Stravinsky バレエ音楽「ペトルーシュカ」
(エルネスト・アンセルメ/ロンドン・フィル1946年)
Martin 小協奏交響曲


CENTURIONCLASSICS IECC10006-10 Stravinsky

バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1911年版)

エルネスト・アンセルメ/ロンドン・フィルハーモニー(1946年)

Martin

小協奏交響曲

エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団(1947年または1950年)

CENTURIONCLASSICS  IECC10006-10 10枚組1,990円のウチの一枚

 エルネスト・アンセルメの歴史的録音10枚組は2005年購入、もともとHISTORY(現membran?)から出ていたものとほぼ同内容だったと記憶しております。もともと出目が怪しい音源だけれど、例えば続けて演奏されるべき「ペトルーシュカ」でもトラック分けの度に間が空いて鬱陶しく、逆にMartinに移るときに間が足りない。エエ加減な編集ということですな。しかし、ワタシにとって聴く機会の多い、資料的価値を越えていろいろ楽しめるボックスです。もちろん価格+スリムパック収録もありがたいけれど。

 「ペトルーシュカ」は華やかで多彩な響き、賑々しいリムズを誇る作品だから、わざわざ太古録音取り出さんでも〜というご意見に一理も二理も有。しかも、管弦楽演奏の技法は日々深化しているから、現代音楽の古典的名作だったらちょっと技量的にも心配、しかも戦争後の荒んだロンドンでしょ?大丈夫か、と久々に取り出した一枚・・・おおいに愉しませていただきました。

 まず、音質が出色でした。もともとが安物オーディオだし、それに”聴き易い歴史的録音は存在する”との持論だから、これはまさにその主張を裏打ちすべき存在となりました。もともと英DECCA録音ですか?細部良く分離して、奥行きがあって(当時として)極めて優秀録音に間違いなし。打楽器群だって、よ〜く浮き立ちます。低音も良く響きます。もうひとつのポイントは”味”でしょう。技術的に正確でないことを、”味”と評して逃げることはマズいのかもしれないが、例えばバルビローリ、ヨゼフ・シゲティ、そしてこのエルネスト・アンセルメ辺りで言及可能なる事象であります。

 じつはロバート・クラフト盤(1997年録音NAXOS/フィルハーモニア管弦楽団1947年版)を聴いて、期待からちょっと外れたというか、技術的には上々だけれど、”味が足りない”印象を受けました。これは嗜好ですからね。評判悪いモントゥー/パリ音楽院管弦楽団(1911年版/1956年録音)をワタシはとても気に入っていて、アンサンブルのズレ、リズムのよろめきさえ、”危うい現代音楽”(同時期録音の「春の祭典」も)としての味わいに感じてしまったものです。

 閑話休題(それはさておき)、ここでのロンドン・フィルはなかなかの好演だと思いますよ。ホルンやトランペットが時に少々怪しいが、それは枝葉末節なこと。ぎんぎんノリノリ系ではないが、リズムが上滑りしないし、響きに迫力も厚みもある。さっぱりと明るく、色彩豊かなのはエルネスト・アンセルメの個性でしょうか。遊園地の喧噪、賑々しくも楽しい雰囲気はいやが上にも盛り上がっちゃう・・・

 エルネスト・アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団のStravinskyは未聴なんですよ。少なくとも、このロンドン・フィル盤は忘れ去られるには少々もったいない魅力に充ちております。

Franck Martin(1890-1974)はスイスの作曲家です。小協奏交響曲(おそらくは1945年編曲版だから「協奏交響曲」が正しいと思う)は深刻不安な旋律が、チェンバロやピアノによって表現されました。華やかな擬バロック様式の作品です。破壊的な晦渋さはありません。これも貴重な録音だと思います。

written by wabisuke hayashi