Bruckner 交響曲第4番 変ホ長調
(ゲオルグ・ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団)


NAXOS 8.554128 1996年録音 Bruckner

交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(ハース版1878/80年)

ゲオルグ・ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

NAXOS 8.554128 1996年録音 800円で購入

 以下はこのサイト初期の更新であって、ゲオルグ・ティントナー生前のコメントとなります。なんどか触れているが、ワタシはその後ティントナーの聴き方に混迷を深め全集売り払い、再度中古屋で出会って買い直す、といった愚行を繰り返しました。久々の再聴だけれど、ある種の感慨がありましたね。ワタシのこの作品のリファレンスはハイティンク(ウィーン・フィル1985年)であって、Brucknerに何を求めるか、がキモなんでしょう。ワタシは緑豊かな、草原の風を感じたい。

 ”第3楽章スケルツォ・・・いかにもオーケストラが弱いんです。響きが薄い、リズムにコシと粘りが足りない。それでも清涼なる響きはそれなりに味わいがある”・・・これが最近(2008年)の感想です。ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団は膨大なる録音を誇るが、どうも決め手に欠けるというか、整ったアンサンブルながら、いまひとつ強靱な厚み個性に欠ける〜そんな先入観(そう沢山は聴いていないから)有。

 ”遅いテンポで、高いテンションが持続するのはチェリビダッケに負けません。ひじょうにクリアで、見通しの良い演奏であり、金管は鳴りきっているが、重苦しい響きにならない。その旋律の歌わせ方のていねいなこと、細部までの入念な彫刻はいつも以上”〜これは持ち上げ過ぎでしょう。チェリ・ファンにお叱りを受けること間違いなし〜なくらい、全然異なる世界。”第1楽章のホルンの美しさ。深く、息の長い旋律の歌。あわてず、騒がずしっかりとした足取りのリズム”〜これは前のコメント含め、「クリアで、見通しの良い」「重苦しい響きにならない」のは事実ながら、ホルンの音色だってフツウだし、金管が鳴りきっている!というほどの威力はないでしょう。「旋律の歌わせ方のていねいなこと、細部までの入念な彫刻」というより、虚飾ない自然体ムリのない涼やかな(枯れた?)表現と感じます。

 ”第2楽章アンダンテの弦の透明さ。弱くなりすぎず”〜透明に間違いはないが、静けさが弱さを招く、というのは一流オーケストラのナマ体験を経た結論であります。どー聴いても”高いテンション”とは思えない・・・第3楽章のスケルツォ楽章は先に引用したとおり。ていねいで透明だけれど、細部にもたつきが感じられます。例えばシカゴ交響楽団が好きな人だったら、耐えられぬ”弱い”響き。

 終楽章は精一杯、誠心誠意な叫びは、ちゃんとしたクライマックスを作り上げております。素朴さが支配しつつ、金管も大健闘〜だけれど、やはり(第2楽章同様)弱音部分で”弱い”と思います。誠実だけれど、カッコ良くはない。ひとつの”味わい系”として好意的な感触有。

 なぜハイティンクが基本なのか。力量あるオーケストラを無理なく、ほとんど無為無策風にコントロールして自然体であること。まさに「極上のフツウ」こそ理想。ティントナーの枯れきったBrucknerは、散々脂っこくもヴォリュームたっぷりの世界を堪能したあとの癒し、まるで精進料理のような(ひとつの)価値と気付きました。

(2008年4月25日)

 高齢で全集完成が心配なティントナーの新録音。(発売まで足かけ3年かかっている)ワタシが発売を待って購入する、ほとんど唯一の演奏家。

 最近、音楽の聴き方のパターンがあって、例えばティントナーの「ロマンティック」を買ってくるとしますね。すると、まずケルテス/LSO(BBCライヴ)の演奏で聴いておく。続いてクレンペラー/VSO(VOX)の旧い録音とも比べてみる。「フムフム」と感心しながら「つぎはケンペ」と思いつつ考えを変えて、ようやくティントナーへと至る、てな具合。

 Brucknerは大好きですが、1〜4番まではイマイチで、じつは4番が一番苦手。おそらくワルターの演奏で、こどもの頃から何度も聴き過ぎていたせいでしょうか。でもここ数年、ケンペなんかの崇高な演奏(PILZ)に接して、回復傾向。このティントナーの新録音で、とどめを刺された感じ。凄い演奏です。

 第5番と同じオーケストラですが、こちらのほうがずっと調子は良いみたいですね。(数ヶ月後の録音)やや軽量ながら、鳴りきった明快な響き。グラスゴーのヘンリー・ウッド・ホールは響きが混濁せず、乾きすぎず、ちょうどよい絶品の録音バランス。クレンペラー/VSOが51分少々(快速)ですから、この演奏は22分も長い。ケルテスより12分長い。(版も違うんでしょうが)ケンペとほぼ同じ演奏時間で、そうとうにゆったりとしたテンポです。

   遅いテンポで、高いテンションが持続するのはチェリビダッケに負けません。ひじょうにクリアで、見通しの良い演奏であり、金管は鳴りきっているが、重苦しい響きにならない。その旋律の歌わせ方のていねいなこと、細部までの入念な彫刻はいつも以上。

 第1楽章のホルンの美しさ。深く、息の長い旋律の歌。あわてず、騒がずしっかりとした足取りのリズム。

 第2楽章アンダンテの弦の透明さ。弱くなりすぎず、じゅうぶん腰のあるオーケストラの響き。

 第3楽章スケルツォこそ、この曲のハイライト。金管が遠い原野からじょじょに近づいてきて、やがて最高潮の迫力に達しても音が濁らない。途中途中に挟まれる、弦と木管の優しいこと。テンポの頻繁なゆれも自然体。

 最終楽章の、圧倒的な大見得を切るような金管の爆発の後、むしろサラリと流して対比を作る巧さ。最終版に向かって、更にテンポを落として全開に達するオーケストラの絶叫。ストレスは解消されます。

 ティントナーはほかの録音でもそうですが、オーケストラの力を完全(いや、いつも以上に)に引き出し、アンサンブルの高さは舌を巻くほど。RSNOはいままであまり聴く機会のなかったオーケストラですが、ここでの響きはどう聴いても完璧に超一流でした。

 なんか、やたらと立派な「ロマンティック」ですが、そう威圧感はありません。ワタシは「ドイツ・オーストリア系正統の演奏」と感じました。(日本語オビの解説コメントが外していて笑えます)


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written by wabisuke hayashi