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2003年末Beethoven 「第九」棚卸〜大掃除再び


Beethoven 交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱」

 日本人なら年末は「第九」に決まってます。「そんな風習は日本だけだ」〜いいじゃないの、どこに文句があろうか。すべて文化というのものは影響を与え合いつつも、固有の個性を持っているもの。四の五の言わず、この時期になったら「第九」を聴いてシミジミ一年間を振り返る〜それが正しい・・・

 ・・・ということで、三年前に手持ち「第九」の棚卸しをしました。(今読むと恥ずかしい!)毎度の話しで恐縮だけれど、あくまで自分の在庫を確認して「買ったCDはムダにしないでとことん味わいましょ」という趣旨であって、なんらの資料的価値はありません。二年経てば少々CDの在庫も貯まるんです。(「第九」は人気曲なので、中古でもいっぱい出現します)いちおう、おおよそ一通り耳を通して勝手なことを書く、これが自分のサイトの自由自在なところ、文句あるやつは表に出ろっ!(ワタシは裏から逃げるが〜久々のネタ)では、スタート!


フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー/ブルーノ・キッテル合唱団/ブリーム(s)ヘンゲン(a)アンダース(t)ワッケ(br)(素材発信ザ・ダイソー CD-C-34 100円 1942年録音)
 「ベートーヴェン名曲集 5」で、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団表記しかないが、間違いなくこの音源。但し、冒頭のホルンが途切れている。もともと劣悪なる音質だけれど、かなり音はいじったみたいで妙に明るい響きに変化しております。(もしかしてピッチもおかしいですか?)
 フルトヴェングラーといえば「バイロイト盤」が揺るぎない評価。ワタシはこの録音を一押しにしていて、壮絶な推進力と緊張感・陶酔感の連続。叩きつけるようなティンパニの迫力は随一だし、最終楽章、コントラバスが低く「喜びの歌」旋律を奏で、やがて弦がすべて呼応する部分での幻想的な味わいは類を見ない。ブルーノ・キッテル合唱団の充実ぶりも文句なし・・・但し、この音質に耐えられる人のみの世界ですが。


マッケラス/ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック/合唱団/ロジャース(s)ジョーンズ(a)ブロンダー(t)ターフェル(b)(classic for pleasure 7243 5 75751 2 6 1991年録音 5枚組2,480円)
 「ベーレンライター版」による録音として有名。かなりの期待を持って聴いたけれど、中途半端で細部が雑、聴かせどころもイマイチはっきりしない。演奏的に中途半端。同じ版のジンマンが「かなり勝手な解釈を入れている」そうだから、原典版として意味合いは大きいのかも知れないが、ワタシゃ学者じゃないもん。音楽は楽しくないとね。(Mahler 交響曲第5番を聴いたときもそんな印象があったから、オーケストラの問題か?)


ジュリーニ/ロンドン交響楽団/合唱団/アームストロング(s)レイノルズ(con)ティアー(t)シャーリー・カーク(b)(Seraphim 7243 5 68519 2 4  1972年録音 いただきもの)
かつてSQ4チャンネル(懐かしい)で発売されたもの。FMで聴いたことがあって、とことんクールで盛り上がらない、といった印象の記憶有。10数年ぶりの感想は、細部の明快さ、決して煽らない、そしてやはりクール〜これはこれで多くの魅力を再確認しましたね。(溶け合わない、という録音にも問題有)アダージョの美しさはピカイチ。(音楽日誌より)こういう派手さのない、冷静沈着系味わい演奏が琴線に触れるようになるのには、馬齢を重ねないとダメですよ。(再掲)


シューリヒト/フランス国立放送管弦楽団/シュターダー(s)マルティ(a)クメント(t)レーフス(b)/合唱団不明(VIRTUOSO 94005 1954年録音 5枚組1,990円)
ハズむようなリズム感・命の演奏。たくさん「第九」を聴いてきて、やや食傷気味〜そんなときにピッタリの爽やか演奏と熱あります。(じつは後述、コミッシオーナ盤のあとに聴いた)ま、むりして集めろ!というCDでもないけど、安いからね。音質はそれなり。


シュミット・イッセルシュテット/ウィーン・フィルハーモー/ウィーン国立歌劇場合唱団/サザーランド/ホーン/キング/タルヴェラ(LONDN KICC 8412 1965年録音 中古250円)
ウィーン・フィルは豊かに鳴っているのに、この人が振ると”甘さ”の欠片(かけら)もない。いやむしろ”渋い”とさえ。昔々、村田武雄さんが「威風堂々とした独逸的な」なんてFMで話していたけれど、いや、そう言いたくなる気持ちもわからなくもない。慌てず、騒がず、諄々とアツく、盤石の歩みで、まさにオーソドックス。重心は低いがリズム感が明快。最近話題にならないが、このコンビでBeethoven の全集が残されたこと(何故?不思議)は僥倖(ぎょうこう)でしょう。原点?久々にBeethoven に回帰!録音も文句なし。英DECCAの黄金時代の響きです。


ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン/ドレスデン交響合唱団/ライプツィヒ放送合唱団/デーゼ /シムル/シュライヤー/アダム (BRILLIANT 99793/5 1980年録音 5枚組1,390円
前回「第九」棚卸しまでに聴いていたのは、1985年ゼンパーオーパーのコケラ落としライヴでした。全集録音も、一部心ある人には高く評価されております。正直ワタシには相性が悪い。特に第4楽章に不満がある。おそらく聴き込みが足りないのか、どうも真面目一方で、響きも濁っているような・・・でも、第三楽章アダージョは絶品でしょう。これはドレスデンの素晴らしきオーケストラの音色(とくに弦とホルン〜これまるでホルン協奏曲でっせ、いや木管も〜全部か!)と、ルカ教会の響きを堪能すべきものでしょう。


アバド/ウィーン交響楽団/ウィーン・ジング・アカデミー/プライス/デルネッシュ/イェルサレム/ホルニック(LIVE CLASSIC LCB 109 1981年ライヴ 中古二枚組250円)
アバドはエリートコースを歩んで、とうとうベルリン・フィルのシェフにまで上り詰めたが、その辺りからどうも人気が芳しくありませんね。グラマラスなカラヤンに比べられて、どうも地味というか、プロレスで言えば故ジャンボ鶴田みたいな位置付けかな?閑話休題(それはさておき)これは非常に立派な演奏です。上品であり、端正であり、オーソドックスだけれど、どの部分をとっても充実していて、細部の仕上げがていねい。出過ぎず、チカラ強さに不足はない。彼絶好調時に見られる「なにもしていないようだけれど、聴き手を存分にアツくさせるマジック」〜ちゃんと覇気もあります。たいへんな拾いもの。音質もよろしい。


アーベントロート/チェコ・フィルハーモニーソウコヴァ/リンハルトヴァ/ブラシュト/ハーケン/(合唱団不明)(VIRTUOSO 83000 1951年録音 4枚組1,690円)

こんなCD買うから「ヲタク」と呼ばれちゃう・・・アーベントロートは正直まだ理解できておりません。音質もよろしいとは言えないが、まるで戦前のような壮絶なラッシュとか、テンポの揺れ、絶叫、ノリはありますね。声楽部分がチェコ語(おそらく)であるというのが話題か?こういうのを喜んで聴くと、ほんまの「ヲタク」になりまっせ。あまりお薦めしません。


マズア/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団/ライプツィヒ放送合唱団/ベルリン放送合唱団/ドレスデン・フィルハーモニー少年合唱団/トモワ・シントウ/ブルマイスター/シュライヤー/アダムVICTOR PRCD-1434 1981年録音 中古100円)
いやはや、もの凄い有名なる演奏メンバーだし、合唱もいっぱい集めたこと!オーケストラがゲヴァントハウスでしょ?なのにどうしてここまで薄味(というか、ようはするに、おいしくないということ)に仕上がっちゃうのか。さらさらと、耳あたりよく流れて、これほどツマらない、楽しめない、なにもない演奏も珍しい・・・というか、これはワタシの先入観ですか?耳腐ってますか?壮絶さ、みたいなものは微塵も感じられない。第4楽章のみ取り出すと、これはこれで自然体というか、なにも特別なことをしないで素直に祝祭的な気分が味わえる・・・かも。


コミッシオーナ/アジア・ユース管弦楽団/片岡恵子/ヘレン・ユー/ツァン/チョウ/合唱団不明(Cahey Pacific 1995年サントリーホール・ライヴ 非売品だけれど中古で@250)

技術的にどうの、という問題じゃないし、祝祭的な(ま、めでたいという)雰囲気もあります。爽やかでもあります。でも、ココロにぐっと来るか?と問われると、ワタシはちょっと悩んでしまう。コクというか、アクももうひとクセも欲しいところ。若くて素直すぎるのかな?でも終楽章なんて万感迫るものがあるし、第一このCD、珍しいですよね。音質は残響豊かだけれど、響きに芯が足りない感じ。合唱はもしかしたら、日本得意の「臨時募集」かな?


マーク/パドヴァ・エ・デル・ヴェネトー管弦楽団/Athestis合唱団/ハルグリムソン/エンガード/ヴァンダーステ-ィーナ/クンダー(ARTS CD 47248-2 1994年録音 16枚組 5,280円)
小編成。テンポはフツウ。ライヴ録音、という条件もあって素朴な味わいが全体を支配します。はっきり言ってそんなに上手いオーケストラじゃなくて、時にアンサンブルの濁りが気にならないではない(つまり美しいオーケストラではない)けど、一生懸命やってまっせ!細部まで真面目に歌ってまっせ!的熱情に溢れて、ワタシ好きです、こういうの。アダージョは〜例えばシュターツカペレ・ドレスデンとは比べものにならないほど、薄い響きだけど〜誠実な歌心はちゃんとあります。終楽章はこんなに聴き慣れた曲なのに、初耳旋律があちこちに・・・合唱も少人数で、みんなすぐ近くで熱演!胸に迫る想い!が伝わります。


 こんなもんかな?意外と少ないじゃないの。二年間でCD11枚ね。気付かないうちに貯まっているもんだこと。ほんまは前回「第九」棚卸しも、再度聴きなおしてコメントしたいが、少々今回の分だけでもお疲れ気味。おそらく今年はムリでしょう。(あと、MDでジョルジェスク盤があったはずだけれど発見できず。いただいた方、すみません)

今回も(あくまで座興だけれど)この中でベスト3を選定

第1位 イッセルシュテット/ウィーン・フィル盤〜横綱相撲(ちょっとオモろくない選定か?では)
第2位 アバド/ウィーン響〜これはほんまに知情意バランスの取れた、素晴らしい演奏です。
歌唱賞 ブロムシュテット盤ですね。前半、とくにアダージョが絶品。ほれぼれしまっせ。
努力賞 マーク/パドヴァ・エ・デル・ヴェネトー管弦楽団盤〜正直、これがいちばん聴いていて新鮮。一位にしても良いくらい。人間、正直と誠実が一番でっせ。
(2003年12月18日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi