Vaughan Williams ロンドン交響曲(第2番)/
交響曲第8番ニ短調(ヴァーノン・ハンドリー/ロイヤル・リヴァプール・フィル)
Vaughan Williams
ロンドン交響曲(第2番/1936年決定稿)
交響曲第8番ニ短調
ヴァーノン・ハンドリー/ロイヤル・リヴァプール・フィル(1992年録音)
EMIeminennce 0777 7 64798 2 8/7枚組全集2,600円入手
ヴァーノン・ハンドリー逝去。78歳。母国での評価ともかく、日本では全然人気の出なかった実力派でありました。英国音楽を中心に膨大な録音が存在するが、ポストに恵まれたとは言い難いキャリアでしょう。ことし2008年、彼によるVaughan Williamsの交響曲全集を入手していたのも巡り会わせか。合掌。せめて追悼盤がたくさん出て下さることを期待しましょう。
気持ちやや速め、淡彩緻密な表現、クールなアンサンブルを実現しております。録音が極上。中低音が薄い(弱い)EMI系ながら、奥行きや会場の空気が良く捉えられてひんやり清涼な雰囲気タップリ。ロンドン交響曲(第2番)は物憂い、捕らえどころのないような作品だけれど、両端楽章にビッグ・ベンの密やかな響きを忍ばせて、一度ハマればさぁたいへん!
この人はアンサンブルの精緻さ、構成力に於いて見事な実力を発揮していると思います。オーケストラはお国ものに対する誇りを感じさせ、しっとりと清涼かつ充分な洗練と迫力有。ま、Vaunghan Williamsの音楽は時に聴き手を行方不明に誘い込むことないでもないが、とてもわかりやすい。第2番「ロンドン交響曲」は馴染みのビッグ・ベンの鐘も鳴る・・・
(「音楽日誌」より) ・・・とは、購入時聴取の第1印象です。40数分に及ぶ交響曲は、数種の音源+幾度繰り返す聴取によって、細部まで馴染みの、親しいものとなりました。
じわじわ夜が明けてビッグベンが遠くで鳴り響き、やがて颯爽として峻厳、清潔感溢れて疾走する第1楽章、あくまで淡彩に控えめ静謐なる第2楽章「レント」。第3楽章「スケルツォ」は、躍動と軽快なリズム、端正かつユーモラスな推進力を誇ります。(夜想曲)となっているのは、どういう意味でしょう?悲痛なる叫び開始される終楽章は、やがて悠々たる歌に変わりつつ壮大なる黄昏を迎えます。
スケールは大きいが分厚い威圧感ではなく、たとえ激しくオーケストラが咆哮しても端正な品を失わない。アンサンブルの集中力は一流(リヴァプール・フィルってこんな凄い音でしたっけ?)だけれど、艶ではなく清楚涼やかな風情を崩しません。名曲を名曲たらしめる立派な演奏。
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第8番ニ短調がこれほどわかりやすく、素直に聞こえたのも初体験か。バルビローリ盤(この人が初演でしたっけ?)よりわかりやすいかも。
第8番はバルビローリの濃厚劇的表現にも驚いたけれど、こちらあくまで”淡彩緻密な表現、クール”であって、別な作品を聴くかのようでした。「スケルツォ」の金管も抑制が前提なんです。終楽章の「キンコンカン」(なんの楽器?)もエキゾチックに美しい。ようやく金管が壮麗に爆発しました。(「音楽日誌」より)
ま、しつこいほどバルビローリ(しかも1961年のライヴ)に言及しているが、独墺系交響曲ファンの多い日本人には、あれくらい濃厚劇的に表現して下さらないとぴん!と来ないのかも。こちらハンドリー盤はずいぶんと涼やかに、清潔だけれど、テンポ的にはそう変わらない。
とても楽しい作品でして、第1楽章「ファンタジア」/主題のない変奏曲は幻想的に悠々としており、第2楽章「行進曲風スケルツォ」は管楽器のみで奏され、ユーモラスかつ快活な表情を見せます。アンサンブルが整っていて、リズムのバランスがとても良い。サウンドあくまで淡彩。
第3楽章「カヴァティーナ」は弦のみであって、もの悲しい旋律をさっぱりさらりと、静かに語りました。哀しみの表現は号泣ばかりではないでしょ。終楽章「トッカータ」は鐘が華やかに鳴り渡って、金管のたしかな技巧とあいまって、この辺りは録音の良さが光りますね。独墺系交響曲であれば、断固として堂々たるフィナーレに仕上げるんだろうが、英国紳士は力感の中に、どことなく不安げな旋律を忍ばせて、陰影が深い。
ここ最近、交響曲は英国かMahler ばかり聴いております。ハンドリーの録音は機会あるたびに入手したいもの。 (2008年9月19日)
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