R.Strauss 交響詩「英雄の生涯」
(ゲルハルト・マルクソン/アイルランド・ナショナル交響楽団)


指揮界のMr.オクレ/容姿で音楽が決まるワケでもない NAXOS  8.554417 Strauss.R.

交響詩「マクベス」作品23
交響詩「英雄の生涯」作品40

ゲルハルト・マルクソン/アイルランド・ナショナル交響楽団

NAXOS 8.554417 1998年録音 @780で購入

 2006年再聴です。けっして嫌いな作品(「英雄の生涯」)でもないが、好んで集中しているとも言えない・・・”ケンペの格安「全集」”をその後購入したのみならず、カラヤンとか小澤、メータ(旧)、バルビローリ、ヤルヴィ、ジンマン、ヘルビッヒ/BBCフィル、ティルソン・トーマス、ブロムシュテット、ライナーの新旧盤、果てはメンゲルベルク、作曲者による自演迄・・・(知らぬうちに)揃っている驚き。「ワタシ、こんなに集めているんです!エヘン」的自慢趣味はないので、たんなる「安物買い無意識収集フェチ」か?ということでもなく、「音楽聴取百遍、意自ずから通ず」の極意であります。いくらアホでも、こんだけ聴いてりゃ、いつかは目覚めまっせ・・・

 そう、たしかに目覚めました。「at a sampling rate of 176.4kHz」・・・それなんやねん?ワタシ、生粋の文系ですし。でもね、聴けば聴くほどその奥行き、広がり、余裕の残響が快い。きんきら・どんしゃり系ではなく、質実自然に会場が鳴り渡ります。シンバルは、はっ!とするほど立ち上がり、定位明快に響き渡りました。「英雄」「英雄の敵」は抑制気味で始まるし、全体ややテンポも控えめ(45分掛かる/自作自演より5分以上長い)、オケはけっして名人芸の輝きとは言えない(むしろジミだ)から、ははぁ、こんな方向か、雄弁じゃないのか、と。

 「英雄の伴侶」・・・ここは長いし、ヴァイオリン・ソロが難しいんですよ。まとまった印象にするには。しみじみ、しっとり(やや線細く)歌っていて、この辺りから、ははぁ、こりゃ優秀録音だ、ジワジワと深みのある響きだなぁ、と感じるように。愛の歌は、文句なく艶やかでさえあります。「英雄の戦い」に至って、これは録音の威力のみならずアンサンブルの実力であると確信。弦とか、金管(キモはホルンですか?)、木管群もそうそう個性的な音色とも言えぬが、誠実で息のあったアンサンブルに何らの不満もありません。

 「薄っぺらくヒステリックなオケとは思わないけれど、緊張感と力強さが足りません」とは数年前のKechiな野郎のコメントだけれど、数年後の耳にはそんなことはない、驚くべき自然体の集中力と、シミジミ味わい系のアンサンブルが美しい。アイルランド・ナショナル交響楽団はNAXOSで様々録音を楽しんだけれど、その中では出色の充実(厚みだってちゃんとある)を誇って、これはゲルハルト・マルクソンの成果でしょうか。

 「英雄の業績」「英雄の引退と完成」は万感迫って、黄昏の風景が広がりました。ジミな演奏に間違いないし、知名度的には問題にならないだろうが、これは出色の完成度を誇る「英雄の生涯」であります。改めて驚かされました。録音極上だけれど、演奏も極上。

(2006年8月12日)

 R.Straussは、ここのところちょっとスランプで楽しく聴けません。そんなこんなで、ケンペの格安「全集」も買い損ねました。立派すぎて、勇壮な旋律が押しつけがましく感じるのはなぜでしょう。「英雄の生涯」は、ライナーのが一枚あればいいか、と思っておりました。

 このCDは、なんかの本で「録音が凄いよ」との記事を読んで買ってみたもの。「at a sampling rate of 176.4kHz」で録音した、みたいなことが書いてありますが、なんのことかよくわかりません。ま、所有しているコンポが安物なで、あまり録音のことは云々できないのですが、ときどきはっとするような新鮮な音に、曲のイメージを一新することもあるので、期待しておりました。

 ゲルハルト・マルクソンさんは、初耳の方でドイツの中堅らしい。録音など滅多にない、ワタシ好みのローカル・オケを主に指揮されているようで、さすがNAXOSはその辺りの徹底した哲学というか、(おそらく)経費節減ぶりもたいしたものです。余談ですが、吉本興業の渋いコメディアン・Mr.オクレに似ているところがなんといえない。

 この辺りの曲は、オケの力がものをいう場合が多くて、シカゴとかベルリン・フィル、コンセルヘボウに有名な評価の高い録音が多いでしょ?なぜかここ数年NAXOSで、かなりの録音を続けているダブリンのオケの出来や如何。

 まず比較的知られていない(ワタシが聴いたことがないだけ?)交響詩「マクベス」から。

 この曲、いつものこの作曲家らしい勇壮な旋律がわかりやすく、なかなかいい感じじゃないですか。余裕のある奥行きというか、肌理の細かい、音の余裕は感じられます。アイルランド国立響は、数種類の録音を聴いているけれど、素直でクセのない響きを持っていて、指揮者によってずいぶんと印象が変わると思います。

 けっして「抜いて」もいないし、薄っぺらくヒステリックなオケとは思わないけれど、緊張感と力強さが足りません。アンサンブルの濁りはないし、聴きやすい音。なんかへんだなぁ、食い足りないなぁ、と思うのは「R.Straussは怒濤の迫力で」という先入観があるからでしょうか。これはゲルハルト・マルクソンの責任か。

 ところが、これ、じつはMr.オクレの確信犯なんですね。それは有名な「英雄の生涯」を聴けばわかる。

 ベーム最晩年のウィーン・フィルとの録音があるでしょ?ま、指揮者の年輪とか、オケが違うけれど方向としてはそちら方面。「脂ぎって、カラダも声も大きな英雄」じゃなくて、「淡々とした英雄」。ベームが「隠棲した英雄」なら、ゲルハルト・マルクソンは「無抵抗主義のガンディー」でしょうか。

 有名な曲ですので、全編よく馴染んだ旋律ながら、「決め」とか「えぐり」をやりたそうなところでも、遠慮がちでスッキリとしたもの。オケの厚みは足りないのも事実ながら、そう鳴らないオケでもない。リキんでないだけなんですよ。(録音だから本当のことはわからない)個々のパートは魅力ある個性を発揮するわけでもないし、ま、とにかくおとなしい演奏なんです。

 これは、ワタシのようなR.Strauss・スランプにはちょうどよい演奏で、淡々とした、「味わい」系。おそらく多くの方々は「単なるヘタクソ・やる気なし演奏」に聴こえるかもしれません。録音にはかなり救われていますが、こんな演奏もあってよいと思います。
(2000年5月19日更新)


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written by wabisuke hayashi