Bax 室内楽曲集「ハープ五重奏曲」/「エレジー」/
「幻想ソナタ」/「フルート・ソナタ」(モビウス)


NAXOS 8.554507 ARNORD Bax(1883-1953) 

ハープと弦楽のための五重奏曲
ハープ、ヴィオラとフルートのための悲歌的三重奏曲(エレジー)
ハープとヴィオラのための幻想ソナタ
フルートとハープのためのソナタ

モビウス(MOBIUS)

NAXOS 8.554507  1999年録音 400円にて購入

 演奏団体であるモビウスには伊藤加奈子さん(v)が参加している・・・てなことも、別に意識したわけでもなく中古屋で安かったから購入しただけ、ということです。2004/8/10広島にて購入とのメモがあるけれど、この度転居して出現〜未聴であることに気付いたもの。エエですね、地味で静謐で甘美(甘さ控えめ)、床しい悦びに溢れる旋律の宝庫。”安物漁り”もこんなCDに出会うことが希にあるから、永く続く趣味となり得ます。(スリーヴの絵が、またイメージにぴたり!)

 シロウトなりのイメージだと、Debussyの妖しげなる室内楽の雰囲気に+VAUGHAN-Williamsの穏健かつ息の長いテイストを載せた、といったところでしょうか。全曲に共通するのはハープ(アリソン・ニコルズ)であって、アンサンブルの中軸を担っているようです。

 「五重奏曲」は、このCD全曲中もっとも動的な感情に支配されております。3楽章14分ほどの作品だけれど、唯一ヴァイオリン(華やかな高音旋律)+チェロ(低音の重心)が参加していて響きに厚みと変化が存在します。第2楽章「Tranquillo(静かな、穏やかな、やすらかな)」は、耳元で囁くような静けさであり、終楽章の詠嘆は鬱々とした曇り空のような、不安な灰色の美しさを誇ります。

 「エレジー」は、まるで日本の古風な旋律(とくにフルート/ローナ・マックギー)を連想されるような、懐かしさ溢れました。わずか8分の儚げな嘆きだけれど、小さなドラマを感じさせます。曲想は暗くはなく、劇的でもない、むしろ晴れやかなるやすらぎが伝わるような、優しさ充ちておりました。

 「ハープとヴィオラのための幻想ソナタ」は、このCD中相対的に大規模なる4楽章23分の作品であり、ハープが女性の嘆き、心象の発露、ヴィオラが男性の説得を表現しているような、やや劇的な、そしてかなり地味な作品でしょう。この男性は、声高ではない(高音旋律はもちろん登場しない)が雄弁で説得力充分。しかも、常に冷静。暗鬱なるモノローグを聴いていると、爆発が欲しくなってイライラするかも知れません。

 ラスト、「フルートとハープのためのソナタ」は、フルートが朗々と歌い続けました。かなりの技巧を要する多彩な旋律だけれど、キラキラと華やかではありません。あくまで内省的であって、情感が揺れ動くような感傷的なものではなく、あくまでクールな精神状態の範囲で緩・急・緩の3楽章18:30の作品であって、終楽章の躍動もあくまで抑制が利いております。

 「英国音楽は女性には向かない」と、いつも顰蹙を買いそうなコメントをしているが、これならきっと大丈夫。地味な音楽に間違いないが。

(2007年4月13日)

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written by wabisuke hayashi