Brahms 交響曲第1番ハ短調/ 第4番ホ短調(エドゥアルド・ファン・ベイヌム/コンセルトヘボウ管弦楽団)
Brahms
交響曲第1番ハ短調 作品68
大学祝典序曲 作品80
PHILIPS PHCP-9546
交響曲第4番ホ短調 作品98
エドゥアルド・ファン・ベイヌム/コンセルトヘボウ管弦楽団(以上1958年)
これはFM放送をカセットでエア・チェックしたもの。懐かしさのあまりMD化。
情報によるとNM Classicsでベイヌムの10枚組が出るらしい。安ければ、ぜひ手に入れたいところ。1959年に亡くなってしまったので、ステレオ録音の恩恵を受けることが少ないまま、イマイチ人気が出ません。イメージとしては歴史的大時代の巨匠のような感じですが、演奏は端正でオーソドックス、現代的なバランス感覚溢れるもの。好きな指揮者です。
1970年前後に、コロムビア・レーベルが「ダイヤモンド1000シリーズ」を発売、廉価盤ブームがわき起こり、各社がシリーズを競い合っておりました。ワタシは小学生〜中学生くらいだったので、それしか買えなかったんです。1,000円だって当時は相当な価値があって、ましてこどもでしょう、たいへんでした。貴重で贅沢。
PHILIPSからは、900円のグロリア・シリーズと、1,200円のユニヴェルソ・シリーズが発売され、当然ワタシは900円のほうに。最初に買ったのは、ベイヌムのブラームス交響曲第4番だったか、マゼールのBach 管弦楽組曲だったかもう忘れました。「ベイヌムのブラ4」はジ〜ンときます。少年時代が蘇ります。「音楽を聴く」という原点に帰る思い。(彼のドビュッシーが安く再発されないものか)
きっとハンガリー舞曲は知っていたけれど、この第4番がワタシとBrahms との出会いだったはず。結局、いまでももっとも好きな曲のひとつ。冒頭、弦がシンプルな上下の音型を作りますよね。第2楽章のホルンもじつにありきたりな旋律。どうしてそれが、こう深い味わいに変容していくのかが、とても不思議に思ったものでした。第3楽章は好きになれませんでしたが、終楽章も切りつめられた短い動機が、巨大な構築物に育っていくのに驚いたものです。
しっとりと深い霧がかかっているようでもあり、深い奥行きを感じさせるのがBrahms である、と信じました。それがベイヌムの個性であることに気付いたのは、かなり後になってからのこと。テンポは中庸でフツウ、サラリとした表現ながらコクはある。冒頭の主題はさりげないため息のようであり、第2楽章のホルンの主題が、やがて弦で発展させるところでの幻想的な味わい、木管で収束する部分での意識が遠くなるような抜きかた。
オーケストラの個性、を初めて発見できたような気分。線は柔らかいが太く、小細工がない。自然体でもある。カセットのエア・チェック→MDに落としても、まだ美しさは失われない。(当然音質は落ちてしまうが)
第1番のほうは、やはりカセットでエア・チェックしていましたが、CDをいただいて「音の違い」(もちろん良いほう)に驚いたものです。(ワタシが長い「ブラームス・スランプ」に陥った要因であるカイルベルトの全集は、「CD化による音質問題でしょう」とのメールもいただきました)一方で「録音状態で演奏の本質が失われるものは、それだけものでしかない」という主張もあります。
第1楽章はテンポが早い。落ち着きがないといった印象はなくて、勢いとアツさを感じますね。木管の個性的な音色は特別で、嗚呼これ、やっぱりコンセルトヘボウの音だよな、と納得のふくよかな響き。若々しい高揚感。まだ亡くなってしまうには早すぎる充実した勢い。抜いて静かなところの陶酔。効果的に揺れるテンポ。語り口の上手さ。説得力。ため息が出るようなオーケストラの美しさ。
アンダンテも旋律がよく歌って、大きくリズムを取っているような、快いメリハリがあります。ホルンもヴァイオリン・ソロも文句なし。スケルツォ楽章冒頭の木管、弦の繊細なささやき、抑え気味ながらじょじょに喜びが高揚していきます。
終楽章。なにやらモソモソとつぶやいているようだけれど、やがてホルン、フルートの朗々たるソロで本当のフィナーレの開始宣言。チェロの「喜びの歌」も早めのテンポ、やがて全合奏による奔流に乗ります。リキみがなくて、チカラあるオーケストラの余裕のドライブ。余計な旋律の引きずりもなく、清廉。爽やか。最後まで聴き疲れしません。全40分。(繰り返しなし)「大学祝典序曲」は、LP時代は第4番のほうに入っていて、散々楽しんだもの。文句なし。
たしか、PHILIPS最初のステレオ録音のはずだから、音質的に多くは期待できないけれど、ほとんど不満は感じさせません。「コンセルトヘボウの音ってどんな感じ」と問われれば、これをお勧めするに吝かではない。
この演奏、第4番と併せて、おそらくいままで聴いたウチでは最高の完成度。小細工はなく、オーケストラの暖かい響きを生かして自然体。スケールに不足はないが、印象的にはむしろ細心で繊細。未聴ながら、この人のBrucknerも楽しみですねぇ。58歳で、しかも1959年というステレオ録音草創期に亡くなっているのがもったいない。あと、せめて10年、いや5年長生きしてくれたら、貴重な録音はたくさん残ったはず。
そのかわり、ハイティンクの登場は遅れ、ヨッフムの活躍の場は別の場になったかも。これが歴史のおもしろさでしょう。ジャンドロン/群響の第4番と、これでワタシは長い長い「ブラームス・スランプ」を抜けました。(2000年10月14日更新)
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