Bax 交響曲第6番/黄昏に/夏の音楽
(デヴィッド・ロイド・ジョーンズ/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団)


NAXOS 8.557144 2002年録音 Arnold Bax (1883-1953)

交響曲第6番
黄昏に
夏の音楽

デヴィッド・ロイド・ジョーンズ/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

NAXOS 8.557144 2002年録音

 2010年に入ってからのサイト更新は苦戦続きなんだけど、改めて「履歴」を見ると狭い範囲での安易な姿勢と自覚いたします。Bach 、Mozart 、Beethoven 、Mahler 、あとStravinsky、その他といった感じ。ようはするに安易に昔馴染みで済ませている、新しい音楽へのチャレンジを怠れば惚けの道まっしぐら〜あきまへんな。なるべく知名度や世評ではない、自分の耳を信じて聴いてきたつもりだけれど、著名で評価の定まった録音が安価で入手できる時代に至ったのも、いっそう音楽に対する軟弱な姿勢を助長させております。

 ここ最近、CD一枚分集中できない。途中で眠ってしまう情けない状態なんです。ここは一発!新しい音楽へのトライヤルを実行しなくてはっ!

 Arnold Bax (1883-1953)の記事は一本のみかな?美しくも神秘的な室内楽でした。この交響曲第6番は、3楽章からなる35分程の作品(第3楽章は序奏〜スケルツォとトリオ〜エピローグから成って、もう少し構成は複雑)、馴染みのElgarとかVaunghan WilliamsDelius辺りとは少々印象が異なって穏健牧歌的なテイストばかりを期待すると少々はぐらかされました。後半「黄昏に」「夏の音楽」なんか、いかにも穏健英国風ですけどね。

 ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団は響きが時に薄いとか、そんなコメントを伺うこともあるけれど、ここでは絶好調な鳴りっぷり、録音もよろしい。デヴィッド・ロイド・ジョーンズ(1934年〜)は英国のヴェテランだけれど、NAXOSに数多く録音して、ロンドン辺りの都会には出場しないけれど実力派なのでしょう。Baxの交響曲に調性は示されないが、旋律そのものは世代から考えると保守的であって、けっして晦渋なる不協和音連続!みたいなことはありません。どこをとっても親しみ深い。

 第1楽章「モデラート-アレグロ」は、まるでスペクタクル映画(舞台は中国王朝豪華な宮廷)風勇壮なスケールとリズム、幻想的な風情に彩られて開始いたします。派手なティンパニに金管が爆発いたします。(「南極交響曲」に似ていると言えば似ているかも)やや俗っぽいが変化に富んでポピュラー、親しげな、しかも迫力たっぷりな旋律が続きました。ラスト結末も打楽器と金管にてびしっと決まっております。

 第2楽章「レント」〜かなり幻想的で甘美切ない弦で開始。オーケストラは好調ですね。繊細で深い弦が美しい〜それも激しい金管の爆発で否定され〜ホルン(これがなかなか雄弁!)を伴って、静謐に戻っていく。でも、けっこうウキウキ、ヴィヴィッドな躍動リズムが繰り返されるんです。合間に優しい部分がちゃんと挟まります。文句なく美しい9分弱の緩叙楽章は耳当たり良く、保守的でもあります。第3楽章は、クラリネットの寂しげなモノローグにて開始、やがて木管が複雑に絡み合って静かにスタート。弦の詠嘆が深々と不安げに引き継いで、徐々に曲想は盛り上がって参りました。ここまでが「序奏」か。

 やがて、ユーモラスにテンポアップして木管の細かい音型〜金管やらタンバリンが賑々しく参入します。やがて弦を主体とする朗々と感動的なゆったりとした歌へと移行し、それはやはり不安げでもあります。この弦も好調だと思いますよ。やや唐突なエピソードが次々と語られるようでもあり、華々しい金管が厚みを以て再参入、ここでの迫力は文句なしでしょう。

 やがて、やはり(スペクタクル)映画音楽風大団円にてサビを形成し、静謐安寧に全編を締め括ります。甘美であり、華やか。わかりやすい。独墺系交響曲の話法ではないが。オーケストラは艶々の洗練を誇らないが、作品には充分にあって満足。

 「黄昏に」は題名からして(いかにも)Deliusの世界っぽくて、その印象を的確に音楽にて表現しております。夕闇が徐々に広がって景色が茜色に染まっていく英国の懐かしい田園風景、静謐。絶品の繊細ですよ。華やかな金管登場せず。「夏の音楽」は遠くで鳴るホルンというのがHoneggerの「夏の牧歌」を連想させます(パターンなのか)。イングリッシュ・ホルン〜弦に受け継がれる旋律は、ほとんどDeliusであります。もしかしたら民謡の採譜なのかも。こちらには時にトランペットを中心にした金管が活躍しました。こんな穏健、安寧の世界こそワタシの嗜好の基本であります。

(2010年7月30日)

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written by wabisuke hayashi