Sibelius 交響曲第2番ニ長調/交響曲第7番ハ長調
(エイドリアン・リーパー/スロヴァキア・フィル)
Sibelius
交響曲第2番ニ長調 作品43
交響曲第7番ハ長調 作品105
エイドリアン・リーパー/スロヴァキア・フィル
NAXOS 550198 1989年録音
以下は1999年夏のコメント、23年前ですよ。(遠い目)今年の夏も暑かったなぁ。クラウス・ハイマンはNAXOS創設当初、同一作品の再録音はしないと明言していたのに、ストリーミングによる音楽ビジネスが軌道に乗ると新録音(そして歴史手復刻音源も)を次々と出したものです。このSibelius交響曲全集録音のあと、Petri Sakari(1958-芬蘭)、Pietari Inkinen(1980-芬蘭)による意欲的な全集録音が出現して、Adrian Leaper(1953ー英国)全集は世間から忘れられてしまいました。但し、NMLにちゃんと残している姿勢は立派。NAXOS初期録音の主要レパートリーを担っていた彼の噂も最近ほとんど聞きません。
久々の拝聴はまず音質がいまいちというか、悪くはない・・・水準。スロヴァキア・フィルのサウンドはローカルに洗練されず、技術的にあまり器用ではない感じ。切れ味、パワーに少々足りず、弦が少々薄くても、北欧の旅情、風情はたっぷり感じられる誠実演奏でしょう。リーパーはあまり陰影や起伏、凄みを強調しない素直な表現、作品に対する愛着を感じました。たしか、このあとグラン・カナリア・フィルと全集再録音をしていたはずだから、得意な作品なんでしょう。(Arte Nova/入手困難)。
Sibelius一番人気と思われる交響曲第2番ニ長調、第1楽章「Allegretto」。第1主題からさわさわとした弦に呼応するホルンに、ヴィヴラートたっぷりな存在感有。中庸のテンポ、あまりきりりと引き締まらぬアンサンブル、パワーで押し切らない、洗練されぬ粗野な響きに魅力を感じます。懐かしくも暖かい旋律は雄弁に非ず、やや盛り上がりに欠けても、これはひとつの個性でしょう。(10:10)
第2楽章「Tempo andante, ma rubato - Andante sostenuto」。冒頭静かなティンパニから低弦の寂しげなピチカートが導かれて、ファゴットによる憂鬱な主題が提示されました。緩徐楽章は魅惑の寂寥風景。テンポはやや遅め、コラール風に盛り上がっていく場面もテンポをあまり上げず、煽らず、悠然とあわてぬ風情に間はたっぷり、スタイリッシュな緊張感切迫感にやや足りないけれど誠実。オーケストラはあまり鳴らないけれど、シミジミ静かな雰囲気は充分に感銘をしっかりいただけます。(13:55)
第3楽章「Vivacissimo - Trio. Lento e suave - attacca」は快速スケルツォ楽章。弦の急速パッセージがオーケストラの腕の見せ所でしょう。やや響き薄く、アンサンブルはまずまず、トリオの牧歌的田園風オーボエ、フルート、チェロによる旋律との対比は上々。冒頭急速旋律が戻っても低音から分厚く押し寄せるようなパワーはやや不足気味、やがてトリオが戻って、タメてタメて(6:02)・・・アタッカでそのまま第4楽章「 Finale. Allegro moderato - Moderato assai - Molto largamente」へ。
勇壮な主題は雄弁表現に非ず洗練されない。やはり弦が薄いかな?スロヴァキア・フィルの色もエイドリアン・リーパーの表現もパワフルではない、しみじみとした味わいが支配しております。ラスト精一杯クライマックスを盛り上げて、作品の魅力を知るには充分な出来栄えでしょう。(13:21)
交響曲第7番ハ長調は古典的な起承転結4楽章に非ず、デリケートな単一楽章(つかみどころのない)幻想曲。決然としたパワーや切れ味だけでは解決しない(中学生時代より)大好きな作品です。「Adagio(序奏) - Vivacissimo - Adagio - Allegro molto moderato - Allegro moderato - Presto - Adagio - Largamente molto - Affettuoso」時代は既に1924年、やたらと速度表記が細かい。粗野なヴィヴラート際立つ金管はエエ味出してますよ。作品的に第2番より指揮者やオーケストラの個性に似合って、延々たる荒涼とした旋律の流れに満足いたしました。(20:27) (2022年9月17日)
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このページ執筆時点、厳しい夏の暑さ真っ最中。こんなときは北欧の涼しげな音楽に限ります。このCDは、おそらく90年代前半に購入したもの。当時、こんな安価で全集はなかなか揃わなかったので、喜んだものです。4枚でレギュラー価格の一枚分。(現在はいろいろと選べる幸せ。ベルグルンド/ヘルシンキ・フィルだって、これと同じくらいの価格で手に入る)
リーパーは初期NAXOSではそうとうに手広く録音してくれていて、最近は手兵グラン・カナリア・フィルとARTE NOVAにMahler を録音していますね。イギリスの中堅だそうで、まだ40代。ワタシはスケール感がなくて、手堅く保守的な表現をする人と思いました。
スロヴァキア・フィルは最近録音が少ない。NAXOSでは、亡くなったコシュラーとの数枚+αくらいでしょうか。派手派手しい響きとはもともと無縁な渋い音、というか、洗練されない素朴な田舎臭さ、が特徴です。この録音時点でリーパーもまだ30代ですから、老練さとも無縁で、これはこれでひとつの実直な味わい。
Sibelius の第2番は昔から人気があって、名録音も多い。第3番以降の、ちょっと難解・幻想曲風な世界とは違って、ずいぶんとわかりやすく、大衆的で悪くないと思います。けっこう好きです。この演奏は初めて聴いたとき「オーケストラが上手くないなぁ」「テンポや間の取り方に落ちつきがない」と感じたものです。
そりゃカラヤンの細部まで磨き上げた演奏とか、バルビローリがしっとりと「泣き節」で歌い上げたような、そんな技はないんですよ。でも、洗練されないオーケストラのくすんだ田舎臭い音色、バランスもあまり良くないけれど、素朴で味わいはあって悪くないと思うようになりました。リーパーは、何もしないというか、自然体。自ずから滲み出る爽やかな雰囲気も有。
最終盤は、ぜひ盛り上げていただきたい見せ場ながら、ちょっとオーケストラが息切れした感じ。
第7番は個人的には一番気に入っていて、その幽玄な味わいはいつ聴いても胸を打たれます。リーパーはあまりスケールの大きな人じゃないと思うので、こういった凝縮された幻想曲にはピッタリか?
アンサンブルの密度はそれなりに高いけれど、オーケストラの音色が地味すぎて魅力的な響きとは云えないし、力強い爆発もなし。メリハリと構成力に欠けますが、その控え目な歌いぶりは、寥々たる北欧の味わいは感じられました。
コシュラーで聴いたときのスロヴァキア・フィルとは、少々音の感じが違うので、指揮者と録音の責任もあるんでしょうか。鮮明な録音ですが、音が硬いのと肌理も少々粗い。よく馴染んでいる曲なので「ここはもっと主旋律を強調しないと」「バックの単純な音形を浮き立たせた方が効果的」「ここは一発、思い切った爆発が欲しい」なんていう注文も出ます。
そんなこんな・・・で、夏はやっぱSibelius だなぁ。ベルリン・フィルやフィラデルフィアなどによる、超豪華な響きも楽しいけれど、けっこうローカル・オーケストラでも味わいあるのが嬉しい感じ。(1999年の夏)
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