Grainger/Delius「ブリッグの定期市」(ガース・ロバーツ(t)/BBCシンガーズ/
アシュリー・ローレンス/BBCコンサート管弦楽団)


BBC RADIO CLASSICS 15656 91412 Grainger

ブリッグの定期市

ガース・ロバーツ(t)/BBCシンガーズ

Delius

「ブリッグの定期市(イギリス狂詩曲)」(以上ライヴ)
「イルメリン」前奏曲
ノルウェー組曲(「フォルケラーデット」の幕間音楽)
夏の庭園にて(第1版)
ダンス・ラプソディ第2番

アシュリー・ローレンス/BBCコンサート管弦楽団

1974年録音  BBC RADIOCLASSICS CRCB-3068 243円で購入

それは8月5日のことだった
天気はすばらしく晴れていた
ぼくはいとしい恋人に逢うために
ブリッグの定期市に出かけていった

ぼくはよろこびに胸をふくらませて
朝早くひばりとともに起きた
ずっと逢いたいと願っていた
あの娘に逢えるのだと思って

ぼくは彼女の白百合のような手をとった
すると彼女の心もときめいていた
「ようやく逢えたのね
もう決して離れたくないわ」

逢っているときは楽しくて
離れているときは悲しい
けれども心変わりするような恋人は
どんな盗人よりもひどいもの

緑の葉はしおれ
枝は枯れてしまう
もしぼくを愛してくれる恋人を
ぼくが裏切ったりしたら

(いつもながら勝手にネット検索借用ごめんなさい/商用じゃないので許してね/歌の文句って時代や国境を超越するんですね)

 Percy Graingerが採譜した民謡にすっかり魅せられたDeliusは、それに霊感を受けて著名なる「ブリッグの定期市(イギリス狂詩曲)」を完成させます。(初演は1907年)だから、2曲の「ブリッグ」は同じ旋律なんですね。声楽と管弦楽の違いはあるけれど、いずれ静謐、含羞と抑制、懐かしさに溢れた穏健な世界に癒されます。BBCコンサート管弦楽団はアンサンブルがやや(ほんのちょっと)ラフなんだけど、雰囲気はちゃんとあって、聴かせどころの”ツボ”は外していない感じ。リキまず、淡彩な響きが好ましい。50名ほどのポップス・オケらしいが、こんな正統派のレパートリーをこなすこともあるのでしょう。前半2曲の「ブリッグス」はライヴ収録(ロイヤル・アルバート・ホール)となります。残りは放送用録音か。

 ガース・ロバーツは端正で清潔なテナーであって、無伴奏の合唱が絡むんです。ア・カペラですな。わずか4分弱、劇的かつ寂しい世界でして、恋する若者の不安を表現したものか?それとも成就しなかった若き日の哀しい想い出なのか。こんな素敵な旋律の民謡が、あちこち地方に眠っているなんて!(バージョンはいろいろあるそうです)

 Deliusのほうは、この魅惑の旋律を変奏曲に仕上て、薄もやが掛かったような英国田園風景に変貌しております。3管編成のかなり大がかりな規模であります。打楽器だってティンパニ、大太鼓、チューブラベル、トライアングル、挙げ句ハープまで加わる豪華版。甘美で妖しげなな静謐から、金管圧巻の爆発にまで至って、原曲から大きく変貌して多彩な幻想曲なんです。”霊感を受けた創作”とは、まさにこのようなことなんでしょうね。オケの響きは分厚くないが、作品には充分な個性と力量だと思いますよ。ライヴだし。盛大なる拍手有。

 「イルメリン」には日本人好み”泣き”の風情があるし、清涼な空気が漂うような5分の安寧であります。さすがスタジオ録音では、アンサンブルに緻密さを増しておりますね。ノルウェー組曲は、前奏曲-活発に/楽しく活発に/アレグロ・エネルジコ/マルチア-レント・ソレンネの4楽章からなっていて、表情も明るく溌剌として快活、ユーモラス〜そこに英国の含羞+バロックのテイストも加わるといった20分程の作品。楽しいものですよ。

 「夏の庭園にて」も、日本の風情ある夏を連想させますね。スコアには「すべてが花盛り。春と夏が歌っている間に、愛の甘い花盛りのすべてをそなたに与えよう」(ロゼッティのソネットより)という素敵な一文が添えられているとのこと。これが所謂「イングリッシュ・ガーデン」なのか。1909年作曲者自身によって初演されたのが「初版」なのでしょう。決定稿は1913年に初演されていて、どこがどう違うのか真剣に聴きくらべていないのでわかりません。胸が締め付けられるような、後ろ向きの悔恨の情に満たされ、やがて癒される17分の静かな感傷。夏にしてはずいぶんと涼しいではないか。

 ダンス・ラプソディ第2番(1916年)は、やや剽軽な味わいが加わって、前曲より動きも盛り上がりもあるんだけれど、基本英国紳士の落ち着きと抑制を失いません。英国音楽って、独墺系とは語法が違うから、こんな地味(で素敵)な旋律に馴染むのは難しいのかも。メルヘン感じませんか。華やかさが足りませんか?ワタシにはほとんど”ツボ”の世界に溺れそう。

(2009年11月14日)

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written by wabisuke hayashi