Stravinsky バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版)/「春の祭典」
(ピエール・モントゥー/パリ音楽院管弦楽団1956年)


DECCA 475 7798/5,019円 Stravinsky

バレエ音楽 「ペトルーシュカ」(1911年版)
バレエ音楽 「春の祭典」

ピエール・モントゥー/パリ音楽院管弦楽団/ジュリウス・カッチェン(p)

1956年録音 DECCA 475 7798(7枚組)5,019円にて購入

音質かなり改善されていることは既に触れたが、イヤホンで確認すると奥行き、定位も明快さも(打楽器の迫力も!)そうとうなもの。一方で微妙なアンサンブルのズレ、細部リズムの緩さが散見されて、これはいかにも”時代”を感じさせます。かっちり・ピッタリ縦の線が合っていればすべてOK!みたいな安易な結論でもないし、ワタシはこの華やかな演奏が大好きです。「モントゥー/パリ音楽院の”春の祭典”をCDで欲しい」という動機から、既存所有分2枚処分して7枚ボックスを注文するという荒技を駆使したが、後悔ありません。

ほとんど同時期の録音なのに、音質が違うのはもともとの問題なのか、残された音源の劣化なのか。「ペトルーシュカ」は管楽器/打楽器の奥行き、定位が明確だけれど、弦が薄く存在感がほとんどなし。でも、かなりの優秀録音と言えますね。「春の祭典」は、英DECCA初期ステレオ録音にありがちな”洞穴でボワンと鳴った”音質であり、かなりガサツ(LP時代と較べると改善著しいが)。

でも、こちらのほうが迫力はあるんです。前者は”ビミョーにアンサンブルが緩い”状態、管楽器が軽妙で華やかな味わいがあります。曲間をつなぐドラミングがないのは残念。後者は(こうしてヘッドホンで確認すると、やはり)”かなりアンサンブルに問題有”〜というか、正直、もの凄くオケが上手くない。そうとうボロボロな演奏でして、これはモントゥーの本意ではなかった、とのこと(記録が残っている)。でもね、上手すぎるオケで、すいす〜いと安易に音楽が進んでいくよりずっとスリリング!です。(「音楽日誌」より)

 大苦戦続きの2007年であり、ナマ演奏には疎遠になってしまった一年でした。出張激減(=泡銭小遣い激減)だったが、CD在庫処分した財源でけっこう新しい(もしくは中古の廉価)CDを購(あがな)ったものです。そんな成果のひとつがこの7枚組セット。ちょっと贅沢しました。「ペトルーシュカ」は馴染みの愛聴作品ながら、「こうであってほしい!」という頑固なる希望はあまりないんです。このパリ音楽院管弦楽団との録音も悪くないが、ボストン交響楽団との1959年録音が音質、オケの技量とも上だと思います。こちらやや線が細く、華やかなる味わいも悪くないが。閑話休題(それはさておき)・・・

 今回は昨年幾種散々聴いた「春の祭典」に追加コメント。上記以上に新しいネタありません。最近聴いたエリアフ・インバル/フィルハーモニア管弦楽団(1989年)の精緻を極めたクールな演奏に感心し、ロバート・クラフト/ロンドン交響楽団(1995年)に技術は上々だけれど”味”が足りない?と感じ(〜なんて勝手なこと言っちゃって・・・立派なものです)音質や技術的なことで言ったら、モントゥー盤は論外なはずだけれど・・・ま、ストコフスキーの太古録音でも相当楽しめましたから。アンセルメの「ペトルーシュカ」(1946年)も同様。

 2007年の贅沢もう一発〜Stravinskyの自演(22枚組ボックス)・・・その中にコロムビア交響楽団(1960年)との「春の祭典」が含まれていて、ワタシは音質、オケの技術も上々と評価したいが、どことなく洗練されず、牧歌的(やる気が足りない?)とさえ感じたものです。(嫌いじゃないですよ)もしかしたらこれが原点?で、初演者でもあるモントゥーを連想したものです。当時はこんな演奏だったんじゃないか。

 アンサンブルはかなりヘロヘロでして、当時のパリ音楽院管弦楽団のラフで、明るいサウンドがいかにも怪しい。ワタシは(数年前のコメント同様)整理されない雑然とした”時代の熱”を感じました。「春の祭典」が”前衛”であり”衝撃”であり”難曲”であった時代。パリ音楽院管弦楽団の管楽器が妙にセクシーかつノンビリサウンドなんです。上手くないないオケというのは言い過ぎか、アンサンブルの集中力を著しく欠いて、やはり”弾けていない”ということでしょうか。でも、妙に味わいが深い。聴いていて切なくなったり、居たたまれなくなったり、ということはなくて(こうして)幾度も愉しめる・・・

 音質はそりゃ詰め込み国内盤LP(しかも中古)→DAT→MD保存より、ずっと改善されております。優秀録音とは言いかねるが、21世紀に残すべき水準であります。なんせ既に50年経過しておりますから。

(2008年1月11日)

LPからDAT→MDへ保存

 LP時代、モントゥーのStravinsky 3大バレエ+「シェエラザード」2枚組2,000円(たしか中古で1,000円位)、という嬉しいLPを持っていました。かなりの詰め込みでしたが、もとより「音質より価格優先」のワタシにはそんなことは意に介せず。子供時代から、「春祭」はブーレーズの1969年盤が一番と思っていましたが、このモントゥー盤も好きでした。

 やがて幾星霜。超難曲「春祭」は、学生オケでさえ易々とこなすようになり、次々と登場する若手指揮者は、軽々としたリズムで新しい録音を発表するようになります。「音楽史上最大のスキャンダル」は「現代音楽の古典」となりました。時代でしょう。人間は刺激に慣れる。「古典」となった音楽は、様々多様な演奏スタイルを許容します。

 小澤征爾が若い頃にCSOと録音した「春祭」は、技術的に完璧だけどツマらない。ショルティは、もっと徹底した壮快感はあるけれど、なにも残りません。まだカラヤン(旧録音)の「なにを演奏しても同じ味」演奏のほうが、その勘違いぶりが大外ししていて、楽しく聴けます。マルケヴィッチ/POは、リズム感の鋭さと味わいのバランスが最高。「ベルリン放響との1952年ライヴのほうが凄いですよ」とMDをいただいたが、濃厚な熱さは感じるもののオケが上手くない。

 ・・・と、そこで「オケが上手くないといえば、モントゥーのがあったな」思い出しました。かなり昔とはいえ、初演者ですよ。彼は「音楽史上最大のスキャンダル」をカラダで知っているはず。ステレオとはいえ1950年代中盤の録音、しかも中古の詰め込みLP、それをDAT→この度それをMDに。針音も懐かしいが、そんな音質でもけっこうグッとくるものがありました。

 パリ音楽院のオケは、機能性で売るような団体ではありません。モントゥーは、アンサンブルの細部に神経が行き届く指揮者ではあったけれど、コンピューター世代とは縁遠い。複雑な変拍子の縦線はピタリとは合わないし、ときどき雑然と、いやグチャグチャとなってしまう。もたつきもないわけじゃない。コンピューター・グラフィックスと手書きの絵くらいの違いがある。

 色彩は鮮やかなんです。オケの響きが美しい。オーディオ的な条件(ワタシは悪くない録音と思いますが)を乗り越えて、オケの華やかな響きがわかる。すっかり聴き慣れましたが、もともと荒唐無稽で暴力的な旋律とリズムの曲でしょう。この、ややアンサンブルの乱れた演奏は、いかにも現代音楽の危うさを表現しているようでもあり、いっぽうでエキゾチックな味わいを、わかりやすく表現してくれているようでもある。

 木管のセクシーな音色や、金管の華やかで薄く軽い響き、打楽器は出しゃばりすぎず適度なバランス(録音が旧いだけ?)。上品で、人間くさい、暖かい演奏は出色でこんな演奏なかなか出会えません。「春祭」初演の頃の演奏って、こんなんだったんでしょうか。


比較盤

ブーレーズ/フランス国立放送管弦楽団(コンサートホールのLPよりDATに録音 1963年録音)〜これです。1969年/1991年録音のクリーヴランド管との演奏が有名ですが、録音も、オケの技量もやや落ちながら、聴いていて興奮します。緻密でアンサンブル・リズムとも完璧。(緩もうとするオケのケツを、ひっぱたいているようでもあります)一見冷静でありながら、これほどまでに「春祭」の楽しさ、美しさの秘密を、明快に細部まで解き明かせてくれる演奏はありません。(2000年8月18日更新)


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written by wabisuke hayashi