秋〜歴史的録音への熱狂


 2000年10月6日。昼過ぎ。揺れました。ま、岡山は被害がすくない方だったらしいけど、相当でした。JRが止まってしまって、ウチの職場であちこち出張していた連中(ワタシは珍しく事務所におりました)は、なかなか帰れなかったり、新居浜で泊まったり、とたいへんでした。1995年の阪神大震災の時、大阪にいましたけど、その時に相当する揺れ。自然の猛威。被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。


 さすがの猛暑も終わり、いつしかすっかり秋に。9月末から風邪を惹いてしまい、1週間ほど苦しみました。(正直、いまでも体調良くない)皆様はいかがでしょうか。9月は珍しく仕事でバタバタして、一枚もCDを購入しませんでした。土日・祝日の出勤・出張は生活のリズムが狂って、音楽もゆっくり聴けない。一方で忙中閑有、エア・チェックカセット音源のMD化にいそしんでいたせいもあります。

 8月に購入したCDでは、ヌヴーのBeethoven とBrahms の協奏曲(MUSIC & ARTS CD-837)が出色で、2枚組を繰り返して聴いていました。(HP原稿にしようと思って四苦八苦)歴史的音源は、「著作隣接権」(詳しくはよう知らんが)の関係でCDの価格が安いんです。LP時代には「ウラニアのエロイカ」とかなんとか言っちゃって、数万円で取り引きされた記憶もあるから、時代は変わりました。

 CDは、LPと違って(時代も違うが)ずいぶんと簡単に、安く作れるようで、音源さえ手に入れば、ワタシの超激安パソコンでも作成可能。(そんな闇商売やってませんが。そのかわりMDはけっこう貯まりました〜数えてみると45枚分ほど)いつだったか、2年ほど前のレコ芸「売ります買います」情報で「フルトヴェングラーの云々CD一枚三万円で売る」なんていう、欲ボケした(きっと)爺さんが投稿していましたが、果たして売れたんでしょうか。

 Gramophon JapanやClassic Pressを見ても、歴史的録音の比率が急激に増えていますね。高い経費を掛けて新録音をしても、それが歴史に残るような個性的な演奏になる保証はないし、だいたい元が取れるほど売れる訳じゃない。「売れ筋」の焼き直し(再発)は少々食傷気味だけれど、戦前からモノラル時代、ステレオ初期の音源を勝手にCD化したほうが元手はかからないし、内容さえ厳選すれば素晴らしいものができて、新鮮。宣伝次第で売れるかも。

 録音は新しくて、鮮明であるに越したことはない。でも、人間の耳は便利に出来ていて、ある一定の音質水準以上であれば、脳味噌で勝手に補ってくれます。そうとうに古い録音でも、慣れてくるとその中から演奏者のエッセンスが読めるようになる。(これを「別耳」と呼ぶ)ま、「優秀録音」だって、ナマに比べりゃ真実を伝えるチカラは五十歩百歩でしょう。

 最近、あらえびすの伝説の名著「名曲決定版」(中公文庫)を再読しましたが、1939年出版の内容には現在でもほとんど違和感なし。フルトヴェングラー、トスカニーニ、ワルター、メンゲルベルク、カザルス、カザルス、クライスラー等々、CDでは現役バリバリのスターです。若い二十歳くらいの音楽ファンの方達とも、なんらの違和感なく論議の対象となる不思議。なんたるエコノミー、リサイクル?有益な資源の再活用。

 NAXOSは、既存のメジャー・レーベルの元気のなさとは対照的に意欲的な新録音を続けておりますが、ヒストリカルの音源も復刻してくれて凄い。トスカニーニ辺りはともかく、メトロポロタンの歴史的録音とか、R.シュトラウス、フリート、プフィッツナー、前々から狙っていたフーベルマン、フォイアマン、意外と買う機会を得ないクーセヴィツキーなんか出てくると心揺らぎます。しかも安い。(でも、まだ一枚も買っていません。もっと安いのが出ているから)

 10月に入って、職場の近所の「タワーレコード岡山店」を覗いたら、トスカニーニの10枚組(HISTORYの第2集。3,490円〜きっと大阪辺りでは、もっと安いんだろうな)を発見、購入しました。バルビローリ/ハレ管のシベリウス(旧録音)DUTTONの2枚組(1,390円)もついで、と言っちゃなんだけど。トスカニーニが特別に好きな訳じゃないが@300程度だったら買い、でしょう。HISTORYのシリーズは価格だけでなく、あまりノイズを取り除きすぎない音質も好感が持てる。(RCAのはどうもいけない)

 トスカニーニは、一般にフルトヴェングラーより音質に恵まれていて、一度ハマると、ノリ、歌心、集中力がなんともいえない。やはり歴史の荒波にもまれ、生き残った演奏なんです。現代に近い無名の演奏家も、虚心になって聴くようにはしていますが、「歴史的録音」にはなにか特別な、魔人のような説得力を感じることもあります。久々にライヴァルのフルトヴェングラーも聴こうか、という気になるもの。

 1950年代に活躍した、ステレオ録音にぎりぎり間に合わなかったり、間に合ったりした人たちの録音にも興味がありますね。ホーレンシュタインとか、ホルライザー、ヘーガー、カイルベルト、ロジンスキー、ベイヌム、ススキンド、ゴルシュマン、プロハスカ、ペルレア、ハイキン、ゲール、等々キリがないくらい。そういえば先日、ディクソン(かつてケルン放響などで活躍した黒人指揮者)の録音をMDでいただいたりしました。(けっこう貴重)

 たまたま、SP→LP→ステレオ→デジタルの切り替えの狭間で、消えてしまった音源はたくさんあるはずなんです。(例えば、10年ほど前に古本屋でF・B・トイスル/ウィーン・フォルクスオ−パの「英雄」等のLPを目撃したことがある。10枚組でした)

 まだまだ聴いたことのない音源は、おそらく山のようにあって、CDの価格が安くなってくれれば、楽しみは無限でしょう。新しい録音で若手が華々しいデビューを飾るのも悪くないが、5〜10年くらいのスパンで評価をしっかり見据えたいものです。「歴史的録音」は既に数十年の審判を受けて生き残ったり、復活しているのですから。(2000年10月6日更新)


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written by wabisuke hayashi