Vaughan Williams 音楽へのセレナード/イギリス民謡組曲/ノーフォーク狂詩曲第1番/
グリーンスリーヴスによる幻想曲/湖沼地方にて/ひばりは飛んでいく(エイドリアン・ボウルト)


EMI 724357393126/7  8枚組 3,360円にて入手 Vaughan Williams

音楽へのセレナード
ロンドン・フィル/バローズ、アームストロング、ロングフィールド、ヘイワード(s)/ホジソン、ジェニングス、ミンティ、ディキンソン(con/a)/パートリッジ、ディカーソン、エヴェンス、ボーウェン(t)/アンガス、ケース、ノーブル、ケイト(b)(1969年)

イギリス民謡組曲
ロンドン交響楽団(1970年)

ノーフォーク狂詩曲第1番
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1968年)

グリーンスリーヴスによる幻想曲
ロンドン交響楽団(1970年)

交響的印象「湖沼地方にて」
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1968年)

ひばりは飛んでいく(The Lark Ascending)
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団/ヒュー・ビーン(v)(1967年)

エイドリアン・ボウルト

EMI 724357393126/7 8枚組 3,360円にて入手

 音楽は嗜好品、だから好きなものだけ聴いたらいいじゃん。いえいえ、自分の嗜好を発見するためにも、先人の残した”名曲”はしっかり身につけないと〜ご意見様々。21世紀は音楽の嗜好も多様化して、しかもテレビがさほどに影響を持たなくなってきました。CDという媒体も急速に存在感を失い、ネットダウンロードが主流になりつつあります。いずれ”実演”こそが基本、という真理は変わらないのだけれど。この一枚はワタシのストライク・ゾーンど真ん中であって、別にボウルト御大でなくてもかまわない(ゴメンネ)〜ほど大好きな作品ばかり。後ろ向きで控えめであり、静謐、懐かしい・・・ロンドンの著名3団体が担当しているが、オケの個性の違いはボウルトの統率の元、ほとんど意味をなさないほど・・・の魅力的演奏ばかり。

 「音楽へのセレナード」はソプラノ、アルト、テナー、バス各4人(ここではその編成。または各一人+混声合唱)+管弦楽の編成となります。ま、馴染みの「グリーンスリーヴス」並の安寧と静謐、懐かしい雰囲気に充ちた作品・・・とは、かなり以前にコメントしたこと(このCDは処分したのか?棚中に見あたりません)、歌詞はシェイクスピア「ヴェニスの商人」の最後の場面によるんだそう。かなり朗々として各自歌っていて、合唱としてぴたり!と線が合っているといった風情ではない。声楽ソロがあちこちで活躍するんだけれど、そこでは入魂の個性発揮します。トランペットとホルンが静かに弦の囁きを呼び覚ます冒頭から、例のごとしのけっして激高しない、英国紳士たる(ジミな)音楽が続きました・・・というのも以前のコメントだけれど、ボウルトは盤石の落ち着き+安定があるのだな。

 爽やかで、懐かしい。

 イギリス民謡組曲はワタシのヴェリ・ベスト大好き作品のひとつ。出会いはエイドリアン・ボウルト/ウィーン国立歌劇場管弦楽団のステレオ初期録音(1959年)となります。親しみやすく、溌剌と懐かしい、そしてちょっぴり哀しい旋律ばかり連続ワザ!おそらく英国人だったら誰でも知ってる歌ってる、馴染みの旋律を、こんなに楽しく仕上げて下さって至福の時間であります。ボウルトは毅然として端正なのに、巧まざるユーモア、そして余裕を感じさせて盤石であります。

 ノーフォーク狂詩曲第1番は、まるで日本の民謡のような木管の節回しから始まって懐かしい。やがて溌剌とした躍動に至って、再び安寧の世界へ回帰・・・とは、これも以前聴いたCDへのコメントであります。暗鬱、後ろ向き〜そして極上に繊細な旋律が胸を締め付けます。言葉なき嘆きはやがて大きなうねりとなって押し寄せ、そしてまた消え去っていく・・・そのテイストのまま、真打ち「グリーンスリーヴス」登場。旋律の甘美はバルビローリ辺りが一番似合いそう(←これも大好き)だけれど、ここでのボウルトはずいぶんさっくり、淡々とした歩みであって、大げさな表情付けとは無縁。テンポも淡々とと速め、作品を以て語らせる、といった風情か。旧録音よりあきらかにこちらのほうがよろしい。

 交響的印象「湖沼地方にて」は【♪ KechiKechi Classics ♪】 には登場していないかも(検索しても出てこない)。先のノーフォーク狂詩曲同様の静謐さが支配します。ワタシ如き粗雑な耳の持ち主には”オケの個性の違いはボウルトの統率の元、ほとんど意味をなさない”のは事実ながら、このひときわ繊細なる二つの作品はニュー・フィルハーモニア管弦楽団が担当しているのですね。キレがある清潔な響き。冬空の大自然のもと、ゆったりと冷たい空気を深呼吸する風情であります。

 ラスト、The Lark Ascending〜日本では「揚げひばり」といった訳が通っていて、著名なる訳詩からの引用らしい。「揚げ麺」とか「唐揚げ」みたいな感じで、どうも違和感が・・・ひばりは飛んでいく、くらいでご勘弁願えないでしょうか。不思議なヴァイオリンの協奏的作品であって、ソロがアクロバティックな妙技を披瀝するのではなく、自由にモノローグし続ける・・・ひばりの飛翔を表現しているのでしょう。作品を支配するのはどんより曇った空にひばりを追い求める寂しい中年(後ろ姿)。空気は澄み切って、冷たく雲が低い。時にひばりの声は聞こえるが、姿は探せません。ヒュー・ビーン(1929-2003年)は往年のフィルハーモニア管弦楽団のコンマス。味わい深い線の細さを誇りました。

(2010年10月7日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi