Stravinsky 自作自演集
Stravinsky
カンタータ「結婚」(1917/23)
ウィンター(s)セイマウア(a)ジョーンズ(t)ヘンダースン(br)/BBC合唱団/メイスン、ヘイワード、ラッシュ、ベンボウ(p)/打楽器アンサンブル/ストラヴィンスキー(1934年録音)
八重奏曲(1923)
モイーズ(fl)ゴドー(cl)デリン、パイアール(fg)フォヴォー、ヴィグナル(tr)ラフォッセ、デルボス(tb)/ストラヴィンスキー(1932年録音)
ピアノと管弦楽のためのカプリッチォ(1929)
ストラヴィンスキー(p)/コンセール・ワルター・ストララム/アンセルメ(1930年録音)
詩編交響曲(1930)
アレクシス・ヴラッソフ合唱団/コンセール・ワルター・ストララム/ストラヴィンスキー(1931年録音)
田園曲(1907)
ドゥシュキン(v)グロメール(ob)デュランド(eh)ヴァセリア(cl)グランドメイスン(fg)/ストラヴィンスキー(1933年録音)
「火の鳥」より「スケルツォ」「子守歌」(1910/1932)
「ペトルーシュカ」より「ロシアの踊り」(1911/1932)
「うぐいすの歌」より「うぐいすのアリア」「中国の市場」(1917/1932)
ドゥシュキン(v)/ストラヴィンスキー(p) (1933年録音)
ラグ・タイム(11台の器楽による/1919)
ラクズ(ツィンバロン)シャルミ、ヴォラント(v)ジノ(va)ジュステ(cb)ラヴァイロ(fl)ゴドー(cl)フォヴォー(tr)デヴェマイ(hr)トゥデスク(tb)モレル(per)/ストラヴィンスキー(1934年録音)
ピアノ・ラグ・ミュージック(1919)
ストラヴィンスキー(p) (1934年録音)
イタリア組曲より「セレナータ」「スケルツォ」(1920/33)
ドゥシュキン(v)/ストラヴィンスキー(p) (1933年録音)
イ調のセレナード(1925)
ストラヴィンスキー(p) (1934年録音)
ヴァイオリンとピアのためのデュオ・コンチェルタント(1932)
ドゥシュキン(v)/ストラヴィンスキー(p) (1933年録音)
2台のソロ・ピアノのための協奏曲(1935)
ソウリマ/イーゴル・ストラヴィンスキー(p) (1938年録音)
(以上、名前の呼び方すべていい加減〜ご容赦。ご指導下さい。お仏蘭西には縁が薄いので)
EMI CDS 7 54607 2 2枚組1,000円で購入
Stravinskyはステレオ時代まで存命で録音も沢山残してくれました。CBS/SONYの自作録音もかなり手に入れましたよ。(2002年)これはほとんど1930年前後の録音で、ドキドキするほど時代の危うい響きを残していると思います。SP復刻だけれど、想像以上に音の状態は良好で楽しめます。
CD一枚目はストラヴィンスキーの指揮+奇想曲のみアンセルメの指揮でピアノ担当。カンタータ「結婚」って、バーンスタイン辺りが有名かな?ワタシはその昔、ブーレーズのLPを持っていた記憶がある。ピアノ4台+4人の打楽器+声楽というエキセントリックなもの。ロシア農民の民俗音楽を題材にした、民俗原始主義時代ラスト付近の作品・・・って、なんの説明にもなっていませんな。
ま、フツウのめでたい結婚式みたいなものじゃなくて、もっと未開の地とか太古の昔、邪悪な神に花嫁を捧げる〜みたいなのってあるじゃないですか。ちょうどそんな感じ。旋律が存在しなくて、リズム(打楽器+ピアノ)と色彩(声楽)のみで音楽が形作られ、儀式が進行していくような、不思議な味わいと興奮。
慣れと馴染みは必要でしょうが、ワタシ、とても好きな音楽です。美しい、歌うような音楽を期待するとハズされるが、「春の祭典」の声楽版〜ただし、あれほどの多彩さと強弱、派手さはないけれど〜じゃないか、と見立ててみました。この演奏でも存分に興奮可能だけれど、鮮明なる録音だともっとわかりやすいのかな?但し、この怪しげな声楽の決まり方(音質もかなり鮮明)は捨てがたい魅力。
八重奏曲の編成はフルート、クラリネット、ファゴット2本、トランペット2本、トロンボーン、バストロンボーン〜初耳でした。ラザレフのは七重奏曲だったののね。新古典的な作風で室内楽的な小編成の作品が増えている・・・って、戦争で大きな編成は演奏が難しいかな、って思っただけじゃないの。ま、気まぐれで、平易で剽軽(ひょうきん)なる旋律が続いて、牧歌的でもあります。現代音楽って破壊的!なんて思っていると、少々味わいが異なる。
「主題と変奏」の部分にはジンタのワルツ風リズムも出てくるし(Stravinskyって好きなのね)、終楽章の淡々・訥々とした味わいにはなんともノンビリとした味わいもあります。最終盤のちょっとポピュラー風の旋律も思わぬ贈り物。演奏はもう抜群に上手い!往年の名人ばかりですね。これも音質良好。
「奇想曲」はかなり有名で、演奏機会も多い。ワタシ、ケーゲル/レーゼル(p)の演奏で聴いていたけれど、正直、強面過ぎて好きな作品とは思えませんでした。「冒頭の押しつけがましくも暴力的なラッシュが、少々気になります」と。このアンセルメ/作曲者(p)の演奏は、録音の加減もあるのか、オーケストラの編成が小さく(聞こえるだけ?)て、なんやらスカスカで、ピアノ共々味わい系なんです。ゆったりとしてユーモラスで小味系。
終楽章はジャズのリズムですか。いやはや、全然気付かなかった。あんまし技術的にバリバリ切れないところがよろしい。ぼやき漫才風演奏か。(あわててレーゼル盤再聴したら、ようやく理解〜但し、明快過ぎ、真面目すぎ、リズム感切れすぎ・・・!?)
コンセール・ワルター・ストララムとは、ヴァイオリニストで合唱指揮者のワルター・ストララム(1876-1933)によって設立された臨時編成のオーケストラらしい。名手モイーズとか、ラスキーヌが参加しているくらいだから、たいしたものでしょう。CDが出てますね(未聴)。ストララムの逝去とともに当然消滅。
「詩編交響曲」は、聖書をテキストにした祈りの曲〜(「結婚」もそうだけれどラテン語のテキストらしい〜なんのことやら・・・?)「旧約聖書」〜「ダヴィデの詩編」第38篇、39篇、150篇〜第1楽章は神の慈悲を願う祈り、第2楽章は神への感謝の祈り、第3楽章はアレルヤ賛歌、神への賛歌、だそう。荘厳なる大規模管弦楽(ヴァイオリンとヴィオラがない)と延々と(辛気臭く)続く朗々たる合唱の連続〜ワタシはいつもいつも「お経」を連想します。
この曲は意外と好きで、ブーレーズ(これはFMエア・チェック/1995年)とかレヴァイン(シカゴ響とのライヴ1989年)などで馴染み故、この古い録音は少々だるく感じられました。編成が大きいでしょ?声楽のアンサンブルも少々大味。
CD二枚目は室内楽です。田園曲は古雅な味わい〜まるでノスタルジックなラジオ・ドラマのテーマ曲か。ドゥーシュキンのヴァイオリンは変幻自在でテクニック抜群だけれど、どことなく上品で暖かい味わいもあります。さすが(当たり前?)に原曲の味わいを崩しません。(それにしても音質抜群)「ラグタイム」はサロネン盤以来のお気に入りの作品です。曰く「サティを連想させる、行き当たりばったりのユーモラスな旋律と音色の宝庫」〜ツィンバロンの音色がユーモラス。
作曲者のピアノって、あんまり上手くなくて(というか、技術的なことじゃなく)味わい系です。セレナードなんか、現代の若手テクニシャンが弾いちゃうと、たいへんな難曲に仕上がるんじゃないかな?ぎくしゃくしたほうが、面白みがある作品か。ソウリマって息子だそうです。二台ピアノの作品となると、さすがにスケールが大きくて、味わい系なんて言ってられないか。たいへん立派な、高尚な旋律の作品でした。難解さはありません。しかも、音質良好。
(2004年2月20日)