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Sibelius 交響曲第4番イ短調を聴きました


 Sibelius は日本で意外なほど人気だし、CDも売れる、演奏会でも人が呼べる・・・日本人固有の文化である侘び寂びの世界なのか、ワタシも大好きです。初期の第1/2番のみならず、中後期の渋い作品でも支持があるから驚き。LP時代はロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団の全集を、CD時代になると様々たくさんの音源で馴染んで、楽しんで・・・いるつもりになっておりましたが・・・

 「直輸入スエーデン・ビス 標準小売価格\3,600」のシール付き先日、ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団(1984年)のCDを買ってきました。いつものBOOK・OFF・GETで税込500円(標準小売価格3,600円)BIS-CD-263。既に現役ではないらしい。CDが贅沢品だった時代の産物〜もう20年前のCDなんですね。数日掛けて他の数曲聴いてから、第4番に行き着いたら「???」状態へ。

 晦渋でジミで様子がわからなくて・・・ということは知っていたはずなのに、ワタシは幼少より京・鞍馬山にて荒修行した(ウソ)Sibelius に馴染んでいる達人(なんの?)故(ゆえ)、んなことなんの問題にもならない〜ハズが、荒涼たる景色ばかりが耳に刺さって安易に楽しめない。いえいえ、とても風情がありそうで「それらしい音」で鳴っているのに、音楽全体の様子が見えてこない。(他の作品ではこんなことはなくて、素直に楽しんだハズなのに)あれ?交響曲第4番って、こんな作品だっけ?

 いままで聴き流して、わかったつもりだったんだな。きっと。非情・暗鬱で寒々しい第1楽章、軽快な微笑みの第2楽章も、第3楽章の絶望的な寂寥に否定され、機嫌の良い最終楽章もどこか不安の影があって精一杯の喜びを表現できない。内省的であり、寡黙でもあります。おそらくは、そんな当たり前のことを気付かせて下さったのがヤルヴィ盤なんでしょう。集中力ある研ぎ澄まされたアンサンブル!というワケには参らぬが、やや粗削りで寂寞とした味わいが骨太で表現され、しかもチカラ強い(冒頭コントラバス)。第1楽章が遅めのテンポで入念なんです。

 あちこち繊細なる旋律が美しいのに、音楽の全体像が行方不明になるような混沌を感じます。弦も木管も金管も、流麗なテクニックが最上な条件とは思わないが、数回聴き込むと細部の彫琢が甘いというか、第2/3楽章の静かな部分での味付けは薄く感じることも有。終楽章の控えめな躍動は出色でしょう。鉄琴でしょうか(ほか、チューブラーベルも聞こえるような気がする)氷のような輝きを感じさせ、ジミなチェロ・ソロに咆哮する金管が時に爆発するが、モノローグのようなとぎれとぎれの疾走が続きました。

 全体像が見えにくい作品だと思います。これをどう解釈して解決の方向とするのか。ワタシがLP時代懐かしいロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団(1971年 VICC-40110-2)を貸与いただきました。(かつて国内CD化されていて、入手困難)

 う〜む、これはわかりやすい。明快!どんな演奏かというと、太いマジックで縁取りした、ポップなイラストのような感じですな。思いっきり爽快に金管爆発させてメリハリ最強だが、陰影に乏しい。侘び寂びとは無縁方面だが、まるっきりの勘違い演奏と切り捨てられない”わかりやすさ”。おそらく若き日のワタシは、これでこの作品を理解しているんです。荒涼とした景色(北国の冬に吹きっさらしの安物看板が立っている、みたいな)は確かに存在して、妙に雄弁で、刺激的に鳴り渡る金管も、弦の鋭い集中力も冷たい感触がちゃんとある。(終楽章は鉄琴)リズム感がよろしい。

 ECO INDUSTRY CC1067 1,000円で買ったはずカラヤン/ベルリン・フィル(1965年DG録音)〜1990年頃出た駅売海賊盤だが、ワタシはSibelius の交響曲をCDで欲しかったんです。(後年、何種も全集を買うようになるとは想像も付かなかった)数年ぶりの再聴だが、かつて「微細な味付けが行き渡った官能的(叶姉妹的)演奏!」と激賞していた(当たっていると思う)のがウソのように曖昧でぼんやりして、様子がよくわからない。

 もっとも憂鬱な味わいの第3楽章は、例えばフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ここ数日聴いてきた同作品別オケ演奏とは一律に比べられない、抜群の技量というか、上手さを実感できます。しっとり引きずるような弦の厚みというか、シルクのような繊細な輝きも尋常じゃない。ムーディに決まっていて、終楽章の盛り上がりに焦点持ってくる手練手管はたいしたもの・・・だが、最後まで流して(ヤルヴィ盤とは別の意味で細部雑なようで)、イマイチ盛り上がらない。(カラヤンは鉄琴使わせてますね)

 これが1953年のカラヤン/フィルハーモニア管(QUADROMANIA 222172-444)になると、やや強引な勢いには溌剌とした若さもあって、オケの響きが清潔でずいぶんと味わいが異なります。金管の爆発も爽快。(EMI音源の流用だろうが、信じられないくらい鮮明なモノラル録音)アブラヴァネル/ユタ交響楽団(1975-1977年頃?)は予想以上に清涼なアンサンブルが悪くない。ザンデルリンク/ベルリン響(1977年)は、立派で勇壮で、暗鬱で重く、独逸的粘着質を感じちゃう。作品によってはピタリ!状態だが、さすがに北欧の珠玉・Sibelius にはどんより曇り空が低くて憂鬱でした。

 エイドリアン・リーパー/スロヴァキア・フィル(1990年)は、なんといいますか、まっとうで素直で・・・悪く言えば工夫が足りないというか、それでも誠実さが伝わるような共感が感じられなくもない。(第5番第2/7番のコメントは書き直し必要ですな)

 

 こうしてヤルヴィ盤をきっかけにしっかり音楽を楽しむ、よいチャンスとなりました。でも、(一部の好事家に話題の)ケーゲルの第4番、バルビローリ、サラステ、ベルグルンド(ボーンマス響/ヘルシンキ・フィル)、サカリ/アイスランド響、各々の全集に今回は手が着かなかったので、機会を改めてじっくり楽しもうと思います。寒さ厳しい季節にSibelius というのも一興。(2005年2月17日)

  


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written by wabisuke hayashi