交響楽団(1970年)

セレナード第2番イ長調 作品16

ロンドン・フィル(1977-8年)

エイドリアン・ボウルト

FIC ANC-29 EMIの非ライセンス(駅売海賊)盤 600円で購入

 このCDとのお付き合いも既に15年以上、正規ライセンス盤全集3枚組を入手していたが、音質的な不満、CD製品としても仕上げの粗雑さを感じて、全体在庫整理計画に伴って処分済。この駅売海賊盤だけは生き残っておりました。あきらかにこちらのほうが音質が(少々)明快(ま、音質の件は安物オーディオだからあてにせんで下され)、+(お気に入り)セレナードも収録されております。

 既にこのサイト中で千度繰り返してきたが、駅売海賊盤の存在意義はなくなりました。御大カラヤンの1970年代交響曲集38枚組(DG録音)が英国アマゾンで注文したら、新品送料込5,182円でっせ。そんな時代です。この原稿執筆時点、駅売海賊盤は80本+【オーマンディと カラヤン】のところに12本、記事が【♪ KechiKechi Classics ♪】 に残っているが、既にそのうち30枚は処分済。棚中残はざっと120枚かな?この類はオークションでも、なかなか処分しにくいんです。いくら安くても。

 最盛期在庫の1/3へ。おお!人生になんたるムダな出費〜とは言い切れぬ愉しみたっぷり、20年分ほど与えてくださいました。1990年前半迄は「1,000円が廉価盤」基準だったんです。クラシック音楽CDオークション出品を見ていると、その価格相場感覚から抜け出ていない人が未だ多い感じ。閑話休題(それはさておき)・・・

 室内楽やピアノ作品だと寂寥の親密感たっぷりのBrahms だけれど、交響曲ならエラそうで、大柄に過ぎて敬遠することが多いんです。聴く機会はひじょうに少ない。ここ最近、ナマ演奏会を敬遠している一因が選曲にあって「BEETHOVENBRAHMS」+「Tchaikovsky」の交響曲ばかりであること・・・そりゃ、Vaunghan WilliamsとかElgarじゃお客は入らんでしょうが。

 NMLで、英NIXA/PYEの旧録音(1954年)が聴けるんです。音質が気になって新録音全集を処分したはずなのに、旧いモノラル録音でも全然気にならぬ、ヴィヴィッドで躍動する音楽を堪能いたしました(勝手な言い種だ)。で、こちら晩年の1971年録音はどーなんだ?

 わずかにテンポは遅くなっているが、ほとんど変わらぬ”ヴィヴィッドで躍動する音楽”。気分的な問題か、新録音の方が悠然としたスケール感が加わっているような気がしますね。基本ストレート系で飾ったところが少ない、剛直で悠々たる演奏であります。第1楽章「アレグロ」は、弓をいっぱいいっぱい引き絞って、一気に飛び出したような喜びに溢れます。アンサンブルは良く整っているが、悠然たる幅が感じられて神経質さとは無縁〜明るく、重苦しくはない。

 第2楽章「アンダンテ」には練り上げられた静けさがあって、この交響曲の白眉第3楽章「ポコ・アレグレット」(さようならをもう一度)は甘さ控え目。ま、思いっきりトロトロに仕上げていただいてもいっこうにかまわない。でもね、この甘美なる名旋律はあまりに纏綿と歌うと重苦しくなりすぎることでしょう。さらりとまっすぐな表現がちょうど似合う。ロンドン・フィルって熱演時、たまに”響きの薄さ”を感じることがないでもないんだけれど、ここではそんなことは微塵も感じさせぬ充実集中ぶり(ハイティンク時代でしたっけ?)

 終楽章の熱気、勢い、に何らの疑念もなし。思わぬ中盤のアッチェランドも不自然ではない。やがて最終盤に向け、いや増す熟達の落ち着いた味わいは、ワタシのBrahms 敬遠症を癒して下さいました。

 セレナード第2番イ長調 作品16は、意外とお気に入りなんです。編成にヴァイオリンを欠いて、地味な印象はいっそう強まりました。”交響曲第2番ニ長調をいっそう優しく、上機嫌に仕上げたようなテイスト”というのがワタシの基本認識。Mozart をイメージすると、ずいぶん大柄な”セレナード”だけれど、交響曲ほど肩肘張らず、気楽に、ゆったりと味わうべき作品なのでしょう。上機嫌なるBrahms おじさんであります。

 こちらロンドン交響楽団に替わったが、筋が通って芯があって・・・というスタイルは何ら変わらない。

(2009年6月12日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi