Beethoven 交響曲全集(ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン)
または湯原温泉への思いつきドライブ


BRILLIANT 99793 Beethoven

交響曲全集

ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン

BRILLIANT 99793  1975〜80年録音  5枚組1,390円で購入

 レシートによると2002年3月26日、広島のタワーレコードにて購入。なぜ購入に至ったのかは、「SOS!Beethoven 」に詳しい。ワタシは8月某日の夏休み中、朝、突然ドライブを思い立ちました。女房は大阪帰省中、息子(いちおう)受験勉強で朝寝坊中。夜寝ていたTシャツに短パン、裸足にサンダル履き、そのまま状態でひとり出発。

<所持品>

1) サイフ、免許証
2) デジカメ(電池が弱っていた)
3) ケータイ(便利なようで、じつはヒモ付き)
4) タオル一枚、歯ブラシ(これは常備)
5) Beethoven 交響曲全集(ブロムシュテット)〜強制的に全部聴いてしまおう、と・・・・
クルマは愛車ジェミニ(最終版)クーペ1600DOHCターボ(燃費悪いんすよ)

 〜で、どこへ?って、まず大好きな温泉。しかも、「なんちゃって温泉」じゃなくて、本格硬派温泉へ。岡山県って、北のほうに行くと「美作三湯」といいまして、有名で歴史ある温泉があるんですよ。先日来、仕事で通っている津山方面の道の途中、たしか「***温泉」方面(記憶曖昧)の看板があったから、そちらに行ってみようかな、と。

 地図なんか見ませんよ。迷ったって、自分ひとりだし。予定なんかコロコロ変えたって良いんだし。で、即出発。CD一枚目は交響曲第2/4番〜コレ、ワタシ意外と苦手としていない曲なんで。市内を抜けるのに「今日はちょっと別な抜け道行ってみようかな」なんて、スケベ根性出したら何故かババ混み状態でユーターンしたり、フツウの交差点で何故か渋滞していて、なんとエンスト車がどまんなかで立ち往生していたり、状態。

 ようやくそこを抜けて、猫の真新しい死体(トラ模様が悲しい)を避けつつ(どうも幸先良くない・・・あとで予感的中)岡山インター辺り(ワタシは高速使わなかったが)を抜けた頃には第2番終了。雨が降ったり止んだり状態で、どんより天気だったが、演奏も地味で、演出臭が少ないもの。大好きな第2楽章主旋律の弦はくすんで魅力的。でも、第4番の弦のアクセントが濁るのはクルマ搭載のCDプレーヤーとの相性か。終楽章のバランス感覚は悪くない。

 このひと、アクセントが少々リキみ過ぎ、ちゃいますかね。全体にクサい表現はないのに、そこだけ気になる(響きが濁る)〜なんて、考えながら街道(旭川)沿い(何号線か記憶なし)の標識を見ると「←湯原温泉」と有。おお、これだよ、と初めて行く方面に左折。小雨の中、ダムの景色を見ながらCDは第1/3番へ交換。


 細い道をグイグイ飛ばしていく快感。と、そのとき、スーツ姿の人が数人手を振って交通整理〜高級車が立ち往生で前面きれいに(というか、とことん)つぶれておりましたよ。ソロリとそこを抜けながら、山の中のマイナス・イオンが欲しくなり、エア・コン止めて窓を開けても、あまり暑くない。雨も止んできました。どんよりしているが。

 クルマは勝山方面へ。(看板で確認)勝山がどの辺りに存在するかは知らんが、時に「←湯原温泉」が出てくるので、方向は間違っていないのでしょう。この第1番、耳が慣れてきたせいか、第4番のようなリキみ、濁りが気にならない。ストレートで虚飾ないスタイルそのままで、オーケストラの地味さがじょじょに快くなってくる。

 これも第2楽章の弦が深い。わずか3曲目、しかも運転しながらではあるが、ブロムシュテットの方向性がなんとなし見えてくる思い。楷書、こぶしなし、バランス感覚、明快なアクセント、リズム感、オーケストラの実直な響きを温存、走らない。激情しない。でも、いろいろ聴いた後に、これに戻りたいような真面目な演奏。良いんじゃない?

 曲がりくねる山中の川沿い(ダム沿い?)の景色を眺めながら「英雄」へ。嗚呼、この曲、ホンマに良くできている。意欲的な問題提起(これからの交響曲はコレでっせ!)の第1楽章(ホルンの夢見るような音色!)、いくらでも慟哭可能な第2楽章葬送行進曲、新時代の蒸気機関車のような、古典的メヌエット楽章から決別した第3楽章スケルツォ、幅広く、誰もがわかりやすい終楽章の変奏曲のスケール。

 クールで「特別な色づけをしないことが、自分の色」とでも言うべき、ストレートな演奏。青白く、灰色がかったオーケストラの響き。リキみとは無縁なチカラ強さ〜なんて、考えていると道は勝山町へ。眠っているわけではないが、ほとんどリラックスしながらドライブ(と音楽)を楽しんでます、状態。休憩は必要なので「勝山木材ふれあい会館”木の駅”」へ停車。

 夏休みに入っていて、里帰りしているのか、こんな山中の街でも人が多い。腹は減っていないが、「石臼挽き手打ちそば 一心庵」の真ん前だったので、試しに食ってみるか、と。フツウ「オーソドックスなざるそば」注文が王道だけれど、「本日の変わりそばは”レモン切り”」なんて書いてあって、ま、試しに注文しました。

 レモン切りゆず切り、というのは食べたことがあって、柚子のほんのり上品な香りが乙だったが、レモンはそばの香りを殺さないかと不安〜出てきたものは、所謂御前そば(そばの芯の部分のみ粉とした真っ白なもの)100%で、さっぱりと爽やかさだけが身上。900円は高いが、充分満足。


 「湯原温泉まで22km」の標識を確認しながら、途中になった「英雄」は続く。葬送行進曲は誠実・清潔ながら、存分に説得力有。むしろ、へたに”泣き”がないほうがいいのかな。弦、オーボエの音色の深さ、意味深さ。「湯原温泉」に到着するまでには、いくつかの小さな温泉があるようで(名前失念。足(たる)温泉というのがあったな)、スケルツォも抑制され品を失わない。終楽章も「曲をして語らしめる」といった、味わい(これはオーケストラの魅力でしょう)勝負系か。

 ジャケット・デザインなんかで、絵なんかを使わず、ほとんど2色くらいの文字・字体だけで表現された知的なセンスの良いのってあるじゃないですか。あの雰囲気が近いかも。これほど木管の良く聞こえる終楽章は初体験。〜CDは3枚目の第5番へ。この曲、頭の中で想像するだに少々引き気味。クルマはますます山中へ。


 ところがこの演奏、とても見通しがヨロしい。例の「運命の動機」が残響に映えて美しい。運命はドアを叩かない、自然と鳴っている。ホルンの柔らかい魅力、強面じゃない第1楽章。でも、ユルくないところもニクいバランスか。第2楽章は、ドレスデンの得意とする地味渋系の世界爆発で期待通り。第3楽章「スケルツォ」〜諧謔曲?ウソ言え!いくらでもモノモノしく演奏できそうだけれど、抑制された大人の表現也。

 終楽章もいつになく、押しつけがましさが存在しない。特別な節回し、タメはないが、これはこれで充分Beethoven 状態。音楽はついぞ怒濤の喧噪と混乱に埋もれることはない。(終楽章繰り返しなしが残念)この路線で第6番「田園」はいっそう効果的なのは予想が付くでしょ?

 結論からいうと、第2楽章と終楽章がシミジミ感謝の気持ちが満ちてきて、これはこども時代に聴いた「田園」の再来か。いつからこの感動を失ってしまったのか?黙って聞き流せば、ただの大人しい演奏か?山中の空気を深呼吸しながら、各楽章の表題通りの安らかな心情を感じつつ、湯原温泉に到着。湯原温泉の川の畔


 湯原温泉の一番奥はダムになっていて、その麓の河原に露天風呂有(有名)。ほんの少し滞在したワタシが云々出来ないが、この温泉にもいろいろ苦情がある。どんどん新しい、趣向を凝らしたホテルは出来ているみたい。(当然、今回それには入らず)今時、自分の家より汚い宿になんか泊まりたくないし、旨いものだって日常いくらでも食べられるでしょ?

 でも、メイン通りのお土産屋の俗っぽさ、絶対に入りたくない喫茶店、食堂の汚さ、または廃業した旅館のおぞましさ、これはなんとかならんのか。先日もテレビでやっていたけれど「黒川温泉」が話題でしょ?これは「ウチの旅館」という概念にとらわれず、温泉全体のトータル・コーディネートができている。これができないと、(いくらネームヴァリューがあっても)温泉は発展できない。

 売り物の「河原の露天風呂」〜コレ、どうしようもない。完全露天なのはヨロしいが、家族連れが沢山来ていて、若いお母さんも来ている。(風呂には入らないで、こどもを入れている)女性はおばあさんが大きなバスタオルにくるまって入っているくらいで、あと数人おじいさんが丸裸で入っている、状態。

 ようはするに、観光客は多いから風呂には入りづらい。ワタシもここまで来て後には引けないし、少々豊満な全裸姿を見られてもお嫁に行けなくなる年齢でもないし、思い切って入りましたよ。でも、あわてて第一の湯船に入ったら、これがアツいのなんの。ぐっとこらえて、少々〜耐えきれず次の湯船へ。このときあわてて滑って、手のひらと右足の裏をすりむき出血。滞在時間約5分。家族とは行きたくない。


   100km以上走ってきて、5分の温泉〜しかも手のひら負傷でハンドルが上手く握れない状態〜傷心を抱えつつ交響曲第7番へ。この音楽は強靱すぎて、ワタシにはツラい音楽か。できうれば「思いっきりやさしく」やっていただきたい。演奏の方向としては、これ迄と変わらず正統直球勝負型で、リキみはない。でも、「思いっきりやさしい」というわけでもなし。

 オーケストラの相変わらず、ちょっと薄もやのかかったような鈍く光る音色は魅力です。この演奏も見通しが良い。どの楽章もわかりやすい。強く演奏するから強靱な音楽になる、というのではない。もともと、コレ強靱な音楽なんですよ、こんなに抑制しても、みたいな表現。でも、この曲、ワタシは厳しすぎまっせ。聴いていて、ややツラい。お猿さんも愛らしい

 〜なんて、思いながら「嗚呼、カラダがマイナス・イオン」を欲している、ということで途中「神庭の滝」へ。300円取られました。お猿さんも愛らしく、300mほどの道中も悪くないが、途中「無料休憩所」〜これ、どうも昔は宿泊所だったみたいで、2階は閉鎖されて、どう見てもお化け屋敷迄は行かないが、心霊スポット状態。ま、文句言えば切りないが。神庭の滝

 第8番は良いじゃないの。この曲、ストレート勝負がもっとも似合うし、オーケストラの技量がそのまんま出てしまうし。節度と気品が感じられる、これぞオーソドックス、という演奏か?溌剌。クルマは津山へ(こちらの方が道を知っているので)津山BOOK・OFFで先日買い残した300円CDを物色。シュワルツコップのMozart 歌曲集などの出物はあったが、ワタシの趣味じゃないので断念。そのかわり、北斎、写楽、蕪村の巨大画集(@300。重い!)購入。

 津山から建部〜そして岡山へ。交響曲第9番は、ほとんどどの演奏を聴いても満足出来た試しが少ない。(クレツキ盤くらいか)ブロムシュテットの演奏も「どこが不満?」と訊かれれば困っちゃうが、これとてなんやら「いや、これじゃないな?」状態。ごめんなさい。でもね、音楽にはちゃんと感動しているんですよ。アダムもシュライヤーも声質は好きなんです。

帰りの「道の駅 久米の里」にあった巨大ガンダム。なぜそこにあるかは不明

 午後6時、無事帰宅。息子と焼き鳥食べに行きました。(2002年8月14日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi