R.Strauss 交響詩「英雄の生涯」/「四つの最後の歌」
(ネーメ・ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団/フェリシティ・ロット(s))


CHANDOS CHAN 8518 中古@250 R.Strauss

交響詩「英雄の生涯」

四つの最後の歌

ネーメ・ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団/エドウィン・ペイリング(v)/フェリシティ・ロット(s)

CHANDOS CHAN 8518  1986年録音

 2004年出張先山口BOOK・OFFにて@250入手との記録有。わずか5年程前迄、”安ければ買う、まず聴いてみる”という姿勢徹底しておりました。草臥れた現在が信じられぬほど意欲に溢れ、前向きだったのでしょう。ネーメ・ヤルヴィは1937年エストニア生まれ、エーテボリ管弦楽団(1982-2004)にて一躍名を挙げ、このスコティッシュ管弦楽団、デトロイト交響楽団の音楽監督を歴任、現在スイス・ロマンド管弦楽団の首席(2012-2015。この後ニュージャージー響、ハーグ・レジデンティ管弦楽団・・・)とのこと。時代は既に息子達の活躍(長男パーヴォ1962年 -次男クリスチャン1972年 - )に遷っているのでしょう。録音の多さには驚くばかり。彼のSibelius (旧録音しか聴いていない)はヴェリ・ベストじゃないか。

 音源として現役らしいけれど、ほぼ話題にならぬもの。こうして約10年棚中に熟成させて再拝聴に至りました。まったく未聴というわけでもなくて

これはオケの威力も録音水準も圧倒的で凄い演奏だ。なぜ話題にならないの?

基本ストレート系で、旋律に妙なクセを付けないが、ややテンポ遅め(46分掛かる)で堂々とあわてず、走らず、オケが鳴りきって素晴らしい。ティントナーのBrucknerと同じオケとは俄に信じがたい、かなりきっちりとしたアンサンブルでした。「4つの最後の歌」もしっとりとしたロットの歌に、かなり明快なバックを付けて「雰囲気で聴かせよう」といった演奏ではない(2004年5月「音楽日誌」)

録音が非常に鮮明であること、アンサンブルの彫琢に優れ、バランスと余裕を感じさせる耳あたりの良さ。素っ気ないワケでもなく、リキみ過ぎてムリムリな表現になることもなく、語り口は抜群に上手い。ティントナーのBrucknerとはガラリ印象を変えて、ここぞと言うところでの押し出しにも文句なしのオケの力量か。もちろん清涼な味わいはちゃんとあります。エドウィン・ペイリング(v)のソロは最高。

プレヴィンとはずいぶん方向が違うようだけれど「自然体のR.Strauss」であります。フィル・アップが「4つの最後の歌」(フェリシティ・ロット(s))であり、作品も歌い手もお気に入りだけれど、それだからといって理想的な演奏に仕上がる・・・保証じゃないところが、音楽のオモろいところ(2006年2月「音楽日誌」)

とのコメント発見。なんせオケの威力効果的な名曲中名曲、カラヤン、ライナー往年の名匠は圧巻の迫力有。サイト内検索を掛けると、マルクソンカール・ベームデイヴッド・ジンマン小澤征爾・・・意外とたくさん言及残っていて、作品としては数聴いていることを発見(再聴再コメント必須)。そのなかでネーメ・ヤルヴィの個性をどう聴くか、ということでっせ。

 ”オケの威力も録音水準も圧倒的で凄い”というのは言い過ぎ。いかにも英国音楽が似合いそうな淡彩、誠実なサウンド、ゴリゴリ低音が響いて分厚い!てなことはない。音質はこの時期としてフツウの高水準?でしょう。アンサンブルは整って、勢いもあるけれど、ぎらぎらした独墺系の迫力には及ばぬ感じ。もともと馬力を売りにするようなオケじゃない。そのことを前提に”堂々とあわてず、走らず、オケが鳴りきって”というのは正しいでしょう。細部、ていねいな仕上げであります。

 威圧感も押し付けがましさも少ない「Der Held (英雄)」のバランス感覚、「Des Helden Widersacher (英雄の敵)」に咳いた前のめりの焦りを感じない。「Des Helden Gefahrtin (英雄の伴侶)」には清潔な情景が広がります。エドウィン・ペイリング(v)ソロも含め、纏綿というより淡々、静謐部分に聴きどころ有。ここ13分、全曲中白眉の出来でしょう。金管もなかなか上手いけれど、壮絶なる迫力ではない。

 ペイリングってロンドン交響楽団のコンマスやってませんでした?時期がズレているのか。最大山場「Des Helden Walstatt (英雄の戦場)」へ〜この辺り、御大カラヤンが上手いのだな。金管も頑張っているし、特筆すべき打楽器の際立たせ方キレ味、優しい部分との対比も見事、ベルリン・フィルとは比べられぬがスコティッシュ管も大健闘の迫力であります。バックヤードの金管も含め、この部分のクリア、分離の良い音質は賞賛されるべきでしょう。

 ホルンによる交響詩「ドン・ファン」のテーマ(立派。ド派手な潰れ方に非ず)を経、沈静化する「Des Helden Friedenswerke (英雄の業績)」〜「Des Helden Weltflucht und Vollendung der Wissenschaft (英雄の隠遁と完成)」へ。馴染みの各種交響詩旋律回帰して、風情はあくまで透明淡々静謐、感極まった回顧詠嘆ではない。音量の小さいところにて”弱い”と感じる部分なきにしも非ず、オケの技量問題があるかもしれません。

 「四つの最後の歌」は大好き。言語など理解できなくても「夕映えの中で」 (Im Abendrot )には茜色の情景眼前に広がりますもの。エリザベート・シュヴァルツコップの声質に「年増の深情け」(失礼)を色濃く感じるようになって、フェリシティ・ロットの素直な美声に嗜好が遷っております。

written by wabisuke hayashi