●外伝へ

駅売名曲海賊盤余話■第6集■”海賊盤購入の言い訳”


駅売名曲海賊盤情報(手持ち集成)■第1集■
駅売名曲海賊盤情報(手持ち集成)■第2集■
駅売名曲海賊盤情報(手持ち集成)■第3集■
駅売名曲海賊盤情報(?)■第4集■(言い訳の上塗り)
駅売名曲海賊盤情報(?)■第5集■(Mahler 作品集)

 続編です。この「駅売名曲海賊盤」系話題は(ただでさえ反応薄いこのサイトで)いっそう誰も触れたがらない、ダーク・サイド・ネタであります。でも、売ってるんだも~ん、安く。合成樹脂は十数年くらいで寿命にならないしね。いえいえ、問題は組成原料ではなくて、刻み込まれたデータ(音源)でしょ。すびばせんねぇ、SONYはん。エエお客じゃなくて。

 「LP時代の在庫はCDで回復したい」といった基本ラインがあるんです。とくにこども時代に所有していたものは、記憶鮮明だしぜひとも再聴したい!でも、高いで、SONYはん。なんとかしとくなはれ、この価格・・・って、ブルーノ・ワルターのステレオ録音の件。なんやかや、かなり集めたんですけど(もちろん正規盤で)肝心のMozart が。もしかして30年くらい、聴いていないかも知れない。あれ?20年かな。社会人になってから持っていただろうか、このLP。記憶が混乱してる・・・でも、どんな演奏だったか、熟知しております。

 毎月定例の東京会議出張は前泊となります。岡山からの到着時間はお仕事都合でさまざまだけれど、早めに到着できれば稀に新宿ディスク・ユニオンへ(まともに到着したことはほとんどなし。必ず駅で迷う)・・・で、こんな店にも駅売海賊盤あるんです。安かった・・・

NAKA International ND-007Mozart 交響曲第40/35/38番(1959年)~ワルター/コロムビア交響楽団(NAKA International ND-007 158円)
NAKA International ND-006Mozart 交響曲第41/36番(1960年)+「フィガロの結婚」序曲(1961年)~ワルター/コロムビア交響楽団(NAKA International ND-006 210円未開封)

ああ、残念ながら交響曲第39番が抜けてますね。たしか、LP時代は3枚組豪華ボックスが4,500円だったはず。それが368円ねぇ・・・怪しげ海賊LP板起こしかも知れないが、見掛けたらどうしても欲しかった、少年時代の感動よ今一度!

 ところがね、上記CDを購入して一週間も経たない休日、ご近所BOOK・OFFを覗いたら(また”駅売名曲海賊盤”だ!)こんなCDが目に付きました。

SEEM AM-026Mozart 「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」K.525/「劇場支配人」序曲/「コジ・ファン・トゥッテ」序曲/「フィガロの結婚」序曲/「魔笛」序曲/「フリーメイスンの葬送行進曲」K.477~ワルター/コロムビア交響楽団(SEEM AM-026 1961年録音 500円▲100円サービス券)

 少々高い値付けだし、「フィガロ」がダブったが、仕方がない。これもまさしくLP時代愛聴したものと同一収録なんです。ワルターとかベームとか、かつては”クラシック音楽ファン必聴のMozart !”だった時代があるんです。(1960年~1970年代?)この21世紀だったら誰の演奏ですか?2000年末に「リーダーズ・チョイス~私の愛聴盤」(読者が選ぶ名曲名盤100。音楽之友社)というのが出ていて、これが趨勢を見るに相応しいかな?(その後、こういった雑誌は購入しなくなった)

 既に5年前の情報は旧いかも知れないが、Mozart の交響曲は3曲選定されております。これが凄い。

<交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」>
●読者選定
(1) クーベリック/バイエルン放送交響楽団(1980年)
(2) ワルター/コロムビア交響楽団(1959年)
(3) ベーム/ベルリン・フィルハーモニー(1959年)
●評論家選定
(1) アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団(1993年)
(2) ガーディナー/イングリッシュ・バロック・ソロイスツ(1988年)
(3) マーク/パドヴァ・エ・デル・ヴェネトー管弦楽団(1996年)

<交響曲第40番ト短調K.550>
●読者選定
(1) ワルター/ウィーン・フィルハーモニー(1952年)
(2) ワルター/コロムビア交響楽団(1959年)
(3) バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー(1984年)
●評論家選定
(1) コープマン/アムステルダム・バロック管弦楽団(1994年)
(2) アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団(1991年)
(3) ベーム/ウィーン・フィルハーモニー(1976年)

<交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」>
●読者選定
(1) ベーム/ベルリン・フィルハーモニー(1962年)
(2) ベーム/ウィーン・フィルハーモニー(1976年)
(3) クーベリック/バイエルン放送交響楽団(1980年)
●評論家選定
(1) ブリュッヘン/18世紀管弦楽団(1986年)
(2) アーノンクール/ヨーロッパ室内管弦楽団(1991年)
(3) コープマン/アムステルダム・バロック管弦楽団(1991年)

・・・驚きました。ま、実際は票が割れていて、ベスト5くらいまであまり変わらないのかも知れないが、頑迷なる超・保守本流的嗜好。なんやかんや言いながら自民党政権が続いている・・・的感慨がありますね。投稿者が「Mozart はベームとワルターで育ってきた」世代中心だったのかも知れない。評論家選定がには新顔(古楽器勢もかなり)が見られるが、この選定は5年でガラリと変わってますか?

 音楽の好みは人それぞれだし、ワタシも日々自分の中での感じ方も変わっております。でもさ、例えばベーム/ウィーン・フィルの交響曲第40/41番(1976年)って、ワタシは少々”緩さ”に耐えられなかった記憶がある。ベルリン・フィルとの旧録音だったら、嗜好を超えた緊密なアンサンブル集中力に聴きどころ有、と思わないでもないが。(少々堅苦しいけど)まだ、耳の修行不足ですか?今聴けば、また感想が変わっちゃうか。

 で、”思い出のワルター”は如何。

 

ずずん!と重い低音、分厚い響き、昨今珍しいぽってりとしたリズム感。立派な演奏に間違いない。

さすがに録音は金属的で、やや不自然な残響だけれど、充分に現役の鮮度でしょう。オーケストラも達者な技術だけれど、続けて聴いていると洗練されないサウンドが(重い表現とあいまって)少々耳障りに感じるようになりました。嗚呼、やっぱり罰当たり!何度でも聴き直しまっせ。

 「ジュピター」は巨魁なるスケール、終楽章はのフーガ(ホルンの強奏!)に圧倒され、これは希有な感動です。少年時代の無垢な思いも間違いなく蘇える・・・が、「リンツ」を聴いていくとオーケストラの味わいに少しずつ不満が出てきちゃう。いえいえ、技術的にはなんらの問題ないでしょ。でもさ、陰影やら、細部ニュアンスに充ちた自発的なメンバーのワザ~そんなものが不足しているのか、それとも大味な録音のせいか?(音楽日誌より)

 常連手練れの読者からは

ワルターの「ジュピター」、フィナーレ大詰めのホルンのドレファミの強奏は聴いていて興奮しますよね。 あれ、コントラバスとチェロにホルンを重ねたワルター独自の改変。
との補強詳細情報も有。(ありがたいことです)

 ワルターの世代(1876年生。ちなみにフルトヴェングラーが1886年生)で、ちゃんとしたステレオ録音を残して下さったこと自体、感謝の気持ちで一杯です。それを前提として、やはり”ワタシはずぶんと遠くまで来てしまった”という感慨が・・・低音を強調する(ドイツのオーケストラが脳裏にあったか)のはワルターの常だし、西海岸ハリウッドのオーケストラでその効果を出すためには、楽譜の改変も意図したのでしょう。ゆったり豊かな響きを「時代遅れ」とか、「老人の繰り言」と評するつもりも一切ありません。これがワルターなんです。往時の記憶も感動もは鮮明に蘇りましたね。

 しかし、既にワタシは真っ白なココロを持った少年ではない。例えばマッケラス/プラハ室内管による、小編成+緊張集中したアンサンブルも楽しんだし、コープマンの軽快融通無碍、ヤープ・テル・リンデン/アムステルダム/モーツァルト/アカデミー(2002年)の優しく、穏健な古楽器演奏も楽しみました。それらとワルターは随分と個性が違う、と。それだけ。

 しみじみと感慨に耽る優しくも入念なる歌い口は、やがて味付けが濃すぎるように感じます。100%果汁の味覚も香りも魅力だけれど、ダイエットには適さない。コロムビア交響楽団は、ハリウッドの名手達を集めた録音用のオーケストラ(ロスアンゼルス・フィルのメンバーも多かった、とのこと)であり、技術的な不備などあろうはずもないが、一気3枚聴いていくと違和感が少しずつ・・・このオーケストラはコンセルトヘボウでもバイエルン放響でもない、ということか。響きそのものを無条件に楽しむ・・・そんなオーケストラではない。

 いや言葉が過ぎました。ワタシはこんな優雅で感慨深い「アイネ・ク」/序曲集も久々でした。おおらかで、懐の深い、美しいMozart 。しかし、ワタシは振り返ればずいぶんと遠いところまで来てしまった、それだけのこと。ごめんね、もう別な道を歩んじゃった・・・的感傷有。駅売名曲海賊盤でぐずぐず言うな!と硬派のファンから叱られても仕方がない。

 ワルター万歳!

(2005年8月19日)

 


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi