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2001年末Beethoven 「第九」棚卸〜大掃除


Beethoven 交響曲第9番ニ短調 作品125「合唱」

 Beethoven ねぇ、苦手だなぁ。でも、偉大なる音楽であることの確信は揺らぎません。「日本人なら年末は第九」〜これもまったく正しい。老若男女、挙って「歓びの歌」を歌い、酔いしれ、一年を忘れる伝統。バカにしちゃいけません。

 真剣に考えたことはないが、手持ちのCDやMDもそれなりにあるはず。棚卸しましょう。やれ「第1〜3楽章と4楽章の整合性が取れていない」「終楽章の声楽部分には音域的にムリが多い」とか、いろいろと論議はあるでしょう。でも、ま、忘れえぬ名曲です。虚心坦懐に耳を傾けたいもの。

 振り出しはジンマンから始まって、ゴールはシェルヘンで行きたい。もちろんすべて集中して全曲通して聴いて、重要部分は繰り返し細部を確認〜なんてできるはずもありません。かなりいい加減な「第一印象」的な感想文です。さて、どういう順番で聴きましょうかね。

ジンマン/チューリヒ・ローンハレ管弦楽団/スイス室内合唱団(ARTE NOVA 74321 654112 1998年録音 700円)

すっきりサッパリ、明快、軽妙、快速、素朴。ワタシは気に入りました。でも、嫌いな人もたくさんいらっしゃるはず。いつまでも19世紀後半の濃厚表現じゃいけないでしょ。もう21世紀だし。録音良好。オケも上手い。合唱は厚みに欠けます〜という感想自体、先入観から抜け出せていない証拠か。

フルトヴェングラー/バイロイト・フェスティヴァル管弦楽団/合唱団(AMUSE EC-1804 1951年録音 1,000円)

ゆるぎなき磐石の評価を勝ち得た名盤・・・のはずだが、何度聴いても「どこが良いのか???」状態・・・って海賊盤で文句たれるなと言われそう。そう音質は悪いとは思わないが、さっぱり感動しません。戦時中のベルリン・フィルとの録音があったでしょ(ブルーノ・キッテル合唱団)、あれは凄かった(記憶がある。LP時代)なんか煮え切らない演奏だと思いました。ゴメン。

ザンデルリンク/フィルハーモニア管弦楽団/合唱団(Disky BX 704682 1980年録音 5枚組2,790円)

久々に聴いたら、この貫禄、生気に満ちた表情が素晴らしい。テンポも余裕があって適性。かなり満足、お勧め。残念なのはオケの個性がザンデルリンクと合っていないことと、録音に芯がないこと。(デジタル録音なのに)交響曲第1番の第4楽章が併録されている不思議なCDでもある。

クリュタンス/ベルリン・フィルハーモニー/聖ヘドヴィッヒ教会合唱団(Disky BX 703782 1960年頃録音 5枚組2,600円)

クールで繊細、美しい演奏だなぁ。LP時代は「元気ない」と思っていたが、オケの洗練された響きが絶妙で、リキみや余計な飾りがないのもうれしい。あまりに平和すぎる感じもあるか?オケはほんまに上手い。とくに木管の色気。録音はあまりよろしくないが、EMIではましなほう。

シューリヒト/パリ音楽院管弦楽団/エリザベート・ブラッスール合唱団(EMI CZS 7 62910 2 1959年頃録音 5枚組2,500円くらいだったかな?)

ハズむようなリズム感・命の演奏。ノリノリで早めのテンポ・勢いがまったく素晴らしい。ある意味、最高にアツい演奏。オケのせいか軽量な印象はあるが、それはマイナスではない。全集中唯一のステレオ録音だが、いずれにせよあまりよろしくないEMI録音。

クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団/(NOTA BLU 93.51223/4 1960年録音 10枚組3,650円)

スケルツォのみ収録。ウィーン音楽週間でのライヴか。当然、音の状態は乾いていてよくないが、ザンデルリンクどころの貫禄ではなくて、明快なアクセントが強烈かつオーソドックス。オケとの信頼関係も違う。たしか全集があるはずだが、安く流出しないものか?

メニューイン/シンフォニア・ヴァルソヴィア/リトアニア・カウナス国立合唱団(IMG 30368 00025 1994年録音 5枚組1,980円)

ストラスブールでの全曲演奏のライヴCD。オケの響きが薄く、しかも洗練されていない。アンサンブルの水準としては並。でも、編成の少ない室内管弦楽で、すっきりとした演奏には仕上がっていて、そう悪くもありません。録音状態はよろしくなくて、でも、なんとなく演奏者の(アマチュアのような)熱意は伝わってくる。合唱は感動的。終楽章のインデックスが詳細で親切。

・・・・・・・まだまだ続きまっせぇ。

ホーレンシュタイン/プロ・ムジカ管弦楽団/ウィーン楽友協会合唱団(VOX VOX 7809 1958年録音 8枚組3,990円)

モノラル録音。芯があって聴きやすい(と個人的には思う)。スケールもあるし、厚みにも推進力にも不足しない、これは立派な演奏。オケはVSOなのかな?テンポは中庸、オケも快調です。合唱は最高、パツァークのテナーが甘い声と甘い音程で、思わずニヤリとする。バカにできません。終楽章の燃えるような盛り上がりもよろしい。これは巨匠の音楽です。久々にこの曲でジ〜ンときました。

カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団/ウィーン楽友協会合唱団(ECHO ECC-617 1956年録音 1,000円)

モノラル録音。例の如しのEMIのじつに不鮮明・コシのない録音。スリムだし、オケの響きが明るいし、若々しい勢いもあって素晴らしい・・・が、音悪すぎ。終楽章で勢いあまってアンサンブルが乱れるところも微笑ましい。これも合唱は最高です。

カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー/ウィーン楽友協会合唱団(KAISERDISK KC-0021 1962年録音 166円)

非常に有名な録音。おそらく勝手に海賊CD化。奥行きのある録音が上記のCDとは桁が違うし、オケの馬力、洗練、艶が驚くべき美しさ。アンチ・カラヤンのワタシでも、これは圧倒されて負けそう。どのパートも極上に磨き上げられていて、この価値は認めるに吝かではない。(転向ではないので悪しからず)

モントゥー/ロンドン交響楽団/ロンドン・バッハ合唱団(MCA MCAD2-9806-A 1962年録音 1,000円)

モントゥーは高齢だったわりに、ステレオで全集を完成しています。なぜかこの曲のみWestminster録音で、乾いた音質で奥行きも足りない。でも、これぞ自然体・必要かつ充分といった演奏で、ロンドン響全盛期の色気ある響きを楽しめます。長く座右に置くのはこう上品な演奏が良いのでは。カラヤンのあとに聴くと「あれはうるさかった」なんて思います。「歓びの歌」旋律のなんというやすらぎ。声楽も極上。ラストは存分にアツい。

ワルター/コロムビア交響楽団/ウエストミンスター合唱団(CBS MBK42532 1959/60年録音 250円)

豊かで、堂々としていて、暖かい。オケにはもっと深みが欲しいところだが、技術的に文句はないし、なにより鮮明な録音がありがたい。セルと並べて聴くと少々ユルいが、立派なスケールの大きな演奏です。アダージョのまったり感も期待通り。終楽章のみニューヨーク・フィルなんですって?そう言われれば、たしかにオケの厚み・深みが違うような気がする。合唱はもうひとつ。

セル/クリーヴランド管弦楽団/合唱団(CBS/SONY FDCA525 1961年録音 250円)

この録音は通には評判ヨロシ。アンサンブルの精度が高い。細部までよく計算されたバランス。引き締まって、あくまでクール。スケルツォは決まりすぎのリズムで少々肩がこるくらい。アダージョ変奏曲の構成もわかりやすい。終楽章も、何の過不足もない完璧さ。「純音楽的」なんていうワケのわからん表現を使いたくなる演奏。対旋律が良く聞こえるのには感心しました。録音はフツウ。これは少々「歓び」に不足するか。

ケーゲル/ドレスデン・フィルハーモニー/ベルリン放送合唱団(LASERLIGHT 14 260 1982/3年録音 5枚組2,500円?程)

「不歓の歌」。なんとなく警戒心が先にたったような、不機嫌な演奏。でもDPのジミな音色は好み。アンサンブルもよろしい。どの楽章も特別な仕掛けはないが、聴いていて陰鬱な気分に浸れます。意識して盛り上げていない感じ。終楽章の主旋律なんて、ホント美しいんですけどね。合唱は厚みが足りない〜というかこれも暗い。悪い録音ではないが、良い音に聞こえないのもなんか凄い。

グッドマン/ハノーヴァー・バンド/オスロ大聖堂合唱団(NIMBUS NI5144/8 1988年録音 5枚組7,000円?程で購入!!!)

史上初の古楽器による全集!って、だからどうだっつうの?ワタシは出てすぐ買っていて、愛蔵家No.954。今なら安いよ〜NINBUSはつぶれちゃったか。粗野で素朴で薄い響き、軽くさっぱりと節回しを引きずらない、ノリノリの勢いもあってものすごく新鮮です。ティンパニのカタい音色もよろしい。弦と管のバランスの違いも聴き慣れないから不思議なくらい。終楽章はシミジミとした開放感有。ここは合唱も含め意外とオーソドックス。ラストは少々ユルいかな。

・・・・・・・まだまだゴールじゃないよ!!

ガーディナー/ウィーン交響楽団/ウィン・ジングアカデミー(FMエア・チェック 1993年録音)

悪い演奏だとは思わないが、まっとうで飾りのない表現すぎ。VSOでは上手く良い方向に出ておりません。きっとナマで聴くともっと良いんだろうなぁ。あまりにストレートで、現代楽器でそれをやられるとどうもピンとこない。地味すぎ。元旦のライヴです。

マルケヴィッチ/コンセール・ラムルー/カールスルーエ・オラトリオ合唱団(LP→MDへ 1960年頃録音)

ベーレンライター版による演奏かどうか知らんが、その系統の元祖のような演奏。(追加情報。マルケヴィッチ改訂版だそう)つまりメリハリ(なんてもんじゃない、叩きつけるよう)があって、速めのテンポで推進力が尋常ではない。オケはBeeやんと縁が薄そうだが、カルめの響きながらアンサンブルの水準はきわめて高く、最後までテンションが持続します。たしか全集録音していたはずで、一部CD復活が始まっているが、なんとか全部出てほしいもの。隠れ名演。(後述;全集は録音していなかったみたい)

コンヴィチュニー/ゲヴァントハウス管弦楽団/ライプツィヒ放送放送合唱団(EDEL LC06203 1960年頃録音 11枚組3,290円)

どのパートも明快、思いのほかスッキリと現代的表現。コンヴィチュニーは同世代や、やや先輩たちの恣意的で浪漫的な演奏に対するアンチ・テーゼを狙ったのかも。デフォルメしない、まっとうな表現で、オケの重厚さと併せて、支持者が多いのにも納得。スケルツォは充分アツく、アダージョも期待通りの直球的陶酔、終楽章も期待通りの盛り上がり。合唱は強面か。音質は年代から考えれば驚異的な水準ながら、弦の高音が刺激的でゲヴァントハウスらしくない。

ストコフスキー/フィラデルフィア管弦楽団(History 20.3291.-HI 1934年頃録音 10枚組3,290円)

英語版。(なんかへん)SP収録の関係か落ち着きがない。テンポの動かし方も少々芝居っけじみている。音質は想像より良好(楽章ごとに鮮度が変わる)だが、独墺の重厚さとは無縁の明るい響きがある。オケの華やかな響きは現在と変わらない。(・・・って、最近の録音は聴いていないけど)第2楽章スケルツォはたいへんな迫力、終楽章は逆にジックリたっぷり歌っていて、いかにもストコ節。焦点はここにある。

ブリュッヘン/18世紀管弦楽団(PHILIPS PHCP-12001 1992年頃録音 1,000円)

サンプラー盤で第4楽章のラスト部分を収録したもの。最近、噂を聞かなくなりましたね、この団体。声楽の使い方が絶妙で、ソロひとりひとりの歌い方にも指揮者の配慮が行渡ったような演奏。管楽器のバランスが違って聞こえるのは古楽器演奏での特徴みたいで、完成度の高い、解釈的にはオーソドックなものでした。

ブロムシュテット/シュターツカペレ・ドレスデン/ドレスデン交響合唱団(LASERLIGHT 18 826 1985年録音 300円)

何も書いていないが、1985年ゼンパーオーパーのコケラ落としライヴ。これぞ現代の標準盤と呼んでよろしい、奇をてらわない、どこをとっても過不足のない、曲を曲として語らせる演奏でしょう。ライヴとは思えぬアンサンブルの完成度、やや地味だがオケの響きそのものが音楽になっているような素晴らしい演奏。祝祭的ライヴならではの高揚感も有。合唱の充実振りには驚くばかり。やや渇き気味で、音質はもう一声改善を望みたい。

クレツキ/チェコ・フィルハーモニー/合唱団(SUPRAPHN COCO-80405 1965年頃録音 5枚組4,000円)

大穴。第1楽章冒頭のホルン、弦からして痺れるような音色。オケの柔らかく、素朴な味わいがたまらない魅力。木管の鄙びた音あいも最高。適度な残響の録音のせいか、オケが大爆発してもまったくうるさくならない。異形な部分はどこにもなくて、スケルツォも充実、第3楽章アダージョの弦のくすんだ響きは白眉でナミダもん。終楽章のオケの力感にも文句なしで、ま、「歓びの歌」最初の弦の重なりはたいてい感動するもんだが、チェコ・フィルのちょっとザラリとした生成りの味わいは貴重です。合唱の奥行きも素晴らしい。質素な、日常生活の歓びあふれる演奏。

・・・・・・・もう、ないやろうなぁ。では最後に。

シェルヘン/ルガノ・スイス・イタリア語放送管弦楽団・合唱団(Yamano YMCD1017 1965年頃ライヴ録音 500円)

どうしようもないアンサンブル、上手くないオケ。あたりまえでしょ、ある時は無茶苦茶に速いスピード、間のない「間」。まるで前衛音楽のように揺れに揺れるテンポ。でも、こんなアツくて下品で楽しい演奏滅多にありません。そのあと「歓びの歌」が妙に染みます。その後、急にまっとうになりやがって涙出そう。録音良好。

 きっと真剣に棚を探ったら、まだ出てくるのかも。少なくともカセットには数本あります。でもねぇ、こんなたくさんあっても仕方がない。全部通して聴いたわけじゃないが、良い演奏に当たると、途中で止められません。正直、食傷するかと思ったら、聴けば聴くほど面白い。こりゃ、ほんまの名曲なんでしょうね。まだ買うのか?って、だってヨッフムもマッケラスも、今流行の古楽器のもほとんど聴いていないんですよ。

 ワタシ的お勧めポイントは
1) 録音が良好なこと〜これ、とくに合唱の収録が難しいはずで、やはり良い音で聴きたいもの。
2) 合唱に厚みがあって、充実していること。
3) 燃えるような情熱を感じること。
4) オケについては指揮者しだい

・・・・・・・ということで、ワタシ、この段階での好みは〜

第1位 クレツキ/チェコ・フィルハーモニー/合唱団

(大穴!オケも合唱も自然体で素晴らしい。全面降伏)

第2位 グッドマン/ハノーヴァー・バンド/オスロ大聖堂合唱団

(あまり古楽器演奏は聴いていなくて、新鮮に感じました。録音極上)

第3位  

マルケヴィッチ/コンセール・ラムルー/カールスルーエ・オラトリオ合唱団

(演奏者の入魂と情熱を感じる。燃える演奏。但し、ワタシの持っている録音では音質はイマイチ)

番外編  カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー/ウィーン楽友協会合唱団(1962年)

(やっぱり、オケと合唱の力量がハンパじゃない。カラヤンの語り口の上手さに説得されるかどうかだ)

 では、良いお年を。(2001年12月16日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi